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2020年6月

2020年6月30日 (火)

電気グルーヴ「自粛」の1件から社会を考察

今回は最近読んだ音楽関連の書籍の感想です。

昨年、音楽業界のみならず芸能界全体に大きな衝撃を与えたピエール瀧の覚せい剤所持逮捕のニュース。その中で音楽ファンにとって大きなショックだったのが彼が所属していた電気グルーヴのCD・配信がすべて停止になった出来事でした。特にサブスクリプションの音源も一切停止されたことによって、それまで普通に聴いていた電気グルーヴの曲が突然聴けなくなってしまった出来事は、サブスクリプションのリスクがあらためて顕在化した瞬間でした。

そして、そんな電気グルーヴ関連の音源の発売停止に関して反発の声が大きく上がったのも印象的な出来事でした。そんな中で、作品の販売・配信停止の撤回を求める署名活動も行われ、こちらもニュースとして取り上げられました。今回紹介する1冊「音楽が聴けなくなる日」は、電気グルーヴ音源の発売中止がなぜ行われたのか、その理由と問題点について考察したもの。その署名活動の発起人のひとりが社会学者の永田夏来と音楽研究家のかがりはるきが中心となり、さらに社会学者の宮台真司を含め3名が、それぞれの立場からその理由について考察しています。

具体的には永田夏来が社会学の観点から、かがりはるきは過去の犯罪事件より、CDの販売停止、自粛が行われた歴史を調べた上で、自粛をよぎなくされたミュージシャンと逆にレコード会社側の関係者のインタビューを実施。さらに宮台真司は哲学的な観点を含めて、さらにはあいちトリエンナーレの「表現の不自由展」で起こった騒動との共通点を探ることにより、より深い考察を試みています。

さて、永田夏来と宮台真司はそれぞれの立場からこのような販売停止、自粛が起こる理由について考察しているのですが、その結論は率直に言って両者、似たような結論に達しています。宮台真司の言説を借りれば、「90年代半ば以降のグローバル化と過剰流動性を背景に共同身体性と共通感覚が消え、徹底的なゾーニングが図られ」た結果、「多視座化の可能性が阻まれ、社会の劣化が加速」し、宮台真司が「クソ」と表現する社会の外を消去する社会が出来上がり、そのような社会故に、「法」を無意味に信奉し、社会からはずれた「犯罪者」を過剰にバッシングするような社会になっている・・・そう語っています。

簡単に言うと、グローバル化などを背景として、物事が異常なまでに変化して続けている現在において、人と人とのつながりが非常に希薄となり、その結果として、法律に従うことを異常に重要視したり、そこからはずれたような人を異常にバッシングしたりする社会が出来てきた、といった感じでしょうか。第1章では永田夏来がおなじく署名運動に関するエピソードを語ると同時に、このような現象が生じる理由について考察していますが、同じく、現代社会が流動的であるからこそ、前例主義に陥っている点を指摘。同じくその結果として「全人格的な人間関係」から「状況的な人間関係」に変化しており、人と人とのむすびつきが希薄になってことを取り上げています。

これらの指摘については非常に納得感がある一方、正直言えばある程度は理解していた点であり、全く気が付かなかった視点からの指摘、というような驚きはあまりありません。ただ、宮台真司の考察では、なぜ芸術と芸術を作り出す主体は分離しうるか、なぜ道徳的観点から芸術を糾弾するのは問題なのか、詳しく考察しており、読んでいて非常に考えさせられる点が数多くありました。また、最後には「クソ」な社会の中で「法の奴隷化」しないためには、まず好きなことを好きとはっきり言おう、という具体的かつ簡単な解決法も示されており、最後まで興味深く読むことが出来ました。

一方、若干、最後の部分に納得感がなかったのが永田夏来の考察。状況的な人間関係で人と人のむすびつきが希薄になっている点を問題点としてあげながら、最後の家族論ではいまような結婚観を否定し、「状況ごとに最適なパートナーを選んだっていい」とむしろ人間関係の希薄性を肯定しているように感じます。彼女の家族論の賛否とは別として、この考察の流れとして、この家族論の結論は、むしろそれまで否定していたことを一気に覆すような流れの悪さを感じてしまい、疑問を抱いてしまいました。彼女の考察の中で、石野卓球がTwitterでピエール瀧を前提としたつぶやいた「キミたちのほとんどは友達がいないから分からないと思うけど、友達って大事だぜ。あと「知り合い」と「友達」は違うよ」というツイートを取り上げ、この本当の友達こそが流動的な社会を生き抜く秘訣と語っているのですが、彼女が最後に絶賛している状況ごとの最適なパートナーというのは、石野卓球が取り上げた友達とは全く逆の存在のように感じます。

さて、そんな社会学的な考察で考えさせる中、個人的に一番興味深かったのが第2章のかがりはるきによる「自粛」の歴史と関係者の証言。特に事務所、ミュージシャン、レコード会社関係者のそれぞれの証言は興味深く感じました。特にレコード会社の元幹部である代沢五郎の証言はレコード会社側の人間の本音が赤裸々に語られています。正直、かなりレコード会社寄りの意見であり、音楽ファンとしてはイライラさせられる部分もあるのですが、そんな点を含めて興味深い発言が多く、特に「(CDの回収などで)短期的にはそう(誰も得しない)ように見えるが、中長期的には(コンプライアンスな観点から)そっちの方が儲かるからやってんだよ!」という発言は、レコード会社関係者の本音中の本音じゃないでしょうか。実際、結局のところ社会の劣化やら流動化社会やら前例主義やら関係なく、儲かるか儲からないか、ビジネスである以上それに尽きる・・・それがCDの回収、自粛の大きな要因のように感じます。

今回の考察で若干物足りなさを感じたのは、このビジネス的な視点からの考察があまりなかった点。個人的にはここ最近、ミュージシャンが犯罪を起こした場合のCDの回収や自粛が広まっている背景としては、音楽業界が巨大産業化した結果、いままでいかがわしさも許容してきたレコード会社や事務所が「立派な会社」となってしまい、いかがさしさを許容できなくなり、さらには昨今のコンプライアンスへの異常なまでの重視が重なった結果、CDの回収や自粛が今まで以上に広がってしまった、という点があると思います。ただ、こういったビジネス的な背景からの考察が出来る人をひとり、加えてもよかったように感じました。

ただ、ここ最近、この流れが徐々に変わってきているように感じます。電気グルーヴの一件でもむしろ自粛反対派の声が目立ったように感じますし、そんな中で、先日、覚せい剤で2度目の逮捕となってしまった槇原敬之の一件では、現時点において(新譜のリリース中止はあったものの)CDの販売停止、回収や配信・ストリーミングの停止が一切ありません。それにも関わらず、この一件でレコード会社側を責める意見がほとんどなかった点や売上へのネガティブな影響がほとんどなかった点から、今度、レコード会社側の対応も変わっていくのではないでしょうか。

さらには先日、ついに電気グルーヴのCD販売、配信が再開され、これがニュースとなりました。正直、ピエール瀧の刑罰が確定したタイミングでも執行猶予が終了したタイミングでもなく、今回の再開時期に全くの合理性がありません。CD販売、配信がこのようなおかしなタイミングで再開されることがニュースにより知れ渡ることにより、この「自粛」の無意味さが、より知れ渡る結果になったようにも思います。

社会学、哲学的な観点からの考察は難しい部分もあり、単純な「音楽関連の書籍」とは異なる1冊であるため、気軽に「自粛」の経緯、歴史を知りたい人にはちょっと難しい1冊になっているかもしれません。ただ、様々な点で考えさせられながら読む本でもあり、とても興味深い考察も多くみられました。今回の電気グルーヴの1件で疑問に感じた方にはお勧めしたい1冊。今後、このような社会が少しでも変わって行けばよいのですが。

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2020年6月29日 (月)

Mobyらしい生真面目な作品

Title:All Visible Objects
Musician:Moby

昨年リリースした「Long Ambients 2」はタイトル通り、アンビエント作という「企画モノ」でしたので、通常のオリジナルアルバムとしては「Everything Was Beautiful, and Nothing Hurt」以来、約2年2ヶ月ぶりとなるニューアルバム。いつも心地よくポップなエレクトロサウンドを聴かせてくれるMobyですが、今回はそんな彼の作品の中でも、特に聴きやすい、ある種の「ベタ」さも感じるアルバムになっていました。

アルバムは、Mobyらしいチルアウト的な楽曲である「Morningside」からスタート。まずは彼らしいナンバーはリスナーへのご挨拶的な1曲。続く2曲目の「My Only Love」はイントロのピアノの音色が非常に心地よいトランシーな楽曲。幻想的な女性ボーカルも美しく展開されるのですが、わかりやすいトランス調のリズムが重なる、ベタさを感じさせる曲となっています。

そしてそんなナンバーからスタートする序盤から一転、続く「Refuge」はリズミカルなテクノチューンに。「Power is Taken」もダイナミックなサウンドが心地よいトランスのナンバーとなっており、間違いなくライブ映えしそう。さらに「Rise up in Love」も女性ボーカルを入れたトランス風の疾走感あふれる楽曲。ここらへんの中盤は間違いなくライブ映えしそうな楽曲が続いており、フロアで流されるとかなり気持ちよくなれること間違いなし!な楽曲が続きます。また、その後の「Forever」も含めて、メロディーラインはメランコリックに聴かせてくれる点もMobyらしさを感じます。

そんなアゲアゲとなる中盤から、後半は一転。「Separation」はピアノの音色で静かに聴かせるアンビエント的な楽曲に。少々トライバルなパーカッションが印象的な「Tecie」に続き、最後のタイトルチューン「All Visible Objects」もピアノでしんみり聴かせるアンビエント的なナンバーで締めくくり。盛り上がった中盤のテンションを落ち着ける、まさに文字通りのチルアウトな楽曲でアルバムは締めくくられます。

ゆっくりはじまる序盤から、盛り上がる中盤、そして最後にチルアウトで落ちつく終盤まで、まさにアルバムを通じて1つのライブを楽しんでいるかのような今回のアルバム。非常にわかりやすさを感じる楽曲も多く、このライブのような展開のアルバム構成を含め、「ベタ」さを感じる作品になっていました。

そのため正直なところ、アルバムとして目新しさという点はなかったですし、「ベタ」というのはネガティブな意味でも「ありがち」という印象を受ける点も否めません。ただ一方で、そんな難しいこと抜きにして思いっきり楽しめて、アルバムを聴いた後、心地よさを感じる点は、実にMobyらしい魅力的なアルバムだったと思います。

ある意味、リスナーが望んだ音を望んだように奏でているという点、Mobyらしい生真面目さも強く感じる作品になっていました。ちなみに本作から得た収益は様々な慈善団体や活動団体に寄付されるそうで、ここらへんの生真面目さもMobyらしい感じも・・・。いろいろな意味で彼らしいアルバムだったと思います。昔、彼のライブに1度足を運んだことがあるのですが、このアルバムに続くライブも楽しそうだなぁ。コロナの影響で、次にいつ行けるのか、全くわからないのですが・・・。

評価:★★★★★

MOBY 過去の作品
Go:The Very Best Of Moby

Last Night
Wait for me
Destroyed
Innocents
These Systems Are Failing(Moby and The Void Pacific Choir)
Everything Was Beautiful,and Nothing Hurt

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2020年6月28日 (日)

「グレーネス」な音楽性?

