昭和ノスタルジーを感じる
Title:シン・スチャダラ大作戦
Musician:スチャダラパー
前作「あにしんぼう」から約4年。今年、彼らのデビュー作で「名盤」の誉れ高いアルバム「スチャダラ大作戦」から30年という記念すべき年にニューアルバムがリリースされました。その名も、その30年前のアルバムにちなんだ「シン・スチャダラ大作戦」。「シン・ゴジラ」からスタートした、往年の作品のリメイクあるいは続編的な作品に「シン~」と名付けるスタイルがちょっとした流行りみたいになっているのですが、今回のアルバムもそれにちなんだタイトルになっており、30年という区切りの年、まだまだ最前線で活躍し続ける彼らのあらたな一歩といった感じのアルバムになっています。
そんなアルバムということもあってか、今回の作品、いままでのアルバム以上にレトロな「昭和」感が全面に押し出された作風になっていました。まずジャケット。今回のアルバムは特典CDの異なる3種類のジャケットが用意されています。上で表示しているのは「S盤」のジャケットなのですが、懐かしいSFドラマを彷彿とさせるようなジャケットが特徴的。他には
P盤は完全にウルトラマンをイメージしていますし
D盤は昭和感あふれるサスペンスドラマをイメージしたジャケットとなっています。
ほかにも17歳の頃を描いたリリックが特徴な、「セブンティーン・ブギ」では「DCブランドは数万円/むさぼるドムドムバーガー」だの、「春マゲドン」の「あの頃 流行した大予言/なんつったっけ?ほら ゴシマベン?」だの、昭和レトロ的な「単語」が印象的。フルアルバムとして前作となる「1212」でもこのような顕著がはっきりしていたのですが、今回のアルバムに関しては、特に30年の彼らの活動を総括するような、ノスタルジックな雰囲気のあるリリックが目立ったように感じます。
さらに今回のアルバムの聴きどころといえば、やはり彼らと同様、日本のHIP HOPシーンの黎明期を築き上げ、かつ今なお第一線で活躍し続けているRHYMESTERとのコラボ「Forever Young」でしょう。まさに日本のHIP HOP界の「リビングレジェンド」とも言うべき2組のグループがコラボ。タイトル通り、いまなお現役で続ける彼らの決意・・・というほどの堅苦しいものではないのですが、彼ららしい、タイトル通り、いまなお「若く」活動を続ける彼らのスタイルをリリックに綴った楽曲となっています。
トラック的にはレトロでムーディーな「セブンティーン・ブギ」やサマーソング風の「ヨン・ザ・マイク」、ファンキーなリズムが特徴的な「マイ レギュレーション」などバラエティー豊富。全体的に「今風」といった感じはないものの、ビート感などはそれなりに今風にアップデートしており、そういう意味ではベタで陳腐といった印象も感じさせません。
ただ、今回のアルバムで若干賛否がわかれそうなのが、上記の通り、ジャケットの異なる3種類のバージョンがリリースされているのですが、特典CDがそれぞれ別についてくる点。それぞれ、彼らの過去の楽曲を様々なアレンジをほどこしたインストカバーになっているのですが、S盤は和楽器、D盤はオルゴール、P盤はボッサ風のカバーになっており、全部聴くにはアルバムを3枚買う必要が出てきてしまいます。正直、ちょっとあざといやり方に感じてしまい、否定的な意見も少なくないようです。このインストカバーについて聴いてみたのですが、こちらはおなじみの彼らの楽曲に意外なアレンジをほどこしているという点ではユニークなのですが、いずれも喫茶店などのBGMで流れてきそうな「無難なインスト」といった感じで、3枚わざわざ買い集めるほどの出来ではないかも・・・。ちなみに、こちらはサブスプなどで配信は行われていないのですが、レンタルはされているようなので、よほど熱心なファンではない限り、レンタルで借りて聴いてみるのがよいのかもしれません(・・・ってあまり推奨できるやり方ではないのかもしれませんが・・・)。
そんな点、「売り方」にちょっと残念な部分はありつつも、本体の部分はスチャダラの良さがしっかり出た、ちょっとノスタルジックな雰囲気もあわせて傑作なアルバムだったのは間違いありません。デビューから30年以上が経過しても、まだまだ現役感あふれる彼ら。その活躍はこれからも続きそうです。
評価:★★★★★
スチャダラパー 過去の作品
THE BEST OF スチャダラパー 1990~2010
11
CAN YOU COLLABORATE?~best collaboration songs&music clips~
1212
あにしんぼう
ほかに聴いたアルバム
十色定理/Plastic Tree
オリジナルアルバムとしては約2年ぶりとなるPlastic Treeの最新作。この「十色定理」というタイトルは「平面上のいかなる地図も、隣接する領域が異なる色になるように塗り分けるには4色あれば十分」とする四色定理から取られているそうです。そういう意味では、本作に収録されている10色でPlastic Treeは塗分けられる、という意味でしょうか。基本的にメランコリックなメロディーラインと、ノイジーで分厚いギターサウンドという、彼ららしい曲の中に、エレクトロサウンドやディスコチューン風の楽曲もあったりして、確かにいろいろな側面からPlastic Treeを表現したアルバムであり、なおかつ、彼ららしさも強く感じれる作品となっていました。
評価:★★★★
Plastic Tree 過去の作品
B面画報
ウツセミ
ゲシュタルト崩壊
ドナドナ
ALL TIME THE BEST
アンモナイト
インク
echo
剥離
doorAdore
続 B面画報
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