« デビュー40周年の意欲作 | トップページ | 新譜は少なめ »

2020年6月 9日 (火)

人気絶頂のバンドから、あえて「ソロ」

Title:Triptych
Musician:Shohei Takagi Parallela Botanica

最近、すっかり音楽シーンの中で大きなムーブメントとなっている「シティポップ」とカテゴライズされるジャンル。そんな中でも高い人気と実力を誇っているのがceroでしょう。音楽ファンから高い評価を受けるのみにとどまらず、直近のオリジナルアルバム「POLY LIFE MULTI SOUL」はヒットチャートで上位に食い込んでくるなど、高い人気も見せつけています。今後の日本のミュージックシーンを間違いなく牽引していくであろうバンドになっています。

そして、そんなceroのボーカリストであり、作詞作曲も手掛けるのが高城晶平。本作は、彼の初となるソロアルバムとなります。ceroとして、人気絶頂であり、かつ脂ものった時期でのソロ活動になるのですが、インタビューなどによるともともと2015年の時点でソロ活動を考えていたそうで、今回の活動についても「個人は個人として確立したうえで集団であるべきだし、今後そこをうまく使いわけながら活動していければと考えたんですね。」音楽ナタリーより)と語っているなど、ceroの活動に不満云々ではなく、あくまでもceroとして活動する前提としてのソロ活動を意図しているようです。

そうしてリリースされた今回のソロアルバムなのですが、アルバム全体、ローファイなサウンドで徹底されています。非常に気だるい雰囲気の中、どこかトロピカルなムードを感じる「トワイライト・ゾーン」からスタート。続く「リデンプション・ソング」もサックスが入ってジャジーな雰囲気を醸し出しつつも、徹底した気だるいローファイ感を貫いています。

インターリュードを挟み、続く「キリエ」はパーカッションがトライバルな要素を醸しつつ、ストリングスがエキゾチックな雰囲気を出している楽曲。「オー・ウェル」も終始気だるさが漂うローファイチューン。さらにクールな曲調のインターリュードを挟んだ「ミッドナイト・ランデヴー」は、まさにタイトルそのままの、非常にウェットでムーディーな雰囲気の「夜」を感じさせるナンバーを展開しつつ、ラストの「モーニング・プレイヤー」は「朝」らしい爽やかさが・・・と思いつつ、朝おきたばかりのような、気だるさと爽やかさを同居させたような曲に仕上がっています。そして、この「モーニング・プレイヤー」に、朝の海辺のような爽やかさを感じる最後のアウトロが続き、非常に爽やかな余韻を残しつつ、アルバムは幕を下ろします。

そんな感じで、終始、気だるいローファイな雰囲気を醸し出しつつ、ウェットでムーディーな曲調に貫かれている本作。徹底したローファイぶりのため、アルバム全体として決して「売れる」タイプの曲調ではありませんし、非常に地味という印象を受ける作品になっています。ただ、一方では、高城晶平の演りたい曲を、売れるかどうか関係なく、演りたいような演っているという実にソロアルバムらしいソロアルバムになっていたと思います。もちろん、「地味な作風」ではあるものの聴き終わった後に、間違いなく心の中に確実な印象を残す傑作アルバムであることには間違いありません。このソロアルバムが、次にceroのアルバムにどのような形で反映していくのか、非常に楽しみでもある作品。ceroの次回作が非常に楽しみです。

評価:★★★★★

|

« デビュー40周年の意欲作 | トップページ | 新譜は少なめ »

アルバムレビュー(邦楽)2020年」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




« デビュー40周年の意欲作 | トップページ | 新譜は少なめ »