Title:græ
Musician:Moses Sumney

カリフォルニア出身の男性シンガーソングライターによる約2年半ぶりのニューアルバム。もともと2013年にJames Blakeの「Lindisfarne」を多重録音でカバーしネット上にアップしたところ話題となり、その翌年にデビュー。2017年にリリースされたアルバム「Aromanticism」も多くな評価を受けました。本作は、そんな高い評価を受けたアルバムに続く注目の最新作。CDでは2枚組のリリースとなるのですが、そのDisc1にあたる1曲目から12曲目まではまず2月に配信でリリースされ、残りDisc2の部分を含めて、5月にあらためてリリースという、異例な、ただ今の時代だからこそ可能なリリース形態となっています。

そんな注目の最新作なのですが、まずは豪華なゲストが話題を呼んでいます。前作に引き続きベースにかのThundercatが参加。さらに彼のデビューのきっかけとなったJames Blakeもゲストとして参加しているほか、Jill Scottのようなベテランシンガーも参加しているなど、多様なゲスト勢が話題を呼んでいます。

また、今回のアルバムに関して紹介文を見てみると「グレーネス(白と黒の間の無彩色の中間色)に関するコンセプチュアルなパッチワーク」という文章がお目にかかります。正直、これが音楽的に何を意味するのか全く不明で、それに言及した文章もなく、おそらくレコード会社から配信された紹介文をライターが何の頭も使わずにコピペしただけ、という幼稚園児でも出来るような仕事をしただけの結果なのでしょうが、このアルバムを聴いていると、なんとなくこのレコード会社が用意したキャッチコピーの意味することがわかるような気もします。

まず音楽的にいろいろな要素を取り込んでおり、ジャンルレスな部分を感じるという点。James BlakeやThundercatという名前からもわかるように、基本的にはここ最近、ちょっとした流行になっているような、「ヨットロック」という名称の色合いが濃いようなメロウなAORが主軸となっています。イントロを挟みスタートする事実上の1曲目「Cut Me」など典型例で、ハイトーン気味のボイスでゆっくりと聴かせるボーカルが印象的なメロウなAORチューン。ほかにも「Colouour」「Two Dogs」など、ファルセットを入れた透明感のある歌声と静かなエレクトロサウンドでゆっくりと美しいメロディーラインを聴かせるポップチューンがアルバムの中での大きな軸となっています。

ただ一方、様々なサウンドをコラージュした作風となっているのが本作の特徴で、例えば「Virile」はロック的な要素も感じるダイナミックなサウンドを展開していますし、「Conveyor」のような複雑に入り組んだサウンドは、どこかポストロック的なアプローチも感じさせます。課と思えば「Polly」などはアコギのアルペジオでしんみり聴かせるフォーキーな作風になっていますし、また全体的にジャズの要素も強いサウンドも大きな特徴と言えるでしょう。

要するに、ブラックミュージックを主軸にしつつも、それだけとはいえない多様な音楽性をコラージュしているあたり、サウンド的に「グレーネスなパッチワーク」という若干意味不明な表現を用いられているのかもしれません。そういう意味である種のジャンルレスな音楽性が大きな魅力と言えると思いますし、ただ一方ではAORやジャズなど、その向こうにしっかりとした音楽的土台も感じることが出来ます。シンガーソングライターとして幅広く、そして深い音楽的素養をかかえるミュージシャンであり、その彼の魅力がしっかりと音楽に反映されていた、と言えるアルバムかもしれません。

ともかく、本作がまだ2作目という若手ミュージシャンの彼ですが、まだまだこれからさらなく飛躍も期待できそうな傑作。年間ベストクラスの作品とも言えるかも・・・。今後も、彼の名前を聴く機会がグッと増えそう。これからの活躍が非常に楽しみです。

評価:★★★★★

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2020年6月27日 (土)

まさかのラスト作

Title:worst
Musician:KOHH

今年もそろそろ半年が経過しようとしています。新型コロナの影響で音楽業界がすっかり停滞してしまった最近のシーンですが、そんな中でも今年に入って新型コロナ関係以外にもポジティブ、ネガティブ両側面で様々な音楽ニュースがありました。そんな中、年初早々大きな話題となったのがラッパーKOHH引退のニュース。2014年のデビュー以来、第一線で活躍を続け、あの宇多田ヒカルと共演。さらにはかのFrank Oceanの楽曲に参加したと、大きな話題となった彼。その彼が、まだまだ現役として活躍し続けるこのタイミングでの突然の引退は、シーンに大きな衝撃を与えました。

本作はそんな彼が約1年2ヶ月ぶりにリリースしたニューアルバムで、引退作ともなった作品。ただ、作品としてはラストということで特別な出来映え・・・という感じではなく、基本的にいつも通り。そのスタイルには以前から大きな変更はありません。まず非常によく出来ていると感じるのがそのトラック。最近、すっかりシーンにおなじみとなってきたトラップのリズムを全面的に取り入れた作品で、「Intro」に続いてスタートする事実上の1曲目「Sappy」は非常に強いビートにダウナーな作風は、まさにトラップの王道を行くような作品になっています。

ただそんな中でもピアノとエレクトロサウンドで美しく幻想的に聴かせる「John and Yoko」やダウナーなトラップの中に流れるドリーミーなサウンドが美しい「レッドブルとグミ」、さらには「Is This Love」ではアコギ1本でしんみりと聴かせる歌モノになっており、トラップのサウンドを主軸にしつつ、様々なバリエーションを持ったサウンドが魅力的。特にトラップの持つダウナーでメランコリックな雰囲気を、ラップやリリックと実によくマッチさせており、トラップのビートとの相性の良さを強く感じる作品になっています。

また、彼の作品のもうひとつ大きな特徴がそのリリック。基本的にはその日常生活や日常の中での感情をありのまま綴るリリックが特徴的なのですが、非常にシンプルで聴いていてわかりやすいリリックになっているのがその特徴となっています。彼のラップも比較的、その日本語をしっかりと語るようなスタイルのラップであるため、リリックも聴いていてその内容まで難なく耳に入ってきますし、また、そんな日常的な用語をすんなりとラップのビートにのせる手法も見事。ここらへんが彼が高く評価される大きな要因のように感じます。

しかし同時に、私がこのアルバムに対してひとつ違和感を抱いた点もこのリリックについてでした。上にも書いた通り、彼のリリックはまさに彼の日常そのもの。そしてその日常というのが、いわばヤンキー的な価値観に基づく日常。正直言って、聴いていて完全に自分とは相いれないものを感じてしまいました。確かに、このヤンキー的な日常を描くラッパーは少なくありません。ただ、例えばAnarchyだとかBAD HOPだとかにしても、その向こうに厳しい現実を描くことにより、ヤンキー的な価値観だけに基づかない普遍的なアピールを曲に持たせています。ただKOHHの場合は綴られるその世界は、完全にヤンキー的な日常のみのように感じてしまいます。最後まで綴っているそのリリックの内容にほとんど共感できないまま、アルバムが終わってしまいました。

最後の「手紙」は彼の愛する祖母に対する手紙の朗読で終了。こういう身内への感謝で終わるスタイルも、良くも悪くもヤンキー的だよなぁ・・・と思ってしまいます。まあ、このリリックの違和感に関しては自分の「好み」的な部分が大きいのですが・・・。そういう意味では、よく出来たアルバムだと感じつつも、最後まではまることは出来ない作品になっていました。その点、ちょっと残念に感じてしまったアルバム。あくまでも日常に立脚した歌詞というのも彼の魅力といえば魅力なのでしょうが。

評価:★★★★

KOHH 過去の作品
UNTITLED


ほかに聴いたアルバム

Seek/DEPAPEPE

メジャーデビュー15周年を迎えたギターインストデゥオDEPAPEPE。その記念すべき年にリリースされた約3年ぶりのオリジナルアルバム。彼ららしい爽やかなギターインストそのままに、ラテン風だったりストリングスを入れたり、打ち込みを入れたりと、バラエティーに富んだ作風を聴かせるところに15年というキャリアから生じた、彼らの懐の深さも感じます。タイトルの「Seek」は「まだまだ道の途中、音楽を探し続けている」という意味からつけられたそうですが、まだまだ彼らの活躍は続きそうです。

評価:★★★★

DEPAPEPE 過去の作品
デパクラ~DEPAPEPE PLAYS THE CLASSIC
HOP!SKIP!JUMP!
デパナツ~drive!drive!!drive!!!~
デパフユ~晴れ時どき雪~
Do!
デパクラII~DEPAPEPE PLAYS THE CLASSICS
ONE
Acoustic&Dining
Kiss
DEPAPEPE ALL TIME BEST~COBALT GREEN~
DEPAPEPE ALL TIME BEST~INDIGO BLUE~

COLORS

You are ROTTENGRAFFTY/ROTTENGRAFFTY

先日、トリビュートアルバムもリリースされたミクスチャーロックバンド、ROTTENGRAFFTYのベスト盤。Disc1はファンリクエストによる選曲、Disc2はメンバーセレクトによる選曲によるオールタイムベストとなっています。ここ最近はエレクトロサウンドを取り入れてきている彼らですが、オールタイムベストとして彼らの過去の代表曲などを聴くと、ヘヴィーなサウンドをゴリゴリと押し出した、正統派なハードコア系バンドということがわかります。一方でメランコリックな雰囲気も感じるポップなメロも目立ち、良くも悪くも歌謡曲的、J-POP的な側面も感じます。ちなみに初回限定版ではDisc3としてコラボ曲やカバー曲を収録したボーナスディスクが付属。こちらは「ぼくたちの失敗」「今夜はブギー・バック」のような、ちょっと毛色の異なる曲への意欲的なカバーも収録。それが成功しているかと言われると微妙ですが、その挑戦心には感心させられます。

評価:★★★★

ROTTENGRAFFTY 過去の作品
LIFE is BEAUTIFUL
PLAY

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2020年6月26日 (金)

「歌モノ」メインかと思いつつ、サウンドも大きな魅力

Title:Muntable Set
Musician:Blake Mills

Alabama Shakesの「Sound&Color」やJohn Legendの「Darkness&Light」のプロデュースを手掛け、プロデューサーとして活躍する一方、ギタリスト、シンガーソングライターとしても高い評価を受けているアメリカのミュージシャンBlake Mills。ミュージシャンとして実に多才な活躍ぶりをみせる彼ですが、本作はそんな彼の約2年ぶりとなるオリジナルアルバムとなります。

前作「Look」はアンビエント寄りの作品だったそうですが、今回の作品は彼が改めてポップミュージックに向き合ったアルバムだそうで、非常にシンプルに「歌」を聴かせる曲が並んでいます。そしてそんな中でアコースティックなサウンドが静かに鳴り響いている作品となっています。

しかし、これがおもしろいことに静かなサウンドがバックになって、あくまでも「歌」ばかりが強調されたアルバム…ではありません。静かな中でもしっかりとサウンドがその存在感を発揮しています。まずギター。ギタリストとして大きな評価を受けている彼ですが、今回のアルバムでは特にテクニカルなギタープレイを聴かせる訳でもありませんし、アルバムの中でも必ずしも「主役」と言える立ち位置でもありません。とはいえ「Eat My Dust」では華麗なアルペジオのプレイを聴かせてくれていたり、「Mirror Box」ではギターを静かにつま弾く音がメインとなっているインストナンバーを聴かせてくれたりと、アルバムの中で間違いなく大きな存在感を感じられます。

ただ、そんな静かなアコースティックギターの音色に、ピアノやストリングス、さらにはシンセの音なども重なっており、優しい歌声を聴かせる歌モノの曲にも関わらず、非常に凝った重層となったサウンドを聴かせてくれます。例えば1曲目を飾る「Never Forever」ではアコギをベースにしつつ、そこに重なるピアノ、さらには隠し味のようなシンセの音色が実に美しいハーモニーを奏でています。「May Later」もアコギにストリングスが重なった上で、ボーカルのハーモニーもさらに積み重ねられ、その魅力的な音の世界が繰り広げられる曲となっています。

ほかにも「Vanishing Twin」ではエレクトロサウンドを取り入れていますし、「My Dear One」ではアコギ、ピアノにベースの音色が入り、ジャジーに聴かせる作品に。終始、静かな雰囲気で歌を聴かせるスタイルと統一感があるものの、バラエティーの富んだ展開の楽しめる内容となっています。

もちろんアルバムのメインである「歌」の部分も大きな魅力。Blake Millsの声を落として静かに聴かせるボーカルは、とても優しく響いており、決して派手さはないもののメロディーラインは確実にインパクトを持っています。例えば「Farsickness」でピアノをバックに歌うファルセット気味のボーカルは、その美しさにゾクゾクしてしまうほど。サウンド面を強調してきましたが、「歌」がこのアルバムの最大の魅力であることは間違いありません。

そんな訳で、歌の側面からもサウンドの側面からも実に魅力的なアルバム。特にパッと聴いた感じでは静かなサウンドに「歌」の側面ばかり気を取られそうですが、よくよく聴くと凝ったサウンドの魅力にズブズブとはまっていってしまいそうなそんな作品でした。さすが注目を集めるミュージシャンなだけあります。まだ日本ではさほど知名度は高くないようですが、今後、どんどん注目が集まっていきそう。楽しみです。

