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2020年8月25日 (火)

2作目にしてさらなる進化

Title:Morning Sun
Musician:岡田拓郎

2012年の結成後、2013年のアルバム「森は生きている」が大きな話題を呼び、一躍注目バンドとなった森は生きている。しかし、2015年にわずか2枚のアルバムを残し、わずか3年という短い活動期間で解散してしまいました。しかし、その中心人物であり作詞作曲を手掛ける岡田拓郎がその後もソロ活動を続け、大きな話題となっています。そして本作は、そんな彼の2枚目のアルバムとなります。

前作「ノスタルジア」はフォーク、ソフトロック、ジャズなどの要素を取り入れた、森は生きているの延長線上にあるアルバムになっていました。そしてそれと同時に個人名義ということもあり、非常にパーソナルな雰囲気のアルバムになっていたように感じました。具体的に言うと、ボーカルトラックが他のサウンドにまぎれ、インストアルバムのような感触を受ける作品になっており、良くも悪くも少々とっつきにくさを感じる、ある意味、「通向けのアルバム」といった印象を受けました。

そんな前作に比べると、今回のアルバムはボーカルトラックを前に出して、より「歌モノ」的な部分を強調した、いい意味で聴きやすいアルバムになっていたように感じます。アルバムはいきなりタイトルチューンの「Morning Sun」からスタートするのですが、フォーキーな雰囲気のソフトロックに仕上がっているこの曲。ハイトーンボイスのボーカルがちょっと切なく、耳を惹くポップチューンに仕上がっています。

ポップな歌モノという点で耳を惹くのが中盤の「Shades」でしょう。エレピが静かにリズムを刻む楽曲なのですが、メランコリックなメロディーラインが実に美しいポップチューン。メロディーメイカーとしての優れた才能がより表に出ている楽曲に仕上がっています。

前半は基本的にファルセットボイスで静かに聴かせるソフトロックチューンが並びます。特に「Nights」「Birds」ようなドリーミーな曲も目立ち、非常に夢見心地で美しいサウンドを体感できるような楽曲が続いていきます。ただ、その雰囲気に少々変化があらわれるのが終盤7曲目から。「Stay」はピアノも入ったメランコリックなサウンドは前半と同様ですが、ノイジーなギターサウンドがそこに加わり、よりロックなテイストの強い作品となっています。さらにアルバムの印象がグッと変わるのがラスト「New Morning」。11分にも及ぶ長尺の曲なのですが、ゆっくりと展開していくソフトロックな作風の中にヘヴィーなギターノイズが加わり、全体的にはサイケロックの要素も強い作風に。このラスト2曲は、岡田拓郎流のロックともいえる作品が並び、アルバムは幕を下ろします。

基本的に前作よりもいい意味で聴きやすくなり、かつラスト2曲、特に最後のサイケ色が強い「New Morning」ではタイトル通りの新しい岡田拓郎の方向性も感じさせる作品に。前作でも傑作を聴かせてくれた彼ですが、ソロ2作目でさらなる進化を感じます。彼の活動からはこれからも目が離せなさそうです。

評価:★★★★★

Title:都市計画(Urban Planning)
Musician:Okada Takuro+duenn

で、そんな岡田拓郎が、2ndアルバムに先立ち、サウンド・アーティストduennと組んでリリースした、配信限定のコラボアルバム。「duennの作るメロディーのみでアルバムを完成させる」というコンセプトの元に作成されたアルバムだそうで、構想2年。しっかりとした時間をかけてリリースされたのが今回のアルバム、だそうです。

全25分という短い中に全16曲が収録された今回のアルバム。基本的には音数の少ないエレクトロサウンドで構成されたアンビエントのアルバム。ドリーミーなサウンドが心地よいのですが、時には美しいメロディーラインが流れてきたり、時には散文的な音のリズムを楽しんだりと、16曲それぞれに音の世界を楽しめるようなそんなアルバムに仕上がっています。どこか無機質な感覚があるのも、タイトル通り、都市の音楽をイメージしているのでしょうか。

比較的短い作品ということもあって、BGM的にも、またはしっかりと聴きこんでも楽しめるような作品に仕上がっていたと思います。オリジナルアルバムとはまた異なる、岡田拓郎とduennの魅力を感じさせるアルバムでした。

評価:★★★★★

岡田拓郎 過去の作品
ノスタルジア(Okada Takuro)


ほかに聴いたアルバム

オリオンブルー/Uru

最近、女性シンガー、それも経歴を隠して匿名性を加味したような女性シンガーの活躍が目立ちます。彼女のそんなシンガーの一人。経歴等は一切不明で「謎だらけのシンガー」と言われているようですが、そういう匿名性の高いシンガーはなかなか固定ファンもつきにくく、短命になりがちな感もあるだけに戦略としては疑問なのですが…まあ、ある程度のタイミングで経歴を公表するのでしょうが。

そんな彼女のオリジナルアルバムですが、透明感がありつつも、一方ではちょっとくすんだ感もある伸びやかな歌声で歌われる感情をこもったボーカルでしんみり聴かせるスタイル。タイプ的には鬼束ちひろが、もうちょっと淡々とした歌い方をした感じでしょうか。ボーカリストとしてはそれなりに魅力的ですが、一方楽曲は平凡なJ-POP的な曲が多く、最初はよくても、後半、徐々に飽きてしまいました。ただ一方で秀逸だったのは初回盤でボーナスディスクで収録されているカバー曲集。こちらは彼女のボーカリストとしての魅力が存分に発揮されており、非常に聴き入ってしまいました。特にthe pillowsの「Funny Bunny」のカバーが秀逸。アクエリアスのCMソングとして起用された段階で話題になったのですが、心に染み入るような歌声によるカバーが大きな魅力となっています。

基本的に全曲彼女が作詞作曲をしているため、ソングライターとしての課題はまだまだありそう。一方でボーカリストとしては魅力的なのは間違いなさそうです。そういう意味で今後のソングライターとしての成長に期待といった感じでしょうか。ほかの作家陣の曲を取り入れるという方法も有効的な感じもしますが…。

評価:★★★★

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