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2020年8月22日 (土)

軸足が定まってきた3枚目

Title:Women in Music Pt. III
Musician:HAIM

アメリカ・ロサンゼルス出身の姉妹3人によるガールズバンドHAIMの約3年ぶりとなるニューアルバム。新人ミュージシャンの登竜門ともいえるBBCの「Sound of 2013」で1位を獲得。デビューアルバム「Days Are Gone」はグラミー賞の「最優秀新人賞」に輝くなど、華々しいデビューを遂げた彼女たちも、これがタイトル通り3枚目となるニューアルバムになります。

HAIMというと、個人的にはいままでのアルバム、様々な音楽的要素を取り込んだ結果、少々中途半端な出来になってしまった、という印象があります。いずれのアルバムもロックを中心にR&Bやジャズなどの要素を取り込んだ多彩な音楽性を魅力にしつつ、デビュー作はエレクトロポップ色が強く、2枚目はR&B色が強くなりつつ、ただ結果として多彩な音楽性が中途半端な作風の原因になってしまったような印象を受けてしまいました。

そういう意味では今回の3枚目は、中途半端な作風が目立ってきたいままでの2枚と比べると、バンドとして軸足が定まってきたような印象を受けます。その方向性は、やはりバンドサウンドを主軸に据えたロック。とはいえ1曲目「Los Angels」はいきなりむせびなくようなサックスからスタートするなど、ジャズ的な要素を感じるのですが、バンドとして腰を落ち着けたような力強いサウンドを聴くことが出来ますし、続く「The Steps」もカントリー的な要素を取り入れたスタンダードなギターロックの作品に仕上げています。

その後も「Up From A Dream」や軽快なカントリーロックの「Don't Wanna」など、ギターロック色の強い作品が目立ちます。本編ラストとなる「FUBT」も、ミディアムチューンの聴かせるナンバーでありながらもギターサウンドを前に出した作品になっており、いままでの作品に比べると、ロックに軸足を置いてきた作品のように感じました。

もっとも一方では「3am」のような、メロウなR&Bチューンがあったり、「All That Ever Mattered」のような打ち込みを全面的に取り入れた作品があったりと、バラエティー豊かな作風も健在。そういう意味では、様々な音楽的要素を取り込んだというHAIMの魅力はしっかりと維持されています。

もちろん、ロック色が強くといっても基本的にはいずれの曲もメロディアスな歌がメインとなっており、ポップス色が強いという点もいままでとは変わりありません。そういう意味ではいままでのHAIMの魅力をしっかり保ちつつも、バンドとしての方向性をより定めてきた作品と言えるでしょう。3枚目にして、さらなる成長を感じさせるアルバムになっていました。いままでどうも中途半端に感じられたHAIMでしたが、そんな印象を払拭した良作でした。

評価:★★★★★

HAIM 過去の作品
DAYS ARE GONE
Something To Tell You

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