評価:★★★★★


ほかに聴いたアルバム

Dark Lane Demo Tapes/Drake

4月30日に配信限定で急遽リリースされたDrakeのミックステープ。Chirs BrownやFuture、Young Thugといった豪華なゲストもフューチャーした今回の作品はトラップの要素をふんだんに取り入れたサウンドが印象的。ここにDrakeらしいメランコリックで歌モノの要素も強いラップがのるのですが、トラップのリズムにもよくマッチしており、いい意味で聴きやすいアルバムに仕上がっています。ストリーミング再生回数が累計500億回をこえ、2010年代に世界で最も再生されたアーティストと呼ばれるようになった彼。確かに、この曲調なら幅広い層の支持も納得です。

評価:★★★★

DRAKE 過去の作品
Thank Me Later
TAKE CARE
Nothing Was The Same
If You're Reading This It's Too Late
VIEWS
More Life
SCORPION
Care Package

Shall We Go On Sinning So That Grace May Increase/The Soft Pink Truth

アメリカのエレクトロデゥオ、MatomosのメンバーであるDrew Danielによるソロプロジェクト。終始、美しいサウンドに聴きほれるエレクトロ主体のサウンドとなっており、前半は女性コーラスを取り入れた幻想的な作品に、後半はピアノの音色を取り入れた美しいサウンドが印象的。途中、メタリックな音をサンプリングしたり、まるでアラームのように鳴り響く音に驚かされたりしつつ、最後まで美しい音世界に聴きほれるようなアルバムでした。

評価:★★★★★

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2020年6月25日 (木)

こちらも「Kinki Kids」が1位

今週のHot Albums

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

Hot100ではKinki Kidsの新曲が1位を獲得しましたが、アルバムチャートもKinki Kidsのメンバーによるアルバムが1位を獲得しています。

今週、1位に初登場してきたのはKinki Kidsの堂本剛ことENDRECHERI「LOVE FADERS」。最近、すっかりファンクに傾倒している彼ですが、このアルバムもジャケットからしてそのまんまなファンクアルバム。CD販売数1位、PCによるCD読取数3位で総合順位は1位に。オリコン週間アルバムランキングでは初動売上5万7千枚で1位初登場。前作「NARALIEN」の6万枚(1位)より若干のダウンです。

2位はロックバンドSiMによる約4年ぶりのアルバム「THANK GOD,THERE ARE HUNDREDS OF WAYS TO KiLL ENEMiES」が入ってきました。CD販売数2位、ダウンロード数5位、PCによるCD読取数10位。オリコンでは初動売上1万3千枚で2位初登場。オリコンでは初となるベスト3ヒットだそうですが、初動売上は前作「THE BEAUTiFUL PEOPLE」の1万8千枚(6位)からダウンしています。

3位には日韓合同の女性アイドルグループIZ*ONE「Oneiric Diary」がランクイン。韓国盤でのリリースのため、Hot Albumsはダウンロード数のみのランクインでしたが、ダウンロード数で1位を獲得しベスト3入りとなっています。一方オリコンでは、輸入盤の売上により、初動売上3千枚で8位初登場。前作「BLOOM*IZ」の2万枚(3位)より大きくダウンしています。

続いて4位以下の初登場ですが、7位にピクシブの「つくドル!プロジェクト」から誕生した女性アイドルグループ、虹のコンキスタドール「レインボウグラビティ」がランクイン。CD販売数3位、その他はランク圏外となり、総合順位はこの位置に。オリコンでは初動売上7千枚で4位初登場。前作のベストアルバム「THE BEST OF RAINBOW」の8千枚(9位)から若干のダウン。オリジナルアルバムとして前作となる「レインボウフェノメノン」の1万枚(7位)からもダウンしています。

8位にはロックバンド[ALEXANDROS]「Bedroom Joule」がランクイン。新型コロナの最前線で働く人や自宅で過ごす人が眠る前にベッドルームでリラックスして聴き、楽しんでもらえるようにという思いのもとにリリースされたコンセプトアルバムで、基本的には既存曲の李アレンジバージョンが収録されています。ちなみに本作の収益の一部は日本赤十字に寄付されるそうです。CDは8月26日にリリース予定なのですが、先日、配信が先行してリリースとなり、ダウンロード数で2位を獲得。見事、ベスト10入りとなりました。

今週の初登場盤は以上。続いてロングヒット盤ですが、まずOfficial髭男dism「Traveler」は今週3位から6位にダウン。ダウンロード数が4位から6位にダウンしています。ただ一方、CD販売数は10位から5位にアップし、驚異的な人気ぶりを物語る結果となっています。

King Gnu「CEREMONY」は先週から変わらず5位をキープ。こちらもダウンロード数は3位から4位にダウンする一方、CD販売数が14位から6位に大幅にアップしており、こちらも強さを見せつける結果となっています。

さらに今週はベスト10返り咲きとして、女性シンガーソングライターUru「オリオンブルー」が先週の12位から10位にランクアップ。2週ぶりのベスト10返り咲きを果たしています。これで通算10週目のベスト10ヒット。こちらもCD販売数が17位から14位にアップしており、ベスト10返り咲きの要因となっています。

今週のHot Albumsは以上。チャート評はまた来週の水曜日に!

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2020年6月24日 (水)

今週もCDの新譜が1位獲得

今週のHot100

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

先週、久しぶりにCD販売数1位と総合順位の1位が一致したHot100でしたが、今週もCDの強力盤が1位を獲得しています。

今週1位を獲得したのはジャニーズ系のアイドルユニット、Kinki Kids「KANZAI BOYA」。この曲のタイトルは、もともとジャニー喜多川がKinki Kidsの前に彼らに命名したユニット名だそうで、その経緯を綴ったかなりユニークな歌詞も印象的。堂本剛作詞作曲の「無駄にカッコいい」FUNKナンバーになっており、サウンドとのアンマッチを含めて非常にインパクトある作品になっています。CD販売数及びTwitterつぶやき数1位、ラジオオンエア数22位、PCによるCD読取数2位。例によってジャニーズ系のためストリーミングやYou Tube配信はありませんが、これ、ストリーミングやYou Tubeで流せば、インパクトの強さからロングヒットを狙えるのでは?オリコン週間シングルランキングでは初動売上18万7千枚で1位初登場。前作「光の気配」の17万1千枚(1位)よりアップ。

そして相変わらずデッドヒートを繰り広げるYOASOBI「夜に駆ける」が2位、瑛人「香水」が3位と先週と同順位をキープ。「夜に駆ける」がストリーミング数及びYou Tube再生回数で1位、「香水」がいずれも2位と、まさにロングヒットの指標となるこの2つのチャートでデッドヒートを繰り広げています。ただ、残念ながら先週「香水」が1位を獲得したダウンロード数は今週4位にダウンしています。

続いて4位以下の初登場曲・・・なのですが、今週残念ながら4位以下に初登場曲はありませんでした。そんな中、今週順位を伸ばしたのがあいみょん「裸の心」。先週、10位にランクアップしベスト10に返り咲きましたが、今週はCDがリリース。その結果、CD販売数が4位にランクインし、総合順位も4位にランクアップしました。またこれにつれ、ダウンロード数も4位から2位、ストリーミング数も11位から6位、ラジオオンエア数は5位から1位と軒並みランクアップしています。オリコンでは初動売上1万枚で4位初登場。前作「空の青さを知る人よ」の7千枚(7位)からアップしています。

そしてロングヒット系では、まずLiSA「紅蓮華」が4位から6位にダウン。ダウンロード数が3位から5位、You Tube再生回数が11位から13位、PCによるCD読取数も2位から4位と全体的に下落傾向となっています。

Official髭男dism「Pretender」が5位から7位、「I LOVE...」が6位から8位とこちらも失速気味。ただストリーミング数は「I LOVE...」が先週の3位からダウンしたものの4位をキープ。「Pretender」に至っては4位から3位にアップとまだまだ強さを見せており、まだロングヒットは続きそうです。

またKing Gnu「白日」は8位から9位にダウン。こちらも下降傾向が続きます。ただこちらもストリーミング数は先週の6位から5位にアップするなど、まだまだ強さを見せつける結果となっています。そろそろ後のない順位になってきましたが、もうちょっとロングヒットは続きそうです。

今週のHot100は以上。明日はHot Albums

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2020年6月23日 (火)

合わせて5枚組でURCの世界を味わう

日本初のインディーズレーベルと呼ばれ、岡林信康やはっぴいえんどといったミュージシャンが所属。インディーレーベルだったからこその自由度の高い音楽で数多くの「名盤」を世に送り出してきたURCレコード。2019年は誕生から50年ということで「URC50周年記念プロジェクト」なる企画がスタートし、URCの数多くのアルバムが復刻されています。今回は、その「50周年記念プロジェクト」の中でリリースされた、URCの歴史を概観できるようなオムニバスアルバムを聴いてみました。

Title:URC50th ベスト・青春の遺産

まず、こちらはURCの代表曲を、音楽評論家の田家秀樹選曲により収録した3枚組のベストアルバム。今でも歌い継がれるようなURCレコード所属のミュージシャンによる代表曲が収録されています。ただ、URCのベスト盤自体は以前にもリリースされており、同じような企画の「URCゴールデンベスト」は以前にも紹介しています。

この「URCゴールデンベスト」とはかぶる曲も少なくなく、基本的な感想は、以前書いた感想とあまり変わりません。特に歌詞の持つ力が非常に強く…というより、歌い手がとても強いメッセージ性を歌に込めているのが印象的。ただ、一方では特に高田渡の曲あたりに顕著なのですが、社会派のメッセージを内包しつつ、ユーモラスにコーティングしている曲も少なくなく、ここらへん、遊び心も感じられる部分も少なくなく、かつ、強烈なメッセージをいかに多くのリスナーに聴かせるのかという苦心の跡も感じられます。

歌詞には戦中戦後を生きた女性を歌う「主婦のブルース」や、高度経済成長期らしい「格差」が印象的な「葛飾にバッタを見た」のような時代性を感じさせる曲も少なくないのですが、そのような曲の中にもある種の普遍的なメッセージ性も感じることが出来、強い印象に残ります。

一方、サウンド面で強いインパクトを受けるのがはっぴいえんどの曲。メロディーラインは和の要素の強い反面、ノイジーで力強いギターを中心としたバンドサウンドはサイケロックからの影響も感じられ、洋楽的要素も強く、このURCの楽曲群の中でもかなり異質。当時から高い注目を集めた彼らですが、今聴いてもそのインパクトは全く衰えていません。

評価:★★★★★

Title:URC RARE シングルズ

ただ、個人的にはURCのベスト以上に強い印象に残ったのがこちら。和久井光司選曲によるレア・シングル・コレクション。ベスト盤とはちょっと異なるユニークな曲が少なくありません。例えば高田渡の「三億円強奪事件の唄(実況)」はタイトル通り、三億円事件についてドキュメント的に歌った曲ですし、金延幸子や中川イサトも在籍していた秘密結社〇〇教団の「あくまのお話し」も子供の声を入れて、ユーモラスな曲調になっていますし、アメリカ民謡を自己流でカバーした、亡くなった母親に捧げる「その朝」もユーモラスながらも胸に響いてきます。

ある意味「王道」的なベストの方と比べて、より独特な曲が多いこちらの作品は、URCレコードの懐の深さも感じます。ただし、こちらのオムニバスでは赤い鳥の「竹田の子守唄」やザ・ディランIIの「プカプカ」など、URCの代表曲とも言えるようなナンバーもなぜかこちらに収録。なぜかベストの方に収録されなかった曲をこちらでカバーしているのか、なぜレア・シングルとして取り扱われているのか若干不明な曲もあったりして、ベストと同時にチェックしておきたい内容となっています。

評価:★★★★★

この「ベスト」と「RAREシングルス」で計5枚組。じっくりとURCの世界を味わうことの出来るオムニバスアルバムになっていました。時代を感じる曲もありますが、その歌詞の持つパワーは今も健在。ユニークでインパクトある曲も多いだけに計5枚というボリューム感ながらも一気に楽しむことの出来る作品だと思います。興味がある方はこれを機に、お勧めしたいオムニバスアルバムです。


ほかに聴いたアルバム

Rockin’ It Jazz Orchestra Live in 大阪~ Cornerstones 7/佐藤竹善

佐藤竹善のカバーアルバムシリーズCornerstonesの第7弾。本作は昨年12月28日に大阪・オリックス劇場で行われたライブの模様を収録したライブアルバム。全編、ビックバンドによるアレンジがほどこされたアレンジとなっており、ホーンで軽快な、楽しい雰囲気のカバーが多いアルバムに。ライブ盤なだけに、ある種、ライブ向けのアレンジといった印象もあり、ライブで聴いたら楽しかっただろうなぁ、という印象も受けたライブアルバムでした。

