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2020年7月24日 (金)

ボーカリストとしての自信

Title:MTV Unplugged(Live At Hull City Hall)
Musician:LIAM GALLAGHER

今年1月、配信限定でアコースティックアレンジアルバムをリリースしたリアム・ギャラガー。本作はある意味、その前作にリンクする部分もあるかもしれません。昨年8月、イギリスはキングストンのハル・シティ・ホールで収録された「MTVアンプラグド」を音源化した作品。当日は、全15曲披露されたそうですが、そのうちソロ曲とoasisの楽曲5曲がそれぞれ選曲されて収録されたアルバムになっています。

まず、1月にリリースされたアコースティックアレンジアルバム「Acoustic Sessions」でも同じようなことを感じたのですが、まず本作を聴いて、リアム・ギャラガーのミュージシャンとしての、あるいはボーカリストとしての自信を感じるアルバムになっていました。まずは「Acoustic Sessions」同様、oasis曲とソロ曲がそれぞれ対等に収録されている点。並べて聴かせることにより、ソロ時代の曲もoasisの曲と比べて劣っていないということを、強く主張しているように感じる選曲になっていました。

特に選曲では「Acoustic Sessions」と被る部分ではあるのですが、oasisの大名曲「Stand By Me」を披露しているほか、ノエルボーカル曲の「Sad Song」も選曲。ここらへんは露骨に、ノエルに対して半分喧嘩を売っているような感じもします(笑)。ノエルボーカルゆえに落ち着いた印象を受けるoasisバージョンと比べると、リアムの特徴的なボーカルもあり、より迫力の増した感のある作品になっており、ここらへん、どちらが上か、と言われると、好き嫌いがあるかなぁ…といった感じでしょうか。

もっとも、「Acoustic Sessions」の時も感じたのですが、ソロ曲とoasis曲を並べると、確かにソロ曲が健闘しているというのは間違いないと思う反面、聴き慣れているという側面は否定できないものの、そんなソロ曲の中にまじってoasis曲がスタートすると、やはり耳を惹きますし、思わず一緒に歌ってしまうようなメロディーのキャッチーさはずば抜けたものがあります。ここらへんはどうしても仕方ない部分ではあるんでしょうが。

ただ、今回のアルバムで最もリアムのミュージシャンとしての、というよりもボーカリストとしての自信を感じられたのは、それ以上にその歌い方でした。今回はアコースティックセッションでミディアムテンポの曲がメインだったから、という点もあるのですが、今回のライブでの彼の歌い方は非常に落ち着いています。昔の彼のボーカルといえば、若さゆえのふてぶてしさと、ロックンロールスターとして自分を大きく見せようとする姿勢がボーカルに反映されていましたが、今の彼のボーカルは、いい意味で肩の力が抜けたように感じます。

特にラストの「Champagne Supernova」などはストリングスやピアノの演奏をバックに非常に落ち着いた雰囲気で、感情もこもったボーカルが魅力的な作品に。彼のボーカリストとしての力量がより増して、また包容力も感じさせる、そんなステージを感じることが出来ました。

今回はMTVアンプラグドで15曲披露して、そのうち10曲のみということで、残り5曲についても是非とも聴いてみたい感じがするのですが…何年かしたら「完全版」とかリリースされそうだなぁ。選曲について1月にリリースされた「Acoustic Sessions」と被る部分が少なくなく、その点だけはちょっと残念な部分は否定できないのですが、それを差し引いても、彼の現在の立ち位置がしっかりと示されたライブアルバムだったと思います。ボーカリストとしてもミュージシャンとしても、oasis時代からさらに成長し続ける彼。これからの活躍も楽しみです。

評価:★★★★★

Liam Gallagher 過去の作品
AS YOU WERE
Why Me?Why not.
Acoustic Sessions


ほかに聴いたアルバム

Pick Me Up Off The Floor/Norah Jones

前作「Begin Again」から約1年2ヶ月。早くもノラのニューアルバムがリリースされました。その前作はWILCOのジェフ・トゥイーディーとの制作も話題となった非ジャズの要素の強いアルバムでしたが、今回のアルバムも1曲目「How I Weep」ではエキゾチックな雰囲気を入れたり、さらに2曲目「Flame Twin」は完全なブルースロックのナンバーになっていたりと、前作から続き、彼女の挑戦心が感じられる展開となっています。ただ一方、それ以降はムーディーでジャジーな作風の曲が並び、ある意味、ノラらしい曲調に。前作ではその作風ゆえに若干拍子抜けにあったファンも少なくなかったようですが、今回のアルバムはそんなファンでも満足できそうなアルバムになっていたのではないでしょうか。その一方、序盤のような彼女の音楽的な幅を感じさせる曲もあり、ノラのミュージシャンとしての実力をしっかりと感じられるアルバムになっていました。

評価:★★★★★

NORAH JONES 過去の作品
THE FALL

...FEATURING NORAH JONES(ノラ・ジョーンズの自由時間)
LITTLE BROKEN HEARTS
COVERS(カヴァーズ~私のお気に入り)
foreverly(BILLIE JOE+NORAH)
DAY BREAKS
First Sessions
Begin Again

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