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2020年6月16日 (火)

ASA-CHANGの2つの側面

今日はドラマー、パーカッショニストとして多彩な活躍をみせるASA-CHANGの2枚のアルバムの紹介です。

Title:事件
Musician:ASA-CHANG&巡礼

まずはご存じ、ASA-CHANG&巡礼名義となるニューアルバム。前作「まほう」では後関好宏、須原杏を新メンバーとして迎えて再び3人組となったASA-CHANG&巡礼ですが、本作はそんな前作から約4年ぶりとなるニューアルバムとなります。

もともと、実験的な作品が多く、ある意味、ASA-CHANGの自由度が非常に高いASA-CHANG&巡礼。今回もわずか7曲入りのアルバムですが、それぞれの曲でASA-CHANGの実験が行われています。まず「事件」「ニホンゴ」は言葉をバラバラに分解し、そこにパーカッションやエレクトロサウンドをのせて、不思議なリズムを作り出している曲。特に「ニホンゴ」では、ほぼ言葉とタブラのリズムのみで構成されており、言葉の不思議な響きが味わえます。

さらに「駅弁ソング」は、全国各地の駅弁をムード歌謡曲風のメロに載せて、ただ紹介するというコミカルな曲。さらにこれの真骨頂は、英語バージョンが続くという点。日本語の曲をむりやり英語に組み替えたような楽曲になっており、こちらも日本語と英語の言葉の響きを味わうという、彼の実験を感じることが出来ます。

そしていとうせいこうがゲストで参加した「シノシサム」は、この謎のタイトルが延々と続く、これまた挑戦的な作品。そしてラストの「生活節」は一転、明治や大正期の演説音楽を彷彿とさせるような、バイオリンをバックに哀愁たっぷりに聴かせる歌モノ。これまた異色な作風の曲で締めくくられています。

今回のASA-CHANG&巡礼の作品は、今まで以上に言葉の響きに重点を置かれた作品のように感じました。ただ、かなり実験的であり、聴いていて若干苦痛にも感じる部分もあった初期の作品と比べると、前作「まほう」に続いて、実験的な作品を含め、それなりにポップにまとまっていたようにも感じます。今のメンバーとの相性もいいようで、サックスやバイオリンも加わることにより、音にもより厚みや幅が加わったように感じました。おそらく、今後はしばらくこのメンバーで活動を続けるのでしょうね。まだまだASA-CHANGの実験的な作品は続きそうです。

評価:★★★★

ASA-CHANG&巡礼 過去の作品
影の無い人
ASA-CHANG&蒐集(ASA-CHANG)
まほう

そしてもう1作がエマーソン北村と組んだユニットの2枚目。

Title:エロス
Musician:ASA-CHANG エマーソン北村

前作「Debut」では息の合ったパフォーマンスにより、ユニークなカバーを聴かせてくれたASA-CHANG エマーソン北村。今回も、カバー曲6曲が収録されているのですが、このカバーの選曲もなかなかユニーク。選曲している曲の多くは、有名なナンバーで、タイトルから曲を思い出さなくても、聴いてみれば「ああ、あの曲か」と思い起こすような曲ばかりだと思うのですが、個性的な2人のミュージシャンの手によって、非常に個性的なカバーに仕上がっています。

まずユーモラスで耳を惹くのが「千の風になって」でしょう。裏打ちのエレピがユニークなスカ風のカバーになっており、原曲に比べると、かなりあっさりとしたボーカルながらも、ジャングルのような暑さを感じさせるカバー。ゲストボーカルの小島麻由美も強い印象に残り、彼らにしかできない、原曲とは大きくことなるカバーに仕上げています。

「エマニエル夫人」のカバーもまたユニーク。こちらもねっちりとしたトランペットの音色が印象的で、非常にじめっと暑いナンバーに仕上げています。原曲とはまた違った切り口で感じさせる「エロス」が印象に残る作品で、彼らの真骨頂と言えるかもしれません。

おじさん2人のハーモニーから入るという、ある意味強烈な「タイムアフタータイム」のカバーもユニーク。爽やかさを感じる原曲のメロを残しつつ、こちらもトランペットやリズムマシーンのリズムで熱帯雨林のようなウェットさを感じさせますし、サビだけなぜか歌われるおじさん2人のハーモニーのボーカルも、そのウェットさに拍車をかけています。

最後を締めくくる「ジェッディンデデン (トルコ・オスマン行進曲)」も非常にユニーク。強烈でノイジーでエッジを利かせたサウンドが強いインパクトを与えてくれる作品になっており、彼らだけしか生み出せないような強烈なグルーヴ感を醸し出しています。

本作も全6曲23分弱という長さながらも、最初から最後まで、じめっとした熱帯の中にいるようなカバーになっており、独特のグルーヴ感が強い印象を残す作品になっていました。前作「Debut」も2人の相性の良さを感じさせる傑作で、今回の作品もそれと同様の傑作アルバムに。彼らのグルーヴ感に妙にマッチするカバーの選曲も見事ですし、本当に2人の相性のよさを感じます。これからどんなカバーを聴かせてくれるのか・・・いまから楽しみです。

評価:★★★★★

ASA-CHANG エマーソン北村 過去の作品
Debut

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