評価:★★★★

佐藤竹善 過去の作品
ウタジカラ~CORNER STONE 4~
静夜~オムニバス・ラブソングス~
3 STEPS&MORE~THE SELECTION OF SOLO ORIGINAL&COLLABORATION~
Your Christmas Day III
The Best of Cornerstones 1 to 5 ~The 20th Anniversary~
My Symphonic Visions~CORNERSTONES 6~feat.新日本フィルハーモニー交響楽団

Little Christmas
Don't Stop Me Now~Cornerstones EP~

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2020年6月22日 (月)

インターネットひとりぼっち 2度目の参加

弾き語りツアー風 “柴田聡子のインターネットひとりぼっち’20”

会場 大阪風(オンライン) 日時 2020年6月11日(木)19:30~

以前紹介した、シンガーソングライター柴田聡子による配信ライブ「柴田聡子のインターネットひとりぼっち」。もともと彼女が予定していた全国弾き語りツアー「柴田聡子のひとりぼっち'20」が新型コロナの影響で開催が延期となり、その代わり、ちょうど開催が予定されていた同日同時刻にインターネットでの無料配信という形でオンラインライブを実施するというもの。前回、京都でのライブが予定されていた日に実施されていた「京都風」を見たのですが、今回は大阪でのライブが予定されていた日に実施した「大阪風」にオンラインで参加しました。

まず配信ライブが開始されると、仮想背景は・・・これは淀川でしょうか?アコギでしんみり弾き語りつつ、まずは「ジョイフル・コメリ・ホーマック」からスタート。なんか、彼女が歌う映像が、川から出てきたようになってきたのがユニーク。その後はグッとアップとなって「結婚しました」を聴かせてくれます。前回同様、金髪の姿に、ウォーリーのような赤いヨコシマのTシャツという涼しげな姿でした。

さらに仮想背景がチェンジ。ちょっとムーディーなキャバレー風なのですが、どうもこの日、ライブを行う予定だった大阪のMusic Club JANUSのよう。この店内を背景に「ポイズンレークパーク」へ。本来だったら行われたであろう大阪でのライブを思い起こしながらのステージとなりました。

続いてはMCへ。大阪でのライブらしく(?)「おおさか~~!」と叫びつつ、前日に配信開始された「変な島」を紹介。さらに背景が大阪城に変わり、7月リリース予定のEP「スロー・イン」の紹介と続きました。さらに仮想背景がたこ焼きに(!)。いや、大阪らしいけど、どんな背景だよ(笑)。ということで「スロー・イン」から新曲「いやな日」「友達」「どうして」と続きます。ここは先日の京都風と同じ展開ですね。ちょっと切ないメロでしんみり聴かせつつ、背景はたこ焼き・・・というスタイルが非常シュール。「友達」ではなぜか背景は弁当に。そして「どうして」では、ここで背景が太陽の塔と、大阪らしい背景の登場となりました。

さらに背景が通天閣へ。この通天閣を背景に「ワンコロメーター」へ。軽快なギターで楽しい楽曲が通天閣の風景とも微妙にマッチ。さらにくいだおれ人形が画面を埋め尽くし、そのくいだおれ人形の向こうで柴田聡子が歌うという奇妙な風景に。続いては道頓堀の風景を背景に「芝の青さ」に。このPVは大阪で撮ったらしく、その時の写真も登場しました。

その後のMCでは、ドリカムの「大阪LOVER」をちょっとだけ口ずさみ、この配信ライブではおなじみの、画面全体がピンクの背景となった中で、最新EPから「変な島」を披露し、ライブは終了。今回もちょうど1時間の配信ライブでした。

前回と同様、写真とはちょっと印象に異なる、とてもかわいらしい彼女のお姿が印象的で、かつ時にはしんみり、時には軽快に歌われるボーカルも非常に印象に残る配信ライブに。前回同様、とても素晴らしいステージでした。この弾き語り配信ライブ、残り4回のようなのですが、残念ながら私が見れそうなのはおそらくこれが最後。次は、是非、コロナがおさまった後、生のライブで見たい!そう強く思わせてくれる素晴らしいライブでした。

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2020年6月21日 (日)

「賞味期限付き」のアルバムも?

Title:ストリーミング、CD、レコード
Musician:ゲスの極み乙女。

5月に配信先行でリリースされたゲスの極み乙女。のニューアルバム。これ、本当にアルバムタイトル??といった感じの、人を食ったようなアルバムタイトルもある意味彼ららしいのですが、それ以上に話題となっているのはそのリリース形態。アルバムタイトル通り、5月1日にストリーミングで先行配信となった後、6月17日にCD、レコードでのリリースとなったのですが、CD、アナログ盤はDVD/Blu-rayもついて、デラックス盤ということで1万円超えのファンズアイテム的な限定盤。そして2,200円というお手軽(?)価格で購入できるアイテムが、なんと、CDの代わりに特製のバームクーヘンをおさめたという、史上初の賞味期限付のアイテム。CDショップにCDが並んでも、実際に面出しされるのは数週間だけで、その後は目立つところにはおかれなくなる、という意味でCDにも賞味期限があるみたい・・・という発想から、ならいっそのこと賞味期限付きのアルバムをリリースしよう、というのが今回の発想らしいです。まさに彼ららしいユニークで、人を食ったような発想といった感じがします。

さて、そんなユニークな彼らのニューアルバム。ご存じの通り、ゲスの極み乙女。で作詞作曲を担当する川谷絵音は別バンド、indigo la Endでも活躍しています。その別バンドindigoは哀愁感漂う歌謡曲テイストの強い作風の曲がメインとなっており、ゲスとは曲調に差をつけている印象があるのですが、前作「好きなら問わない」あたりから、ゲスの極み乙女。でも歌謡曲テイストにシフト。そして今回のニューアルバムに関しても、非常に歌謡曲テイストの強い、メランコリックな曲調の作品が並んでいます。

そんな本作の1曲目を飾る「人生の針」はハイトーンボイスで哀愁感たっぷりという実に歌謡曲テイストが強いナンバー。歌詞も「私 間違うことでしか人生の針を正しく使えないの」と、悲しみを背負った人生を歌い上げるスタイルもまさにムード歌謡曲的。続く「私以外も私」もメロウなエレピが印象に残る、哀しい雰囲気のポップソング。まずはメロディーラインが印象に残る楽曲が目立ちます。

ただ、もちろん歌謡曲テイストで歌とメロディーがメインというスタイルが確立されているindigo la Endと比べて、ゲスの極み乙女。はやはり歌詞にしろサウンドにしろ、自由度の高いポップチューンが目立ちます。「綺麗になってシティーポップを歌おう」などは、タイトル自体、どこか最近流行となっているシティポップを揶揄しているような感じがするのも彼ららしいのですが、サウンド的にもピアノでメロウなサウンドを聴かせている、と思いきや、ラストになっていきなりそのサウンドが崩れていくのが印象的。

「ドグマン」もトラップ的なリズムを取り入れており、今風なサウンドメイキングを感じられますし、世間を皮肉ったような歌詞がユニークな「問いかけはいつもためらうためにある」も転調と女性ボーカルを上手くつかって非常にユニークな楽曲に仕上げられています。タイトルからしてユニークな「フランチャイズおばあちゃん」もハイテンポなリズムトラックがインパクトを持った楽曲になっていますし、「キラーボールをもう一度」もサックス入り、ムーディーでジャジーな作風に。基本的に哀愁感あるメロディーが主軸になっているのですが、歌詞にしろサウンドにしろ様々なタイプの曲が並んでおり、かつ自由度も高め。ゲスらしいユーモラスな作風に最後まで耳の離せない構成になっています。

さすがに前作までのような、川谷絵音のスキャンダルネタを皮肉ったような曲はもうなくなったのですが、それでもどこか人を食ったような、皮肉めいた歌詞が目立つのも彼らならでは。賞味期限付きのアルバムというユニークなリリース形態を含めて、いい意味で世間に全く流されない彼ららしいスタイルは本作も健在でした。あいかわらずバンドとしての勢いも続いているように感じられる本作。今後もそのマイペースぶりは続きそうです。

評価:★★★★★

ゲスの極み乙女。 過去の作品
踊れないなら、ゲスになってしまえよ
みんなノーマル
魅力がすごいよ
両成敗
達磨林檎
好きなら問わない


ほかに聴いたアルバム

Grow apart/Awesome City Club

新型コロナの影響でCD販売が遅延し、配信先行となった5周年記念、約1年5ヶ月ぶりとなるフルアルバム。男性ボーカルのatagiをメインボーカルとしつつ、女性ボーカルPORINとバランスよいツインボーカルを聴かせる爽やかなシティポップチューンがメイン。シンセを入れたリズミカルなポップチューンがメインなのも以前と変わらず。全11曲入りのフルアルバムなのですが、もうちょっとバリエーションと、メロのインパクトがあったら、よりおもしろいバンドになると思うのですが・・・。

評価:★★★★

Awesome City Club 過去の作品
Awesome City Club BEST
Torso
Catch The One

SINGALONG/緑黄色社会

愛知県出身、女性2人+男性2人の4人組バンドのメジャーデビューフルアルバム。こちらも新型コロナの影響で配信先行となり、さらにCD販売は未定という状態に・・・。もう、CD販売に拘る必要性はないのかもしれませんが。本作は配信オンリーながらもBillboardのHot Albumsにベスト10入りしてきており、人気上昇中であることがうかがわせます。ただ、楽曲的にはストリングスやピアノで音を分厚くしつつ、ルーツレスなメロディアスなポップソングを聴かせるという、ある意味典型的なJ-POPバンドといった感じ。メロディーにはそれなりにインパクトとスケール感があるのですが、目新しさは感じられず。今後の展開、成長次第では、スタジアムライブクラスのバンドになる可能性はあるとは思うのですが。

評価:★★★

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2020年6月20日 (土)

配信ライブも「いいねっ!!」

インターネットのクレイジーケンバンド

会場 オンライン 日時 2020年6月8日(月) 20:30~

ここに来て、オンラインライブを連続してみていますが、今日はクレイジーケンバンドのライブ。もともと4月9日に実施予定だったライブの振替という形。今回、オンラインでの開催となりました。

やがて時間になると横山剣と、いきなりゲストのVIDEOTAPE MUSICの2人で登場。まず1曲目は、VIDEOTAPE MUSICの曲に横山剣が参加した「南国電影」からスタートという、ちょっと意外なスタートとなりました。そして、そんな中、メンバー全員が登場し、本格的にライブがスタートとなりました。

そしてクレイジーケンバンドとしての1曲目は「タオル」からスタート。日々、暑くなってきた時期だったのですが、一足早い夏の到来となりました。その後の懐かしい「スージー・ウォンの世界」では、VJによる映像が重なったり、さらには途中、昔のライブ映像が流れ、今の映像と重なったりという、インターネットライブらしい演出もあり、楽しませてくれました。

その後「あぶく」に続いては短くMC。「ブラウン管の前のみなさん」という呼びかけがCKBらしい感じ(笑)。そしてそのまま「KARAOKE International」へと続くのですが、最初、いきなり歌詞を忘れるというトラブルが発生。しきりなおして再開というちょっとしたトラブルがありました。

「混沌料理」「せぷてんばぁ」と続いて、いきなり夏を飛び越し、そしてMCでは配信ライブに実装されているライブチャットに横山剣はじめとしたメンバーがコメント。こういうやり取りは配信ライブらしくうれしいですね!さらに「この曲やりたいということをテレパシーで伝えてください」とカメラにむかって手をかざして、「この曲だろ!」と「タイガー&ドラゴン」へ!ある意味、ベタな選曲なのですが(笑)、確かにこれは聴きたかった!パソコンの前で盛り上がっていました。

その後は「亀」が続き、ここで小野瀬雅生ショーと題して、彼がメインとなるギターインスト曲へ。「イカ釣り船」でアグレッシブなギタープレイを聴かせてくれます。そのギタープレイで盛り上がる中、ライブはどんどん進みます。「けむり~ざくろ」でこぶしを利かせたボーカルを聴かせてくれた後は、軽快な「カフェ・レーサー」で盛り上げます。

