グローバルな視野も取り入れて
Tilte:Tamotait
Musician:Tamikrest
2006年にアフリカはマリで結成されたトゥアラグ族によるバンド、Tamikrest。かのTINARIWENからの影響を受けているグループで、彼らと同じく、その音楽は「砂漠のブルース」と呼ばれたりしています。特に「新世代の砂漠のブルース」と呼ばれることの多い彼らも、なにげに結成から14年目を迎える中堅バンド。約3年ぶりとなるニューアルバムで、既に5枚目の作品となります。
私がそんな彼らのアルバムを聴くのもこれが3作目。以前の彼らのアルバムレビューにも書いたのですが、彼らの大きな特徴として欧米のロックミュージックから大きな影響を受けているという点。「砂漠のブルース」という評判の通り、ブルージーなギターが大きな特徴なのですが、Tamikrestの場合はTINARIWENに比べて、よりロックとの親和性があるダイナミックなサウンドが特徴的となっています。
今回のアルバムでも例えば冒頭を飾る「Awnafin」はコールアンドレスポンスやこぶぎを聴かせたボーカルにトライバルな要素を見て取れるものの、ノイジーなギターを中心としたバンドサウンドを前面に押し出した曲調は、まさにロックの要素を強く感じます。また「Anha Achal Wad Namda」も疾走感あるギターサウンドがメインとなっている楽曲は、完全に「ギターロック」とカテゴライズされるような曲調。ロック好きならアフリカ音楽云々関係なく、そのダイナミックなサウンドを楽しめる楽曲になっています。
もちろん、「Azawad」や「Tihoussay」など、メランコリックに聴かせるナンバーはアフリカの大地を彷彿とさせるような雄大なスケールを感じさせる楽曲に。まさに雄大なサハラ砂漠を思い出させるような(・・・ってもちろん行ったことはないけど)楽曲となっており、「砂漠のブルース」というイメージがピッタリと来るような作風となっています。
さらに今回のアルバムで大きな特徴となっているのが、多種多様なミュージシャンとのコラボ。まず「Timtarin」ではモロッコの女性シンガー、ヒンディー・ザハラをフューチャーし、魅力的なデゥオを聴かせてくれます。この楽曲はほかの曲に比べて、よりアラブ系の音楽の影響が強く、よりエキゾチックな雰囲気を感じさせる曲になっています。
そして最後を飾る「Tabsit」では、なんとOKI AINU DUB BANDでおなじみのトンコリ奏者のOKIと、三味線奏者の坂田淳が参加。郷愁感たっぷりのナンバーに仕上がっています。いわばアイヌ音楽と日本の音楽と融合したこの曲…といっても、トンコリの音色にアイヌ音楽の要素は感じつつ、明確な和風の音色は薄いように感じるのがちょっと残念ですが、ただ、この多種多様なミュージシャンとのコラボに、彼らのグローバルな視野を感じることが出来ます。
基本的には彼ららしい「砂漠のブルース」を主軸にしつつも、欧米のロックやアラブ音楽、さらにはアイヌや日本の音楽まで取り入れたという彼らの作品は、グローバルで活躍する彼ららしい柔軟さも感じることが出来ます。また、ロックからの影響の強さもあり、多くのリスナー層が違和感なく楽しめる作品になっているのも魅力的。アフリカの音楽になじみのある方もそうでない方も、問題なくお勧めできる傑作です。
評価:★★★★★
ほかに聴いたアルバム
Satin Doll/Sam Gendel
ロサンゼルスを拠点に活躍する新進気鋭のマルチ・インストゥルメンタリスト、Sam Gendelのニューアルバム。本作では、マイルス・デイヴィスの「Freddie Freeloader」、チャールス・ミンガスの「Goodbye Pork Pie Hat」、デューク・エリントンの「Satin Doll」といったジャズの名曲を、彼なりのスタイルで再構築した作品が収録。基本的に今風のエレクトロチューンにアレンジされているのですが、その中に伝統的な要素も感じられ、この新しいスタイルと伝統的なスタイルのバランスがユニーク。いわば流行りのエレクトロジャズなのですが、確実に感じるSam Gendelとしての個性に強い魅力を感じるアルバムでした。
評価:★★★★★
3.15.20/Childish Gambino
俳優や映画、ドラマのプロデューサー、脚本家としても多彩な活躍ぶりをしめすアメリカのラッパー、Childish Gambinoのニューアルバム。エレクトロサウンドを主軸に、メロディアスに聴かせるポップチューンがメイン。ラップ、ファンク、メロウなソウル、ポップなどの要素を織り込みつつ、バラエティー富んだ作風を楽しめる反面、様々な曲調によって、アルバム全体としていまひとつ捉えどころのなくなってしまったような印象も。
評価:★★★★
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