新型コロナの中で明確なメッセージを込めて
THA BLUE HERB「CAN YOU SEE THE FUTURE?」
会場 札幌すすきの(オンライン) 日時 2020年6月6日(土)18:00~
新型コロナの影響でライブイベントが軒並み中止になる中、ライブの代わりとして様々なスタイルで開始されている配信ライブ。この日はTHA BLUE HERBがワンマンでの配信ライブを行う、ということで参加することにしました。ライブ配信は札幌のススキノのビルの屋上から。札幌の街並みをバックとしたライブとなっており、札幌をホームとする彼ららしいステージになりました。
ステージはBOSSとDJ DYEの2人のみのステージ。18時ちょっと過ぎからステージはスタート。まずはいきなり挨拶代わりのラップからスタート。力強いBOSSのラップがいきなり響き渡ります。そしてそのまま、「WE WANT IT TO BE REAL」「Shock-Shineの乱 (1 Premise)」「介錯」など一気に続く続いていきました。
さらにその後、BOSSが画面をのぞき込み、視聴者、さらにはラッパーにメッセージを送るシーン。BOSSが画面をのぞき込むと、まるですぐそこに彼がいるみたいですごく身近に感じられました。これがまた配信ライブらしい感じでもあり、魅力にも感じられます。そしてライブはそのまま「NOW IS NOT THE TIME」へ。さらには「STOICIZM」「TRAINING DAYS」と続きます。リリックの中に札幌の地名が出てくると、その方向を指さすのも、ススキノでのライブならではといった感じです。
ライブでは「LIKE THE DEAD END KIDS」へ続き、その後のMCでアメリカの白人警官への黒人殺害事件について言及していました。MCの中でBOSSはHIP HOPの歴史を踏まえた上で、今回の件について、右手のこぶしを高くかかげ、明確な抗議の意を示していました。さらに、アメリカだけの話に留まらず、我々の日常でも差別がないか、考えるきっかけにもなれば、という非常に力強いメッセージを発していました。
さらには新曲の「2020」。新型コロナの中での現状を綴ったリアルタイムな歌詞が強い印象を受けるナンバーになっていました。しかし、こういう現在の社会事象へのリアルタイムへの反応って、HIP HOP系の方がロックとか他のジャンルに比べて、今、圧倒的に早いんですよね・・・今の時代、HIP HOPがより時代のリアルを綴っていることを感じさせる曲になっています。
この頃には時間も19時を過ぎて、会場は徐々に暗くなっていきました。若干曇気味の空で、ちょっと不気味さを感じるのが「2020」歌詞とマッチしていたのが印象的。ライブはそしてそのまま「TENDERLY」「SMILE WITH TEARS」へ。この「SMILE WITH TEARS」では「この1件が終わったら、またみんなで集まれるといいな」というリリックが加わっており、思わず胸が熱くなる。また、この曲は「あんたはその坂を越えなくてはならないって事だ 」というリリックもあり、今の時代に響いてきます。もちろん、新型コロナとは関係ないところでつくられた曲なのですが、今の時期に聴くと、また違う意味がこもってくる曲になっていました。
次の「それから」に続くMCでは、現在のライブハウスの厳しい現状にも言及。「いつも行っていたとこ、遊んでいるとこと力合わせてください」というメッセージも。さらには、コロナにかかった人たちにもメッセージを送っており、暖かさを感じました。
そして後半、「WE CAN...」「MAINLINE」「LOSER AND STILL CHAMPION」「THE BEST IS YET TO COME」「RIGHT ON」へと、過去の曲から現時点での最新アルバム「THA BLUE HERB」からの曲まで、様々な曲をピックアップ。「RIGHT ON」の「響き渡る雷鳴」のリリックの部分で雷の音と光が入る、妙に凝った演出も。そしてさらには「未来は僕等の手の中」では未来に対する力強いメッセージを込めての選曲となっていました。
その後はフリースタイルで全国各地の地名(おそらくライブで訪れた街)をラップ。そして「AND AGAIN」へ。その後のMCでは、「立て直していこう」というメッセージをMCで直接伝えていました。「また遊べる日をまってます」というMCには、思わず涙腺も緩む思いでした。そして終盤戦は「MAKE IT LAST FOR...」、「この夜だけは」をビルから札幌の夜景を眺めつつのラップ。そしてラストは、まさにこのコロナの中でのメッセージを込めたかのような「今日無事」で締めくくりとなりました。
今回の配信ライブ、全体的に、この新型コロナの中で非常にメッセージ性の強いステージでした。曲間のMCもそうですが、楽曲も、今の時代にマッチするようなメッセージを持った曲を多く選んでいましたし、さらにその中で、今の時代にマッチしたリリックを新たに入れてくる曲も少なくありません。今回取り上げた曲は、新曲を除いて決して今回の新型コロナの件とは無関係に生まれた曲ですが、彼らの曲は、この新型コロナの時期にピッタリとマッチしているような曲が多いことに気が付きました。厳しい現実の中でそっと背中を押すような、そんなリリックの曲が多いからでしょうか。
全140分、配信ライブながらも完全にフルの長さでのステージ。かなりの長丁場でしたが、最初から最後までメッセージ性強いリリックに耳を離せないステージとなっていました。今回、ライブがなくなったことにより急遽設定された配信ライブでしたが、そんな中でTHA BLUE HERBの楽曲、そしてMCの持つメッセージが、強く心に突き刺さってくるステージになっていました。本当に、彼のMCの通り、次はそれぞれの街のライブハウスで、できるだけ早いタイミングで出会えることを願って・・・。
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