「夜明け前が一番暗い~♪」と歌う「カフェ・レーサー」から、「時計の針を2時22分にしてください」というMCで「発光!深夜族」へ。「イントロ最高だね」とまさかのイントロもやり直しで(笑)、軽快に聴かせます。そんな(家の中でですが)盛り上がる中、本編ラストということで「木彫りの龍」に。爽やかで、かつライブの最後にふさわしい歌詞の曲で、最後を締めくくります。最後はマスク姿でおなじみ「いいね!」のポーズ。最後はみんな逃げるようにステージから去っていきます

・・・で、ここで会場にアンコールの拍手が鳴り響き、アンコールへ!最後に「いつかここでやりたいですね!渋谷Duoからお送りしました」と、場所のネタバレ。渋谷のduo MUSIC EXCHANGEなんですね。行ったことないけど。そしてアンコールでは「流星ドライブ」へ。最後も爽やかに軽快に聴かせます。最後にはバンドメンバー全員の紹介を行って配信ライブ終了。最後はメンバー全員マスク姿になり、一人ずつ、カメラにあいさつしながらの退場となりました。

完全な生配信。20時半からスタートし、約1時間20分程度のステージ。いつものCKBのライブとしては短めだったのですが、それでもベスト的なセットリストがかなり濃く、非常に楽しめるライブ。配信ライブながらも、普段のステージとほとんど変わりのないようなライブを楽しむことが出来ました。次は同じ場所で生でライブをやります、と言っていたのですが、さすがに渋谷には行けないかもしれませんが、またクレイジーケンバンド、生でのライブを見たいですね!早くそんな日常が戻ってくることを願って。大満足のライブでした。

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2020年6月19日 (金)

3時間超えのお家フェス

カクバリズムの家祭り

会場 オンライン 日時 2020年6月6日(土)20:00~

先日に引き続き、再びオンラインでのライブレポートとなります。今回は、今を輝くceroやYOUR SONG IS GOOD、キセルなど、音楽ファンから高い注目を集めるミュージシャンを数多く抱えるインディーレーベル、カクバリズムが主催したオンライン音楽フェス。非常事態宣言が解除されても、ライブ再開の目途が全く立たない中、配信でのライブフェスという形での開催となりました。

その「フェス」は、土曜日の8時過ぎ、まずMCのYOUR SONG IS GOODのサイトウ“JxJx”ジュンが登場。様々な映像を集めたら、3時間超えになったということ。そのため、アーカイブスが放送されるので自分のペースで見てほしいという話をした後、ライブがスタートとなりました。

在日ファンク

今回は「嘘」をアレンジした「ファンキー嘘ドラマ」という曲を披露。メンバそれぞれの自宅からの演奏とな、ハマケンは家の中(押し入れの中?)からの歌となったのですが、いつも通りファンキーなボーカルで力強く聴かせてくれていました。最後はハマケンはベランダに飛び出し、みんなも庭に出たりと、Stay Homeらしからぬ(?)部分も。在日ファンクならぬ「在宅ファンク」ながらも、ある意味、いつも通りのファンキーなライブを聴かせてくれました。

スカート

自宅からアコギ1本で。バックにはレコード棚となっていたのが彼らしい感じ。「CALL」「ストーリー」「駆ける」「ずっとつづく」「静かな夜がいい」と5曲も聴かせてくれるボリューム感ある配信ライブ。非常に体格のよい彼ながらも、爽やかなメロと歌声で、思わず聴きほれてしまうようなライブでした。

高城晶平

この日は落書きの書かれたコンクリート塀をバックにギター1本で。「ロープウェイ」「ミッドナイトランデブー」の2曲を披露してくれます。ギターにはおもいっきりエフェクトもかけられており、彼らしい独特のサウンドでムーディーに聴かせてくれたライブでした。

辻村友晴(キセル)

ご存じキセルの弟。久しぶりに見たのですが、お兄さんにそっくりになってきましたね・・・。ミュージックソーを使った静かなインストチューンや、キセルの曲をアコギ1本でカバーした曲など4曲程度を披露。キセルらしい独特の空気感は配信を通じてもしっかりと伝わってくるステージでした。

イルリメ

アコギ1本での歌モノ。語るような歌がちょっとラップ的な雰囲気も醸し出していました。アコギのアルペジオでしんみりフォーキーで暖かく聴かせる曲となっており、2曲のみdしたが、暖かく聴かせる。

Hei Tanaka

はじめて知ったのですが、元SAKEROCKの田中馨率いるバンドなんですね。この配信ライブのために新曲を披露。メンバーみんな別々の場所で。にぎやかで、ちょっとお祭りっぽい曲調のジャムロックなのがユニーク。1曲だけだがとても楽しい雰囲気のステージになっており、SAKEROCKからの流れも感じます。ライブは楽しそうだなぁ。

MEI EHARA

今回、初耳の女性ミュージシャン。部屋の机の前でアコギ1本。透明感のある歌声でしんみりとフォーキーに聴かせてくれます。「群れになって」「ギャンブル」「午後には残って」「鉄の抜け殻」と4曲も披露。美しい歌声が印象に残るミュージシャンで、しっかりとその歌が印象に残るライブでした。

辻村豪文(キセル)

松本市にある宅録部屋から。窓の外からは林も見え、道を歩く人の姿も見えているような場所。GW明けから、配信ライブ「寝言の時間」を実施しており、そこで披露した曲からのライブだそうです。最初の「山を下る」と言う曲からスタート、いつもながらも脱力感あるフォーキーなサウンドでまったりとした雰囲気のライブだたのですが、途中、非常事態宣言解除の時の安倍総理の演説をサンプリングさせた曲があり、楽曲の中に強烈な違和感を生み出していました。その後「楽しい明日」「たまにはね」という曲と続き、計3曲を披露。子供が外で遊んでいるように、「静かに」と呼びかけるシーンも(笑)あったりとして、キセルらしいまったりとした雰囲気のライブとなっていました。ちなみに「寝言の時間」は最低10回はやりたいそうで、一度見てみたいなぁ。

VIDEOTAPEMUSIC

シンセの音色にパーカッションやテルミンを加えて、ちょっとウェットでムーディーな雰囲気のインストと、同じくちょっとエキゾチックで軽快なインストチューンの2曲、それもどちらも新曲を披露。本人が演奏するバックにVJ的に映像も流しており、家から配信ながらもライブらしい雰囲気も感じるステージでした。

yamomo(吉澤成友、野村卓史、辻村豪文、辻村友晴)

今回登場する新バンド。ネット環境の影響のため朝6時から録音しているらしい、配信らしいスタイルとなっていました。最初はメンバー4人でまったりトークからスタート。やはりみんななかなか会えないだけにトークが楽しいみたい。そんなダラダラした雰囲気からライブスタート。ギター、ベースにピアノ、ドラムというスタイルで、辻村豪文がドラムに挑戦していました。「プカ」「ローンズ」(カバー曲だそうです)「yamamo」の3曲を披露。ジャジーな曲調でちょっと大人の雰囲気を聴かせるセッションとなっており、(朝の収録なのですが)夜、まったり楽しむにはピッタリのナンバー。途中、会話などをはさみつつ、まったりとした空気の流れるライブセッションでした。

思い出野郎Aチーム

名前は知っていたのですが、音はこれがはじめて聴く彼ら。今回、配信ライブのためにメンバー全員が機材をそろえたようで、気合いも感じます。ホーンやピアノも入って軽快で楽しいファンクソウルチューン。楽曲も、まるで新型コロナで家にいなければいけないみんなへのメッセージのような歌詞の曲だったのが印象に残ります。ネットでつないだバンド形式だっただけに、非常に楽しいライブでした。

二階堂和美

オオトリは二階堂和美。今は広島在住みたいですので、広島のお寺の講堂からのステージでしょうか?いきなり踊りだしたり、彼女らしいフリーキーなパフォーマンスなのですが、その美しい歌声には、やはり強く惹きつけられるものがあります。実質上、3曲のみのステージでしたが、笑顔いっぱいのパフォーマンスでとても楽しそう。最後はアンコールで「夏のお嬢さん」のカバーという非常に明るい曲で締めくくり。このコロナで暗い雰囲気になりがちな中、とても明るさのあるパフォーマンスを見せてくれました。

そんな訳でトータル3時間強。かなり豪華な「フェス」でした。数多くのカクバリズム所属が途中、サイトウ“JxJx”ジュンのMCを挟みつつ、それぞれ在宅で貴重なパフォーマンスを見せてくれたライブでした。どのミュージシャンもいつか生で見てみたいなぁ、と思いつつ、これはこれで貴重な映像の連続で、とても楽しい時間を過ごすことが出来ました。でも、次はこの「フェス」、是非、生で。その日が出来るだけ早く来ることを願って…。

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2020年6月18日 (木)

見事2週連続1位

今週のHot Albums

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

2週連続の1位獲得です。

今週はmilet「eyes」が2週連続で1位獲得。CD販売数は1位から2位、PCによるCD読取数は4位から12位にダウンしてしまったものの、ダウンロード数は1位をキープ。2週連続の1位に輝きました。

2位には氷川きよし「パピヨン-ボヘミアン・ラプソディ-」が初登場。演歌歌手の氷川きよしがはじめて挑戦したポップアルバムで、フジテレビ系アニメ「ドラゴンボール超」のオープニングテーマとなった「限界突破×サバイバー」やGReeeeN作詞作曲の「碧し」、さらには湯川れい子訳詞によるQueenの名曲「ボヘミアン・ラプソディ」のカバーなど、ポップフィールドへ挑戦したアルバムになっています。CD販売数では見事1位を獲得。PCによるCD読取数は75位に留まり、総合順位は2位に。一方、オリコン週間アルバムランキングでは初動売上1万6千枚で2位初登場。前作「新・演歌名曲コレクション10-龍翔鳳舞-」(3位)から横バイ。新たなフィールドに挑んだ彼の新譜でしたが、CDの売上を見る限り、買う人は彼が何を歌おうがCDを買うし、そうでない人は何を歌おうが買わない、という残念な結果となっています。

3位にはOfficial髭男dism「Traveler」が先週4位からワンランクアップし、5月18日付チャート以来、5週ぶりのベスト3返り咲き。一時期は9位までランクダウンして、もはやこれまでかと思いきや、ここに来て盛り返し。特にダウンロード数は7位から4位にアップしています。しかしHot100のストリーミング数やYou Tube再生回数と異なり、Hot Albumsの場合、CD販売数にしろダウンロード数にしろ、一度買った人が繰り返し聴いたとしてもランキングに反映されません。そういう意味でこのロングヒットは純粋に、それだけ多くの人がヒゲダンのアルバムを購入しているということ。まさに驚異的な大ヒットと言えるでしょう。

続いて4位以下の初登場盤です。まず4位にスカイピース「青春ソラシドリーム」。ミュージシャン名にしろアルバムタイトルにしろ、いかにも爽やか前向きJ-POP系といった感じで鳥肌が立ってくるのですが、男性2人組のYou Tuberコンビによるアルバム。CD販売数3位、ダウンロード数17位。オリコンでは初動売上7千枚で4位初登場。前作「BE BOY」の6千枚(10位)より若干のアップ。

6位にはSUPER JUNIOR-K.R.Y.「When We Were Us」が初登場。韓国の男性アイドルグループSUPER JUNIORのメンバーの3人、イェソン、リョウク、キュヒョンから結成されたサブグループ。韓国盤のミニアルバムで、アルバムは本作がデビュー作。Hot Albumsではダウンロード数2位のみのランクインでベスト10入り。一方、オリコンでは韓国からの輸入盤が5千枚を売り上げ、8位にランクインしています。

7位にも韓国の男性アイドルグループNU'EST「The Nocturne」がランクイン。CD販売数4位のみのランクインで総合順位はこの位置に。オリコンでは初動売上6千枚で5位初登場。前作「Bridge the World」の1万8千枚(7位)からダウン。

8位初登場は女性声優鬼頭明里「STYLE」。CD販売数5位、ダウンロード数9位で総合順位はこの位置に。本作がアルバムデビュー作となります。オリコンでは初動売上5千枚で7位初登場。

9位にはヴィジュアル系ロックバンドMUCC「惡」がランクイン。CD販売数6位、ダウンロード数16位、PCによるCD読取数39位。オリコンでは初動売上6千枚で6位初登場。結成が1997年、メジャーデビューが2003年という、既にベテランの域に到達しているバンドながら、意外なことにアルバムでオリコンベスト10入りは本作が初となります。前作「壊れたピアノとリビングデッド」の4千枚(16位)からもアップしています。

最後10位には、TBS系バラエティー「水曜日のダウンタウン」から誕生した女性アイドルグループ豆柴の大群のデビューアルバム「スタート」が初登場。CD販売数7位、ダウンロード数81位で総合順位はこの位置に。オリコンでも初動売上4千枚で10位にランクインしています。

今週のHot Albumsは以上。チャート評はまた来週の水曜日に!

