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2020年8月 1日 (土)

初のベスト10ヒット作!

Title:
Musician:MUCC

結成から20年超を誇る、既にベテランの域に達しながらも、根強い人気を維持しているヴィジュアル系バンド、MUCC。本作はそんな彼らの約1年4ヶ月ぶりとなるニューアルバム。本作はBillboard、オリコン共にアルバムチャートでベスト10入りを達成。特にオリコンでは、デビュー以来、初となるベスト10ヒットとなっており、かなり意外な印象もある快挙達成となりました。

彼らの前作「壊れたピアノとリビングデッド」は「ピアノ」と「ホラー」をテーマとしたコンセプチャルなアルバムとなっていましたが、今回の作品は一転、MUCCらしさを押し出したようなアルバムになっています。特にハードコアのテイストを色濃く入れたヘヴィーなバンドサウンドと、メランコリックなメロディーラインの歌謡曲的な作風という、彼らの持つ2つの特徴がより楽曲に反映された作品になっているように感じました。

特に1曲目のタイトルチューン「惡-Justice-」は哀愁感あふれるメロディーラインにへヴィーなバンドサウンドが印象的な作品になっていますし、続く「CRACK」もデス声を入れてヘヴィーなサウンドを前面に押し出した作品になっています。ただ、ここらへんのハードコアテイストの強い作品以上に今回のアルバムで目立ったのは、彼らの持つ「歌謡曲」的な要素。幻想的な歌詞も印象的な「海月」は哀愁感たっぷりでまさに歌謡曲的な楽曲になっていますし、「自己嫌悪」などはホーンセッションも入って、ちょっと懐かしさすら感じさせる歌謡曲的な楽曲に仕上がっています。

歌謡曲的なメロながらも、もうちょっとJ-POP寄りな「COBALT」や逆にポップなメロながらもパンキッシュに仕上がっている「My WORLD」のような曲もあり、全体的にメロディーを聴かせる曲も目立つ本作。ただ、歌謡曲風な楽曲に関しては、へヴィーなバンドサウンドがバックに流れているのと、メロディーにインパクトがあり、しっかりとした構成の曲が並んだ結果、J-POPバンドによくありがちな、変なベタさ、泥臭さみたいなものをあまり感じず、ハードコア系が好みのロックリスナー層を含めて、十分楽しめる作品になっているのではないでしょうか。

さらに今回のアルバムに関しては、特に今の社会の風潮を反映した空気感を持つ楽曲が目立つのも特徴的で、「アルファ」の中の

「世界中の君たちへ
いつかこの霧は晴れるから」
(作詞 ミヤ 「アルファ」より)

なんていう一文は、まさに今のコロナ禍の最中のリスナーへのメッセージのように感じます。

そんな感じで、今の世相を反映しつつ、MUCCらしさをしっかりと感じられる作品。ベテランバンドらしく、彼らの持ち味をちゃんと理解した上で、しっかりと曲に反映させた、そんなアルバムになっていたように感じます。個人的には、以前「カップリング・ベストII」で聴かせてくれたような、もっと挑戦的でバリエーションある作風が聴ければもっとよく、ちょっと似たような曲が多かった点は気になったのですが…これが初のベスト10ヒットになったように、ベテランバンドになっても勢いのある彼ら。その勢いはまだまだ止まらなさそうです。

評価:★★★★

MUCC 過去の作品
志恩
球体
カルマ
シャングリラ
THE END OF THE WORLD
T.R.E.N.D.Y.-Paradise from 1997-
脈拍
BEST OF MUCC II
カップリング・ベストII

壊れたピアノとリビングデッド

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