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2020年7月 5日 (日)

静と動のサウンドのバランスが素晴らしい

Title:Set My Heart On Fire Immediately
Musician:Perfume Genius

アメリカはシアトルに拠点を置くシンガーソングライター、マイク・ハドレアスのソロプロジェクトPerfume Genius。毎回、アルバムが高い評価を受けている彼の約3年ぶりのアルバム。個人的には名前は知っていたものの、実はいままで、アルバム単位で彼のアルバムをチェックしてきませんでした。そんな彼の本作も高い評価を得ているため、今回はじめてチェックしてみたのですが・・・非常に美しいメロディーとサウンドの音世界に一発ではまってしまうアルバムになっていました。

まずアルバム冒頭「Whole Life」は彼の美しいハイトーンボイスでゆっくりと荘厳な雰囲気でスタート。と思えば、途中からピアノのアルペジオが静かにスタートし、その後にはバンドサウンドも入り、一気に分厚く、そして幻想的な雰囲気に。この展開にまずはゾクゾクと来ます。

かと思えば続く「Describe」はゆっくりとギターノイズが覆いつくすダウナーな楽曲に。ポップな歌のバックに流れるホワイトノイズはどこかシューゲイザーの雰囲気も感じさせる楽曲になっており個人的にはかなり壺。まずは冒頭の2曲だけでグッと彼の楽曲にはまってしまいました。

アルバムは、基本的にファルセット気味のハイトーンボイスがポップな歌を歌い上げる、ポップな楽曲がメイン。「Leave」「Moonbend」といったように、比較的静かな雰囲気のサウンドと美しいメロディーラインで幻想的な楽曲を聴かせてくれます。ただ一方、かと思えば分厚いサウンドを聴かせるダイナミックな楽曲が所々に入っており、アルバムの中でのちょうどよいインパクトとなっています。例えば「Your Body Changes Everything」などは、打ち込みのサウンドにストリングスを織り込んだダイナミックなサウンドが魅力的な楽曲に。「Nothing at All」もノイジーなサウンドを主軸に据えたテンポよい楽曲が非常に魅力的になっています。

さらに終盤の「Some Dream」も楽曲の序盤はファルセットボイスと静かなサウンドで幻想的にスタートしつつ、途中から分厚くダイナミックなバンドサウンドが入り込み、アバンギャルド風な展開に。終盤は一転、ピアノやストリングスで荘厳な雰囲気となり楽曲を締めくくるという、ユニークな構成の楽曲となっており、アルバムに大きなインパクトを与えています。

最後の「Borrowed Light」は、どこか不穏な雰囲気をかかえながらもファルセットボイスで静かに締めくくり。ストリングスの音色も非常に美しい楽曲に仕上がっており、アルバムの締めくくりにふさわしい楽曲になっています。

そんな訳で、非常に美しいメロディーラインとボーカル、そしてダウナー気味なサウンドに対して、所々入るダイナミックなサウンドがバランス良くとても心地よい、そんな理想的なポップアルバムになっていた本作。今回、はじめて彼のアルバムを聴いたのですが、すっかりはまってしまいました。まさに「静」と「動」のサウンドのバランスが実に素晴らしい作品だったと言えるでしょう。年間ベストクラスの素晴らしい傑作アルバムでした。

評価:★★★★★

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