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2020年6月17日 (水)

久しぶりにCD販売数1位と総合1位が一致

今週のHot100

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

ここ最近、新型コロナの影響でCDショップが営業を自粛したことによることから、アイドル系のような、ファングッズとしてCDを大量に販売しようとする楽曲が軒並み販売延期になり、その結果、久しくCD販売数とHot100が大きく異なるチャートとなってきました。ただ、ここにきてようやくCDショップも営業を再開。アイドル系のCDのリリースが再開されてきました。

そんな訳で今週は、久しぶりにCD販売数で1位を獲得した楽曲が、総合順位でも1位を獲得しました。今週1位を獲得したのはジャニーズ系アイドルグループKing&Prince「Mazy Night」。CD販売数、PCによるCD読取数、Twitterつぶやき数で1位獲得。ラジオオンエア数19位、You Tube再生回数96位。オリコン週間シングルランキングでも初動売上51万8千枚で1位獲得。前作「koi-wazurai」の39万9千枚(1位)よりもアップ。CD販売数1位が総合順位1位を獲得するのは、5月4日付チャートでHKB48「3-2」が獲得して以来、7週ぶりとなります。

とはいっても、CD販売数の上位10曲のうち、総合順位でベスト10入りしたのはこの曲のみ。CD販売数のランキングと総合ランキングは相変わらず、大きく乖離しています。2位はロングヒットを続けるYOASOBI「夜に駆ける」が先週1位からワンランクダウンながらこの位置。今週もストリーミング数及びYou Tube再生回数1位、ダウンロード数2位をキープ。まだまだロングヒットを続けそう。そして、まさにこの曲とデッドヒートを繰り広げている瑛人「香水」が3位。こちらは今週、ダウンロード数がついに1位を獲得。一方、ストリーミング数及びYou Tube再生回数2位と、ダウンロード数、ストリーミング数、You Tube再生回数いずれも「夜に駆ける」と「香水」が1位2位を争っています。この2曲からは、まだまだ目が離せなさそうです。

続いて4位以下の初登場曲・・・と言いたいのですが、今週、初登場曲は1位のKing&Princeの1曲のみ。4位以下はロングヒット曲がズラリと並んでいます。

まず4位には鬼滅の刃が終わっても、まだまだ強いLiSA「紅蓮華」が先週から同順位をキープ。先週1位を獲得したPCによるCD読取数は2位にダウンしたものの、ダウンロード数は3位をキープ。さらに今週、ラジオオンエア数が48位から7位へと大幅にアップしています。

そしてOfficial髭男dism「Pretender」が今週6位から5位にアップ。一方「I LOVE...」は5位から6位にダウンしており、ついにこの2曲の順位が入れ替わっています。長らく2曲ほぼ並んでランクインを続けてきましたが、この順位が入れ替わるのは2月10日付ランキング(「Pretender」3位、「I LOVE...」6位)以来。両者とも、驚異的なロングヒットを続けていますが、その中でも特に「Pretender」の強さが目立つ結果となっています。

King Gnu「白日」は今週7位から8位にダウン。とはいえ、ストリーミング数は7位から6位にアップ。You Tube再生回数も9位から8位にアップしており、まだまだしぶとい強さを見せつけています。こちらもまだまだロングヒットは続きそうです。

さらに今週、ベスト10返り咲き曲が1曲。あいみょん「裸の心」が今週、19位から10位にアップ。5月18日付チャート以来、5週ぶりのベスト10返り咲き。特にダウンロード数が18位から4位、ラジオオンエア数が23位から5位に大幅にアップ。ストリーミング数も15位から11位にアップしています。6月17日にCDリリースを控え、その直前のプロモーション活動がランクアップの大きな要因の模様。来週にはCD販売数が加わる予定ですので、さらなるランクアップが期待できます。

今週のHot100は以上。明日はHot Albums!

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2020年6月16日 (火)

ASA-CHANGの2つの側面

今日はドラマー、パーカッショニストとして多彩な活躍をみせるASA-CHANGの2枚のアルバムの紹介です。

Title:事件
Musician:ASA-CHANG&巡礼

まずはご存じ、ASA-CHANG&巡礼名義となるニューアルバム。前作「まほう」では後関好宏、須原杏を新メンバーとして迎えて再び3人組となったASA-CHANG&巡礼ですが、本作はそんな前作から約4年ぶりとなるニューアルバムとなります。

もともと、実験的な作品が多く、ある意味、ASA-CHANGの自由度が非常に高いASA-CHANG&巡礼。今回もわずか7曲入りのアルバムですが、それぞれの曲でASA-CHANGの実験が行われています。まず「事件」「ニホンゴ」は言葉をバラバラに分解し、そこにパーカッションやエレクトロサウンドをのせて、不思議なリズムを作り出している曲。特に「ニホンゴ」では、ほぼ言葉とタブラのリズムのみで構成されており、言葉の不思議な響きが味わえます。

さらに「駅弁ソング」は、全国各地の駅弁をムード歌謡曲風のメロに載せて、ただ紹介するというコミカルな曲。さらにこれの真骨頂は、英語バージョンが続くという点。日本語の曲をむりやり英語に組み替えたような楽曲になっており、こちらも日本語と英語の言葉の響きを味わうという、彼の実験を感じることが出来ます。

そしていとうせいこうがゲストで参加した「シノシサム」は、この謎のタイトルが延々と続く、これまた挑戦的な作品。そしてラストの「生活節」は一転、明治や大正期の演説音楽を彷彿とさせるような、バイオリンをバックに哀愁たっぷりに聴かせる歌モノ。これまた異色な作風の曲で締めくくられています。

今回のASA-CHANG&巡礼の作品は、今まで以上に言葉の響きに重点を置かれた作品のように感じました。ただ、かなり実験的であり、聴いていて若干苦痛にも感じる部分もあった初期の作品と比べると、前作「まほう」に続いて、実験的な作品を含め、それなりにポップにまとまっていたようにも感じます。今のメンバーとの相性もいいようで、サックスやバイオリンも加わることにより、音にもより厚みや幅が加わったように感じました。おそらく、今後はしばらくこのメンバーで活動を続けるのでしょうね。まだまだASA-CHANGの実験的な作品は続きそうです。

評価:★★★★

ASA-CHANG&巡礼 過去の作品
影の無い人
ASA-CHANG&蒐集(ASA-CHANG)
まほう

そしてもう1作がエマーソン北村と組んだユニットの2枚目。

Title:エロス
Musician:ASA-CHANG エマーソン北村

前作「Debut」では息の合ったパフォーマンスにより、ユニークなカバーを聴かせてくれたASA-CHANG エマーソン北村。今回も、カバー曲6曲が収録されているのですが、このカバーの選曲もなかなかユニーク。選曲している曲の多くは、有名なナンバーで、タイトルから曲を思い出さなくても、聴いてみれば「ああ、あの曲か」と思い起こすような曲ばかりだと思うのですが、個性的な2人のミュージシャンの手によって、非常に個性的なカバーに仕上がっています。

まずユーモラスで耳を惹くのが「千の風になって」でしょう。裏打ちのエレピがユニークなスカ風のカバーになっており、原曲に比べると、かなりあっさりとしたボーカルながらも、ジャングルのような暑さを感じさせるカバー。ゲストボーカルの小島麻由美も強い印象に残り、彼らにしかできない、原曲とは大きくことなるカバーに仕上げています。

「エマニエル夫人」のカバーもまたユニーク。こちらもねっちりとしたトランペットの音色が印象的で、非常にじめっと暑いナンバーに仕上げています。原曲とはまた違った切り口で感じさせる「エロス」が印象に残る作品で、彼らの真骨頂と言えるかもしれません。

おじさん2人のハーモニーから入るという、ある意味強烈な「タイムアフタータイム」のカバーもユニーク。爽やかさを感じる原曲のメロを残しつつ、こちらもトランペットやリズムマシーンのリズムで熱帯雨林のようなウェットさを感じさせますし、サビだけなぜか歌われるおじさん2人のハーモニーのボーカルも、そのウェットさに拍車をかけています。

最後を締めくくる「ジェッディンデデン (トルコ・オスマン行進曲)」も非常にユニーク。強烈でノイジーでエッジを利かせたサウンドが強いインパクトを与えてくれる作品になっており、彼らだけしか生み出せないような強烈なグルーヴ感を醸し出しています。

本作も全6曲23分弱という長さながらも、最初から最後まで、じめっとした熱帯の中にいるようなカバーになっており、独特のグルーヴ感が強い印象を残す作品になっていました。前作「Debut」も2人の相性の良さを感じさせる傑作で、今回の作品もそれと同様の傑作アルバムに。彼らのグルーヴ感に妙にマッチするカバーの選曲も見事ですし、本当に2人の相性のよさを感じます。これからどんなカバーを聴かせてくれるのか・・・いまから楽しみです。

評価:★★★★★

ASA-CHANG エマーソン北村 過去の作品
Debut

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2020年6月15日 (月)

新型コロナの中で明確なメッセージを込めて

THA BLUE HERB「CAN YOU SEE THE FUTURE?」

会場 札幌すすきの(オンライン) 日時 2020年6月6日(土)18:00~

新型コロナの影響でライブイベントが軒並み中止になる中、ライブの代わりとして様々なスタイルで開始されている配信ライブ。この日はTHA BLUE HERBがワンマンでの配信ライブを行う、ということで参加することにしました。ライブ配信は札幌のススキノのビルの屋上から。札幌の街並みをバックとしたライブとなっており、札幌をホームとする彼ららしいステージになりました。

ステージはBOSSとDJ DYEの2人のみのステージ。18時ちょっと過ぎからステージはスタート。まずはいきなり挨拶代わりのラップからスタート。力強いBOSSのラップがいきなり響き渡ります。そしてそのまま、「WE WANT IT TO BE REAL」「Shock-Shineの乱 (1 Premise)」「介錯」など一気に続く続いていきました。

さらにその後、BOSSが画面をのぞき込み、視聴者、さらにはラッパーにメッセージを送るシーン。BOSSが画面をのぞき込むと、まるですぐそこに彼がいるみたいですごく身近に感じられました。これがまた配信ライブらしい感じでもあり、魅力にも感じられます。そしてライブはそのまま「NOW IS NOT THE TIME」へ。さらには「STOICIZM」「TRAINING DAYS」と続きます。リリックの中に札幌の地名が出てくると、その方向を指さすのも、ススキノでのライブならではといった感じです。

ライブでは「LIKE THE DEAD END KIDS」へ続き、その後のMCでアメリカの白人警官への黒人殺害事件について言及していました。MCの中でBOSSはHIP HOPの歴史を踏まえた上で、今回の件について、右手のこぶしを高くかかげ、明確な抗議の意を示していました。さらに、アメリカだけの話に留まらず、我々の日常でも差別がないか、考えるきっかけにもなれば、という非常に力強いメッセージを発していました。

さらには新曲の「2020」。新型コロナの中での現状を綴ったリアルタイムな歌詞が強い印象を受けるナンバーになっていました。しかし、こういう現在の社会事象へのリアルタイムへの反応って、HIP HOP系の方がロックとか他のジャンルに比べて、今、圧倒的に早いんですよね・・・今の時代、HIP HOPがより時代のリアルを綴っていることを感じさせる曲になっています。

この頃には時間も19時を過ぎて、会場は徐々に暗くなっていきました。若干曇気味の空で、ちょっと不気味さを感じるのが「2020」歌詞とマッチしていたのが印象的。ライブはそしてそのまま「TENDERLY」「SMILE WITH TEARS」へ。この「SMILE WITH TEARS」では「この1件が終わったら、またみんなで集まれるといいな」というリリックが加わっており、思わず胸が熱くなる。また、この曲は「あんたはその坂を越えなくてはならないって事だ 」というリリックもあり、今の時代に響いてきます。もちろん、新型コロナとは関係ないところでつくられた曲なのですが、今の時期に聴くと、また違う意味がこもってくる曲になっていました。

