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2020年8月

2020年8月31日 (月)

戦前の珍盤・奇盤たち

Title:レコード供養~復刻されない謎の音源たち

戦前のSP盤レコードをユニークな視点から企画・選曲し、復刻させているレーベル、ぐらもくらぶ。いままでも非常にユニークなコンセプトによる選曲でのオムニバス盤を数多くリリースしており、戦前の音楽に興味のあるような音楽リスナーを楽しませてくれました。当サイトでもそんなアルバムを何度か取り上げてきましたが、今回の企画はそんな中でもずば抜けてユニークな企画。今回のアルバムでは、なんでこんなSP盤がリリースされたんだろうか、というような、通常の復刻企画ではまず100%無視されるような、珍盤・奇盤をあえてセレクトして復刻しています。まさにレコード供養という名前にふさわしい、こういう企画でもなければ、まずは復刻されないような音源を復刻し供養した、そんな1枚になっています。

まずアルバムの序盤、堕落した寺の坊主を痛烈に皮肉ったという「流行小唄『お経都々逸・からくり都々逸』」や、当時のゴシップネタを歌にした「独唱『Mamita mia 私のマミータ」あたりは、社会性もあり、発売された時代背景もわかるような内容。「珍盤」ではあるものの、社会学的にも興味をそそられる曲といえる楽曲になっています。

ただ収録曲はそこからさらに謎の珍盤・奇盤に突入していきます。「流行小唄『万里の長城(サノサ節)』」は、どうも素人による録音のようですし、「テスト盤『マイク・テスト風景①』」「テスト盤『マイク・テスト風景②』」はタイトル通り、マイクテストの模様を収録した謎な音源。さらに「合奏『おもちゃの交響楽』」は、杉並第一国民学校(現杉並第一小学校)の児童の演奏会の風景を録音した記念録音と関係者以外にはいまひとつ興味を持てないような録音になっています。いまみたいに誰でも気軽に、それこそスマホでも録音・録画できるような今と異なり、このような記念録音はSP盤という形でリリースして残さなければならない時代性も感じます。

さらになんといっても奇妙なのが、このアルバムの後半に3トラックにかけて収録されている「雑音レコード『ラヂオに混入する雑音』」なる録音。普通の音楽の途中にけたたましい雑音が混入されるという、到底、鑑賞に堪え得ない録音なんですが、これは、ラジオに影響を与える様々な要因によって、ラジオにどのような雑音が混じるのかを実例として取り上げたもの。要するに、ラジオに雑音が混じった場合には、このレコードを参考にして、何か原因なのか探ってね、という実用性の高いSP盤だそうで、いまとなってはまず復刻されないであろう奇妙な音源となっています。

そして極めつけの珍盤と言えるのが「講演『霊界通信』」で、こちらは世にも珍しい霊媒実験の記録だそうで、実際に霊媒が行われて、実験者と死者(とされる人)との会話が記録しています。こういうカルト的なものは、こんな昔からあったんだな、ということを感じるのですが、珍妙な企画ながらも、じゃあ、今の時代、こういうCDがリリースされ得ないかというとそんなこともなく…良くも悪くも時代を越えて変わらないものも感じてしまいます。

一方で、今の時代からしても非常に興味深い録音もあり、それが「純情美談『忠犬ハチ公(ハチ公の鳴き声)』」で、こちらは今でもおなじみの忠犬ハチ公の物語が語られる内容なのですが、なんと録音の最後にハチ公の鳴き声が!ちなみにかつて、フジテレビ系バラエティー「トリビアの泉」にも取り上げられたことのあるような、ある意味「知名度の高い」録音音源なんですが、こういう音源がしっかりと復刻されたのはうれしい話。さすがぐらもくらぶ、といった感じでしょうか。

ともかく、通常であればまず復刻されないようなSP盤が収録されている今回のオムニバス盤。正直言って、通常の鑑賞には適さないようなトラックがほとんどで、そういう意味では万人向けではありません。評価もそういう意味でひとつマイナスで。ただ、企画としては非常にユニークで、そしてある種の資料的価値もある、興味深い好企画であることは間違いありません。興味がある方は是非。こういう企画はやはり楽しいですね。なにげにとても楽しめた1枚でした。

評価:★★★★


ほかに聴いたアルバム

前夜 ピチカート・ワン・イン・パースン/PIZZICATO ONE

小西康陽のソロプロジェクト、PIZZICATO ONEのニューアルバムは、昨年の10月11日と15日にビルボードライブ東京と大阪で行われたライブの模様を収録したライブ盤。ちなみにライブのMCで「こんな状況の中」とか「早く帰りたい」とか言っているのですが、これは10月11日の東京でのライブが、東京を襲った台風19号最接近の前夜に行われたためのようです。

このライブ盤の最大の特徴は、なんと小西康陽自らがボーカルを取ったアルバムであるという点。ピチカートファイブ時代の作品から自身のソロ作までを自らのボーカルでカバーしたアルバムになっています。その小西康陽のボーカルは、低音で渋く、ボーカリストとして意外と味があって悪くない…と思いつつも、一方、やはり野宮真貴ボーカルを前提としたピチカートファイヴの曲に関してはかなりの違和感が…。

全体的には、やはりピチカートの曲は野宮真貴ボーカルの方がいいかなぁ、なんてことを思いつつも、これはこれで味のある音源になったようにも思います。貴重な記録音源といった印象も受けるライブ盤でした。

評価:★★★★

小西康陽(PIZZICATO ONE) 過去の作品
ATTRACTIONS! KONISHI YASUHARU Remixes 1996-2010
11のとても悲しい歌(PIZZICATO ONE)
わたくしの二十世紀(PIZZICATO ONE)
なぜ小西康陽のドラマBGMは テレビのバラエティ番組で よく使われるのか。
井上順のプレイボーイ講座12章(小西康陽とプレイボーイズ)

REVIEW 2.5 〜BEST OF GLAY〜/GLAY

先日、GLAYのベストアルバム「REVIEW II」がリリースされましたが、本作は、その「REVIEW II」に収録されなかったものの、追加で入れるのならば、というコンセプトで選曲された配信限定でのベスト盤。全57曲入りのベスト盤から漏れた曲なので、一般的によく知られた曲は収録されておらず、「知る人ぞ知る」的な曲も多いものの、基本的にいつものGLAYといったスタイルの曲ばかりで、新鮮な驚きみたいなものは皆無。良くも悪くもリスナーがGLAYとしてイメージする曲から一歩も乖離しないあたりが彼ららしさなんだろうなぁ、とも思ったりもします。

評価:★★★★

GLAY 過去の作品
GLAY
JUSTICE
GUILTY

MUSIC LIFE
SUMMERDELICS
NO DEMOCRACY
REVIEWII~BEST OF GLAY~

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2020年8月30日 (日)

激しいビートとシャウトが特徴的

Title:The Passion Of
Musician:Special Interest

The-passion-f

今回紹介するバンドも、日本では現時点でほとんど知名度のないバンドでしょう。アメリカはニューオリンズ出身のバンド、といっても一般的な「ニューオリンズ」のイメージからするとかなりかけ離れた感じもあるかもしれません、4人組のポストパンクバンド、Special Interest。知名度には海外でもまだ知る人ぞ知るバンドであるようで、Wikipediaなどで詳しい情報が入手できませんでした…。ただ、2018年にデビューアルバムをリリースしたばかりのようで、バンドとしてもまだデビュー間もないようです。

このバンドの特徴的なんはメンバーで、ボーカル、ギター、ベースというおなじみのラインナップに加えて、ドラムスではなく、ドラムはプログラミングというスタイルという点。そのため、リズムは終始、へヴィーな打ち込みのビートが続きます。本作も1曲目のイントロナンバーに続く事実上の1曲目「Disco III」はいきなりへヴィーな打ち込みのビートからスタート。さらにそこに警告音のようなノイジーなギターのリフ、さらにはシャウトするボーカルが加わり楽曲が展開していくナンバー。まずは打ち込みのビートに耳を惹かれます。

この打ち込みのヘヴィーなリズムに歪んだギターサウンドとシャウトするボーカルが重なりハイテンポに進んでいくというスタイルは基本的に彼らの楽曲の共通点。全11曲入りのアルバムなのですが、このスタイルが終始貫かれています。ポストパンクとカテゴライズされる彼らですが、スタイル的にはインダストリアルに近いサウンドに感じます。そのため、楽曲のバリエーションは決して多いありませんし、似たような曲は少なくありません。ただ30分弱という短さと楽曲の勢いもあり、ダレることなく最後まで一気に聴き切れてしまいますし、なによりもハイテンポで力強い打ち込みのビートとへヴィーなバンドサウンド、さらにパッショナブルなボーカルのシャウトにより、最後まで緊張感があり耳の離せないアルバムに仕上がっていました。

ただ、バリエーションに乏しいとはいっても、ビートをこれでもかというほど強調した「Disco III」から一転し、シングル曲でもある「Don't Kiss Me in Public」はビート感以上に疾走感が強いインパクトを持ったナンバーになっていますし、「All Tomorrow's Carry」はThe Velvet Undergroundの「All Tomorrow's Party」を彷彿とさせるタイトルですが、楽曲的にもどこか、VUを思い出させるようなダウナー気味なメロディーとノイジーなサウンドの楽曲になっています。

さらに中盤では「Passion」のようなスペーシーなインスト曲を挟んできており、アルバムの中ではちょうど箸休めのような構成になっているのもインパクトに。そこからの後半も「Head」「Tina」とハイテンポで疾走感あふれる楽曲を一気に繰り広げ、最後まで勢いのあるアルバムに仕上げています。最初から最後まで、耳の離せないアルバムになっていました。

そんな訳で、日本どころか世界的にもまだまだ知名度の低い彼らですが、このアルバムは間違いなく多くのロックファンが惹かれるであろう傑作アルバムになっていました。それだけに今後は徐々に、彼らの名前を聴く機会も増えてくるのではないでしょうか。パンク好き、あるいはインダストリアルが好きなら、チェックしてほしいアルバムです。

評価:★★★★★


ほかに聴いたアルバム

On Sunset/Paul Weller

イギリスのロック兄貴、ポール・ウェラーのオリジナルアルバムとしては約2年ぶりとなる新作。直近作「In Another Room」ではエクスペリメンタル・ミュージックに挑戦した彼ですが、本作は、アコースティックな作風の哀愁感ある渋みのある楽曲がメインに。オリジナルアルバムとしての前作「True Meanings」の流れを受けたような作品になっているのですが、作風としてはかなり地味な印象も受けます。ただ、シンセを入れてくる楽曲があったりするのは、「In Another Room」の名残りでしょうか?ここらへんのちょっとした隠し味的な部分に、決して枯れていない、彼の現役感も感じたりするのがおもしろいところといえるかもしれません。

評価:★★★★

Paul Weller 過去の作品
22 DREAMS
Wake Up The Nation
Sonik Kicks
A Kind Revolution
True Meanings
In Anohter Room

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2020年8月29日 (土)

ファン投票により選曲(上位のとは言っていない)

Title:harvest
Musician:渡辺美里

今年、デビュー35周年を迎えた渡辺美里のオールタイムベスト。2005年にオールタイムベスト「M・Renaissance〜エム・ルネサンス〜」をリリースしているので、それ以来のオールタイムベストとなります。その間に目立ったヒット曲もなかったので、またオールタイムベスト?という感じもするのですが、下に書いた岡本真夜にくらべると、かなりマシといった感じで…。ちなみにオリコン週間アルバムランキングでは3位を獲得。ベスト3入りは1995年の「Live Love Life」以来、ベスト10入りも、そのオールタイムベスト「M・Renaissance〜エム・ルネサンス〜」以来という結果になり、一般的な印象ではすっかり「過去の人」になってしまった感もあるのですが、ただ、それでも根強い人気を感じさせる結果となりました。

さて今回のベストアルバム、全42曲でうち2曲が新曲という構成になっているのですが、選曲に関しては「ファン投票により選曲」と謳っています・・・・・・が、正直言って、選曲された40曲に関して「これ、本当にベスト40に入って来たの??」とかな~り疑問に感じる曲が少なくありません。逆に、例えばライブの定番「JUMP」やキネバラの傑作「さくらの花の咲くころに」のような、ファン投票で確実に上位に入ってきそうな曲が収録されていません。特に彼女の人気曲やライブの定番曲というと、彼女の活動のひとつの区切りとなった1992年にリリースされたセルフカバーアルバム「HELLO LOVERS」以前の曲がほとんど。実際、ファンリクエストを基に選曲した、という前回のオールタイムベスト「M・Renaissance〜エム・ルネサンス〜」のDisc1は、ほとんどが「HELLO LOVERS」以前の曲が収録されています。

しかし今回のベスト盤については、「HELLO LOVERS」以降の曲、特にここ最近の曲も目立ちます。「ココロ銀河」「始まりの詩、あなたへ」とか、決して悪い曲ではないと思うのですが、率直に言って、ベスト40にはどう考えてもランクインしないのではないか??と思ってしまいます。実際、「ファン投票により」と言っているんですが、ファン投票の結果はどこにも公表されていませんし、「ファン投票」の結果は参考にしているのでしょうが、ベスト40を選んでいるのではないんだろうなぁ…という選曲になっています。

そのため結果として、前述の「JUMP」や「さくらの花の咲くころに」、あるいはこちらもライブの大定番「GROWIN'UP」などが未収録になっているのは、非常に残念に感じます。ただ一方で、おそらくベスト40入りはしていないかもしれないものの、それなりに上位に食い込んできた、いわば「知る人ぞ知る」的な曲が少なからず収録されており、もちろん(新曲をのぞいて)初耳という曲はなかったのですが、今回久々に聴いてみて、こんなにいい曲だったっけ?と再認識した曲も少なくありません。

具体的に言えば「SHOUT(ココロの花たば)」「はじめて」など、久しぶりに聴いてその良さを再認識させられましたし、小室哲哉が提供した曲の中で、おそらく半分くらい忘れ去られているような「青空」も収録されており久々に聴いたのですが、小室哲哉のメロディーメイカーとしての素晴らしさも再認識させられました。「悲しいボーイフレンド」なんかも、知る人ぞ知る的な曲ながら、私も好きな曲だったのでうれしい選曲。逆に「PAJAMA TIME」は今回、Dear My Songs Versionということで2008年にリリースされたセルフカバーアルバム「Dear My Songs~うたの木~」に収録されたバージョンが収録されているのですが、これはオリジナルの方がよかったなぁ…。

個人的には、渡辺美里の初心者向けとしては、先のオールタイムベスト「M・Renaissance〜エム・ルネサンス〜」か、2013年にリリースされたベスト盤「美里うたGolden Best」の方が最適のようにも思うのですが、これはこれで彼女の魅力がしっかりつまっていましたし、知る人ぞ知る的な曲の魅力も再認識できたベスト盤だったように感じます。ただひとつ残念だったのは初回盤に付属のDVD。ライブのダイジェストや彼女の歴史を振り返る映像が収録されているものの、いまひとつ中途半端な内容で、長さもわずか30分強…以前の「Lovin' You」や「ribbon」のリメイク盤の付属DVDもそうだったのですが、DVDの収録内容がいまひとつ出し惜しみ感があってケチ臭いんだよなぁ…。通常盤との価格差が3,000円以上あるんだから、ライブ映像にしてもフル収録するとか、もうちょっとボリューム感のある内容にしてほしいんですが…。

評価:★★★★★

渡辺美里 過去の作品
Dear My Songs
Song is Beautiful
Serendipity
My Favorite Songs~うたの木シネマ~
美里うたGolden BEST
Live Love Life 2013 at 日比谷野音~美里祭り 春のハッピーアワー~

オーディナリー・ライフ
eyes-30th Anniversary Edition-
Lovin'you -30th Anniversary Edition-
ribbon-30th Anniversary Edition-
ID


ほかに聴いたアルバム

岡本真夜25th Anniversary BEST ALBUM~Thanks a million~/岡本真夜

デビュー25周年を記念してリリースされた岡本真夜のオールタイムベストアルバム…なのですが、5年前の20周年の時も同じくオールタイムベストをリリースしており、さすがに乱発しすぎでは?全16曲入りなのですが、うち6曲も、その5年前のオールタイムベスト以降の曲となっており、明らかにバランスが悪すぎ。前作とのかぶりを避けるために選曲も若干チグハグですし…。中途半端なベストを散発するよりは、もうちょっと本当の意味でのオールタイムベストをリリースして欲しいなぁ。

評価:★★★

岡本真夜 過去の作品
seasons
Crystal Scenery II
My Favorites
Close To You
Tomorrow
岡本真夜 20th Anniversary ALL TIME BEST~みんなの頑張るを応援する~
Love Story
Happy Days
笑顔のおまじない

