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2020年8月18日 (火)

DAOKOの個性をしっかり生かした傑作アルバム

Title:anima
Musician:DAOKO

2018年に米津玄師とのコラボシングル「打上花火」が大ヒットを記録。その年の紅白歌合戦にも出場し、一躍、時の人となった女性ミュージシャンDAOKO。ただ、そんな中でリリースされた前作「私的旅行」は、かなり豪華なミュージシャンとのコラボ作が多く収録されるなど、かなり力の入ったアルバムで、内容的にも優れた傑作だったのですが、チャート的にはオリコンで最高位19位と伸び悩み、正直なところ、DAOKO個人に対する訴求力の弱さを感じてしまった結果となってしまいました。

本作は、そんな前作から約1年8ヶ月ぶりとなるニューアルバム。今回のアルバムはGREAT3の片寄明人との共同プロデュース作品。「ハイセンスパイセン」ではスチャダラパーとコラボをしているほか、「アキレス腱」では片寄明人と相対性理論の永井聖一、「御伽の街」では小袋成彬が作曲及び編曲で参加しているなど、今回も豪華なミュージシャンたちのコラボも目立つのですが……正直なところ、これでもかというほど豪華なミュージシャンが並んだ前作に比べると、参加したミュージシャンの方には失礼ながら、若干見劣りはしてしまいます。

ただ、作品としての出来は前作と比べると悪くなったか、と言われると、そんなことは全くなく、DAOKOのミュージシャンとしての充実ぶりを感じさせる傑作に仕上がっていたと思います。今回のアルバムでまず特徴的だったのは、よりラッパーとしてのテイストが強くなったという点。DAOKOというと、「ラッパー」という紹介のされ方が多かったのですが、楽曲的にはHIP HOP色は特に強くなく、むしろ歌モノのポップチューンが目立っていたのですが、今回の作品に関しては彼女がラップしている曲が多く、ラッパーとしての彼女の存在感を覚えることのできるアルバムに仕上がっていました。

さらに今回のアルバムではトラック的にも非常にバリエーションの富んだ作風を聴かせてくれています。タイトルチューンの「anima」はアバンギャルドでパンキッシュな部分も感じさせますし、スチャダラパーとのコラボ作の「ハイセンスパイセン」はスチャダラらしいオールドスクール風のナンバー。逆に「ZukiZuki」は今風のトラップ的なリズムを取り入れており、「ハイセンスパイセン」からの振れ幅の大きさがユニークですし、ポエトリーリーディング的な「海中憂泳」に、チップチューンを取り入れた「帰りたい!」など、エレクトロサウンドを主軸にしつつ、様々な作風のトラックを聴かせてくれます。

特に小袋成彬が参加した「御伽の街」ではエッジの効いたリズミカルなエレクトロサウンドに、歌謡曲的な哀愁感を含んだメロディーラインが秀逸でカッコイイ楽曲に仕上がっており、今回の作品の中でも特に耳を惹きます。小袋成彬って正直なところ、彼のソロ作ではあまりピンと来ない部分が多かったのですが、本作では彼とDAOKOの才能がピッタリとマッチした名曲に仕上がっていました。

前作「私的旅行」、前々作「THANK YOU BLUE」はいずれも豪華ミュージシャンとのコラボが大きな魅力であった反面、豪華ミュージシャンの力ばかりが前に出ており、DAOKO本人の実力がいまひとつ測りかねる部分もありました。今回のアルバムでもまた豪華ミュージシャンとのコラボ作も並んでいたのですが、ただ前2作に比べると、「コラボ」という部分は一歩後ろに下がった作品に。ただ、それでも前々作、前作に勝るとも劣らない傑作となっており、今回はしっかりとDAOKO本人の実力を感じさせる内容になっていたと思います。

正直なところ、メロディーラインのインパクトが不足している部分は否めず、そこらへん、DAOKO個人としていまひとつブレイクしきれない理由のような感じも受けてしまうのですが…ただ、これだけの傑作をリリースできるのであれば、また、ヒット曲に出会えるのも時間の問題、かも?前作ではあまりにコラボ作を前に押し出した内容から次回作の出来を心配していたのですが、そんな心配を杞憂として吹き飛ばした内容になっていたと思います。今後の彼女の活躍も楽しみになってくる作品でした。

評価:★★★★★

DAOKO 過去の作品
DAOKO
THANK YOU BLUE
私的旅行

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