次の「それから」に続くMCでは、現在のライブハウスの厳しい現状にも言及。「いつも行っていたとこ、遊んでいるとこと力合わせてください」というメッセージも。さらには、コロナにかかった人たちにもメッセージを送っており、暖かさを感じました。

そして後半、「WE CAN...」「MAINLINE」「LOSER AND STILL CHAMPION」「THE BEST IS YET TO COME」「RIGHT ON」へと、過去の曲から現時点での最新アルバム「THA BLUE HERB」からの曲まで、様々な曲をピックアップ。「RIGHT ON」の「響き渡る雷鳴」のリリックの部分で雷の音と光が入る、妙に凝った演出も。そしてさらには「未来は僕等の手の中」では未来に対する力強いメッセージを込めての選曲となっていました。

その後はフリースタイルで全国各地の地名(おそらくライブで訪れた街)をラップ。そして「AND AGAIN」へ。その後のMCでは、「立て直していこう」というメッセージをMCで直接伝えていました。「また遊べる日をまってます」というMCには、思わず涙腺も緩む思いでした。そして終盤戦は「MAKE IT LAST FOR...」、「この夜だけは」をビルから札幌の夜景を眺めつつのラップ。そしてラストは、まさにこのコロナの中でのメッセージを込めたかのような「今日無事」で締めくくりとなりました。

今回の配信ライブ、全体的に、この新型コロナの中で非常にメッセージ性の強いステージでした。曲間のMCもそうですが、楽曲も、今の時代にマッチするようなメッセージを持った曲を多く選んでいましたし、さらにその中で、今の時代にマッチしたリリックを新たに入れてくる曲も少なくありません。今回取り上げた曲は、新曲を除いて決して今回の新型コロナの件とは無関係に生まれた曲ですが、彼らの曲は、この新型コロナの時期にピッタリとマッチしているような曲が多いことに気が付きました。厳しい現実の中でそっと背中を押すような、そんなリリックの曲が多いからでしょうか。

全140分、配信ライブながらも完全にフルの長さでのステージ。かなりの長丁場でしたが、最初から最後までメッセージ性強いリリックに耳を離せないステージとなっていました。今回、ライブがなくなったことにより急遽設定された配信ライブでしたが、そんな中でTHA BLUE HERBの楽曲、そしてMCの持つメッセージが、強く心に突き刺さってくるステージになっていました。本当に、彼のMCの通り、次はそれぞれの街のライブハウスで、できるだけ早いタイミングで出会えることを願って・・・。

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2020年6月14日 (日)

35年の歩み

本日は、最近読んだ音楽関連の書籍の紹介&感想です。

個人的にファンの、渡辺美里の自叙伝的な1冊、「ココロ銀河~革命の星座~」です。今年、デビュー35周年を迎える彼女の、初となるオフィシャルブック。彼女のデビュー時からデビューに至る前の時期、さらには今に至るまでの歩みが綴られている本。著者は渡辺美里本人となっているように、基本的には彼女へのインタビューから構成された内容になっているよう。軽快な(ただちょっとおばさんちっくな部分もある(失礼!))語り口は、ファンにとってはおなじみな、いかにも渡辺美里らしい語り口で、彼女の35年の歩みが綴られているほか、デビュー当初から今に至るまでの貴重な写真も数多く収録。さらには1995年から96年にソニーマガジンズの雑誌「Pee Wee」で連載されたエッセイ集「ロックのハート」を、雑誌の構成そのままで収録されています。

デビュー当初のエピソードから、「My Revolution」でのブレイクや西武スタジアムでのライブのエピソード。80年代から90年代にかけての数多くのヒット曲にまつわるエピソードや、西武スタジアムでのライブが終わった後の話、さらには最近の曲や、最近、作曲を手掛けたミュージシャンたちとのエピソードまで、まさにミュージシャン渡辺美里の歩みを知ることの出来る本作。デビューからブレイク、西武スタジアムから現在に至るまでの概ねの流れについては、ファンにとってはおなじみの話であり、特に目新しさはなかったのですが、ただ一方で非常に興味深かったのは、第1章から第2章にかけて紹介されている、数多くのヒット曲誕生にまつわるエピソード。特に「恋したっていいじゃない」が生まれたエピソードとして、彼女が芸能ニュースを見て「恋くらいしたっていいじゃん、ねぇ?」と語ったところを、当時のプロデューサー、小坂洋二が拾い上げたというエピソードははじめて知ったのですが、ふとしたきっかけでフレーズが出来上がるという点、とてもユニークに感じます。

また、デビュー直後のエピソードには、若き日の小室哲哉、岡村靖幸、大江千里といった、後々、シーンを代表することになるようなミュージシャンとのエピソードも語られており、非常に興味深く読みことが出来ました。岡村靖幸のエピソードとして、自分の曲のレコーディングではない時もスタジオに遊びに来て、「大村雅朗さんがアレンジしている間も「フォー!」とか「ベイビー!」とか言いながらずっと横にいて。」(p102)というエピソードは、いかにも岡村ちゃんらしく、ほほえましく感じます。渡辺美里のデビュー当初は、若き才能たちがいままさに羽ばたこうとしていた時期であり、そんな時期のエピソードはいかにも若々しさを感じ、かつシーンが非常に活性的であったことを、渡辺美里のエピソードを通じても感じることが出来ます。

そしてこの35年間の歩みを読んでさらに感じることがあります。それは彼女の人生、本当に順風満帆だったんだなぁ、ということ。17歳であっさりデビュー出来た後、下積みもほとんどなく、ほどなくブレイク。その後も20年連続西武スタジアムライブという快挙を達成し、それからも今に至るまで特に問題なくミュージシャン生活を続けている・・・そう感じてしまいます。実際、彼女はその通り、比較的順調なミュージシャン人生だったと思います。ただ、例えば80年代から90年代初頭にかけて一世を風靡した反面、90年代後半からは人気が急落。最後の方の西武スタジアムは空席も目立ち、かなり厳しい状況だった、という事実もあり、決して終始、順風満帆という訳ではなかったと思います。

ただ、これは彼女の性格なのでしょう、この本には、そういう彼女の影の部分はほとんど、というよりも全く描かれていません。あえていえば2001年の西武ドームライブ「TRY TRY TRY」のエピソードとして「スタッフのなかに『西武球場ライブをやるために曲をつくってもらうのは困るんですよね」と言う人が出てきたんです。また、スタッフ以外からも西武球場ライブに反対する声が聞こえてきました。」(p120)あたりの描写でしょうか。確かに2001年というと、彼女の人気が急落し、正直、西武球場に人を集めるのが厳しくなってきた頃。ここらへんに彼女の苦難も若干は垣間見れます。ただ、全体的にはそんな影の部分は表に出てこず、終始、明るい姿を見せ続けています。それがまた、彼女らしさなんだろうなぁ、と思う反面、こういうアーティストブックだからこそ、もうちょっと影の部分も知りたかったかも、とも思ってしまいました。

そんな気になる部分もありつつも、やはり全体的には貴重な写真も満載ですし、彼女の35年を俯瞰できるエピソードも読みごたえありますし、ファンならば要チェックの1冊でしょう。また、彼女の曲を聴きたくなり、久しぶりに彼女のライブにも足を運びたくなった、そんな本でした。

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2020年6月13日 (土)

日本の病巣に切りこむ「移民者ラッパー」

Title:Passport&Garcon
Musician:Moment Joon

Pg

これは、今年を代表するとんでもない1枚が登場しました。今日紹介するMoment Joonは大阪大学の大学院で学ぶ28歳のラッパー。実は彼、韓国生まれ大阪在住のラッパー。自ら「移民者ラッパー」を名乗る彼は、まさに今の日本と韓国の間に横たわる大きな問題にそのまま切り込んだリリックが非常に強い印象を残す楽曲を次々と作ってきています。

まず1曲目「KIX/Limo」は、最初は日本に戻ってくた自分の心境をメロウに歌い上げるのですが、中盤、入国検査官の差別的なやり取りから曲の雰囲気は一転します。韓国人に対する侮蔑語すら用いつつ、自らの決意をラップしています。そしてそのまま続くのが「KACHITORU」。この楽曲も、日本においてラップで成功しようとする決意を綴った力強いラップなのですが、やはり日本における韓国人の位置づけをリリックの中に織り込んでいます。

そのスタンスが最もストレートかつユニークにラップされているのが、タイトルそのまま「KIMUCHI DE BINTA」。ちょっとダークでリズミカルなトラックをバックに、日本人の韓国人に対する差別意識を逆にユーモラスに織り込んだ作品になっています。「三浦瑠璃が愛してる北朝鮮のスパイも友達」というフレーズも登場。一時期問題となった、三浦瑠璃の「スーパーセル」発言(テレビのワイドショーの中で、「大阪には北朝鮮のスパイ(=スーパーセル)が多く潜んでいて問題だ、と根拠も示さずに発言した件)を逆手に取った歌詞も登場してきます。

この「三浦瑠璃」という固有名詞を登場させている点もそうなのですが、この曲に関わらず、リリックの中に多くの今の時事的な固有名詞が登場するのも特徴。「Losing My Love」では在特会などワードが登場してきますし、「MIZARU KIKAZARU IWAZARU」では安倍総理も登場。ここらへんのワードについては、何年か経ってから聴いたら、おそらく「どういう意味だろう?」とわからなくなるかもしれません。しかし、そういう今の時代をストレートに反映させた固有名詞を登場させるからこそ、リリックが非常にストレートかつリアルに響いてきます。

要するにこのアルバムでMoment Joonは、日本人の抱える韓国人に対する差別意識という病巣を、韓国からの移民者という立場から鋭く切り込んできています。それも高らかに差別を糾弾するようなスタイルではなく、ユーモアとウィットセンスをまじえつつ、どこかコミカルさをまじえて描き出します。また彼自身、日本に移住しているように、決して根本的に日本を嫌っているわけではありませんし、韓国を賛美しているわけでもありません。実際、「Seoul Doesn't Know You」では韓国の問題点も描いています。そのため、日本人の私が聴いても、違和感なく聴くことが出来ます。

また、日韓の間に横たわる問題といえば在日朝鮮人の問題もあります。しかし、彼自身、韓国出身の移民ラッパーということもあり、在日朝鮮人の問題については全く触れていません。ただ、在日朝鮮人やその背後にある歴史的事象をオミットしているからこそ、逆に日本社会にはびこる日本人の差別意識によりフォーカスすることが可能となっています。さらに彼には今、ロシア人の彼女がいるらしく、楽曲の中にはロシアについての言及も登場。そのため、「韓国人の」という視点に加えて「外国人が日本で感じる差別意識」とよりテーマ性を広げることにも成功しています。

さらに彼のリリックに加えてバラエティー富んだトラックも大きな魅力。基本的にメロウに聴かせるようなエレクトロトラックがメインなのですが、前述の通り、メロウにスタートし、途中から力強いビートに変化する「KIM/Limo」もユニークですし、ユーモラスな「KIMUCHI DE BINTA」はトラップ風。ダウナーでドリーミーな「DOUKUTSU」など、目新しさといった要素は薄いものの、リリックの内容にマッチしたトラックのバリエーションが、楽曲をより引き立てます。どうしてもリリックに注目が集まりがちですし、間違いなくそれが魅力ではあるのですが、トラックメイカーとしての才もしっかりと感じることが出来ます。

そしてこのアルバムが素晴らしいのがラスト。かなり強烈な内容をラップしつつもラストの「TENO HIRA」は非常に前向きで明るい、希望を歌っています。そのため、アルバムを聴き終わった後は、とても清々しく、爽やかな印象を感じつつ、後味を味わうことの出来るアルバムになっていました。この後味の良さも本作の大きな魅力に感じます。

この今の時代だからこそ綴れるラップであり、また、「移民者」であるからこそ切り込める日本の現実を綴ったラップは大きな衝撃を受けました。一方、ユーモラスでコーティングされ、同時に日本に対する愛情もまた感じるがゆえ、日本人に違和感なくすんなり受け入れられるような内容になっている点も見事。これは本当にすごいアルバムだと思います。まだ、今年は半年以上残っているのですが、個人的に本作は暫定的な2020年私的ベストアルバムNo.1。これは全リスナーが是非とも一度は聴いてほしい作品だと思います。Moment Joon、これからシーンにどのような衝撃を与えていくのか、要注目です。

評価:★★★★★

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2020年6月12日 (金)

