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2020年8月 4日 (火)

深い音楽的素養を感じる

Title:2×20
Musician:花*花

2000年に「あ~よかった」と「さよなら 大好きな人」が大ヒットを記録し、その年の紅白歌合戦にも出演。一躍時の人となった女性デゥオ、花*花。ある世代以上の方にとっては懐かしく感じるのではないでしょうか。ただ、残念ながらその後は人気は下降気味に。さらに2003年に所属事務所の事業終了に伴い、活動休止状態になってしまっていました。

その後、2009年頃から再びインディーズにおいて活動を再開。以前にようなヒットには恵まれていませんが、継続的に活動を続け、2020年にはメジャーデビューから20年目に突入。それを記念してリリースされたのがこの2枚組のベストアルバムです。2003年までの活動と、2009年以降の活動でその活動時期が2つに分かれる彼女たちですが、2枚のCDでは、その時期にあわせて、1枚目は2003年まで、2枚目は2009年以降の作品が収録されています。

さて、花*花というと、同じ女性デゥオでよく比較されるのがKiroroでしょう。1998年に「長い間」でブレイクしたKiroroの2年後にブレイクしたのが彼女たち。同じようなシンプルなメロを歌うポップデゥオということもあり、よく比較されることが多いように思います。ただ、日常を描いたシンプルなポップスを歌うという共通項はあるものの、音楽性には違いのある両者。Kiroroというと、主に作詞作曲を手掛ける玉城千春の天性のメロディーセンスに寄る部分が多く、音楽性に関しては素人っぽい部分がある種の魅力にもなっているのですが、それに対して花*花は、2人とも甲陽音楽学院を出ているように、ある程度の音楽的な素養があり、そんな素養に裏打ちされた音楽性が大きな魅力になっているように感じます。

実際に、大ヒットを記録した「あ~よかった」も、ソウルミュージックからの影響を随所に感じられますし、インディーズ時代のシングル曲「赤い自転車」もムーディーに聴かせつつ、ジャズの要素も、その演奏から感じることが出来ます。その後もビッグバンド風の演奏を入れた「恋が育った休日」や、さらには「童神」のような沖縄民謡に挑戦したような曲も見受けられます。

この傾向は、2003年までの活動にも見られますが、2009年以降の活動からも顕著に感じます。Disc2の冒頭を飾る「キャンディ」はゴスペル風のポップスになっていますし、続く「いつも心に花を持て」はニューオリンズ風。「good night honey」はカントリーな楽曲に仕上げていますし、このDisc2に収録している「赤い自転車 新車ver.」では、よりジャズの要素を前に押し出したアレンジに仕上げています。ある意味、「あ~よかった」のブレイクにより、「売れ続ける」ことを意識しなければなかなかったであろう2003年以前の活動よりも、インディーズの自由さがゆえに、より彼女らしい、豊かな音楽性を背景とした楽曲が、Disc2には並んでいるような印象を受けました。

また、そんな様々な音楽性を楽曲に取り込みつつ、作風は至ってポップにまとまっているのも彼女たちの大きな魅力。そしてなにより「あ~よかった」「赤い自転車」でみられるように、素朴な日常を舞台としている、ほっこりと暖かいポップチューンが多いのも彼女たちの魅力に感じます。そして、その方向性は20年たった現在でも全く変わっていません。

ちなみにこのベストアルバム、ユニバーサルミュージックからのリリースとなっており、このベスト盤を機に、メジャーシーンに返り咲くのでしょうか。ここ最近の活動がインディーズということで、さほど目立ったものではなかったために、再びメジャーシーンに戻り、積極的な活動を行ってくれるのならうれしい限り。20年目を迎えて、新たな一歩を踏み出した彼女たち。これからの活躍に期待したいです。

評価:★★★★★

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