王道J-POP
Title:REVIEW II ~BEST OF GLAY~
Musician:GLAY
全4枚組となるGLAYのベストアルバム。タイトルになった「REVIEWII」ですが、このタイトルの元となる第1弾「REVIEW」は1997年にリリースされたGLAYのベストアルバム第1弾。あの当時、GLAYといえば、まさにこの世の春を謳歌した人気バンドで、この「REVIEW」も初動売上で200万枚を突破するなど、社会現象ともいう大ヒットを記録していました。特に「REVIEW」がリリースされた1997年といえば翌年1998年と並んでCDセールスが過去最高を突破した時期。1997年はミリオンヒットがシングルで16枚、アルバムで22枚も記録しており、今の時代からすると隔世の感のある時期でもあります。
それから23年。本作は見事1位を記録したものの、初動売上は6万枚と売上枚数は「REVIEW」の20分の1以下という記録は、20年以上の歳月を経ているもののCDの売上をめぐる状況の大きな変化を感じざるを得ません。ただ、とはいうもののオリコン週間アルバムチャートで1位を記録しており、20年以上にわたって人気を持続しているというのは驚き。正直、20年前に「REVIEW」が大ヒットしていた頃には、この人気は10年持続できるかどうか・・・と思っていただけに、GLAYの人気がこれだけ持続できているというのは予想外でした。
さて、そんなGLAYのオールタイムベストとも言うべき本作。4人のメンバーそれぞれが選曲した形でのベスト盤となっています。そしてあらためて彼らの曲を聴いて感じるのは良くも悪くも、彼らがまさに90年代のJ-POPというイメージを代表するミュージシャンなんだ、という点でした。
彼らの楽曲はパッと聴いた感じだとバンドサウンドを前面に押し出したギターロック。少し聴いた感じだと洋楽からの流れを受け、歌謡曲的要素は薄いように感じます。ただ、その中身と言えば、その向こうにある音楽的ルーツがほとんど見えません。あえて言えばBOOWYをスタートとするビートロックの影響を強く受けているのですが、BOOWYの音楽では感じられる洋楽的要素をGLAYの曲からはほとんど感じられません。一方、メロディーラインはと言うと、実は非常にウェットな、歌謡曲的要素を強く感じられるメロディー。リズム主導の洋楽と比べて、あくまでもメロディー主導という楽曲の作り方も実に歌謡曲的。バンドサウンドという「洋楽的な様相」を持っていながらも、その中にあるのはルーツレスなサウンドに歌謡曲的なメロという点が、実にJ-POP的という点を強く感じます。
それが悪い方向に出てしまっているのが、特に今回のベストアルバムの後半、Disc3,4。特に2000年代以降のGLAYは良くも悪くもロックバンド然とした方向を目指している部分があって、バンドサウンドをより前面に押し出した「ロック」な作風を作り出そうとしているのですが、正直、いまひとつルーツの部分が弱い点が否めず。ただギターサウンドをヘヴィーにしただけの陳腐なJ-POPの曲が少なくありません。特に「反省ノ色ナシ」のように、社会派を目指している曲が特に陳腐で、一応「反体制」的なノリを作ろうとしている割りには、曲の中身は何の批判もしておらず、無難にまとめており、いかにも売れ線バンドといった感じの非常にカッコ悪い曲に仕上げられてしまっています。
そういう意味では彼らの持ち味が最も感じられるのは、やはり売れ線のヒット曲を並べたDisc1,2でしょう。特にDisc2は彼らの全盛期の大ヒット曲揃いで、トータルセールス数は何万枚になるんだ?と言った感じのミリオンヒットが並びます。リアルタイムで体験した世代としては、やはり聴いていて純粋に楽しかったですし、今、聴いても思わず一緒に歌ってしまうような、なじみやすいメロディーラインがやはり大きな魅力。特に90年代ヒット曲はサビだけは異様にインパクトがあるものの、それ以外の部分はやっつけという楽曲が少なくないのですが、少なくとも彼らの曲に関しては、楽曲全体でメロディーをしっかりと聴かせる構成になっており、このメロディーメイカーとしてはやはりその実力を強く感じます。
他にもバンドサウンドがメインなのにストリングスなどをいれて妙にボリューム感を出しているアレンジだとか、いかにも90年代J-POPらしさがつまっているGLAY。というよりも、彼らのようなスタイルを、今、「90年代のJ-POP風」と感じるのでしょう。そんなミュージシャンがいまでも全盛期には大きく及ばないものの一定以上の人気を確保しているというのは・・・ある意味、90年代以降、日本の音楽シーンに大きな変化がない、というネガティブな要素も感じてしまうのですが・・・。
4枚組でボリューム感のあるベスト盤なだけに、どちらかというと熱心なファンや90年代にリアルタイムではまっていたかつてのファン向けのアイテムといった感じでしょうか。ストリーミング配信も行われているだけに、今の若い世代はかつてのヒット曲だけでもピックアップして聴いてみるのも悪くないかもしれません。良くも悪くもあの時代を思い出すような、そんなベスト盤でした。
評価:★★★★
GLAY 過去の作品
GLAY
JUSTICE
GUILTY
MUSIC LIFE
SUMMERDELICS
NO DEMOCRACY
ほかに聴いた作品
Happy Ending/大滝詠一
また出てしまった…といった感の強い大滝詠一の「ニューアルバム」。今回は彼が「はっぴいえんど」としてデビューして50周年を記念してリリースされたアルバムだそうで、主にテレビドラマのために書き下ろされた作品などを中心に、いままで未収録だった曲をおさめたアルバム。初回盤では「Niagara TV Special Vol.1」と題して、テレビスポット用のバージョン違いやTVサイズへのエディット版などを収録した音源集になっています。
彼の逝去後、次々と登場する「未発表音源」を収録したアルバムには、かなり疑問を抱きつつ、この作品にしても楽曲によってはデモ音源に近いものもあったりして、これは完璧主義の彼が世に出すことを望んだのか?と考えるといささか疑問。もちろん彼のような偉大な音楽家が残した作品はどのようなものでも価値があり、それを発表することを一概に否定できるものではないのですが・・・そういった点を差し引いても、基本的には熱心なマニア向けな作品に近く、「ニューアルバム」的に取り扱うのはちょっと疑問が残る作品に。デモ的な音源が多いとはいえ、珠玉のポップソングが並び、それなりに魅力的な点は間違いないのですが。
評価:★★★★
大滝詠一 過去の作品
EACH TIME 30th Anniversary Edition
Best Always
NIAGARA MOON -40th Anniversary Edition-
DEBUT AGAIN
NIAGARA CONCERT '83
GOOD VIBRATIONS 2/堀込泰行
様々なミュージシャンとのコラボで話題を集めた堀込泰行のEP「GOOD VIBRATIONS」の第2弾。本作でもSTUTSやLITTLE TEMPOといった様々なミュージシャンたちとのコラボに挑戦しています。ただ、どの曲もミディアムテンポで聴かせる作品が並んでおり、堀込泰行らしいゆったりと聴かせるポップソングが並んでいるのですが、コラボとして堀込泰行のイメージを大きく刷新するような作品はなく、堀込泰行のイメージが先行して、コラボ相手の色が薄く、若干インパクトは弱かったような印象も。良質なポップアルバムであることは間違いないのですが。
評価:★★★★
堀込泰行 過去の作品
River(馬の骨)
"CHOICE" BY 堀込泰行
One
GOOD VIBRATIONS
What A Wonderful World
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