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2020年6月 1日 (月)

新生赤い公園の初フルアルバム

Title:THE PARK
Musician:赤い公園

レーベル移籍を経て、フルアルバムとしては約2年8ヶ月ぶりとなる赤い公園のニューアルバム。よくご存じのこととは思いますが、赤い公園はボーカルの佐藤千明が2017年8月をもって脱退。一方、2018年にはアイドルルネッサンスの元メンバー、石野理子が新ボーカリストとして参加。その後、昨年10月にEP「消えない-EP」がリリースされていたものの、本作は新体制では初となるフルアルバムとなり、まさに新生赤い公園の全貌がわかる作品となっています。

まずEPとしてリリースした「消えない-EP」でも既にわかっていたのですが、新メンバーになっても基本的に赤い公園としてのスタイルはほとんど変化ありません。ボーカルが変わると、ともすればバンドのイメージもガラッと変わってしまうのですが、もともとバンドの頭脳であり、リーダーでもある津野米咲は健在。また、オリジナルメンバーの佐藤千明のボーカルも、比較的淡泊で癖は薄めだった一方、新メンバー石野理子のボーカルも、おなじく比較的淡泊なボーカルであり、そういう意味では同系統。そのため、新メンバーによっても、赤い公園のイメージはほとんど変化ありませんでした。

さて、本作はそんな石野理子の本格的な顔見世となるアルバム。もともと赤い公園の作風というと、比較的ストレートなギターロック系統と、非常に凝った複雑なアレンジで聴かせてくれる、少々「変態性」を帯びたような系統と、2つの系統を自在に使い分けるイメージがあります。今回のアルバムでも、先行シングルとなった「絶対零度」などはまさにそんな複雑な構成で転調するメロも印象的な、後者の傾向が強い楽曲。トラップ的な要素を加え、ラップも取り入れた「chiffon girl」も、赤い公園としては少々異なる方向性に挑戦した、彼女たちの音楽的素養の深さを感じるナンバーとなっています。

ただ、今回のアルバムに関しては、比較的、前者の系統の、ストレートなギターロックの要素が強い楽曲が多かったように思います。もちろん、そんな中でも一癖二癖あるサウンドは楽しめるものの、例えば「紺に花」などは、途中入るストリングスアレンジがいかにもJ-POP的な、疾走感あるギターロックになっていますし、「KILT OF MANTRA」も、軽快なピアノの音色が楽しいナンバーなのですが、楽曲的には至ってポップな楽曲に仕上がっており、アルバム全体としては、まずは「聴きやすい」という印象を強く受けるアルバムになっていました。

一方、赤い公園が比較的ストレートなギターロックを奏でた場合、問題となってしまうのはメロディーラインのインパクトの弱さ。ボーカリストとしてのインパクトの弱さもひとつの要因だと思うのですが、それなりにポップなメロを奏でつつ、いまひとつメロディーラインが印象に残りません。今回のアルバムもある意味J-POP的なポップなメロディーラインを奏でながらも、いまひとつ印象に残るようなフレーズに出会えず、アルバム全体としてあっさりというイメージが残るアルバムになっていました。

そこらへんは以前からの赤い公園の課題がそのまま残ってしまった感はあるのですが…ただ、ボーカリスト脱退という、普通のバンドなら最大の危機となるような事態を、新ボーカリスト加入によりあっさりと乗り越えたのは間違いないでしょう。そういう意味では、まだまだこれからの期待できるバンドなのは間違いなさそう。個人的には、年間ベストクラスの傑作をリリースできるポテンシャルを持つバンドだと思うので、これからの活躍にも大いに期待したいところ。これからの彼女たちの活躍も楽しみです。

評価:★★★★★

赤い公園 過去の作品
透明なのか黒なのか
ランドリーで漂白を
公園デビュー
猛烈リトミック
純情ランドセル
熱唱サマー
赤飯
消えない―EP

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