Traveler-Instrumentals-/Official髭男dism

現在、大ヒット中のOfficial髭男dismのアルバム「Traveler」のインスト盤。配信限定でリリースされているのですが、インストで聴くと彼らの音楽が良くも悪くも、あくまでも「歌」ありきだと感じさせられます。基本的にはカラオケ以上でも以下でもなく、大ヒットに便乗して少しでも小銭を稼ごうという、ちょっとセコイ感じもするアルバム。ただインストで聴くと、そことなく感じるソウルやR&Bからの影響に彼らの音楽的ルーツを感じる部分もあり、そういう意味では収穫もなきにしもあらず、かも。

評価:★★★

Official髭男dism 過去の作品
エスカパレード
Traveler
TSUTAYA RENTAL SELECTION 2015-2018
Official髭男dism one-man tour 2019@日本武道館


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2020年8月28日 (金)

ちょっとレトロで懐かしさも

Title:What's Your Pleasure?
Musician:Jessie Ware

今回紹介するのは、イギリスはロンドン出身のシンガーソングライターの新作。2012年にリリースされたデビューアルバム「Devotion」が大きな話題を呼び、イギリスのナショナルチャートで5位を獲得するなど、いきなりの大ヒット。4枚目のアルバムとなる本作も含めて、いずれもイギリスチャートではベスト10ヒットを記録しており、本作では3位を記録するなど、人気のシンガーとしてその地位を確立しています。

日本では残念ながらイギリスの人気と反して、さほど知名度も高くない彼女。私も本作が彼女のアルバムとしてははじめて聴く作品となりますが、ただ、非常にポピュラリティーの高いインパクトある楽曲が並んでおり、しっかりPRすれば日本でも十分なファンを獲得できるのでは、と思うような魅力的な作品に仕上がっていました。

本作に関して、まず前半はエレクトロなサウンドでリズミカルに聴かせる楽曲が並びます。アルバムのスタート「Spotlight」では、まずストリングスと彼女ののびやかな歌声でメロウな雰囲気でスタートしますが、すぐに打ち込みのリズムが入ってきて、リズミカルなポップが楽しめる楽曲に。続くタイトルチューン「What's Your Pleasure?」もシンセのリズムが心地よいダンサナブルなトラックに、彼女のウィスパー気味の清涼感あるボーカルが心地よいポップチューンに仕上がっています。

その後もファンキーなリズムが心地よい「Ooh La La」など軽快なナンバーが続くのですが、もうひとつ、彼女の楽曲で大きなポイントになるのは、全体的に漂う80年代的なレトロ感。特にチップチューン気味なサウンドがユニークな「Soul Control」やそれに続く「Save A Kiss」など、サウンド的に懐かしさを感じさせるチープさを感じる楽曲になっており、ともすればアラフィフ世代あたりには懐かしく、若い世代には新しい、そんな作風になっているようにも感じました。

一方、後半になると楽曲の雰囲気が変わります。「In Your Eyes」ではリズムは打ち込みですが、ストリングスが入り、伸びやかでメロウな歌声を聴かせるナンバーに。さらに「Step Into My Life」「Read My Lips」はいずれも透明感あるボーカルでメロウに美しく聴かせるソウルチューンに仕上げています。

前半もちょっと色気も感じる美しい歌声が大きな魅力だったのですが、後半はその歌声の魅力をさらに押し出したような楽曲に。さらに、どこか感じる80年代風のレトロな雰囲気も変わりません。ダンサナブルでリズミカルな側面を前面に押し出した前半に、メロウな作風を前面に押し出した後半。彼女の魅力を異なる側面から味わえることの出来る構成になっていました。

そんなレトロな要素を要所要所に感じつつも、全体としてはいい意味で耳障りのよいポップチューンになっている傑作。これはイギリス本国で大人気なのも納得。日本でももっともっと注目されてもいいと思うんだけどなぁ。比較的、広いリスナー層にお勧めできるポップアルバム。特にアラフォー、アラフィフ世代だと、どこか感じる懐かしさにはまってしまうかもしれません。

評価:★★★★★

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2020年8月27日 (木)

3週目も勢い止まらず

今週のHot Albums

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

3週目も圧倒的な強さを見せつけました。

今週も先週から変わらず米津玄師のアルバム「STRAY SHEEP」が1位を獲得。これで3週連続の1位。今週もCD販売数、ダウンロード数、PCによるCD読取数全て1位獲得という圧倒的な強さを見せています。オリコン週間アルバムチャートでも13万5千枚を売り上げて今週も1位獲得。その勢いはまだまだ続きそうです。

2位はRAISE A SUILEN「ERA」が初登場。アニメやゲームなどによるメディアミックスプロジェクトBanG Dream!から登場した声優によるバンドプロジェクトのデビューアルバム。CD販売数2位、ダウンロード数4位、PCによるCD読取数5位。オリコンでは初動売上2万8千枚で2位初登場。

3位は女性シンガーAimer「花の唄/I beg you/春はゆく」がランクイン。表題の3曲+バージョン違いの計5曲と、DVDが収録された完全生産限定盤。収録曲を並べただけのタイトルといい、シングルっぽいのですが、公式サイトのDiscographyを見てもアルバム扱いらしいです。CD販売数3位、ダウンロード数7位、PCによるCD読取数28位。オリコンでは初動1万3千枚で4位初登場。直近作は2枚同時リリースとなった「Sun Dance」「Penny Rain」で、それぞれ初動3万7千枚(2位)、3万6千枚(3位)でしたので、どちらからもダウンという結果になっています。

続いて4位以下の初登場盤です。まず4位にるぅと「僕は雨に濡れた」がランクイン。You Tubeなどでの配信動画で活動しているユニット、すとろべりーぷりんすのメンバーによるソロでのEPで、配信限定でのリリース作。ダウンロード数で2位を獲得し、総合順位も4位にランクインしました。

5位には男性声優下野紘「WE GO!」が初登場。CD販売数4位、ダウンロード数42位。オリコンでは初動売上1万2千枚で5位初登場。前作「Color of Life」の7千枚(8位)よりアップしています。

8位初登場は女性アイドルグループBiS「ANTi CONFORMiST SUPERSTAR」。7曲入りのEP。CD販売数5位、ダウンロード数20位、PCによるCD読取数67位。オリコンでは初動売上8千枚で7位初登場。前作「LOOKiE」(6位)から横バイ。

初登場最後は9位に、女性声優楠木ともり「ハミダシモノ」がランクイン。CD販売数6位、ダウンロード数13位、PCによるCD読取数47位。オリコンでは初動売上9千枚で6位初登場。本作がデビュー作となります。

さて今週はベスト10返り咲き組も1枚。6位に藤井風「HELP EVER HURT NEVER」が先週の22位からランクアップし、9週ぶりにベスト10返り咲き。8月16日に放送されたテレビ朝日系「関ジャニ 完全燃SHOW」で特集された「今知っておかないとヤバいアーティスト」で特集されたことがきっかけの模様。ダウンロード数が14位から3位に一気にランクアップしたほか、CD販売数も26位から11位、PCによるCD読取数も48位から21位と急上昇し、一気にベスト10に返り咲いてきました。

またロングヒット組では先週、2位に一気にランクアップしたOfficial髭男dism「Traveler」は今週7位にダウン。CD販売数は2位から9位、ダウンロード数も3位から9位にランクダウンしています。また、先週ベスト10に返り咲いたKing Gnu「CEREMONY」は今週16位にダウン。NiziU「Make you happy」は10位から15位にダウンし、こちらは連続ベスト10記録は7週で幕を下ろしました。

今週のHot Albumsは以上。チャート評はまた来週の水曜日に!

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2020年8月26日 (水)

ジャニーズ系 vs AKB系

今週のHot100

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

最近、数多くのロングヒット曲の影になってしまい、特にコロナの影響でCDリリースが相次いで延期になっていた影響ですっかり目立たなくなっていたアイドル系ですが、今週は久々にジャニーズ系とAKB系が並んでランクインしたチャートになりました。

まず1位を獲得したのがジャニーズ系。関ジャニ∞「Re:LIVE」が1位獲得。「がんばろう日本!We are OSAKA」テーマソング。CD販売数及びTwitterつぶやき数1位、PCによるCD読取数2位、ラジオオンエア数50位。オリコン週間シングルランキングでは初動売上32万5千枚で1位初登場。前作「友よ」の26万枚(1位)よりアップしています。

2位は大阪を拠点とするAKB48のアイドルグループNMB48「だってだってだって」が初登場。1位2位ともに大阪に拠点を持つアイドルグループが並びました。CD販売数2位、PCによるCD読取数13位、Twitterつぶやき数36位。オリコンでは初動売上19万7千枚で2位初登場。前作「初恋至上主義」の16万6千枚(1位)よりアップ。

3位はYOASOBI「夜に駆ける」が先週からワンランクダウンながらもベスト3をキープ。ストリーミング数及びYou Tube再生回数は先週から変わらず今週も1位をキープしています。

続いて4位以下の初登場曲です。まずは4位に韓国の男性アイドルグループTOMORROW×TOGETHER「Drama」が先週の80位からCDリリースに合わせて大きくランクアップしています。CD販売数3位、Twitterつぶやき数8位、PCによるCD読取数25位。オリコンでは初動売上9万2千枚で3位初登場。前作「MAGIC HOUR」の8万4千枚(2位)よりアップしています。

7位にはこちらも韓国の男性アイドルグループBTS「Dynamite」が初登場。配信のみでのリリースで、ダウンロード数2位、ストリーミング数及びYou Tube再生回数7位、Twitterつぶやき数9位、ラジオオンエア数98位にランクインしています。

今週の初登場曲は以上ですが、今週もロングヒット曲ががんばっています。まず米津玄師「感電」。今週、見事7週目のベスト10ヒットとなったものの、順位は3位から5位にダウン。ダウンロード数が2位から3位、You Tube再生回数も2位から5位にダウン。ただストリーミング数は2位をキープしているほか、ラジオオンエア数も1位をキープ。このまま下落傾向となるのか、持ち直すのか、今後に注目されます。ちなみに先週までベスト10に返り咲いていた「Lemon」は今週15位にダウン。ベスト10返り咲きは2週で幕を下ろしました。

瑛人「香水」は4位から6位にダウン。ただストリーミング数は3位をキープしているほか、You Tube再生回数は6位から2位にアップし、まだまだ根強い人気を感じます。同時期にロングヒットを続けている「夜に駆ける」と比べると、最近、いろいろなところで話題を聴くこの曲。シンプルなメロで良くも悪くもインパクトがあるだけに、高い支持を受ける一方でアンチも少なくない模様。ただ、そんな賛否両論含めて、今年を代表するヒット曲になったのは間違いなさそうです。

女性アイドルグループとしては珍しくロングヒットとなっているNiziU「Make you happy」は6位から8位にダウン。ストリーミング数が5位から4位にアップしている一方、You Tube再生回数は3位から4位にダウン。ちなみにZeebraの不倫報道騒動で、彼の娘がNiziUのメンバーだとはじめて知りました。

9位にはあいみょん「裸の心」が先週の7位から2ランクダウン。ダウンロード数が6位から7位にダウンしたものの、ストリーミング数が7位から5位にアップ。順位的には上位になかなか食い込めないのですが、しぶとい人気を続けています。

さらに先週、ベスト10に返り咲いたOfficial髭男dism「I LOVE...」は今週も10位にランクイン。通算28週目のベスト10ヒットとなりました。ただし、「Pretender」は今週12位にダウン。「HELLO」も11位にダウンしており、特に「HELLO」はベスト10はわずか2週のみという厳しい結果となっています。

今週のHot100は以上。明日はHot Albums!

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2020年8月25日 (火)

2作目にしてさらなる進化

Title:Morning Sun
Musician:岡田拓郎

2012年の結成後、2013年のアルバム「森は生きている」が大きな話題を呼び、一躍注目バンドとなった森は生きている。しかし、2015年にわずか2枚のアルバムを残し、わずか3年という短い活動期間で解散してしまいました。しかし、その中心人物であり作詞作曲を手掛ける岡田拓郎がその後もソロ活動を続け、大きな話題となっています。そして本作は、そんな彼の2枚目のアルバムとなります。

前作「ノスタルジア」はフォーク、ソフトロック、ジャズなどの要素を取り入れた、森は生きているの延長線上にあるアルバムになっていました。そしてそれと同時に個人名義ということもあり、非常にパーソナルな雰囲気のアルバムになっていたように感じました。具体的に言うと、ボーカルトラックが他のサウンドにまぎれ、インストアルバムのような感触を受ける作品になっており、良くも悪くも少々とっつきにくさを感じる、ある意味、「通向けのアルバム」といった印象を受けました。

そんな前作に比べると、今回のアルバムはボーカルトラックを前に出して、より「歌モノ」的な部分を強調した、いい意味で聴きやすいアルバムになっていたように感じます。アルバムはいきなりタイトルチューンの「Morning Sun」からスタートするのですが、フォーキーな雰囲気のソフトロックに仕上がっているこの曲。ハイトーンボイスのボーカルがちょっと切なく、耳を惹くポップチューンに仕上がっています。

ポップな歌モノという点で耳を惹くのが中盤の「Shades」でしょう。エレピが静かにリズムを刻む楽曲なのですが、メランコリックなメロディーラインが実に美しいポップチューン。メロディーメイカーとしての優れた才能がより表に出ている楽曲に仕上がっています。

前半は基本的にファルセットボイスで静かに聴かせるソフトロックチューンが並びます。特に「Nights」「Birds」ようなドリーミーな曲も目立ち、非常に夢見心地で美しいサウンドを体感できるような楽曲が続いていきます。ただ、その雰囲気に少々変化があらわれるのが終盤7曲目から。「Stay」はピアノも入ったメランコリックなサウンドは前半と同様ですが、ノイジーなギターサウンドがそこに加わり、よりロックなテイストの強い作品となっています。さらにアルバムの印象がグッと変わるのがラスト「New Morning」。11分にも及ぶ長尺の曲なのですが、ゆっくりと展開していくソフトロックな作風の中にヘヴィーなギターノイズが加わり、全体的にはサイケロックの要素も強い作風に。このラスト2曲は、岡田拓郎流のロックともいえる作品が並び、アルバムは幕を下ろします。

基本的に前作よりもいい意味で聴きやすくなり、かつラスト2曲、特に最後のサイケ色が強い「New Morning」ではタイトル通りの新しい岡田拓郎の方向性も感じさせる作品に。前作でも傑作を聴かせてくれた彼ですが、ソロ2作目でさらなる進化を感じます。彼の活動からはこれからも目が離せなさそうです。

評価:★★★★★

Title:都市計画(Urban Planning)
Musician:Okada Takuro+duenn

で、そんな岡田拓郎が、2ndアルバムに先立ち、サウンド・アーティストduennと組んでリリースした、配信限定のコラボアルバム。「duennの作るメロディーのみでアルバムを完成させる」というコンセプトの元に作成されたアルバムだそうで、構想2年。しっかりとした時間をかけてリリースされたのが今回のアルバム、だそうです。

全25分という短い中に全16曲が収録された今回のアルバム。基本的には音数の少ないエレクトロサウンドで構成されたアンビエントのアルバム。ドリーミーなサウンドが心地よいのですが、時には美しいメロディーラインが流れてきたり、時には散文的な音のリズムを楽しんだりと、16曲それぞれに音の世界を楽しめるようなそんなアルバムに仕上がっています。どこか無機質な感覚があるのも、タイトル通り、都市の音楽をイメージしているのでしょうか。

比較的短い作品ということもあって、BGM的にも、またはしっかりと聴きこんでも楽しめるような作品に仕上がっていたと思います。オリジナルアルバムとはまた異なる、岡田拓郎とduennの魅力を感じさせるアルバムでした。

評価:★★★★★

岡田拓郎 過去の作品
ノスタルジア(Okada Takuro)


ほかに聴いたアルバム

オリオンブルー/Uru

最近、女性シンガー、それも経歴を隠して匿名性を加味したような女性シンガーの活躍が目立ちます。彼女のそんなシンガーの一人。経歴等は一切不明で「謎だらけのシンガー」と言われているようですが、そういう匿名性の高いシンガーはなかなか固定ファンもつきにくく、短命になりがちな感もあるだけに戦略としては疑問なのですが…まあ、ある程度のタイミングで経歴を公表するのでしょうが。

そんな彼女のオリジナルアルバムですが、透明感がありつつも、一方ではちょっとくすんだ感もある伸びやかな歌声で歌われる感情をこもったボーカルでしんみり聴かせるスタイル。タイプ的には鬼束ちひろが、もうちょっと淡々とした歌い方をした感じでしょうか。ボーカリストとしてはそれなりに魅力的ですが、一方楽曲は平凡なJ-POP的な曲が多く、最初はよくても、後半、徐々に飽きてしまいました。ただ一方で秀逸だったのは初回盤でボーナスディスクで収録されているカバー曲集。こちらは彼女のボーカリストとしての魅力が存分に発揮されており、非常に聴き入ってしまいました。特にthe pillowsの「Funny Bunny」のカバーが秀逸。アクエリアスのCMソングとして起用された段階で話題になったのですが、心に染み入るような歌声によるカバーが大きな魅力となっています。

