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2020年6月21日 (日)

「賞味期限付き」のアルバムも?

Title:ストリーミング、CD、レコード
Musician:ゲスの極み乙女。

5月に配信先行でリリースされたゲスの極み乙女。のニューアルバム。これ、本当にアルバムタイトル??といった感じの、人を食ったようなアルバムタイトルもある意味彼ららしいのですが、それ以上に話題となっているのはそのリリース形態。アルバムタイトル通り、5月1日にストリーミングで先行配信となった後、6月17日にCD、レコードでのリリースとなったのですが、CD、アナログ盤はDVD/Blu-rayもついて、デラックス盤ということで1万円超えのファンズアイテム的な限定盤。そして2,200円というお手軽(?)価格で購入できるアイテムが、なんと、CDの代わりに特製のバームクーヘンをおさめたという、史上初の賞味期限付のアイテム。CDショップにCDが並んでも、実際に面出しされるのは数週間だけで、その後は目立つところにはおかれなくなる、という意味でCDにも賞味期限があるみたい・・・という発想から、ならいっそのこと賞味期限付きのアルバムをリリースしよう、というのが今回の発想らしいです。まさに彼ららしいユニークで、人を食ったような発想といった感じがします。

さて、そんなユニークな彼らのニューアルバム。ご存じの通り、ゲスの極み乙女。で作詞作曲を担当する川谷絵音は別バンド、indigo la Endでも活躍しています。その別バンドindigoは哀愁感漂う歌謡曲テイストの強い作風の曲がメインとなっており、ゲスとは曲調に差をつけている印象があるのですが、前作「好きなら問わない」あたりから、ゲスの極み乙女。でも歌謡曲テイストにシフト。そして今回のニューアルバムに関しても、非常に歌謡曲テイストの強い、メランコリックな曲調の作品が並んでいます。

そんな本作の1曲目を飾る「人生の針」はハイトーンボイスで哀愁感たっぷりという実に歌謡曲テイストが強いナンバー。歌詞も「私 間違うことでしか人生の針を正しく使えないの」と、悲しみを背負った人生を歌い上げるスタイルもまさにムード歌謡曲的。続く「私以外も私」もメロウなエレピが印象に残る、哀しい雰囲気のポップソング。まずはメロディーラインが印象に残る楽曲が目立ちます。

ただ、もちろん歌謡曲テイストで歌とメロディーがメインというスタイルが確立されているindigo la Endと比べて、ゲスの極み乙女。はやはり歌詞にしろサウンドにしろ、自由度の高いポップチューンが目立ちます。「綺麗になってシティーポップを歌おう」などは、タイトル自体、どこか最近流行となっているシティポップを揶揄しているような感じがするのも彼ららしいのですが、サウンド的にもピアノでメロウなサウンドを聴かせている、と思いきや、ラストになっていきなりそのサウンドが崩れていくのが印象的。

「ドグマン」もトラップ的なリズムを取り入れており、今風なサウンドメイキングを感じられますし、世間を皮肉ったような歌詞がユニークな「問いかけはいつもためらうためにある」も転調と女性ボーカルを上手くつかって非常にユニークな楽曲に仕上げられています。タイトルからしてユニークな「フランチャイズおばあちゃん」もハイテンポなリズムトラックがインパクトを持った楽曲になっていますし、「キラーボールをもう一度」もサックス入り、ムーディーでジャジーな作風に。基本的に哀愁感あるメロディーが主軸になっているのですが、歌詞にしろサウンドにしろ様々なタイプの曲が並んでおり、かつ自由度も高め。ゲスらしいユーモラスな作風に最後まで耳の離せない構成になっています。

さすがに前作までのような、川谷絵音のスキャンダルネタを皮肉ったような曲はもうなくなったのですが、それでもどこか人を食ったような、皮肉めいた歌詞が目立つのも彼らならでは。賞味期限付きのアルバムというユニークなリリース形態を含めて、いい意味で世間に全く流されない彼ららしいスタイルは本作も健在でした。あいかわらずバンドとしての勢いも続いているように感じられる本作。今後もそのマイペースぶりは続きそうです。

評価:★★★★★

ゲスの極み乙女。 過去の作品
踊れないなら、ゲスになってしまえよ
みんなノーマル
魅力がすごいよ
両成敗
達磨林檎
好きなら問わない


ほかに聴いたアルバム

Grow apart/Awesome City Club

新型コロナの影響でCD販売が遅延し、配信先行となった5周年記念、約1年5ヶ月ぶりとなるフルアルバム。男性ボーカルのatagiをメインボーカルとしつつ、女性ボーカルPORINとバランスよいツインボーカルを聴かせる爽やかなシティポップチューンがメイン。シンセを入れたリズミカルなポップチューンがメインなのも以前と変わらず。全11曲入りのフルアルバムなのですが、もうちょっとバリエーションと、メロのインパクトがあったら、よりおもしろいバンドになると思うのですが・・・。

評価:★★★★

Awesome City Club 過去の作品
Awesome City Club BEST
Torso
Catch The One

SINGALONG/緑黄色社会

愛知県出身、女性2人+男性2人の4人組バンドのメジャーデビューフルアルバム。こちらも新型コロナの影響で配信先行となり、さらにCD販売は未定という状態に・・・。もう、CD販売に拘る必要性はないのかもしれませんが。本作は配信オンリーながらもBillboardのHot Albumsにベスト10入りしてきており、人気上昇中であることがうかがわせます。ただ、楽曲的にはストリングスやピアノで音を分厚くしつつ、ルーツレスなメロディアスなポップソングを聴かせるという、ある意味典型的なJ-POPバンドといった感じ。メロディーにはそれなりにインパクトとスケール感があるのですが、目新しさは感じられず。今後の展開、成長次第では、スタジアムライブクラスのバンドになる可能性はあるとは思うのですが。

評価:★★★

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