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2020年6月29日 (月)

Mobyらしい生真面目な作品

Title:All Visible Objects
Musician:Moby

昨年リリースした「Long Ambients 2」はタイトル通り、アンビエント作という「企画モノ」でしたので、通常のオリジナルアルバムとしては「Everything Was Beautiful, and Nothing Hurt」以来、約2年2ヶ月ぶりとなるニューアルバム。いつも心地よくポップなエレクトロサウンドを聴かせてくれるMobyですが、今回はそんな彼の作品の中でも、特に聴きやすい、ある種の「ベタ」さも感じるアルバムになっていました。

アルバムは、Mobyらしいチルアウト的な楽曲である「Morningside」からスタート。まずは彼らしいナンバーはリスナーへのご挨拶的な1曲。続く2曲目の「My Only Love」はイントロのピアノの音色が非常に心地よいトランシーな楽曲。幻想的な女性ボーカルも美しく展開されるのですが、わかりやすいトランス調のリズムが重なる、ベタさを感じさせる曲となっています。

そしてそんなナンバーからスタートする序盤から一転、続く「Refuge」はリズミカルなテクノチューンに。「Power is Taken」もダイナミックなサウンドが心地よいトランスのナンバーとなっており、間違いなくライブ映えしそう。さらに「Rise up in Love」も女性ボーカルを入れたトランス風の疾走感あふれる楽曲。ここらへんの中盤は間違いなくライブ映えしそうな楽曲が続いており、フロアで流されるとかなり気持ちよくなれること間違いなし!な楽曲が続きます。また、その後の「Forever」も含めて、メロディーラインはメランコリックに聴かせてくれる点もMobyらしさを感じます。

そんなアゲアゲとなる中盤から、後半は一転。「Separation」はピアノの音色で静かに聴かせるアンビエント的な楽曲に。少々トライバルなパーカッションが印象的な「Tecie」に続き、最後のタイトルチューン「All Visible Objects」もピアノでしんみり聴かせるアンビエント的なナンバーで締めくくり。盛り上がった中盤のテンションを落ち着ける、まさに文字通りのチルアウトな楽曲でアルバムは締めくくられます。

ゆっくりはじまる序盤から、盛り上がる中盤、そして最後にチルアウトで落ちつく終盤まで、まさにアルバムを通じて1つのライブを楽しんでいるかのような今回のアルバム。非常にわかりやすさを感じる楽曲も多く、このライブのような展開のアルバム構成を含め、「ベタ」さを感じる作品になっていました。

そのため正直なところ、アルバムとして目新しさという点はなかったですし、「ベタ」というのはネガティブな意味でも「ありがち」という印象を受ける点も否めません。ただ一方で、そんな難しいこと抜きにして思いっきり楽しめて、アルバムを聴いた後、心地よさを感じる点は、実にMobyらしい魅力的なアルバムだったと思います。

ある意味、リスナーが望んだ音を望んだように奏でているという点、Mobyらしい生真面目さも強く感じる作品になっていました。ちなみに本作から得た収益は様々な慈善団体や活動団体に寄付されるそうで、ここらへんの生真面目さもMobyらしい感じも・・・。いろいろな意味で彼らしいアルバムだったと思います。昔、彼のライブに1度足を運んだことがあるのですが、このアルバムに続くライブも楽しそうだなぁ。コロナの影響で、次にいつ行けるのか、全くわからないのですが・・・。

評価:★★★★★

MOBY 過去の作品
Go:The Very Best Of Moby

Last Night
Wait for me
Destroyed
Innocents
These Systems Are Failing(Moby and The Void Pacific Choir)
Everything Was Beautiful,and Nothing Hurt

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