基本的に全曲彼女が作詞作曲をしているため、ソングライターとしての課題はまだまだありそう。一方でボーカリストとしては魅力的なのは間違いなさそうです。そういう意味で今後のソングライターとしての成長に期待といった感じでしょうか。ほかの作家陣の曲を取り入れるという方法も有効的な感じもしますが…。

評価:★★★★

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2020年8月24日 (月)

エキゾチックで独特のグルーヴ感を醸し出す。

Title:MORDECHAI
Musician:Khruangbin

今回紹介するのは、アメリカはテキサス出身の3人組バンド。ミュージシャン名はちょっと読みにくいのですが、これで「クルアンビン」と読むそうです。2018年には日本ツアーも実施し、大きな評判を呼んだほか、その年にはフジロックにも出演。FIELD OF HEAVENのトリを飾り、大きな評判を呼んだそうです。

ミュージシャン名もちょっと奇妙なこのグループなのですが、その音楽性も非常に独特。ジャンルの説明として「タイ式ファンクグループ」という紹介をされているのですが、そのとおりのタイミュージックからの影響や、さらに東南アジアや中東の音楽に影響を受けたというエキゾチックな香りただようサウンドが大きな特徴となっています。

ただ、もともと「タイ式ファンクグループ」と言われても、じゃあ「タイ式ファンク」とはどのような音楽なのか、エキゾチックな印象を受けるものの、いまひとつ具体的なイメージがわきません。個人的にこのアルバムを聴いてまず感じたのは、80年代あたりのフィリーサウンドを取り入れつつ、60年代あたりのちょっとレトロさも感じるようなサイケデリックのサウンドを取り入れ、さらにはエキゾチックな要素を加味したサウンドといった感じでしょうか。アルバムの1曲目になる「First Class」では、まさにそのようなエキゾチックでサイケデリックなグルーヴィーサウンドが気だるく展開された曲になっています。

さらに先行シングルともなっている「Time(You and I)」は微妙にチープな打ち込みのサウンドが東南アジア的な雰囲気を感じさせつつ、軽快で気だるい感じのするファンクチューンとなっているのが特徴的。「Connaissais de Face」は男女の会話をベースにグルーヴィーなサウンドがバックを並ぶ、ちょっとレトロで、かつエロチックな雰囲気な楽曲に。「Pelota」はラテンな要素を感じる哀愁感たっぷりのメロディーラインに軽快なリズムが重なりますし、「Dearest Alfred」も女性ボーカルでねっとりとした湿度のあるサウンドが耳に残ります。

「So We Won't Forget」は爽快な女性ボーカルでメロディアスに聴かせるポップチューンに仕上がっていますし、そして最後を締めくくる「Shida」はメランコリックなメロディーラインが胸に響くインストチューン。どこかレトロな懐かしさを感じさせるメロもたまりません。

全体的にはレトロなグルーヴ感を醸し出しつつ、一方ではループするサウンド構成はどこか今風なものを感じさせ、決して懐古趣味一辺倒といった感じでもありません。ファンキーなサウンドもとても心地よく、そのねっちりとまとわりつくようなサウンドに、徐々に深みにはまっていってしまう、そんなグループでした。

かなり独特な個性を放つグループですが、個人的には独特の世界観にすっかりはまってしまいました。フジロックの「FIELD OF VIEW」でトリを飾ったということですが、確かに自然の中で、それも夜に聴くとかなり気持ちよさそうだなぁ。個人的には年間ベストクラスに気持ちよく聴けた傑作アルバムだったと思います。コロナ禍が明けたら、是非、これはライブも見てみたいです!

評価:★★★★★

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2020年8月23日 (日)

ソロキャリア最初期の作品群を網羅

Title:The Complete Keen Years 1957-1960
Musician:Sam Cooke

1950年代後半から60年代前半にかけ、数多くのヒット曲を世に生み出し、R&Bチャートのみならずポップスチャートでもヒットを飛ばしたシンガー、サム・クック。1964年にモーテルの管理人の銃弾により殺されるという、わずか33歳で不可解な最期を遂げた彼ですが、その歌声は多くの人たちを魅了し、世代や人種を超えて、いまなお多くの人たちの支持を集めています。

そんな彼はもともと1950年に、わずか19歳で、当時「名門」と言われていたゴスペルグループ、ソウル・スターラーズのリードボーカルに抜擢され一躍注目を浴びます。特にその端正なルックスもあって、アイドル的な人気を博していたとか。そんな彼が1957年にソロ歌手としてデビューし、同時にゴスペルからR&Bに転身。その時、最初に契約したのがキーン・レコード。「You Send Me」などのヒット曲も飛ばし、キャリアを積み重ねます。1959年にはキーン・レコードを離れて大手レコード会社であるRCAビクターと契約するのですが、本作はそんな彼のソロキャリアの初期、キーン・レコード時代のアルバムをまとめたボックスセットです。

今回のボックスセットは全5枚組となっており、キーン・レコード時代のアルバムが網羅されている内容になっています。まず1957年の「Sam Cooke」、翌58年の「Encore」、さらには59年にリリースされた、ビリー・ホリディへのトリビュートアルバム「Tribute to the Lady」という3枚のオリジナルアルバムが収録。そしてシングル集である「Hit Kit」「The Wonderful World of Sam Cooke」の2枚にはボーナストラックも収録され、豪華な内容に仕上がっています。

その3枚のオリジナルアルバムと2枚のシングル集からなる今回のボックスセットですが、この5枚の作品が、それぞれ特色を持っているのがユニーク。メロウに甘い歌声を聴かせるデビュー作「Sam Cooke」はまさに彼のボーカリストとしての持ち味を最大限発揮したような内容になっていますし、続く「Encore」ではビッグバンドを取り入れて、より軽快でポップな内容に。さらに「Tribute to the Lady」はビリー・ホリディへのトリビュートというだけあって、ジャジーな作風に。さらに2枚のシングル集は、やはりシングル集ということもあって、軽快で聴きやすいポップチューンが並ぶ作品になっています。

さて、サム・クックというと彼の逝去後の1985年にリリースされたライブ盤「HARLEM SQUARE CLUB 1963」では、激しくシャウトし、パワフルでソウルフルなボーカルを聴かせてくれる一方、同じくライブ盤であり、名盤の誉れ高い「AT THE COPA」ではソウルよりもポピュラーミュージック色の強い作風が特徴的であり、かつオリジナルアルバムでも、比較的、白人層にもアピールできるようなポップス色の強い作風が多いというイメージがあります。

彼のソロキャリアの最初期であるキーン・レコード時代の作品ではさらにその傾向が強く、見方によっては非常に「お行儀がよい」と感じさせるようなソウルよりもポップス色が強い楽曲が並んでいます。そういう意味では「HARLEM SQUARE CLUB 1963」でのサム・クックを求めたとすると、ともすれば物足りなさを感じるかもしれません。しかし、1枚目の1曲目である「You Send Me」を聴けば、そんな懸念は一気に払拭されるのは間違いありません。いきなり流れてくるとても甘く、しかし力強さも感じる感情たっぷりのボーカルを一度聴けば、間違いなく彼のボーカルに魅せられるのは間違いありません。端整なボーカルながらも表現力たっぷりで、聴けば聴くほどはまっていくような魅力的なボーカルからは耳が離せません。サム・クックがなぜあれだけ多くの人たちを魅了し、数多くのボーカリストに影響を与えたのか、いきなり理解できるようなスタートとなっています。

全5枚組というのはそれなりのボリュームではありますが、サム・クックの魅力的なボーカルのため、一気に聴けてしまう作品になっていました。初期の彼の魅力を存分に感じるボックスセットであり、全ソウルリスナー必聴の作品。完全生産限定盤のため、後追いで聴くのは難しい点もあるかもしれませんが…(輸入盤オンリーですし)、まだ手に入るのならば、是非とも聴いて欲しい作品です。その美しく甘いボーカルがたまりません!

評価:★★★★★

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2020年8月22日 (土)

軸足が定まってきた3枚目

Title:Women in Music Pt. III
Musician:HAIM

アメリカ・ロサンゼルス出身の姉妹3人によるガールズバンドHAIMの約3年ぶりとなるニューアルバム。新人ミュージシャンの登竜門ともいえるBBCの「Sound of 2013」で1位を獲得。デビューアルバム「Days Are Gone」はグラミー賞の「最優秀新人賞」に輝くなど、華々しいデビューを遂げた彼女たちも、これがタイトル通り3枚目となるニューアルバムになります。

HAIMというと、個人的にはいままでのアルバム、様々な音楽的要素を取り込んだ結果、少々中途半端な出来になってしまった、という印象があります。いずれのアルバムもロックを中心にR&Bやジャズなどの要素を取り込んだ多彩な音楽性を魅力にしつつ、デビュー作はエレクトロポップ色が強く、2枚目はR&B色が強くなりつつ、ただ結果として多彩な音楽性が中途半端な作風の原因になってしまったような印象を受けてしまいました。

そういう意味では今回の3枚目は、中途半端な作風が目立ってきたいままでの2枚と比べると、バンドとして軸足が定まってきたような印象を受けます。その方向性は、やはりバンドサウンドを主軸に据えたロック。とはいえ1曲目「Los Angels」はいきなりむせびなくようなサックスからスタートするなど、ジャズ的な要素を感じるのですが、バンドとして腰を落ち着けたような力強いサウンドを聴くことが出来ますし、続く「The Steps」もカントリー的な要素を取り入れたスタンダードなギターロックの作品に仕上げています。

その後も「Up From A Dream」や軽快なカントリーロックの「Don't Wanna」など、ギターロック色の強い作品が目立ちます。本編ラストとなる「FUBT」も、ミディアムチューンの聴かせるナンバーでありながらもギターサウンドを前に出した作品になっており、いままでの作品に比べると、ロックに軸足を置いてきた作品のように感じました。

もっとも一方では「3am」のような、メロウなR&Bチューンがあったり、「All That Ever Mattered」のような打ち込みを全面的に取り入れた作品があったりと、バラエティー豊かな作風も健在。そういう意味では、様々な音楽的要素を取り込んだというHAIMの魅力はしっかりと維持されています。

もちろん、ロック色が強くといっても基本的にはいずれの曲もメロディアスな歌がメインとなっており、ポップス色が強いという点もいままでとは変わりありません。そういう意味ではいままでのHAIMの魅力をしっかり保ちつつも、バンドとしての方向性をより定めてきた作品と言えるでしょう。3枚目にして、さらなる成長を感じさせるアルバムになっていました。いままでどうも中途半端に感じられたHAIMでしたが、そんな印象を払拭した良作でした。

評価:★★★★★

HAIM 過去の作品
DAYS ARE GONE
Something To Tell You

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2020年8月21日 (金)

メロディアスな歌が魅力的

Title:Punisher
Musician:Phoebe Bridgers

今回紹介するのはアメリカはLA出身の女性シンガーソングライターによる約3年ぶりの新作。ミュージシャン名は日本人にとって非常に読みにくいのですが、これで「フィービー・ブリジャーズ」と読むそうです。2014年にiPhone 5sのCMに抜擢され、PIXIESの「Gigantic」をカヴァーし大きな話題になったとか。前作「Stranger in the Alps」も各種メディアで高い評価を得て、本作ではイギリスのアルバムチャートで6位を獲得するなど、大きな飛躍を遂げています。

実は彼女については以前、Julien Baker, Lucy Dacusと組んだユニットboygeniusのアルバムを取り上げたことがありますが、彼女のソロ作を聴くのは今回がはじめて。まずはそのボーカルに強く惹かれます。伸びやかなのですが、どこか切なさを感じるボーカルが大きな魅力。イントロ的な1曲目を経て、事実上の1曲目となる「Garden Song」は、まさにそんな彼女のボーカルを生かしたような、ダウナーに切なくメロディアスに聴かせる曲調が魅力的な楽曲に。文字通り、どこか幻想的な雰囲気も感じるミディアムチューン「Moon Song」も、彼女の切ないボーカルが胸をうつバラードナンバーになっています。

また、バンドサウンドにシンセサイザーの音色などを入れて分厚く聴かせるサウンドも魅力的。アルバム全体としてはオルタナ系のインディーロックからの影響を強く感じさせ、個人的にはそれが好みであるのですが、比較的、音数の多いサウンドが特徴となっていまう。例えば「Savior Complex」もアコースティックテイストでシンプルにスタートしつつ、途中からストリングスを取り入れて、サウンドのハーモニーが魅力的な作品になっていますし、特に続く「ICU」は、まさにバンドサウンドにギターノイズなども入れつつ、分厚くダイナミックに聴かせるミディアムチューン。サウンド面での彼女の魅力がいかんなく発揮されています。

ただ、そんな中でなによりも魅力的なのは、ポップでメロディアスで、いい意味で聴きやすい歌そのものではないでしょうか。日本人にとってはうれしいタイトル「Kyoto」などはまさにそんあメロの良さがいかんなく発揮された曲。ホーンも入って郷愁感も感じるギターサウンドに、ポップでインパクトのあるメロディーラインは日本人にも問題なく受け入れられそう。アコースティックテイストの強いトラッド風の「Graceland Too」などは、まさに彼女の書くメロディーラインの良さが存分に生かされた、切ないポップチューンとなっています。

サウンドやボーカルも非常に魅力的なのですが、まずはそれを含めて「歌」の部分を主軸に置いているアルバムで、本国アメリカよりもイギリスの方で売れているのも、こういうタイプのメロディアスなロックチューンが受け入れられやすいのかもしれません。PIXIESのカバーで登場したように、ポップなメロが魅力的なインディーロックバンド好きならば間違いなく気に入ると思うアルバム。おそらく日本でも人気が出そうな感じもします。本作もかなり評価がいいようで、これからますます注目が高まりそうな女性シンガーソングライター。これからの活躍にも要注目です。

評価:★★★★★

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2020年8月20日 (木)

ソロだからこそ、魅力満載

Title:COMPILED EPLP ~ALL TIME SINGLE COLLECTION~
Musician:忌野清志郎

歴史に「if」は禁句ですが、早世したミュージシャンが今生きていたらどんな音を奏でていただろうか…そう、ふと想像してみることは音楽ファンなら少なくありません。例えばジミヘンが長生きしたら、どんな革新的な音を鳴らしていただろうか、ジョン・レノンがまだ生きていたら、どんなメッセージを伝えるだろうか…そんなことを想像したことある音楽ファンは少なくないでしょう。個人的にそういうことをよく想像してしまうのが、忌野清志郎が存命だったら、どのような歌を歌っていただろうか、ということだったりします。2009年に58歳という若さでこの世を去った彼。存命したいたら、69歳。間違いなく現役でバリバリに活躍していたはず。彼が亡くなった後、東日本大震災が起こり、それによる福島原発の事故が発生したり、アメリカのトランプ大統領をはじめとする自国中心主義が幅を利かせてきたり、さらには現在のコロナ禍まで、様々な出来事が発生してきました。彼は以前から、世の中に起きる出来事を皮肉たっぷりに、かつユーモアを込めて歌い上げてきました。そんな彼が、例えば震災を、例えば福島原発の事故を、例えばコロナ禍の現在を、どのように描写するのか…ついつい考えてみたくなります。

本作は忌野清志郎デビュー50周年プロジェクトの第2弾。以前、RCサクセションのシングルをカップリング含めて網羅した「COMPLETE EPLP~ALL TIME SINGLE COLLECTION~」がリリースされましたが、本作はそれに続く第2弾で、忌野清志郎のソロワークのシングルをカップリング曲を含めて収録したシングルコレクションとなります。

本作では彼のソロデビュー曲であり大ヒットした曲でもある、坂本龍一とのコラボ曲「い・け・な・いルージュマジック」から、彼の遺作であり、逝去後にリリースされた「Oh! Radio」とそのカップリング曲である「激しい雨(2006.05.14 Private Session)」までが収録されています。彼のソロの曲を聴いてまず感じるのは自由度が非常に高いということ。歌詞でいえば、おそらく先の天皇の即位時に話題となった「恩赦」をモチーフにした、タイトルそのまま「恩赦」や(今、こういう曲をリリースしたら問題になりそうだ…)、下北沢のCLUB QUEを皮肉った「ライブ・ハウス」など、彼が歌いたい素材、反発したい権威に対して、単純にアンチを叫ぶのではなく、ユーモアたっぷりに歌い上げています。RCサクセションでももちろん自由に歌っていた彼ですが、ソロとなってさらにその自由度には拍車がかかったようにも感じます。

