神よ、敵を倒す方法を100通り以上も与えてくれたことに感謝します
Title:THANK GOD, THERE ARE HUNDREDS OF WAYS TO KiLL ENEMiES
Musicain:SiM
レゲエパンクバンドSiMの約4年ぶりとなるニューアルバム。ちょっと久々といった感のあるニューアルバムですが、ビルボード、オリコン共にチャートでは2位を獲得し、その人気のほどを感じさせる結果となっています。SiMといえば、以前はフェス受けしやすい、よくありがちなヘヴィーロックバンドといったイメージもあったのですが、前作「THE BEAUTiFUL PEOPLE」では楽曲のバリエーションがグッと増し、非常におもしろいバンドに変貌を遂げた、といった印象があります。
そして今回のアルバムでまず目を惹くのがそのアルバムタイトル。直訳すると「神よ、敵を倒す方法を100通り以上も与えてくれたことに感謝します」といった感じでしょうか。過去に候補にあがったTシャツのデザインに使われていた言葉から取ったそうですが、SiMの幅広い音楽性を象徴させるような言葉ということもあってアルバムタイトルに採用となったそうです。
今回のアルバムに収録された楽曲についても、アルバムタイトル通り、バラエティー富んだ作風の楽曲が魅力。それも1曲の中に様々な音楽性を取り込みつつ、緩急つけて展開していく楽曲がユニークで、耳を惹かれる楽曲が並びます。まず1曲目の「No One Knows」はシンセを取り込み、デジタルな作風からスタートさせつつ、疾走感あるリズミカルテンポで展開。さらにデス声を入れて、へヴィーな印象も強く受ける作風となっています。
さらに「Devil in Your Heart」では裏打ちでテンポよいリズムから、どこかコミカルなメロも耳を惹きます。「BASEBALL BAT」はレゲエのリズムとハードコアなサウンドを取り込みつつ、サビではみんなで声を揃えて歌い上げられそうな、メロディアスパンクの要素も強く感じられるような作風になっていますし、続く「Smoke in the Sky」はレゲエの要素を強く打ち出し、タイトル通り、スモーキーな雰囲気も強く感じさせます。
その後も「CAPTAiN HOOK」ではファンキーなリズムを取り入れていますし、「SAND CASTLE」はレゲエのリズムをベースに、あっこゴリラもゲストに迎え、ラップの要素を前におしだした楽曲になっています。そして本編ラストになる「FATHERS」ではミディアムテンポでスケール感のある、聴かせるナンバーに。曲中、ファイナルファンタジーっぽいサウンドが流れるのは気のせいでしょうか?
そんな感じで、レゲエとハードコアをベースにしつつ、バラエティー富んだ作風を感じさせるのが前作同様大きな魅力となっている本作。ただ前作に比べると、よりへヴィーロックの色合いを押し出したため、「緩急つけた」というイメージはちょっと弱くなってしまった感もありますし、メロディーラインについても前作に比べるとフックが弱く、個人的には前作の出来には至らなかったかな、というのが正直な感想となってしまいます。
ただ、前作ほどの出来ではなかったにしろ、SiMというバンドの実力と魅力をしっかりと感じることが出来たアルバムになっていたことは間違いありません。「敵を倒す100通りの方法」が確実に彼らが持っていることを、あらためて実感できる1枚でした。
評価:★★★★★
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