ちょっとレトロで懐かしさも
Title:What's Your Pleasure?
Musician:Jessie Ware
今回紹介するのは、イギリスはロンドン出身のシンガーソングライターの新作。2012年にリリースされたデビューアルバム「Devotion」が大きな話題を呼び、イギリスのナショナルチャートで5位を獲得するなど、いきなりの大ヒット。4枚目のアルバムとなる本作も含めて、いずれもイギリスチャートではベスト10ヒットを記録しており、本作では3位を記録するなど、人気のシンガーとしてその地位を確立しています。
日本では残念ながらイギリスの人気と反して、さほど知名度も高くない彼女。私も本作が彼女のアルバムとしてははじめて聴く作品となりますが、ただ、非常にポピュラリティーの高いインパクトある楽曲が並んでおり、しっかりPRすれば日本でも十分なファンを獲得できるのでは、と思うような魅力的な作品に仕上がっていました。
本作に関して、まず前半はエレクトロなサウンドでリズミカルに聴かせる楽曲が並びます。アルバムのスタート「Spotlight」では、まずストリングスと彼女ののびやかな歌声でメロウな雰囲気でスタートしますが、すぐに打ち込みのリズムが入ってきて、リズミカルなポップが楽しめる楽曲に。続くタイトルチューン「What's Your Pleasure?」もシンセのリズムが心地よいダンサナブルなトラックに、彼女のウィスパー気味の清涼感あるボーカルが心地よいポップチューンに仕上がっています。
その後もファンキーなリズムが心地よい「Ooh La La」など軽快なナンバーが続くのですが、もうひとつ、彼女の楽曲で大きなポイントになるのは、全体的に漂う80年代的なレトロ感。特にチップチューン気味なサウンドがユニークな「Soul Control」やそれに続く「Save A Kiss」など、サウンド的に懐かしさを感じさせるチープさを感じる楽曲になっており、ともすればアラフィフ世代あたりには懐かしく、若い世代には新しい、そんな作風になっているようにも感じました。
一方、後半になると楽曲の雰囲気が変わります。「In Your Eyes」ではリズムは打ち込みですが、ストリングスが入り、伸びやかでメロウな歌声を聴かせるナンバーに。さらに「Step Into My Life」「Read My Lips」はいずれも透明感あるボーカルでメロウに美しく聴かせるソウルチューンに仕上げています。
前半もちょっと色気も感じる美しい歌声が大きな魅力だったのですが、後半はその歌声の魅力をさらに押し出したような楽曲に。さらに、どこか感じる80年代風のレトロな雰囲気も変わりません。ダンサナブルでリズミカルな側面を前面に押し出した前半に、メロウな作風を前面に押し出した後半。彼女の魅力を異なる側面から味わえることの出来る構成になっていました。
そんなレトロな要素を要所要所に感じつつも、全体としてはいい意味で耳障りのよいポップチューンになっている傑作。これはイギリス本国で大人気なのも納得。日本でももっともっと注目されてもいいと思うんだけどなぁ。比較的、広いリスナー層にお勧めできるポップアルバム。特にアラフォー、アラフィフ世代だと、どこか感じる懐かしさにはまってしまうかもしれません。
評価:★★★★★
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