社会的な事象を歌にするミュージシャンは、日本では(特にメジャーシーンでは)多くないとはいえ、少なからず存在します。ただ、そういった歌を、単純に歌にするのではなく、皮肉たっぷりにユーモアを込めて歌にして、ある意味、その主張に反対の立場にある人でも聴いていて「クスっ」と笑わせてしまうような、そんな力を持ったミュージシャンは、おそらく彼くらいではないでしょうか。それだけに、様々な問題が生じており、かつ、右と左に大きく分裂しがちな現在において、時としてその垣根を超えるようなユーモアセンスを歌にする彼が生きていたら、どんな歌を歌っただろうか、そう想像してしまいます。

さらにソロにおいてRCサクセションの曲以上に自由度が顕著なのが、その音楽性。ソロデビュー作「い・け・な・いルージュマジック」ではニューウェーブを取り入れていますし、「お兄さんの歌」はトラッド、「世界中の人に自慢したいよ」ではゴスペルも取り入れています。さらに「夜空の星」はかの加山雄三のカバーですし、今回のアルバムでは未収録となっていますが、2005年には「雨上がりの夜空に35」というタイトルでRhymesterとコラボも実施。この点に関しても、彼が今も生きていれば、もっとHIP HOPも取り入れたのでは?と想像をたくましくしてしまいます。

ある意味、RCサクセションのベスト以上に忌野清志郎というミュージシャンの魅力や個性を味わえるベストアルバム。リアルタイムで聴いていた曲も多いのですが、こういう形でシングル曲をまとめて聴くと、あらためて彼の才能に魅了される内容になっていました。ただ、一方でちょっと残念な部分もあります。忌野清志郎のソロ作をまとめた作品なのですが、忌野清志郎&2,3'sやラフィータフィー名義の曲があるにも関わらず、一方でTHE TIMERSやHISのシングルは未収録になっています。他のミュージシャンとのコラボでも、坂本龍一とのコラボが入っている一方、及川光博とのコラボ、ミツキヨや、上にも書いたRhymeterとのコラボが未収録だったりと、収録の基準はあやふや…。確かに「COMPLETE」というタイトルのついたRCのベスト盤と異なり、こちらは「COMPILED」というタイトルなのですが…ここらへんのコラボや別名義の作品は、第3弾としてまとめてリリースしてほしいなぁ…この点だけはちょっと残念でした。

評価:★★★★★

忌野清志郎 過去の作品
入門編
忌野清志郎 青山ロックン・ロール・ショー2009.5.9 オリジナルサウンドトラック
Baby#1
sings soul ballads
ベストヒット清志郎

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2020年8月19日 (水)

お盆期間中ゆえ新曲新譜は少な目

今週は集計対象週がお盆休み期間ということもあり初登場は少な目。そのため、Hot100,Hot Albums同時更新です。

今週のHot100

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

まず1位はチャリティーソングが獲得。

今週1位を獲得したのはTwenty★Twenty「smile」。新型コロナウィルス復興プロジェクトとして、ジャニーズ系のアイドルグループが組んだ期間限定のユニット。以前、先行配信によりベスト10入りをしていましたが、8月12日にCDがリリース。CD販売数が1位となった影響で、6週ぶりのベスト10返り咲き、かつ初の1位獲得となりました。これに伴いダウンロード数も圏外から43位にランクアップ。PCによるCD読取数1位、Twitterつぶやき数2位、ラジオオンエア数46位で総合順位1位を獲得しています。ちなみにオリコンの週間シングルランキングでも初動売上41万5千枚で1位を獲得しています。

2位はYOASOBI「夜に駆ける」が先週から変わらず2位をキープ。ダウンロード数は1位から4位にダウンしてしまいましたが、ストリーミング数及びYou Tube再生回数は1位をキープしています。一方で瑛人「香水」は5位から4位にアップ。ストリーミング数は先週から変わらず3位をキープしているほか、ダウンロード数が9位から3位へとランクアップ。まだまだ強さを感じさせます。ただ、You Tube再生回数は4位から6位にダウンしています。

3位には米津玄師「感電」がこちらも同順位をキープ。ラジオオンエア数1位をはじめ、ダウンロード数、ストリーミング数及びYou Tube再生回数2位は先週から変わらず。ベスト10入りはこれで6週目ですが、ロングヒットになりそう。さらに「Lemon」も先週から変わらず8位をキープしています。

続いて4位以下のランキングですが、実は今週初登場曲はゼロ。一方でロングヒット曲が目立つチャートとなっています。

まずOfficial髭男dism「HELLO」が先週からワンランクダウンの5位。CD販売数が2位から5位、ダウンロード数も4位から5位とダウン。またYou Tube再生回数も43位といまひとつ奮いませんが、ストリーミング数は26位から18位にアップ。ロングヒットへの足掛かりとなるのでしょうか。ただ一方、今週は「I LOVE...」が先週の13位から9位に、「Pretender」が12位から10位にアップ。前者は5週、後者は4週ぶりのベスト10返り咲きとなりました。これでヒゲダンは、久々に3曲同時ベスト10入りを果たしています。

さらに今週、日本のSony Music、韓国のJYPエンターテイメントからデビューした和製K-POPとも言える日本人の女性アイドルグループNiziU「Make you happy」が6位にランクイン。これで7週目のベスト10ヒットとなります。特にストリーミング数5位、You Tube再生回数3位と上位につけており、アイドル系では珍しいロングヒットを記録しています。そして7位にはあいみょん「裸の心」が9位から2ランクアップで今週もベスト10をキープ。ダウンロード数が5位から6位、ストリーミング数は先週と変わらず7位。You Tube再生回数は23位から21位とじわりと順位をあげています。

一方、LiSA「紅蓮華」は今週10位から11位にダウン。とりあえずはベスト10返り咲きは2週で終了となりました。


今週のHot Albums

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

今週も米津玄師のアルバムが強さを見せつけました。

今週も先週から変わらず米津玄師のアルバム「STRAY SHEEP」が1位を獲得。先週から変わらずCD販売数、ダウンロード数及びPCによるCD読取数のいずれも1位を獲得しています。オリコン週間アルバムランキングでも25万1千枚を売り上げて1位獲得。2週目にして見事ミリオンセールスを達成しています。

2位にはなんとOfficial髭男dism「Traveler」が5位から一気にランクアップ。6週ぶりのベスト3に。CD販売数は10位から2位、ダウンロード数が8位から3位にいずれも大幅アップ。オリコン週間アルバムランキングでも4位にアップしており、まだまだ根強い人気を感じさせます。

3位にはロックバンドMY FIRST STORY「V」が初登場でランクイン。CD販売数及びダウンロード数4位、PCによるCD読取数15位。ONE OK ROCKのTakaの弟がボーカルをつとめるバンドですね。オリコンでは初動売上1万1千枚で2位初登場。前作「S・S・S」の1万5千枚(4位)からダウンしています。

続いて4位以下の初登場盤ですが、今週、初登場盤はあと1枚のみ。それが4位初登場Argonavis「Starry Line」。漫画やアニメからなるプロジェクト「BanG Dream!」から誕生した声優によるボーイズバンドグループによるデビュー作。CD販売数は3位でしたが、ダウンロード数6位、PCによるCD読取数62位で総合順位はこの位置に。オリコンでは初動売上7千枚で3位初登場となっています。

そして今週はベスト10圏外からの返り咲きが1枚。それがKing Gnu「CEREMONY」。先週の13位から8位にランクアップし、5週ぶりのベスト10返り咲き。ベスト10入り記録を26週に伸ばしています。

さらにHot100でも紹介したNiziUのミニアルバム「Make you happy」が今週10位にランクインし、7週目のベスト10ヒットに。配信オンリーながらもダウンロード数で2位を記録し、ロングヒットとなっています。

今週のヒットチャートは以上。チャート評はまた来週の水曜日に!

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2020年8月18日 (火)

DAOKOの個性をしっかり生かした傑作アルバム

Title:anima
Musician:DAOKO

2018年に米津玄師とのコラボシングル「打上花火」が大ヒットを記録。その年の紅白歌合戦にも出場し、一躍、時の人となった女性ミュージシャンDAOKO。ただ、そんな中でリリースされた前作「私的旅行」は、かなり豪華なミュージシャンとのコラボ作が多く収録されるなど、かなり力の入ったアルバムで、内容的にも優れた傑作だったのですが、チャート的にはオリコンで最高位19位と伸び悩み、正直なところ、DAOKO個人に対する訴求力の弱さを感じてしまった結果となってしまいました。

本作は、そんな前作から約1年8ヶ月ぶりとなるニューアルバム。今回のアルバムはGREAT3の片寄明人との共同プロデュース作品。「ハイセンスパイセン」ではスチャダラパーとコラボをしているほか、「アキレス腱」では片寄明人と相対性理論の永井聖一、「御伽の街」では小袋成彬が作曲及び編曲で参加しているなど、今回も豪華なミュージシャンたちのコラボも目立つのですが……正直なところ、これでもかというほど豪華なミュージシャンが並んだ前作に比べると、参加したミュージシャンの方には失礼ながら、若干見劣りはしてしまいます。

ただ、作品としての出来は前作と比べると悪くなったか、と言われると、そんなことは全くなく、DAOKOのミュージシャンとしての充実ぶりを感じさせる傑作に仕上がっていたと思います。今回のアルバムでまず特徴的だったのは、よりラッパーとしてのテイストが強くなったという点。DAOKOというと、「ラッパー」という紹介のされ方が多かったのですが、楽曲的にはHIP HOP色は特に強くなく、むしろ歌モノのポップチューンが目立っていたのですが、今回の作品に関しては彼女がラップしている曲が多く、ラッパーとしての彼女の存在感を覚えることのできるアルバムに仕上がっていました。

さらに今回のアルバムではトラック的にも非常にバリエーションの富んだ作風を聴かせてくれています。タイトルチューンの「anima」はアバンギャルドでパンキッシュな部分も感じさせますし、スチャダラパーとのコラボ作の「ハイセンスパイセン」はスチャダラらしいオールドスクール風のナンバー。逆に「ZukiZuki」は今風のトラップ的なリズムを取り入れており、「ハイセンスパイセン」からの振れ幅の大きさがユニークですし、ポエトリーリーディング的な「海中憂泳」に、チップチューンを取り入れた「帰りたい!」など、エレクトロサウンドを主軸にしつつ、様々な作風のトラックを聴かせてくれます。

特に小袋成彬が参加した「御伽の街」ではエッジの効いたリズミカルなエレクトロサウンドに、歌謡曲的な哀愁感を含んだメロディーラインが秀逸でカッコイイ楽曲に仕上がっており、今回の作品の中でも特に耳を惹きます。小袋成彬って正直なところ、彼のソロ作ではあまりピンと来ない部分が多かったのですが、本作では彼とDAOKOの才能がピッタリとマッチした名曲に仕上がっていました。

前作「私的旅行」、前々作「THANK YOU BLUE」はいずれも豪華ミュージシャンとのコラボが大きな魅力であった反面、豪華ミュージシャンの力ばかりが前に出ており、DAOKO本人の実力がいまひとつ測りかねる部分もありました。今回のアルバムでもまた豪華ミュージシャンとのコラボ作も並んでいたのですが、ただ前2作に比べると、「コラボ」という部分は一歩後ろに下がった作品に。ただ、それでも前々作、前作に勝るとも劣らない傑作となっており、今回はしっかりとDAOKO本人の実力を感じさせる内容になっていたと思います。

正直なところ、メロディーラインのインパクトが不足している部分は否めず、そこらへん、DAOKO個人としていまひとつブレイクしきれない理由のような感じも受けてしまうのですが…ただ、これだけの傑作をリリースできるのであれば、また、ヒット曲に出会えるのも時間の問題、かも?前作ではあまりにコラボ作を前に押し出した内容から次回作の出来を心配していたのですが、そんな心配を杞憂として吹き飛ばした内容になっていたと思います。今後の彼女の活躍も楽しみになってくる作品でした。

評価:★★★★★

DAOKO 過去の作品
DAOKO
THANK YOU BLUE
私的旅行

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2020年8月17日 (月)

日本人に染みついたメロディーライン

Title:あなたが選んだ古関メロディーベスト30

現在放映中のNHK朝の連続テレビ小説「エール」。昭和を代表する作曲家である古関裕而とその妻、金子をモデルとした作品ということもあって、古関裕而が今、注目されています。本作は、その古関裕而の出身地である福島県の新聞社、福島民報社が中心となって実施した人気投票の上位30曲を収録した、ドラマ放映にあわせてリリースされた企画盤。いかにも企画盤的なタイトルなのですが、古関裕而の楽曲を知るにはほどよくまとまっており、彼については以前、その評伝を読んだことがあるのですが、せっかくなので、ドラマ放映に合わせた「ブーム」にのっかかる形で、この古関裕而作品をまとめて聴いてみました。

一応、今回のドラマが放映される以前から、作曲家としての古関裕而の名前は知っていました。ただ、今回彼の作品集を聴いてみて、あらためて彼の音楽がいかにいまでも広く日本人に浸透しているのか実感しました。まずはなんといっても「六甲おろし」。おなじみ阪神タイガーズの応援歌ですが、タイガーズのファンではなくても多くの野球ファンに知られた曲でしょう。読売ジャイアンツの応援歌でもある「闘魂こめて」もジャイアンツのファンでなくても知っている野球ファンも多いでしょう。なにげに我らが中日ドラゴンズの応援歌「ドラゴンズの歌」も彼が作曲しているのですが、こちらは「燃えよドラゴンズ」に取って代わられてしまったため、私でも初耳でした…。いい曲なだけに、完全に消えてしまっているのはちょっともったいない感じも…。ちなみに人気投票でも「闘魂こめて」の21位を上回る14位を記録しており、それだけ応援歌として忘れ去られてしまった現状を惜しんでいる方が多い、ということなのでしょう。

他にも「栄冠は君に輝く」も、そのタイトルそのものが夏の高校野球の象徴となるほど有名な曲ですし、「スポーツ・ショー行進曲」も、タイトルだけでは知らないような人も、曲を聴けば「ああ、あの曲」とすぐにわかる方も多いでしょう。「モスラの歌」もおそらく世代を越えて、知られているような楽曲でしょうし、個人的に懐かしさを感じたのは「NHKラジオ『ひるのいこい』テーマ音楽」で、この曲、私が小学校の頃、土曜日に午前中、学校から帰ってくると、台所で昼食の準備をしている母親が聴いていたラジオから流れてきたなぁ…と、とても懐かしく感じてしまいます(…が、番組自体は現在も放映中のようです)。

まさにそれだけ古関裕而の書くメロディーラインは、現在の私たちにとっても、まさに染みついたメロディーラインと言っていいでしょう。同じく多くのヒット曲を生み出した戦後を代表する作曲家としては古賀政男や遠藤実などの名前もあげられますが、現在の若い世代でも知っている曲の数で言えば、おそらく古関裕而の方が上回るのではないでしょうか。特に流行歌ではないものの、長く歌い継がれているテーマ曲を多く手掛けているだけに、後世に残る楽曲が多かったように思います。

実際、彼が手掛けた楽曲は戦前の軍歌からスタートし、流行歌はもちろん、数多くのテーマ曲、応援歌、さらには社歌まで多岐にわたっています。ただ、それだけ彼の作品が多く求められたのは、彼の書く楽曲がとにかくわかりやすいから、それに尽きるように思います。「六甲おろし」にしても「闘魂こめて」にしても、数回聴いただけに思わず口ずさんでしまうようなキャッチーなメロディーラインが大きな特徴となっています。また、勇壮で聴くものを奮い立たせるような力強いメロディーラインも特徴的で、それが軍歌や応援歌などに彼の楽曲が求められた大きな要因のように思います。

また、いかにも演歌的な哀愁感たっぷりのメロディーを書くこともあるのですが、一方では全体的に、そんないかにも日本的な哀愁感とは無縁のカラッとした作風も特徴的で、例えば今回の人気投票で1位となった「高原列車は行く」などもそんな典型例でしょう。前述の、今も知られる彼の楽曲にも、そんな哀愁感とは無縁のメロディーラインを感じることが出来、今となってはある種の「古臭さ」を感じてしまうような演歌的な作風とは無縁の楽曲も数多く作って来たことも、彼のメロディーが今なお、いろいろな場面でつかわれ続けている大きな要因のひとつのようにも感じました。もちろん、一方ではいかにも演歌的な楽曲も少なくはないのですが。

そんな訳で、いかにも企画盤的なタイトルですが、今話題の古関裕而の作品について代表曲を網羅的に知ることが出来、彼の魅力にしっかり触れることが出来る、よく出来た企画盤だと思います。「エール」を見て、彼に興味を持った方にはちょうどよいアルバムでしょう。あらためてその偉大な作曲家の魅力を感じることが出来たアルバムでした。

評価:★★★★★

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2020年8月16日 (日)

兵士Aの物語

今回は映像作品の紹介。本作はシンガーソングライター七尾旅人の初となる映像作品「兵士A」。もともと2015年に行われた舞台公演が、翌年に映画上映され、その後、DVD/ブルーレイでリリースされました。それが今年の5月、配信でもリリース。以前から気になる作品ではあったものの、なかなか手が出せなかった作品なのですが、今回の配信によって、はじめて実際に見ることが出来ました。

