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2020年7月28日 (火)

突き抜けたアルバム

Title:彩脳
Musician:TK from 凛として時雨

凛として時雨のボーカリスト、TKこと北嶋徹のソロアルバム。凛として時雨としての活動とほぼ平行してソロ活動を継続的に続けている彼。ソロとしては約3年7ヶ月ぶりとなるアルバムですが、その間に凛として時雨のアルバムもリリースしているので、まさに交互に活動を続けているといった感じなのでしょうか。ある意味、バンドとソロとしてのバランスを上手く取りつつ活動を続けているといった感じがあります。

もともと、以前からソロとしてはダイナミックで分厚いバンドサウンドで感情たっぷりにぶつける楽曲がメインとなっており、そのメランコリックさを前面に押し出したメロディーラインと、そんなメロをバックアップするように音を詰め込んだ分厚いサウンドは、良くも悪くも「ベタベタ」という印象がありました。ただ、一方、ともすれば躊躇しそうなそんな路線ながらも、彼の楽曲は完全にその方向性に迷いはなく、ある種、「突き抜けている」といった印象も持つような楽曲が並んでいます。

まさに今回のアルバムに関してもそれ。これでもかというほどのメランコリックなメロディーラインに、これでもかというほどの分厚いバンドサウンドの曲が並んでおり、楽曲として完全に突き抜けているといった印象を受けるアルバムになっています。いままでの作品も同じようなベクトルのアルバムが多かったのですが、今回の作品は、そんな中でも特に突き抜けた感のあるアルバムになっていたように感じました。

1曲目を飾るタイトルチューンの「彩脳-Sui Side-」などはまさにその典型例。ピアノやストリングスがこれでもかというほどダイナミックに、かつメランコリックにサウンドを奏でる楽曲となっており、タイトルチューンであるからこそ、このアルバムの方向性を決定づけている楽曲となっています。

ただ基本的にそのようなサウンドがベースになりつつ、「インフィクション」ではピアノでしんみりと聴かせるナンバーになっていたり、「melt」は打ち込みのサウンドが大きなインパクトとなっており、かつヨルシカのsuisがゲストボーカルとして参加。女性ボーカルがひとつのインパクトとして機能しています。

その後も泣きメロが印象に残る「片つ」、ボーカルがシャウトし、パンキッシュなサウンドがさく裂するロッキンな「凡脳」などバリエーションのある展開に。最後はピアノでしんみり聴かせる「copy light」でほどよい後味を残しつつ、アルバムは幕を下ろします。

サウンド的にはメランコリックなピアノやストリングスの音が、ひとつひとつ聴くと繊細さを感じるものの、全体的にはそのようなサウンドが重なるダイナミックに展開する構成になっているため、正直なところ若干「大味」といった印象を受けてしまいます。ただ、哀愁たっぷりのメロディーラインを含めて、このある種の「わかりやすさ」が大きな魅力。最初にも書いた通り、「ベタベタ」といった印象を受ける部分もあるのですが、ある意味、サウンドに迷いはなく突き抜けており、最初はちょっとあまりにもベタなサウンドに食傷気味になるかと思いきや、いつのまにか、すっかりサウンドにはまっている、妙な中毒性のあるアルバムになっていました。

ここ最近のTKのアルバムは、彼の方法論が確立され、ある種の「大いなるマンネリ」を感じる部分が少なくありませんでした。今回のアルバムに関してもそういった部分がある点は否定できません。ただ、この路線を突き抜けることにより、マンネリすら吹き飛ばした、そんな作品になっていたように感じました。このまま、さらに突き抜けるのか?また、次にリリースされるであろう、凛として時雨にどのように反映されるのか?とても楽しみです。

評価:★★★★★

TK from 凛として時雨 過去の作品
flowering
contrast
Fantastic Magic
Secret Sensation
white noise

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