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2020年8月30日 (日)

激しいビートとシャウトが特徴的

Title:The Passion Of
Musician:Special Interest

The-passion-f

今回紹介するバンドも、日本では現時点でほとんど知名度のないバンドでしょう。アメリカはニューオリンズ出身のバンド、といっても一般的な「ニューオリンズ」のイメージからするとかなりかけ離れた感じもあるかもしれません、4人組のポストパンクバンド、Special Interest。知名度には海外でもまだ知る人ぞ知るバンドであるようで、Wikipediaなどで詳しい情報が入手できませんでした…。ただ、2018年にデビューアルバムをリリースしたばかりのようで、バンドとしてもまだデビュー間もないようです。

このバンドの特徴的なんはメンバーで、ボーカル、ギター、ベースというおなじみのラインナップに加えて、ドラムスではなく、ドラムはプログラミングというスタイルという点。そのため、リズムは終始、へヴィーな打ち込みのビートが続きます。本作も1曲目のイントロナンバーに続く事実上の1曲目「Disco III」はいきなりへヴィーな打ち込みのビートからスタート。さらにそこに警告音のようなノイジーなギターのリフ、さらにはシャウトするボーカルが加わり楽曲が展開していくナンバー。まずは打ち込みのビートに耳を惹かれます。

この打ち込みのヘヴィーなリズムに歪んだギターサウンドとシャウトするボーカルが重なりハイテンポに進んでいくというスタイルは基本的に彼らの楽曲の共通点。全11曲入りのアルバムなのですが、このスタイルが終始貫かれています。ポストパンクとカテゴライズされる彼らですが、スタイル的にはインダストリアルに近いサウンドに感じます。そのため、楽曲のバリエーションは決して多いありませんし、似たような曲は少なくありません。ただ30分弱という短さと楽曲の勢いもあり、ダレることなく最後まで一気に聴き切れてしまいますし、なによりもハイテンポで力強い打ち込みのビートとへヴィーなバンドサウンド、さらにパッショナブルなボーカルのシャウトにより、最後まで緊張感があり耳の離せないアルバムに仕上がっていました。

ただ、バリエーションに乏しいとはいっても、ビートをこれでもかというほど強調した「Disco III」から一転し、シングル曲でもある「Don't Kiss Me in Public」はビート感以上に疾走感が強いインパクトを持ったナンバーになっていますし、「All Tomorrow's Carry」はThe Velvet Undergroundの「All Tomorrow's Party」を彷彿とさせるタイトルですが、楽曲的にもどこか、VUを思い出させるようなダウナー気味なメロディーとノイジーなサウンドの楽曲になっています。

さらに中盤では「Passion」のようなスペーシーなインスト曲を挟んできており、アルバムの中ではちょうど箸休めのような構成になっているのもインパクトに。そこからの後半も「Head」「Tina」とハイテンポで疾走感あふれる楽曲を一気に繰り広げ、最後まで勢いのあるアルバムに仕上げています。最初から最後まで、耳の離せないアルバムになっていました。

そんな訳で、日本どころか世界的にもまだまだ知名度の低い彼らですが、このアルバムは間違いなく多くのロックファンが惹かれるであろう傑作アルバムになっていました。それだけに今後は徐々に、彼らの名前を聴く機会も増えてくるのではないでしょうか。パンク好き、あるいはインダストリアルが好きなら、チェックしてほしいアルバムです。

評価:★★★★★


ほかに聴いたアルバム

On Sunset/Paul Weller

イギリスのロック兄貴、ポール・ウェラーのオリジナルアルバムとしては約2年ぶりとなる新作。直近作「In Another Room」ではエクスペリメンタル・ミュージックに挑戦した彼ですが、本作は、アコースティックな作風の哀愁感ある渋みのある楽曲がメインに。オリジナルアルバムとしての前作「True Meanings」の流れを受けたような作品になっているのですが、作風としてはかなり地味な印象も受けます。ただ、シンセを入れてくる楽曲があったりするのは、「In Another Room」の名残りでしょうか?ここらへんのちょっとした隠し味的な部分に、決して枯れていない、彼の現役感も感じたりするのがおもしろいところといえるかもしれません。

評価:★★★★

Paul Weller 過去の作品
22 DREAMS
Wake Up The Nation
Sonik Kicks
A Kind Revolution
True Meanings
In Anohter Room

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