本作では自衛官の扮装をした七尾が「近い将来この国に数十年ぶりに現れるかもしれない」1人目の戦死兵・兵士Aを演じており、100年というスパンで物語を描くという壮大な試みを行った舞台。物語は4部構成となっており、最初はプロローグ、その後は「Aくんが生まれ、そして死ぬまで」ということで、兵士Aの生い立ちが、戦後日本の歩みと重なるようにして語られます。3部は「Aくんが殺したひとびと」で、戦争を語られるパート。最後の「再会」は、先の大戦を経験した、亡き祖父と(おそらくあの世で)再会するという展開となっています。

ステージは、基本的には七尾旅人ひとりで、それもアコースティックギター1本で、時にはとぎれとぎれになりそうな切ない声で語りかけるように歌われるのが印象的。また、歌の間には物語を語るようなシーンもあり、朗読劇的な要素も見て取れます。そして後半にはサックス奏者の梅津和時がステージ上に登場。激しいサックスのインプロビゼーションにより、七尾旅人のアコギと対峙するという、緊迫する演奏シーンも見せてくれます。

率直に言うと、この作品を見る前に想像していた内容とは少々異なる部分がありました。というのは、見る前は本作は、比較的社会派的な要素の強い作品と想像していました。先の大戦の後、平和になった日本が徐々におかしくなり、戦争に至るまでの、徐々に社会がゆがんでいく道のりが描かれている、そう思っていました。しかし実際には、なぜ日本が再び戦争をはじめ、その中で戦死者が出たのか、という描写はありません。ただ、現在社会の中に平凡に生きてきた一般人であるはずの「Aくん」が、戦争に巻き込まれ、そして戦士した、という事実のみが描かれています。

それだけに変な「想像」が語られない分だけ逆にリアリティすら感じました。集団的自衛権が容認されるようになり、米中関係の悪化はもちろん、コロナの影響もあり「自国第一主義」がまかり通りはじめた現在においては、何かのきっかけで日本が戦争に巻き込まれる可能性は決して少なくはありません。そんな今を生きている私たちだからこそ、「Aくん」の存在は容易に想像できるのではないでしょうか。

この「兵士A」では決して多くの物語が語られている訳ではありませんが、七尾旅人により語られ、歌われた「物語」の隙間を想像するのは比較的容易ではないでしょうか。さらに印象的だったのは、やはり七尾旅人の歌自体でしょう。兵士Aの叫びをそのまま体現化するようなボーカルや、シンプルながらも力強いアコースティックギターの音色、さらにそんな中、戦争の不気味さを表現するようなノイズを入れてきているのも強い印象に残ります。

音楽的にはやはり終盤の七尾旅人と梅津和時のインプロビゼーションのやり取りが印象的。自衛官に扮した七尾旅人に対して、梅津和時は、おそらく兵士Aの祖父を彷彿とさせる、戦前の軍服を着ており、再び起きてしまった戦争の中で命を落としてしまった無念さ、怒りを表現しているようにも感じました。

最初の想像と異なり、声高に平和を叫ぶような作品ではありません。ただそれだけに、逆にある種のリアリティがあり、兵士Aの叫びが、言葉だけではなく音楽を通じても胸に突き刺さるような作品だったように思います。3時間に及ぶ作品でかなりボリューム感がありますが、かなり力の入った作品であることは間違いありません。3日間限定という形ですが、配信でも比較的容易に見ることが出来ますし、コロナ禍の中で、世界情勢がおかしなことになる中で、一度見てほしい作品です。

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2020年8月15日 (土)

正直なところ本人たちが一番…

Title:サンボマスター究極トリビュート ラブ フロム ナカマ

このたび結成20周年を迎えたロックバンド、サンボマスター。デビュー当初から高い評価を集め、かつ多くのミュージシャンたちからも支持を得ていた彼らですが、このたび初となるトリビュートアルバムがリリースされました。比較的、若手ミュージシャンたちを中心にしつつ、最後には奥田民生という大御所で締めくくるという構成のアルバム。基本的にロック系がメインなのですが、サンボマスターが多くのミュージシャンたちから支持を得ていることを感じる構成になっています。

ただ、正直言ってしまうと、アルバムを聴き終わった後に感じてしまったのは、やはり本人たちの曲が一番だった、ということでした。その一番の理由は、やはりサンボマスターの音楽が、バンドのメンバーたちが発する個人的な感情が曲に強く反映されており、なおかつ、それが彼らの大きな魅力だから、という点が大きいのではないでしょうか。

例えば冒頭を飾るSUPER BEAVERの「ロックンロール イズ ノットデッド」にしても、ギターロックとしてよく出来ているのは間違いありませんが、原曲では山口隆のシャウトにより、いかにもロックンロールに対する狂おしいほどの愛情を感じさせるのに対して、こちらのカバーは無難なギターロックという印象に留まっています。ヤバイTシャツ屋さんの「光のロック」もハードロックテイストのアレンジは曲にマッチしており、ヤバTの力量も感じさせるのですが、男女デゥオで学生ノリの陽気さを感じるヤバTの雰囲気が、どうもサンボマスターとはミスマッチのような印象も受けてしまいます。

いや、楽曲それぞれについては、ミュージシャンの個性も反映されており、それなりによく出来たカバーには仕上がっていたと思います。完全に自分たちの土俵にのせてトランスロックにカバーしたFear,and Loathing in Las Vegasの「世界はそれを愛と呼ぶんだぜ」や、エレクトロチューンに大きな変貌を遂げたIchiro Yamaguchi+Setsuya Kurotakiの「美しき人間の日々」、さらに岡﨑体育による「二人ぼっちの世界」は、岡﨑体育のイメージとは異なる、ピアノで切なく聴かせるバラードチューンに仕上げており、彼のちょっと意外な一面を感じることも出来ます。

サンボマスターのような、感情を思いきり楽曲にぶつけて、彼らしかもっていないような個性が楽曲の大きな魅力であるミュージシャンのカバーはやはり難しいのでしょう。全体的には決して悪くないのですが、その点を差し引いても、聴いていて物足りなさを感じてしまいました。ただそんな中で良かったカバーが2曲。まずは銀杏BOYZ みねたかずのV名義の「夜汽車でやってきたアイツ」。峯田和伸自体も、自身の感情を楽曲にストレートにぶつけるタイプのミュージシャンなだけに、サンボマスターとの相性の良さも感じます。この曲は、最近の彼らしいノイズを前面に押し出し、楽曲を思う存分歪めた曲調なのですが、ある意味、振り切った音楽性も大きな魅力に感じました。

そしてもう1曲が最後を飾る奥田民生の「そのぬくもりに用がある」。こちらは圧巻の貫禄といった感じでしょうか。普段、飄々としている彼ですが、楽曲にはしっかりとその感情をぶつけており、彼なりのサンボマスターの解釈が魅力的な作品になっています。

聴いて損するようなアルバムではないと思いますし、参加ミュージシャンのファンなら聴いて損はないと思うのですが…。ある程度は予想していたのですが、やはりサンボマスターの曲はサンボマスターによるのが一番良い、そういうことを実感したトリビュートでした。それだけ、彼らが絶大な個性を持ったミュージシャンということなのでしょうね。

評価:★★★★

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2020年8月14日 (金)

2020年上半期 邦楽ベスト5

火曜日に引き続き、少々遅くなってしまいましたが邦楽ベスト5です。

5位 oar/角銅真実

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今、話題の女性シンガーソングライターによるデビュー作。妙に惹きつけられるウィスパー気味のボーカルが魅力的で、どこか幻想的な感じがする点も大きなポイントに。特にFishmansの「いかれたBaby」のカバーは絶品。また、ボーカルを生かしたシンプルなサウンドメイキングも絶妙で、彼女の魅力を最大限引き出しているアレンジに仕上げています。決して派手な作品ではないのですが、これからの期待にも大いに期待のできる傑作アルバムに仕上がっていました。

4位 Devil/ビッケブランカ

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おそらくこの上半期、私個人の最大の「はまりソング」が本作に収録される「Ca Va?」でしょう。フランス語で「元気?」を意味する単語をタイトルとした曲なのですが、その発音を生かした非常にユーモラスなポップチューンとなっており、You Tubeで公開しているMVも何度も見てしまいました。もともと非常に美しいメロディーラインが印象的な彼ですが、本作ではそれにユーモアセンスが加わり、さらなる進化を遂げた印象も。もともと、ピアノやストリングスを入れた美メロという、私にとっては壺な曲を書いてくるシンガーでしたが、その中でもさらに魅力的な傑作アルバムでした。

3位 操/岡村靖幸

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本格復帰2作目となるオリジナルアルバム。前作に引き続きの会田誠によるジャケットも印象的な作品なのですが、50代半ばにより全盛期が再来したか、というほどの傑作アルバムに。かつての全盛期ともいえる、彼の80年代の頃の作風を取り入れつつも、例えばDAOKOとのコラボなどにより「今の音楽」をしっかりと取り入れて、結果、多くのファンが求めるであろう、かつての彼のスタイルをしっかりと残しつつ、ただ、しっかりと2010年代の岡村ちゃんにアップデートしている、そんなバランスのよい傑作に仕上がっていました。ここに来て、再び脂ののった活動を行っている彼。まだまだ傑作アルバムは続きそうです。

2位 ボイコット/amazarashi

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独特な歌詞世界が魅力的だったamazarashi。ただ、以前は歌詞から、いわゆる「中2病」的な印象を受けていたのですが、ここ最近、その歌詞の世界観が深化。いい意味で地に足をつけた歌詞になってきており、バンドとしてさらなる進化を感じさせます。もともとメインライターである秋田ひろむは青森出身ということもあって、そんな彼の出自の特徴はしっかりと歌詞の世界にも反映。都会の中での地方出身者の孤独を感じさせるような歌詞も大きな魅力となっています。叙情感たっぷりのダイナミックなサウンドも大きな魅力。彼らの成長を強く感じさせる傑作アルバムになっていました。

1位 Passport&Garcon/Moment Joon

Moment

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本作はアルバムを紹介した段階で「暫定年間1位」と既に書いていましたが、その後、本作を越えるような傑作はなく、文句なしに上半期1位となりました。韓国出身大阪在住によるラッパーによるアルバムで、日本人の抱える韓国人に対する差別意識という病巣に対して鋭く切り込んだラップ。それにどこかユーモアセンスをまぜつつ、かつ、韓国人のみに留まらず、日本人の持つ外国人に対する差別意識全般を切り込んだ作品に。作品自体はコロナ禍を反映されたものではないものの、コロナによって各国、事実上、国を閉ざしたような状況となり、ナショナリズムがより台頭してきそうな危険性のある中でこそ、より響くような作品になっています。そういう意味でも2020年という年を代表するアルバムと言えるかもしれません。文句なしの傑作です。

ほかのベスト盤候補としては・・・

202020/斉藤和義
THE KEBABS/THE KEBABS
ROCK/ベッド・イン
いいね!/サニーデイ・サービス
Triptych/Shohei Takagi Parallela Botanica
ストリーミング、CD、レコード/ゲスの極み乙女。

洋楽同様、良作は少なくなかったものの、際立った傑作は少なかった今年。邦楽に関して言えば、4位以下とほかのベスト盤候補の作品は、ほぼどんぐりの背比べ的だったように思います。ただ、逆に1位のMoment Joonはそんな中で2020年を代表する際立った傑作と言える作品。洋楽を通じても、これだけ今の世相を反映された作品は本作だけだったようにも思います。

あらためてベスト5を振り返ると

1位 Passport&Garcon/Moment Joon
2位 ボイコット/amazarashi
3位 操/岡村靖幸
4位 Devil/ビッケブランカ
5位 oar/角銅真実

下期もまた、多くの傑作に出会えますように。

ちなみに過去のベストアルバムは

2007年 年間1 
2008年 年間1  上半期
2009年 年間1  上半期
2010年 年間1  上半期
2011年 年間1  上半期
2012年 年間1  上半期
2013年 年間1  上半期
2014年 年間1  上半期
2015年 年間1  上半期
2016年 年間1  上半期
2017年 年間1  上半期
2018年 年間1  上半期
2019年 年間1  上半期

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2020年8月13日 (木)

驚異の米津玄師人気

今週のHot Albums

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

今週は米津玄師の待望のニューアルバムが2位以下を圧倒して1位獲得となりました。

今週1位を獲得したのは米津玄師の約2年半ぶりのニューアルバム「STRAY SHEEP」。CD販売数、ダウンロード数、PCによるCD読取数いずれも1位を獲得し、圧倒的な強さを見せつけての1位となりました。米津玄師といえば、自身の「Lemon」「馬と鹿」が大ヒットを記録したほか、Foorinに提供した「パプリカ」、菅田将暉に提供した「まちがいさがし」といずれも大ヒットを記録。まさに、今、もっとも人気のあるミュージシャンのひとりと言えますが、そんな中、オリコン週間アルバムランキングでは初動売上87万9千枚という驚異的な売上枚数を記録。前作「BOOTLEG」の初動売上16万1千枚(1位)の5倍強という驚異的な売上を記録しています。

ちなみに彼と同様に、昨今大人気となっているOfficial髭男dismの直近作「Traveler」は初動売上8万4千枚、星野源の直近作「POP VIRUS」も27万8千枚でしたので、この売上枚数がいかに驚異的ということがわかるでしょう。米津玄師の曲といえば「Lemon」もダウンロード先行。またこのアルバムリリースに合わせてストリーミングが解禁されていますが、それにも関わらずこれだけの売上を上げたという事実は、ストリーミングやYou Tubeなどその方法に関係なく、地道にしっかりと曲を浸透させていけば、しっかりCDの売上にも結び付くという当たり前の事実を再認識させたように感じます。

2位初登場は動画投稿サイトへのMV投稿から人気を博したユニット、ずっと真夜中でいいのに。のミニアルバム「朗らかな皮膚とて不服」がランクイン。CD販売数及びダウンロード数2位、PCによるCD読取数6位。オリコンでは初動売上2万7千枚で2位初登場。前作「潜潜話」(5位)から横バイ。

3位は先週1位のヨルシカ「盗作」が2ランクダウンながらもベスト3をキープしています。今週は、1位と3位はいずれもボカロP発のミュージシャンですし、2位も動画投稿からスタートしたミュージシャンということで、ネット発のミュージシャンがベスト3を固める結果となりました。ただヨルシカもそうですが、米津玄師がブレイクしたため、「次の『米津玄師』」的な感じでレコード会社からプッシュを受けたという印象も強く、米津玄師のブレイクによって、一気にネット発ミュージシャンが表に出てくることが多くなったように思います。それだけ彼のブレイクがシーンに与えたインパクトが大きかったということでしょう。

続いて4位以下の初登場盤ですが、まず6位にラッパー、AK-69のニューアルバム「LIVE:live」がランクイン。先週は配信先行リリースにより21位にランクインしていましたが、CD販売に合わせてベスト10にランクアップしてきました。CD販売数4位、ダウンロード数12位。オリコンでは初動売上6千枚で7位初登場。前作「THE ANTHEM」の5千枚(22位)より若干のアップとなっています。

8位には女性声優東山奈央「Special Thanks!」がランクイン。CD販売数3位、PCによるCD読取数38位。いままで彼女がアニメのキャラクターとして歌ってきた曲を収録した企画盤になっています。オリコンでは初動売上8千枚で3位初登場。直近のオリジナルアルバム「群青インフィニティ」の6千枚(9位)からアップ。

9位は女性アイドルグループEMPiRE「SUPER COOL EP」がランクイン。CD販売数5位、ダウンロード数77位。オリコンでは初動売上6千枚で8位初登場。前作「the GREAT JOURNEY ALBUM」の1万4千枚(6位)からダウン。

一方、ロングヒット盤としてはOfficial髭男dism「Traveler」が先週の10位から5位にランクアップ。先週はついに崖っぷちか?と思いきや、CD販売数が11位から10位、ダウンロード数が11位から8位といずれもランクアップし、チャートも大きくランクアップしています。

今週のHot Albumsは以上。チャート評はまた来週の水曜日に!

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2020年8月12日 (水)

米津玄師現象、再び

今週のHot100

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

先週もチラッと書いた米津玄師楽曲のストリーミング解禁。それに伴い、今週、米津玄師の楽曲が一気にランクをあげました。

まずは先週8位にランクインしていた「感電」が今週、ストリーミング数で2位を獲得し3位にランクアップ。ダウンロード数及びYou Tube再生回数の2位とあわせて一気に3週ぶりのベスト3返り咲きとなりました。また、2018年の超ロングヒットナンバー「Lemon」もストリーミング数5位にランクイン。先週の51位からランクアップし、総合順位も8位にランクイン。昨年の9月30日付ランキング以来、43週ぶりのベスト10返り咲き。通算81週目のベスト10ヒットとなりました。また今回のストリーミング解禁に合わせて、You Tube再生回数も20位から5位にランクアップ。米津玄師楽曲への関心の高まりを感じます。また、同じく米津玄師作詞作曲の嵐「カイト」も今週7位にランクインしており、米津玄師楽曲が3曲同時ランクインとなっています。

一方、今週1位を獲得したのはジャニーズ系男性アイドルグループSexy Zone「RUN」。CD販売数、PCによるCD読取数及びTwitterつぶやき数で1位、ラジオオンエア数で6位獲得。総合順位も1位となりました。日テレ系ドラマ「未満警察 ミッドナイトランナー」主題歌。オリコン週間シングルランキングでは初動売上24万5千枚で1位初登場。前作「麒麟の子」の15万9千枚(1位)よりアップしています。

2位はYOASOBI「夜に駆ける」が先週の3位からワンランクアップ。ストリーミング数及びYou Tube再生回数は先週と同じく1位を獲得しているほか、ダウンロード数も6位から1位にランクアップしています。一方、同曲とデッドヒートを繰り広げてきた瑛人「香水」は今週、3位から5位にダウン。ストリーミング数が米津玄師に入り込まれる形で2位から3位にダウンしたほか、ダウンロード数も2位から9位にダウン。You Tube再生回数は4位をキープしたものの、全体的には下落傾向のチャートとなり、長らくデッドヒートを繰り広げたこの2曲に差がついてしまった結果となりました。

続いて4位以下の初登場曲ですが、今週4位以下の初登場曲は1曲。4位にOfficial髭男dism「HELLO」が先週の14位から、CD販売に合わせてランクアップ。初のベスト10入りとなりました。フジテレビ系「めざましテレビ」テーマソング。タイトルもそうですが、爽やかな作風も朝の情報番組のテーマ曲らしい楽曲となっています。ただ、CD販売数2位、ダウンロード数4位に対して、ストリーミング数26位、You Tube再生回数42位と、ロングヒットの指標となりそうなチャートの順位はいまひとつ。ラジオオンエア数2位、PCによるCD読取数3位、Twitterつぶやき数37位を獲得しつつも、総合順位は4位に留まりました。ただ「めざましテレビ」のテーマソングは広くお茶の間に曲が流れ続けるだけに、徐々にストリーミング数やYou Tube再生回数も上がり、ロングヒットとなっていくのでしょうか。今後の動向が気になります。

一方ロングヒット曲ではまずあいみょん「裸の心」が8位からワンランクダウンながらも9位にランクイン。ダウンロード数は先週から変わらず5位をキープ。ストリーミング数も5位から7位にダウンしているものの上位にランクインしています。またYou Tube再生回数は47位から23位にアップ。You Tube再生回数が今後、どこまで伸びていくのかがカギとなりそうです。

またLiSA「紅蓮華」は先週の10位から同順位をキープ。CD販売数が21位から13位にアップ、ダウンロード数も9位から8位と根強い人気を感じさせます。

今週のHot100は以上。明日はHot Albums!

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2020年8月11日 (火)

2020年上半期 洋楽ベスト5

例年より若干遅くなってしまいましたが、毎年恒例、私的ベストアルバム上半期。まずは洋楽編のベスト5です。

5位 Set My Heart On Fire Immediately/Perfume Genius

聴いた当時の感想はこちら

アメリカはシアトルに拠点を置くシンガーソングライター、マイク・ハドレアスのソロプロジェクトPerfume Geniusによる約3年ぶりのニューアルバム。毎回、アルバムが大きな評判を呼ぶ彼ですが、実は彼のアルバムを聴くのは今回がはじめて。しかし、ファルセット気味のボーカルで美しく聴かせるメロディーラインにすっかり魅了されてしまいました。さらに美しいだけの歌声のみならず、所々で入るダイナミックなサウンドも魅力的。まさに静と動を見事バランスさせた傑作アルバムに仕上がっていました。

4位 Hotspot/PET SHOP BOYS

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ベテランエレクトロポップミュージシャンによる約3年9ヶ月ぶりの新作。前々作「ELECTRIC」、前作「SUPER」から続く3部作の最終章と位置付けられた本作。毎回、魅力的なポップチューンを楽しませてくれる彼ですが、前々作と前作は悪いアルバムではなかったものの、以前の彼らの作品と比べると、若干物足りなさを感じてしまうアルバムでした。しかし本作はダンスチューンをメインにPSBの本領がいかんなく発揮された、とにかく聴いていて楽しくなるポップスの連続。メロディーメイカーとしての彼らの実力を存分に楽しめた傑作でした。

3位 RINGO DEATHSTARR/Ringo Deathstarr

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正直、各種メディアなどではほとんど話題にのぼらないような作品かもしれませんが…いわゆる「ニューゲイザー」と言われるムーブメントの中で誕生したバンドの一組で、とにかくマイブラをはじめとしたシューゲイザー系バンドへのストレートな愛情が、これでもかというほど感じられるアルバム。率直な話、愛情があふれだしすぎて、ある意味、「そのまま」といった点も否定できないのですが、逆に変なひねりがない分、素直にフィードバックノイズの身をゆだねられる、シューゲイザー好きにはたまらない1作。ちなみに1曲目のタイトルがなぜか「Nagoya」なのもポイント高し(笑)。

2位 The Slow Rush/Tame Impala

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前作「Currents」も大きな評判を得たオーストラリアのミュージシャン、ケヴィン・パーカーによるソロプロジェクト、Tame Impalaの新作。その前作から5年というインターバルを経ての新作となるのですが、ドリーミーなAOR風のサウンドとメロディーがとにかく心地よい傑作アルバムに。どこか哀愁感も覚えるメロディーラインは人なつっこく、ある意味、日本人にとっても琴線に触れそうなメロディーラインとなっており、終始、そのメロに聴き入ってしまいます。かなり久々の新作となりましたが、待ちに待ったかいのあった傑作アルバムに仕上がっていました。

1位 Melee/Dogleg

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これはかなりはまりました!アメリカはデトロイトで結成された4人組バンドDogleg。いわゆるエモコアに属するバンドなのですが、その一方、どこか感じるシューゲイザー系からの影響も心地よく、かつ、メロディーラインは至ってポップにまとまっているのが特徴的。エモーショナルなバンドサウンドながらも意外とポップなメロはいい意味で敷居も低く、eastern youthやNUMBER GIRLあたりが好きなら間違いなくはまりそうなバンド。フルアルバムは本作が初らしいのですが、今後に注目したい、ロック好きなら必聴の傑作アルバムです。

ほかのベスト盤候補としては…

Miss Anthropocene/Grimes
R.Y.C./Mura Masa
EVERY BAD/Porridge Radio
It Is What It Is/Thundercat
Fetch The Bolt Cutters/Fiona Apple
græ/Moses Sumney
Notes On A Conditional Form(邦題 仮定形に関する注釈)/The1975
RTJ4/Run the Jewels

正直言うと、この上半期、良作は少なくなかったものの、ずば抜けた傑作も少なかったかな、という印象を受けます。今回紹介した5枚と、ほかのベスト盤候補としてあげたアルバムは、どれも「どんぐりの背比べ」程度の違いしかなかったように思います。それだけに、どのアルバムも十分、ベスト盤になりえたアルバムでした。逆に言うと、「これは!」といったアルバムもなかったようにも思えてしまいます。

あらためて上半期のベスト5を並べると…

1位 Melee/Dogleg
2位 The Slow Rush/Tame Impala
3位 RINGO DEATHSTARR/Ringo Deathstarr
4位 Hotspot/PET SHOP BOYS
5位 Set My Heart On Fire Immediately/Perfume Genius

コロナ禍で音楽業界も厳しい状況が続いていますが、そんな中でも、下期も少しでも私たちを楽しませてくれる音楽に出会えますように…。

2007年 年間
2008年 年間 上半期
2009年 年間 上半期
2010年 年間 上半期
2011年 年間 上半期
2012年 年間 上半期
2013年 年間 上半期
2014年 年間 上半期
2015年 年間 上半期
2016年 年間 上半期
2017年 年間 上半期
2018年 年間1  上半期
2019年 年間1  上半期

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2020年8月10日 (月)

紆余曲折の10年間

Title:ID+
Musician:志磨遼平

志磨遼平が毛皮のマリーズとしてメジャーデビューしてから10年。本作は、その区切りの年にリリースされた、志磨遼平としてのベストアルバムとなります。まず、メジャーデビュー10年といって率直に感じるのが、まだ10年しか経っていなかったのか、ということ。昨今、ミュージシャン寿命が長くなり、デビューから20年、もしくは30年というバンド、ミュージシャンが珍しくなくなる中、彼のメジャーミュージシャンとしてのキャリアがまだ10年というのは少々意外にすら感じます。

そう感じてしまうのは、志磨遼平のメジャーデビューからの10年間の活動が非常に充実していると同時に、紆余曲折があったから、ということなのでしょう。毛皮のマリーズはメジャーデビューからわずか2年で解散してしまいますが、その間リリースされた3枚のアルバムでも、まずは大きくタイプが異なります。その後、結成されたドレスコーズも、当初はバンド形態からスタートし、バンド色の強いアルバムとなっていましたが、わずか2年強で志磨遼平以外のバンドメンバーは脱退。その後、ドレスコーズは志磨遼平のソロプロジェクトとして現在に至っています。

このように、バンド⇒別のバンド⇒ソロと様々な形態を取りながら活動を続けている彼。当然、その時々によって音楽のスタイルも異なります。毛皮のマリーズの時代はロックンロールやサイケロックなどの色合いが濃いスタイルでしたが、解散直前になると、志磨遼平のソロの色合いが強く、ポップ色が目立ってきます。一方、ドレスコーズは結成当初、再度、ロック色が強い作風となりますが、その後、ソロになると再びポップ色が強くなるのですが、そんな中でたとえあ「オーディション」などはバンドサウンドが強いアルバムになっているなど、ソロとなってからも、ロックとポップの合間に揺れ動いている、それが彼の大きな特徴だったりします。

今回の2枚組となったベストアルバムは、そんな揺れ動く志磨遼平の音楽性を時間軸に沿って並べた…というスタイルではなく、「RIOT盤」「QUIET盤」と並べ、バンド色、ロック色の強い作品を「RIOT盤」、ポップ色が強いアルバムを「QUIET盤」として収録しており、いわば揺れ動く志磨遼平の二面性を、2枚のアルバムで表現した、そんな作品になっていたように感じました。

ただ、そのようにして、あらためて志磨遼平の作品を聴いてみると、いずれの作品も非常にキュートで、胸をうつような、ちょっとレトロで60年代あたりのテイストを感じさせるポップなメロディーが共通項として流れています。例えば毛皮のマリーズ時代の「ボニーとクライドは今夜も夢中」は、ガレージロックのサウンドが流れていながらも、メロディーは胸をキュンとさせるようなものとなっていますし、ドレスコーズ時代の名曲「ゴッホ」も、シャウト気味のボーカルからスタートしつつも、ピアノが入った切ないメロディーが胸をうつナンバーになっています。

「QUIET盤」の方は言うまでもありません。毛皮のマリーズのラストアルバムとなった「THE END」の1曲目「The End Of The World」は1分半の短い曲調ながら、オルゴール調で静かに鳴るサウンドの中、歌われるメロの美しいこと。「Lily」のような軽快なポップチューンが流れてきたり、セルフカバー曲になる「恋愛重症」のような、大滝詠一風のナイアガラポップがあったり、さらに祝祭色豊かなサウンドとメロながら、どこか切なさを感じるメロも印象的な「愛のテーマ」まで、実に魅力的なポップチューンが並んでおり、そのキュートなメロディーラインに、終始、心ときめくのではないでしょうか。

あくまでも希代のメロディーメイカーであり、ポップ嗜好が強い一方、ロックンロールにあこがれを持ち、バンド幻想を抱きつつける、そんな志磨遼平の矛盾が大きな魅力であり、そのせめぎあいの中から名曲が誕生する…いままでも彼の曲からは漠然とそういうイメージを抱いていましたが、今回のアルバムを聴くと、そんな印象をさらに強くしました。おそらく、今後も彼は、この二面性の中で、異なる作風の曲を作り続けるのでしょう。ひょっとしたら、またバンドを結成することもあるかもしれません。ただ、そんな中でも間違いなく、このキュートなメロディーラインはなり続ける…そんな印象を受けます。これからも志磨遼平の活動に注目していきたいところ。あらためて彼の魅力を強く実感できたアルバムでした。

評価:★★★★★


ほかに聴いたアルバム

The Brightness In Rebirth/HAWAIIAN6

約2年半ぶりとなるHAWAIIAN6のニューアルバムは全6曲入りとなるミニアルバム。メランコリックに聴かせるメロディーラインと分厚いバンドサウンドでパンキッシュに展開するスタイルはいつも通りの彼らといった感じ。良くも悪くも大いなるマンネリといった感じもするのですが、6曲という短い内容なだけに、飽きさせることなく一気に最後まで聴くことの出来るアルバムになっていました。

評価:★★★★

HAWAIIAN6 過去の作品
BONDS
The Grails
Where The Light Remains
Dancers In The Dark
Beyond The Reach


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2020年8月 9日 (日)

その魅力は変わらず

Title:Translation
Musician:Black Eyed Peas

いままでグラミー賞を6度授賞。2003年にリリースされたアルバム「Elephunk」から2009年にリリースされたアルバム「The E.N.D.」まで3作連続、全米で300万枚を超える売上をたたき出すなど、文字通り、一世を風靡したHIP HOPグループ、Black Eyed Peas。ただ、その後、2011年に無期限の活動休止。2015年に活動再開を宣言したものの、2018年にリリースした8年ぶりとなるアルバム「Masters of the Sun Vol.1」では、全米チャートで、なんとチャート圏外になるなど、人気面ではかなり厳しい結果となるアルバムとなってしまいました。

本作は、そんな前作から2年ぶりにリリースされる、活動再開後2作目となるアルバム。チャート圏外に終わった前作に比べると、本作はビルボードチャートで52位にランクイン。かつての勢いと比べるとかなり寂しい結果だったものの、それなりの結果を残すアルバムとなりました。ただ、前作「Masters of the Sun Vol.1」でも軽快なポップチューンを聴かせてくれており、その訴求力という面では全盛期に劣らない結果を見せてくれました。今回のアルバムに関しても、前作同様、聴いていてワクワクするような軽快なポップチューンが並んでおり、全盛期に比べて、彼らが決して衰えていないことを感じさせます。

今回のアルバムに関しては、レゲエ、特にレゲトンからの影響が顕著であり、先行シングルともなった「RITMO」からスタートし、強いビートでリズミカルな「FEEL THE BEAT」に、同じくレゲトンのナンバー「MAMACITA」とリズミカルなナンバーが続きます。ここらへん、徐々にテンションがあがってきたあたりで、打ち込みのリズムでBPMも早めな「GIRL LIKE ME」という展開となり、テンションはさらにあがります。さらにスペイン語?での「3,2,1」というカウントが入り、ダンサナブルなチューンが繰り広げられる「VIDA LOCA」へと続いていきます。この展開でリスナーの耳を一気に鷲づかみ。ここらへんのインパクトの作り方には非常に上手いなぁ、と感じさせます。

さらに「TONTA LOVE」でも女性ボーカルのJ.Rey Soulが力強くメランコリックな歌声を聴かせてくれており、これがまた中盤の大きなインパクトに。ちなみに、この新ボーカルのJ.Rey Soul、日本でのアルバム紹介によると新メンバー、みたいに書いてあるのですが、アメリカのWikipediaではメンバーではないような書かれ方をしており、いまひとつ立ち位置が不明…。アメリカの公式サイトのアルバムのクレジットを見る限りだとゲストボーカルみたいな扱いになっています。

その後も80年代な雰囲気を感じる「CELEBRATE」やレゲトンのビートで力強いラップを聴かせる「GET LOOSE NOW」、強いビートがロッキンな「ACTION」など魅力的なチューンの連続。終始レゲトンの軽快なリズムにワクワクさせてくれるようなポップチューンの連続となっていました。

ジャンルについて説明するとレゲエ、HIP HOP、ポップの要素をほどよくミクスチャーしている、という説明になるのでしょうか。ただ、聴いていて非常に敷居の低い、いい意味でのわかりやすさを強く感じます。序盤の楽曲の展開といい、その後のほどよい楽曲のバリエーションといい、彼らの卓越した天性のポップスセンスを感じさせます。普段、HIP HOPやレゲエを聴かない方でも難なく楽しむことが出来る1枚。これだけの作品を作れるのなら、かつてのような大ヒットに再び巡り合うことも難しくないように思います。ちょっと「過去のグループ」みたいなイメージもついてしまっている彼らですが、その健在ぶりを存分に感じることが出来るアルバムでした。

評価:★★★★★

THE BLACK EYED PEAS 過去の作品
THE E.N.D.
THE BEGINNING
MASTERS OF THE SUN VOL.1

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2020年8月 8日 (土)

優しい歌声で「より大きな愛」を歌う

Title:Bigger Love
Musician:John Legend

毎回、クラシカルなソウルアルバムでリスナーを魅了するJohn Legendの約2年ぶりとなるニューアルバム。前作同様、エグゼクティヴ・プロデューサーにトニー・トニー・トニーの元フロントマンであり、ディアンジェロ、アリシア・キーズ、ソランジュなどでも知られる、ラファエル・サディークを迎えた本作は、いつものJohn Legendの作品と同様、非常に優れたソウルアルバムに仕上がっていました。

まず非常に印象に残るのがアルバムタイトル。「より大きな愛」と名付けられた本作は、コロナ禍で混沌とした状況となっている今の世界や、ミネアポリスでの白人警察官による黒人男性絞殺事件に端を発したブラック・ライヴズ・マター運動が繰り広げられる状況の中へのメッセージのように感じられます。ちょっと懐かしいソウルミュージックを彷彿とさせるメロウでグルーヴィーな「One Life」では、タイトルの「One Life」というメッセージが何度も繰り返し歌われており、世界に対する彼のメッセージのように感じます。

また、この曲に限らず、今回のアルバムもまた、クラシカルで、ある意味、王道とも言えるようなソウルミュージックが展開される作品に。ハイトーン気味のボイスで優しく、そして力強く歌われる彼のボーカルは非常の豊潤であり、リスナーの心を包み込むような優しさを感じさせます。1曲目の「Ooh Laa」もまさにタイトルである「Ooh Laa」と優しく伸びやかに歌い上げるボーカルが強く印象に残る楽曲。続く「Actions」もファルセット気味の歌声で歌い上げるメランコリックな曲調が大きな魅力になっています。

その後も、ゆっくりと噛みしめるような歌い上げる感情たっぷりのボーカルが印象的なソウルチューン「Slow Cooker」、コーラスラインも入って、壮大なスケール感を覚える「Coversations in the Dark」、トライバルな打ち込みのリズムをバックに、力強い歌声で優しく歌い上げる「Don't Walk Away」や、ピアノとストリングスをバックに切ないメロディーラインが印象的なバラードチューン「Remember Us」など、サウンド的にはそれなりに今風にアップデートしつつも、基本的には昔ながらのソウルチューンといった雰囲気の、しかし、非常に魅力的なソウルチューンが続いていきます。

ゲスト陣は今回も豪華で、例えば「Wild」ではギタリストのGary Clark Jr.をゲストに迎え、ギターサウンドを加えた、力強く勇壮なサウンドが印象的。「U Move,I Move」ではJhene Aikoをゲストボーカルに迎えて、2人の魅力的なソウルシンガーによる感情たっぷりのデゥオに仕上げているなど、ゲスト陣も楽曲の中で、実に効果的なアクセントとして機能しています。

ラストの「Never Break」は、まさにこのアルバムを締めくくるにふさわしいピアノバラードで、大きな愛で包み込むのような彼の優しい歌声が実に魅力的なナンバー。ゆっくりとその歌声とメロディーラインに聴き入って、胸が熱くなるような楽曲に仕上がっています。最後の最後まで「Bigger Love」というアルバムタイトルにふさわしいアルバムに仕上がっていました。

楽曲としては決して目新しい作品ではないかもしれません。しかし、その歌声とメロディーラインが実に魅力的な、傑作のソウルアルバムであることは間違いないでしょう。そのタイトルといい、まさにこの2020年という時代を象徴することになった本作は、聴いていてとても幸せな気分になるようなそんなアルバムでした。

評価:★★★★★

John Legend 過去の作品
once again
WAKE UP!(John Legend&The Roots)
LOVE IN THE FUTURE
DARKNESS AND LIGHT
A Legendary Christmas


ほかに聴いたアルバム

Thank You For Using GTL/Drakeo the Ruler&JoogSzn

これはおそらく日本では絶対に制作できないようなアルバムです。アメリカはロサンゼルスを拠点に活動するラッパー、Drakeo the Rulerの新作なのですが、現在、共謀と発砲の容疑で刑務所に収監中の彼。本作は、そんな彼が刑務所からの電話によりラップを行い、それをJoogSZNが収録して作成されたアルバム。ちなみにタイトルのGTLとはGlobal Tel Linkという刑務所から外部への電話サービスを提供する会社のこと。そんな会社が存在していること自体、日本からすると驚きですが、それを使って録音したアルバムがリリースされるという点、日米の違いを感じてしまいます。

そんな肝心なアルバムは、ダウナーで物悲しげなトラックに、電話を通じたラップが乗ったスタイル。比較的淡々としゃべっているようなスタイルのラップになっており、内容は人種による境遇の差別を綴った社会的な内容になっているよう。その独特なスタイルもあって非常に印象に残るアルバムになっています。こういうスタイルでアルバムを制作できる環境が良いのか悪いのかはよくわかりませんが、ともすれば犯罪者に対して必要以上にバッシングを浴びせる日本からすると、ミュージシャンに対する寛容さがうらやましく感じる反面、収監の背後にある激しい黒人差別に対しては強く考えさせられる、そんなアルバムです。

評価:★★★★★

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2020年8月 7日 (金)

ヤバTらしいユニークな配信ライブ

ヤバイTシャツ屋さん 無観客ワンマンライブ「無料だから許して!低画質!低音質!5曲だけライブ!!」

会場 オンライン 日時 2020年7月29日(水)21:30~

今日もまた、無観客配信ライブでのライブレポートです。今回の配信ライブはヤバイTシャツ屋さん。今、もっともライブに行ってみたいミュージシャンの一組。平日開催ながら21時半スタートという遅さもあって、まず開始時間にパソコンの前にスタンバイしました。その後、予定時間になるとスタジオが映し出され、やがてメンバー3人が登場。ライブがはじまるかと思いきや、最初はメンバーそれぞれスマホを持って、Tweetのコメントを読みながら、トークからスタート。この日のライブはカメラ1台のみ。音声もカメラについているマイクをつかっているそうです。グダグダな感じのMCがまずは続く。10分以上続いてようやく1曲目になります。

まずは「あつまれ!パーテイーピーポー」からスタート。画質は悪くないのですが(ただカメラ1台のみなので、全くカメラワークがない…)、音質はかなり悪い感じで、高音になると音が割れてしまうほど…。ただ、テンションの高さは十分伝わっていきます。1曲目からかなりハイテンションなスタートとなります。

そのままのテンションのまま「Tank-top of the world」へ突入。力強いサウンドなのですが、若手バンドというイメージがあったがたたずまいも、人気バンドの雰囲気が出てきている感じ。さらにそのまま「かわE」へと導入。たった5曲のライブなのに、最初の10分がMCで、次の10分で一気に3曲も展開していきます。最初からテンションマックスの曲が並んでおり、気分もどんどんあがっていきます。

そして、そのままMCへ。こやまたくやは大きな声を出すのが半年ぶりらしく、3曲で息が切れていました。そのまま、またスマホをいじりつつ、コメントの紹介。ここでこの日の「売り」になっていた超重大発表、とことでドキドキしながら聴いていたのですが、9月30日に4枚目のフルアルバム発表というニュース。ある程度予想していましたが(笑)、これはうれしい発表。タイトルも「ユー・ニード・ザ・タンクトップ」だそうで、これはかなり楽しみです。

そんな重大発表込みのMCが20分近く行われ、その後、ようやく4曲目へ。その次のアルバムに収録される「癒着☆NIGHT」。再び一気にテンションがあがっていきます。そして、そのままラスト「ハッピーウェディング前ソング」へ。音質はかなり悪くて、歌詞が聴きにくいのですが、聴いていても思わず暴れたくなってしまいます。

5曲ながらも久々の「ライブ」なだけにメンバー全員、かなりクタクタな感じ。そしてコメント欄にはアンコールの嵐が。そんなこともあって、アンコールへ。コメント欄でリクエストを応募して、その間にアルバムの紹介などをして息を整えてから、「無線LANばり便利」に。ライブばりのジャンプも取り入れ、まさにパソコンの前ながらもライブのような空気感を味わいつつ、ライブは終了しました。

ライブは予定通りピッタリ1時間。なにげにヤバTはライブを見るのが今回がはじめてだったのですが、非常にテンションが高く、またヘヴィーな演奏とポップなメロが楽しい、終始、ワクワクしっぱなしの楽しいステージでした。「低画質低音質」をうたっていたのですが、音質については、その通り、かなり悪いものに(笑)。ただ、画質については通常の配信レベルの画質になっていて、違和感はありませんでした。それよりもカメラが1台のみの配信で、固定されたカメラ位置から全く動かない映像になっていたのですが、それが逆に、個人的にはライブらしい臨場感を与えていたように感じます。というのも、配信ライブでは、凝ったカメラワークをみせてくれる映像も少なくなく、それはそれで大きな魅力なのは間違いないのですが、実際のライブでは、ステージ上の細部を観れるわけはありません。逆に、今回のヤバTのライブのように、カメラ位置が1か所に固定されていた方が、実際に観客席でステージを見ているような錯覚を味わえたように思います。

途中、グダグダなトークが長く続いたのも彼ららしさを感じますし、バンド演奏はしっかりと力強いプレイを見せてくれました。また、全体的に軽いノリなのも今の若者らしい感じが。以前から一度見てみたかったヤバTのライブ。こういう形とはいえ、とりあえずは彼らのステージを見れて満足しました。次は、是非、本当の生ライブで!早くその日が来ることを祈っています。

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2020年8月 6日 (木)

ボカロP出身バンドが1位獲得

今週のHot Albums

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

いかにも今の時代といった感じの、新進気鋭のバンドが1位獲得です。

今週1位を獲得したのはヨルシカ「盗作」でした。CD販売数及びPCによるCD読取数は2位でしたが、ダウンロード数で1位を獲得し、総合順位でも1位を獲得。当サイトでもアルバムを取り上げたことがありますが、ボカロPとしても活躍していたn-bunaと女性ボーカリストのsuisからなるバンド。メジャー2枚目となるフルアルバムですが、初となる1位獲得となりました。オリコン週間アルバムランキングでは初動売上4万枚で2位初登場。前作「エルマ」の3万5千枚(3位)よりアップしています。

2位には元東方神起のメンバーであり、現在はJYJのメンバーとしても活動しているキム・ジェジュンことジェジュン「Love Covers II」がランクイン。CD販売数は1位でしたが、ダウンロード数3位、PCによるCD読取数は12位に留まり、総合順位は2位に。日本の楽曲をカバーした第2弾アルバムで、今回は上田正樹の「悲しい色やね」や高橋真梨子「for you...」、井上陽水の「少年時代」など、いかにも「日本」的な楽曲のカバーが収録されています。オリコンでは初動売上4万4千枚で1位初登場。直近作で、同シリーズの第1弾「Love Covers」の6万3千枚(1位)よりダウンしています。

3位は先週1位を獲得したBiSH「LETTERS」が2ランクダウンながらもベスト3をキープしています。

続いて4位以下の初登場盤ですが、まず4位には高海千歌(伊波杏樹)from Aqours「LoveLive! Sunshine!! Takami Chika First Solo Concert Album」がランクイン。CD販売数4位、ダウンロード数8位、PCによるCD読取数17位。アニメキャラによるアイドルプロジェクトAqoursの中のキャラクターによるソロアルバム第1弾。オリコンでは初動売上1万2千枚で3位初登場。

8位はテレビ東京系女児向けドラマ「ガールズ×戦士シリーズ」から派生したアイドルグループ、Girls2「私がモテてどうすんだ」がランクイン。CD販売数は6位ながらもその他のチャートがランク圏外となり総合順位はこの位置に。オリコンでは初動売上6千枚で8位初登場。前作「チュワパネ!」の初動1万9千枚(3位)からダウンしています。

9位初登場は男性ボーカリスト、林部智史「II」。CD販売数7位、ダウンロード数50位。タイトル通り、フルアルバムでは2作目となる作品。オリコンでは初動売上8千枚で7位初登場。直近のカバーアルバム「カタリベ1」の7千枚(11位)より若干のアップ。オリジナルアルバムとなる前作「I」の9千枚からは若干のダウン。前作から約2年半ぶりのアルバムと、1枚目から2枚目の間としては少々間が空いてしまった感はあるのですが、初動売上はほぼ前作の水準を維持しており、根強い人気を感じさせる結果となっています。

一方、ロングヒット盤ですが、今週Official髭男dism「Traveler」は4位から10位に大幅ダウン。新譜が多かった影響でしょうが、大幅に盛り返した先週から一転、再び後のない順位となっています。来週は持ちこたえられるか?

さらに先週まで8週連続のベスト10ヒットを維持してきたmilet「eyes」は今週17位までダウン。残念ながらベスト10連続ランクインは8週でとりあえずは終了となりました。

今週のHot Albumsは以上。チャート評はまた来週の水曜日に!

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2020年8月 5日 (水)

米津玄師現象再びか?

今週のHot100

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

米津玄師作詞作曲による新曲が1位獲得です。

今週1位は嵐「カイト」が獲得。もともとNHKの2020東京オリンピックのテーマソングとなるはずの曲でした。一応、来年に延期となっているのですが、来年、無事オリンピックが開幕できれば、この曲が使用されるのでしょうか。最近は配信でのシングルが続いていたので、CDでのシングルとしては前作「BRAVE」以来、約10ヶ月ぶりとなります。CD販売数及びPCによるCD読取数1位、Twitterつぶやき数2位、ラジオオンエア数26位。オリコン週間シングルランキングでは初動売上91万枚で1位初登場。前作「BRAVE」の66万8千枚(1位)よりアップしています。ちなみに嵐は、先週ランクインした配信限定シングル「IN THE SUMMER」も今週5位にランクインしており、2曲同時ランクインとなっています。

さらにこの曲で大きく注目されるポイントは作詞作曲があの米津玄師という点でしょう。まさに今を時めくミュージシャンとのタッグ。ただし楽曲的には比較的シンプルなミディアムテンポのポップチューンで、米津玄師らしい癖はあまり感じられません。ちなみに米津玄師は今週「感電」が8位にランクインしています。ちなみに先日、米津玄師のニューアルバムリリースとあわせて彼の楽曲がついにストリーミング解禁となりました。「感電」はいままでストリーミング数がカウントされていなかっただけに、ストリーミング数を含めると順位を伸ばしそう。この曲もロングヒットとなるのか、注目です。

3位4位はおなじみYOASOBI「夜に駆ける」瑛人「香水」のロングヒットペアが今週も並んでランクイン。今週も「夜に駆ける」はストリーミング数及びYou Tube再生回数で1位獲得。「香水」はストリーミング数2位、You Tube再生回数4位と先週の7位からアップしているものの、「夜に駆ける」の後塵を拝しています。一方、ダウンロード数は「夜に駆ける」が6位に対して「香水」は先週の12位から大きくアップして2位にランクイン。カラオケ歌唱回数も「夜に駆ける」の3位に対して「香水」は1位と、こちらは「香水」が一歩リード。まさにデッドヒートを繰り広げています。

続いて4位以下の初登場曲ですが…今週は1位の嵐以外、ベスト10圏内の初登場曲はゼロという結果となっています。ただ、そんな中で返り咲き曲が1曲。それが10位にランクインしたLiSA「紅蓮華」で、先週の12位から10位にランクアップ。7月20日付チャート以来、3週ぶりのベスト10返り咲き。通算36週目のベスト10入り、4度目のベスト10返り咲きとなっています。特に今週ダウンロード数が14位から9位にアップしており、返り咲きの要因となっています。

ほかのロングヒット曲としてはあいみょん「裸の心」が先週の9位から8位にアップ。通算9週目のベスト10ヒットとなっています。ダウンロード数は9位から5位にアップ。ただYou Tube再生回数が91位から47位にアップしているものの、まだいまひとつの順位に。今後、ロングヒットのポイントであるYou Tubeの再生回数がどれだけ伸びるかがカギになりそうです。

今週のHot100は以上。明日はHot Albums!

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2020年8月 4日 (火)

深い音楽的素養を感じる

Title:2×20
Musician:花*花

2000年に「あ~よかった」と「さよなら 大好きな人」が大ヒットを記録し、その年の紅白歌合戦にも出演。一躍時の人となった女性デゥオ、花*花。ある世代以上の方にとっては懐かしく感じるのではないでしょうか。ただ、残念ながらその後は人気は下降気味に。さらに2003年に所属事務所の事業終了に伴い、活動休止状態になってしまっていました。

その後、2009年頃から再びインディーズにおいて活動を再開。以前にようなヒットには恵まれていませんが、継続的に活動を続け、2020年にはメジャーデビューから20年目に突入。それを記念してリリースされたのがこの2枚組のベストアルバムです。2003年までの活動と、2009年以降の活動でその活動時期が2つに分かれる彼女たちですが、2枚のCDでは、その時期にあわせて、1枚目は2003年まで、2枚目は2009年以降の作品が収録されています。

さて、花*花というと、同じ女性デゥオでよく比較されるのがKiroroでしょう。1998年に「長い間」でブレイクしたKiroroの2年後にブレイクしたのが彼女たち。同じようなシンプルなメロを歌うポップデゥオということもあり、よく比較されることが多いように思います。ただ、日常を描いたシンプルなポップスを歌うという共通項はあるものの、音楽性には違いのある両者。Kiroroというと、主に作詞作曲を手掛ける玉城千春の天性のメロディーセンスに寄る部分が多く、音楽性に関しては素人っぽい部分がある種の魅力にもなっているのですが、それに対して花*花は、2人とも甲陽音楽学院を出ているように、ある程度の音楽的な素養があり、そんな素養に裏打ちされた音楽性が大きな魅力になっているように感じます。

実際に、大ヒットを記録した「あ~よかった」も、ソウルミュージックからの影響を随所に感じられますし、インディーズ時代のシングル曲「赤い自転車」もムーディーに聴かせつつ、ジャズの要素も、その演奏から感じることが出来ます。その後もビッグバンド風の演奏を入れた「恋が育った休日」や、さらには「童神」のような沖縄民謡に挑戦したような曲も見受けられます。

この傾向は、2003年までの活動にも見られますが、2009年以降の活動からも顕著に感じます。Disc2の冒頭を飾る「キャンディ」はゴスペル風のポップスになっていますし、続く「いつも心に花を持て」はニューオリンズ風。「good night honey」はカントリーな楽曲に仕上げていますし、このDisc2に収録している「赤い自転車 新車ver.」では、よりジャズの要素を前に押し出したアレンジに仕上げています。ある意味、「あ~よかった」のブレイクにより、「売れ続ける」ことを意識しなければなかなかったであろう2003年以前の活動よりも、インディーズの自由さがゆえに、より彼女らしい、豊かな音楽性を背景とした楽曲が、Disc2には並んでいるような印象を受けました。

また、そんな様々な音楽性を楽曲に取り込みつつ、作風は至ってポップにまとまっているのも彼女たちの大きな魅力。そしてなにより「あ~よかった」「赤い自転車」でみられるように、素朴な日常を舞台としている、ほっこりと暖かいポップチューンが多いのも彼女たちの魅力に感じます。そして、その方向性は20年たった現在でも全く変わっていません。

ちなみにこのベストアルバム、ユニバーサルミュージックからのリリースとなっており、このベスト盤を機に、メジャーシーンに返り咲くのでしょうか。ここ最近の活動がインディーズということで、さほど目立ったものではなかったために、再びメジャーシーンに戻り、積極的な活動を行ってくれるのならうれしい限り。20年目を迎えて、新たな一歩を踏み出した彼女たち。これからの活躍に期待したいです。

評価:★★★★★

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2020年8月 3日 (月)

配信でもいつも通り

ドキッ!丸ごとベッド・イン ナマ配信おギグ Vol.1

会場 オンライン 日時 2020年7月26日(日)17:00~

昨年、そのステージをはじめてみて、その楽しさとカッコよさに魅了されたベッド・イン。今回は配信でのライブが行われるということもあり、さっそく見てみました。配信ライブで、あの楽しさがどこまで再現できるか…楽しみにしつつ、パソコンの前に陣取ります。

ライブがスタートすると、バンドメンバーがまず登場。そしえ、ボンテージファッションにジュリ扇を振りつつ、ベッド・インの2人が登場します。セクシーなファッションの中、一発目は「♂×♀×ポーカーゲーム」からスタート。いきなりへヴィーなバンドサウンドをガツンと聴かせる楽曲でロッキンな彼女たちの姿を見せてくれます。そのまま「男はアイツだけじゃない」へ。こちらもかなりへヴィーなバンドサウンドをバックに、コロナの中でのうっぷんを晴らすかのように、ベッド・インの2人も声を張り上げて歌い上げます。

その後はMCに。配信ライブながらもMCは通常のライブのノリで、いきなり「パソコン通信の前のみんな!」とかなり懐かしい単語が飛び出します。その後もかなり際どいエロトークやら、昭和の死語満載のトークを展開。中尊寺まいの胸元にカメラがアップするなど、配信ならではの際どいカメラワークも飛び出したり、配信ライブの無観客ライブだったのですが、完全にいつものライブのノリで展開していきます。

そして最新アルバム「ROCK」から「悔しいくらい愛してたあなたにSAYONARA」「LIFE DANCE~人生を踊れ!~」のナンバーが続きます。かなり90年代の色合いが強い楽曲をヘヴィーなバンドサウンドで聴かせてくれて、ちょっと懐かしい気分にも浸りました。

続くMCでは、お色気たっぷりにペットボトルの水を飲んだ後は、配信ライブらしく、チャット機能のコメントを紹介したり、さらにはメンバー紹介と続き、ここで以前、カバーアルバムにも収録された久宝留理子の「『男』」のカバー。個人的にリアルタイムで聴いて大好きな楽曲だっただけに、画面の前でもひとりで大盛り上がりしてしまいました(笑)。

さらに再び最新アルバム「ROCK」から「Everybody 無敵!」に。ジュリ扇を振りかざし、トランシーなサウンドを入れつつ、へヴィーなバンドサウンドも聴かせる楽曲で、テンションはますます上がっていきます。そのテンションのまま「Conscious ~闘う女たち~」へ。こちらも分厚いギターサウンドをバックに、ロックなベッド・インを前面に出したナンバーに。途中、中尊寺まいが歌詞を忘れてしまうハプニングなどもありつつ、ロックなベッド・インを前面に押し出した楽曲が続きます。

その後のMCでは、再びタブレットを持ち出し、チャットのコメントを紹介。さらにライブでおなじみの生着替えタイプを配信ライブでも。大きな紅白の幕が登場し、その後ろでメンバー2人がいわばスーパージョッキーの生着替えタイムに。そして2人、かなり大胆なビキニ姿になり、登場します。

そんなセクシーないで立ちで、「We are "BED IN"」に。こちらもアルバム「ROCK」から、ヘヴィーメタル風のサウンドを前に押し出した、ハードなロックチューンをパワフルに聴かせてくれます。さらに90年代J-POPの匂い満載の「SHOW ME POWER」へ。爽やかながらも分厚いサウンドを存分に聴かせつつ、そのサウンドにはアラフォー世代の私にとっては非常に懐かしさを感じる楽曲となっていました。

これでとりあえず本編は終了。おなじみの「サンクスモニカ~」という言葉を残しつつ、とりあえずメンバーは会場を去ります。そしてその後はアンコールへ。しばらくするとメンバーが再び会場に登場。今度はTシャツを着て登場。このTシャツを含めて、通販でのグッズ紹介となりました。

そうしてはじまったアンコールはまず「Summer Dream」から。ファンキーなベースサウンドとアグレッシブなエレピのサウンドが印象に残るナンバーに。さらにおなじみの「C調び~なす!」へ。この日のライブでは、原曲に比べて重低音を前に押し出した、よりロック色を強めたアレンジになっていました。

そして最後は「ジュリ扇ハレルヤ」へ。ここまでのハードなロック路線から一転、ジュリ扇を振り回しつつ、明るいポップチューンを聴かせてくれ、非常に明るい雰囲気の中、ライブは当初の予定通り、約1時間半で幕を下ろしました。

そんな訳で、初の配信ライブとなったベッド・インのステージ。ある意味、ノリはいつも通りといった感じで、非常に楽しむことが出来ました。特に今回は、ミニアルバム「ROCK」をリリースした後でのステージということもあり、いつも以上にロックなベッド・インの側面を押し出したライブに。バンドサウンドを前面に押し出しており、ロックバンドとしての彼女たちの魅力を存分に感じることが出来るライブ構成になっていました。

エロい単語や昭和の死語満載の彼女たちのMCもいつも通り。なのですが、こちらはやはり観客の反応があってこその部分も否定できず…(苦笑)。ただ、いつものノリで変わらず突き進んでいるのはさすがといった感じ。このノリは、やはり多くのファンと一緒に盛り上がって楽しみたいなぁ。今回の配信ライブ、Vol.1ということで、今後、第2弾、第3弾も期待できそう。かなり楽しいライブだっただけに、次も是非、見てみたいです!…とはいうものの、それよりもやはり1日も早く、彼女たちのステージを生で見てみたい!そうあらためて思ったライブ配信でした。

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2020年8月 2日 (日)

コロナ禍の中での8年ぶりの新作

Title:Rough And Rowdy Ways
Musician:Bob Dylan

オリジナルアルバムとしては2012年にリリースした「Tempest」以来、約8年ぶりとなるボブ・ディランのニューアルバム・・・と聴くと、少々意外な印象も受けてしまいます。前作以来、3枚のカバーアルバムをリリースしていますし、またブートレグ・シリーズのリリースも相次いでいます。さらには、日本にも2018年のフジロックをはじめとしてほぼ隔年で来日しているほか、なんといっても2016年にノーベル文学賞を授与というニュースが大きな話題になるなど、むしろこの8年間、彼の名前は頻繁に、様々なメディアなどで取り上げられており、それだけにオリジナルアルバムのリリースが約8年ぶりというのは非常に意外な印象を受けます。

さて、そんな今回のニューアルバムリリースに先立って、大きな話題となった新曲がありました。それが今回のアルバムでも収録された「Murder Most Foul(最も卑怯な殺人)」という楽曲。3月27日、コロナ禍が世の中を覆い出した頃に「どうぞ安全に過ごされますように、油断することがありませんように、そして神があなたと共にありますように」という言葉を添えてリリースされた、約17分にも及ぶ大作は、ジョン・F・ケネディの暗殺からスタートします。そして歌詞の中で、エタ・ジェイムス、ジョン・リー・フッカー、スタン・ゲッツなどいった偉大なるミュージシャンや名曲をあげ、そのレコードをかけてくれと訴える内容が非常に印象に残る作品になっています。

本作では、その話題となった17分にも及ぶ新曲が、CD版ではあえて別のCDとして、2枚組のアルバムとしてリリース。この長尺の新曲が加わった結果、計70分にも及ぶボリュームある内容に仕上がっています。そしてその新曲の評判の高さも相まって、今回のアルバムは様々なメディアやファンからの評価も非常に高く、60年近くに及ぶ彼のキャリアの中でも、新たな名盤の登場という評価も受けているような作品にすらなっているようです。

ただ、正直言うと、そんな傑作アルバムをここでレビューとして取り上げるには大変気が引ける部分があります…言うまでもなくボブ・ディランというと、昔から非常に熱心なファンの多いミュージシャン。かつ、彼の書く歌詞は、いろいろな示唆に富んだ内容でありつつも、一方では様々に解釈できるような歌詞になっており、「熱心なファン」でもない一音楽リスナーが解釈に挑むには、かなり困難なものがあります。そのま、彼に関しては若干「一言さんお断り」な雰囲気がないわけでもありません。

そんな中、あえて今回のアルバムに関して、聴いた感想というと、全体的にアメリカのルーツ音楽に対して、真摯に目を向けたようなアルバムのように感じます。スタジオアルバムの前作「Triplicate」もアメリカの昔からの歌をカバーした内容であったり、話題となった「Murder Most Foul」で過去のアメリカのミュージシャンや名曲を取り上げたりすることからも、現状を打破するための方法として、そのルーツからヒントを得ようとする意向をどこか感じてしまいます。今回のアルバムにしても、「Black Rider」のようなフォーキーな作品、「Crossing the Rubicon」のようなブルース、さらには「False Prophet(偽預言者)」のようなブルースロックなど、アメリカのルーツ音楽的な部分をふんだんに取り込んだような楽曲が目立ちました。

もっともだからといって懐古主義に陥っていない点も大きなポイントで、それは今回のアルバムのゲストミュージシャンから明らか。Blake MillsやFiona Appleといった、豪華な今をときめくミュージシャンたちが参加しており(まあFiona Appleも十分ベテランのミュージシャンですが)、彼なりに若い世代のミュージシャンの音を積極的に取り入れているような印象を受けます。

また、全体的にはかなり渋い雰囲気のアルバムになっており、その歌詞の内容といい、前述の通り、このアルバムを語るには「一言さんお断り」のような作品ではあるのですが、一方で、意外とポップでメロディアスな楽曲は広いリスナー層にとって耳なじみがよさそう。特に「Mother of Muses」などは、こんな陳腐な表現を使うと熱心なファンからは怒られてしまいそうなのですが、「泣きメロ」という表現すらあてはまりそうな、胸にグッとくるようなメロディーも魅力的。そういう意味では、ある種のわかりやすさも感じられるのも大きな魅力と言えるかもしれません。

確かに、今後のボブ・ディランの代表作として数えられるとしても納得感のあるアルバム。ただ一方、それでもやはり、次の時代を切り開くようなタイプのアルバム、といった感じではなく、「ポップス史に残る歴史的名盤」みたいな評価は、熱心なファンが下駄をはかせすぎな評価のような印象も受けてしまうのですが…。とはいえ、コロナ禍の中で混沌とする世界の中、齢80歳に近づいている彼が、これだけのアルバムを作るのは驚きでもあります。その才能はいまなお衰え知らずということを感じさせる作品です。

評価:★★★★★

BOB DYLAN 過去の作品
Together Through Life
Tempest
Triplicate

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2020年8月 1日 (土)

初のベスト10ヒット作!

Title:
Musician:MUCC

結成から20年超を誇る、既にベテランの域に達しながらも、根強い人気を維持しているヴィジュアル系バンド、MUCC。本作はそんな彼らの約1年4ヶ月ぶりとなるニューアルバム。本作はBillboard、オリコン共にアルバムチャートでベスト10入りを達成。特にオリコンでは、デビュー以来、初となるベスト10ヒットとなっており、かなり意外な印象もある快挙達成となりました。

彼らの前作「壊れたピアノとリビングデッド」は「ピアノ」と「ホラー」をテーマとしたコンセプチャルなアルバムとなっていましたが、今回の作品は一転、MUCCらしさを押し出したようなアルバムになっています。特にハードコアのテイストを色濃く入れたヘヴィーなバンドサウンドと、メランコリックなメロディーラインの歌謡曲的な作風という、彼らの持つ2つの特徴がより楽曲に反映された作品になっているように感じました。

特に1曲目のタイトルチューン「惡-Justice-」は哀愁感あふれるメロディーラインにへヴィーなバンドサウンドが印象的な作品になっていますし、続く「CRACK」もデス声を入れてヘヴィーなサウンドを前面に押し出した作品になっています。ただ、ここらへんのハードコアテイストの強い作品以上に今回のアルバムで目立ったのは、彼らの持つ「歌謡曲」的な要素。幻想的な歌詞も印象的な「海月」は哀愁感たっぷりでまさに歌謡曲的な楽曲になっていますし、「自己嫌悪」などはホーンセッションも入って、ちょっと懐かしさすら感じさせる歌謡曲的な楽曲に仕上がっています。

歌謡曲的なメロながらも、もうちょっとJ-POP寄りな「COBALT」や逆にポップなメロながらもパンキッシュに仕上がっている「My WORLD」のような曲もあり、全体的にメロディーを聴かせる曲も目立つ本作。ただ、歌謡曲風な楽曲に関しては、へヴィーなバンドサウンドがバックに流れているのと、メロディーにインパクトがあり、しっかりとした構成の曲が並んだ結果、J-POPバンドによくありがちな、変なベタさ、泥臭さみたいなものをあまり感じず、ハードコア系が好みのロックリスナー層を含めて、十分楽しめる作品になっているのではないでしょうか。

さらに今回のアルバムに関しては、特に今の社会の風潮を反映した空気感を持つ楽曲が目立つのも特徴的で、「アルファ」の中の

「世界中の君たちへ
いつかこの霧は晴れるから」
(作詞 ミヤ 「アルファ」より)

なんていう一文は、まさに今のコロナ禍の最中のリスナーへのメッセージのように感じます。

そんな感じで、今の世相を反映しつつ、MUCCらしさをしっかりと感じられる作品。ベテランバンドらしく、彼らの持ち味をちゃんと理解した上で、しっかりと曲に反映させた、そんなアルバムになっていたように感じます。個人的には、以前「カップリング・ベストII」で聴かせてくれたような、もっと挑戦的でバリエーションある作風が聴ければもっとよく、ちょっと似たような曲が多かった点は気になったのですが…これが初のベスト10ヒットになったように、ベテランバンドになっても勢いのある彼ら。その勢いはまだまだ止まらなさそうです。

評価:★★★★

MUCC 過去の作品
志恩
球体
カルマ
シャングリラ
THE END OF THE WORLD
T.R.E.N.D.Y.-Paradise from 1997-
脈拍
BEST OF MUCC II
カップリング・ベストII

壊れたピアノとリビングデッド

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