グローバルな視野も取り入れて

Tilte:Tamotait
Musician:Tamikrest

2006年にアフリカはマリで結成されたトゥアラグ族によるバンド、Tamikrest。かのTINARIWENからの影響を受けているグループで、彼らと同じく、その音楽は「砂漠のブルース」と呼ばれたりしています。特に「新世代の砂漠のブルース」と呼ばれることの多い彼らも、なにげに結成から14年目を迎える中堅バンド。約3年ぶりとなるニューアルバムで、既に5枚目の作品となります。

私がそんな彼らのアルバムを聴くのもこれが3作目。以前の彼らのアルバムレビューにも書いたのですが、彼らの大きな特徴として欧米のロックミュージックから大きな影響を受けているという点。「砂漠のブルース」という評判の通り、ブルージーなギターが大きな特徴なのですが、Tamikrestの場合はTINARIWENに比べて、よりロックとの親和性があるダイナミックなサウンドが特徴的となっています。

今回のアルバムでも例えば冒頭を飾る「Awnafin」はコールアンドレスポンスやこぶぎを聴かせたボーカルにトライバルな要素を見て取れるものの、ノイジーなギターを中心としたバンドサウンドを前面に押し出した曲調は、まさにロックの要素を強く感じます。また「Anha Achal Wad Namda」も疾走感あるギターサウンドがメインとなっている楽曲は、完全に「ギターロック」とカテゴライズされるような曲調。ロック好きならアフリカ音楽云々関係なく、そのダイナミックなサウンドを楽しめる楽曲になっています。

もちろん、「Azawad」「Tihoussay」など、メランコリックに聴かせるナンバーはアフリカの大地を彷彿とさせるような雄大なスケールを感じさせる楽曲に。まさに雄大なサハラ砂漠を思い出させるような(・・・ってもちろん行ったことはないけど)楽曲となっており、「砂漠のブルース」というイメージがピッタリと来るような作風となっています。

さらに今回のアルバムで大きな特徴となっているのが、多種多様なミュージシャンとのコラボ。まず「Timtarin」ではモロッコの女性シンガー、ヒンディー・ザハラをフューチャーし、魅力的なデゥオを聴かせてくれます。この楽曲はほかの曲に比べて、よりアラブ系の音楽の影響が強く、よりエキゾチックな雰囲気を感じさせる曲になっています。

そして最後を飾る「Tabsit」では、なんとOKI AINU DUB BANDでおなじみのトンコリ奏者のOKIと、三味線奏者の坂田淳が参加。郷愁感たっぷりのナンバーに仕上がっています。いわばアイヌ音楽と日本の音楽と融合したこの曲…といっても、トンコリの音色にアイヌ音楽の要素は感じつつ、明確な和風の音色は薄いように感じるのがちょっと残念ですが、ただ、この多種多様なミュージシャンとのコラボに、彼らのグローバルな視野を感じることが出来ます。

基本的には彼ららしい「砂漠のブルース」を主軸にしつつも、欧米のロックやアラブ音楽、さらにはアイヌや日本の音楽まで取り入れたという彼らの作品は、グローバルで活躍する彼ららしい柔軟さも感じることが出来ます。また、ロックからの影響の強さもあり、多くのリスナー層が違和感なく楽しめる作品になっているのも魅力的。アフリカの音楽になじみのある方もそうでない方も、問題なくお勧めできる傑作です。

評価:★★★★★

TAMIKREST 過去の作品
Chatma
Kidal


ほかに聴いたアルバム

Satin Doll/Sam Gendel

ロサンゼルスを拠点に活躍する新進気鋭のマルチ・インストゥルメンタリスト、Sam Gendelのニューアルバム。本作では、マイルス・デイヴィスの「Freddie Freeloader」、チャールス・ミンガスの「Goodbye Pork Pie Hat」、デューク・エリントンの「Satin Doll」といったジャズの名曲を、彼なりのスタイルで再構築した作品が収録。基本的に今風のエレクトロチューンにアレンジされているのですが、その中に伝統的な要素も感じられ、この新しいスタイルと伝統的なスタイルのバランスがユニーク。いわば流行りのエレクトロジャズなのですが、確実に感じるSam Gendelとしての個性に強い魅力を感じるアルバムでした。

評価:★★★★★

3.15.20/Childish Gambino

俳優や映画、ドラマのプロデューサー、脚本家としても多彩な活躍ぶりをしめすアメリカのラッパー、Childish Gambinoのニューアルバム。エレクトロサウンドを主軸に、メロディアスに聴かせるポップチューンがメイン。ラップ、ファンク、メロウなソウル、ポップなどの要素を織り込みつつ、バラエティー富んだ作風を楽しめる反面、様々な曲調によって、アルバム全体としていまひとつ捉えどころのなくなってしまったような印象も。

評価:★★★★

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2020年6月11日 (木)

力強いドラムとボーカルが印象に残る

Title:Fetch The Bolt Cutters
Musician:Fiona Apple

1996年のデビューアルバム「Tidal」から大きな注目を集めたアメリカの女性シンガーソングライターFiona Apple。ただ、そのデビューからもう24年を経過したベテランの域に達しているミュージシャンながらも、リリースしたアルバムは本作を含めてわずか5枚(!)。海外は日本の比べてアルバムのリリース間隔は長めなのですが、それを差し引いてもその寡作ぶりが目立ちます。ただ一方、それだけに毎作、傑作のリリースが続いており、間違いなく「はずれのない」彼女。前作「THE IDELER WHEELS...」も高い評価を集めましたし、個人的にも、2012年の洋楽私的ベストアルバムの1位に選ぶなど、はまった作品でもありました。

そして、そんな傑作であった「THE IDELER WHEELS...」から約8年の歳月を経て、ようやくリリースされた待望のニューアルバム。それだけスパンの開いたアルバムであることもあって、今回のアルバムもまた、傑作アルバムに仕上がっていました。まず、今回のアルバムで非常に印象に残っているのが強いインパクトを持ち、生々しさを感じさせるリズム。全体的な音作りはシンプルにまとまっており、そんな中で力強いリズムが鳴り響くアルバムになっています。

まずタイトルチューンでもある「Fetch The Bolt Cutters」。軽快ながらも力強いドラムのリズムがまずは大きなインパクトに。このタイトルはイギリスのテレビドラマ「The FALL 警視ステラ・ギブソン」の中で、性犯罪を取り締まる警察官のセリフから着想を得たそうで「声を上げることを恐れないで」という意味を持っているそう。それだけに非常にメッセージ性の強い歌詞を、しっかりとかみしめるように歌う、彼女のボーカルも強い印象を受けます。

「Rack of His」も力強いドラムが印象的。サウンドはどこかレトロな雰囲気があり、荒々しさがあるだけに生々しく感じられます。そして荒々しいサウンドゆえに彼女のボーカルの力強さがより目立つ構成になっていました。さらに「For Her」に至っては、コーラスラインとリズムトラックのみの楽曲に。パワフルなコーラスラインとリズムトラックの対比が強いインパクトを持った迫力のある曲に仕上がっています。

リズムトラックを強調したシンプルなサウンドをバックにしているがゆえに、そこに載っているボーカルの力強さがより目立つような構成になっているのも印象的。もちろん、力強いリズムに負けないだけの歌唱力をフィオナ自身が持っているからこそ成せる技なのでしょうが、それだけに彼女の実力がしっかりと発揮されたアルバムになっていました。

また、メロディアスでポップに仕上がっている楽曲も魅力的で、例えば「Under The Table」はピアノをバックに感情たっぷりに歌い上げるフィオナの歌声が印象に残るミディアムチューン。「Ladies」もジャジーに聴かせるバラードナンバーで、彼女の歌声が胸に響いてくるような、非常に魅力的な楽曲。リズムを主体とした楽曲が目立つ本作ですが、ポップスという側面においても魅力的な楽曲がしっかりと収録されています。

約8年間、待ちに待ったかいがあった、といってもいい、今回も年間ベストクラスの傑作アルバムをリリースしてくれました。次はまた、8年後くらいになってしまうのでしょうか。でも、またきっと、待たされたかいのある傑作アルバムをリリースしてくれるはず。それまでこのアルバムをじっくりと味わっていきたいところでしょう。それだけの価値のある作品だと思います。

評価:★★★★★

Fiona Apple 過去の作品
THE IDELER WHEELS...


ほかに聴いたアルバム

Lamental EP/Squarepusher

先日、アルバム「Be Up A Hello」をリリースしたばかりのSquarepusherが早くもリリースした新作EP。その「Be Up A Hello」にも収録されていた「Detroit People Mover」に、その別バージョンである「The Paris Track」。さらにはアルバムからのアウトテイクの「Les Mains Dansent」、さらにイギリスのEU離脱を決めた国民投票の結果に対する抗議の意思として発表した「MIDI Sans Frontires」と、そのセルフリミックス「Midi Sans Frontieres (Avec Batterie)」の5曲が収録されています。

前作「Be Up A Hello」も彼のメロディーセンスが発揮されたポップで聴きやすい内容でしたが、本作も基本的にはその路線を踏襲するような内容。既発表曲の「Detroit People Mover」もメランコリックな作品になっていましたし、さらに「Les Mains Dansent」はギターをつま弾きながらしんみりと聴かせる、彼としては珍しい歌モノの作品になっています。アレンジも基本的にある意味わかりやすいスペーシーなアレンジになっており、全体的にわかりやすいEPに。ある意味、「Be Up A Hello」以上にポップで聴きやすい作品に仕上がっていました。

評価:★★★★

SQUAREPUSHER 過去の作品
Just a Souvenir
SHOBALEADER ONE-d'DEMONSTRATOR
UFABULUM
Music for Robots(Squarepusher x Z-Machines)
Damogen Furies
Be Up A Hello

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2020年6月10日 (水)

新譜は少なめ

今週はHot100、Hot Albumsともに初登場は少な目。そのため、Hot100、Hot Albums同時更新です。

今週のHot100

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

今週もあの2曲が1位2位

1位は先週から変わらず。YOASOBI「夜に駆ける」。今週もストリーミング及びYou Tube再生回数1位、ダウンロード数2位をキープ。3週連続1位と強さを見せつけました。さらに今週、「ハルジオン」が先週の11位から10位にアップし、2週ぶりのベスト10入り。2曲同時ランクインを記録しています。

そして2位も先週から変わらず、瑛人「香水」。ストリーミング数は先週から変わらず2位。You Tube再生回数が3位から4位にダウンしましたが、ダウンロード数は5位から4位にアップしています。

3位には初登場で韓国の女性アイドルグループTWICE「MORE&MORE」がランクイン。Hot Albumsにランクインしている同タイトルのミニアルバムの表題曲で、ダウンロード数9位、ストリーミング数5位、You Tube再生回数2位、Twitterつぶやき数16位で総合順位も3位にランクインしています。

続いて4位以下の初登場曲ですが、今週初登場はあと1曲のみ。それもK-POP勢で、8位に韓国の男性アイドルグループStray Kids「TOP」がランクイン。韓国のテレビ番組「Stray Kids」を通じて選抜されたグループで、本作が日本でのデビュー作となります。CD販売数1位、PCによるCD読取数51位、Twitterつぶやき数5位で総合順位はこの位置に。オリコン週間シングルランキングでは初動売上3万7千枚で1位初登場。

さてロングヒット曲ですが、まずLiSA「紅蓮華」が3位からワンランクダウンで4位にランクイン。先週1位を獲得したダウンロード数は3位にダウンしてしまいましたが、代わってPCによるCD読取数が2週ぶりに1位にアップしています。

Official髭男dism「I LOVE...」が4位から5位、「Pretender」が5位から6位にそれぞれワンランクずつダウン。またKing Gnu「白日」も6位から7位にダウンと、下方傾向が続きます。まだロングヒットが続くのか、それとも・・・。一方、あいみょん「マリーゴールド」は今週11位にダウン。ベスト10返り咲きは2週でストップしました。


今週のHot Albums

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

1位2位には女性シンガーソングライターの曲が並びました。

1位にはmilet「eyes」がランクイン。いままでEPのリリースが続いていましたが、フルアルバムとしてはこれがデビュー作となるシンガーソングライター。思いっきり顔出しはしていますが、生年月日など詳しいプロフィールは不明の「謎の」シンガーソングライターだそうです。CD販売数及びダウンロード数1位、PCによるCD読取数4位で、総合順位で1位獲得。オリコン週間アルバムランキングでも初動売上2万7千枚で1位獲得。前作「Prover/Tell me」の5千枚(11位)からアップ。いままで、CDより配信での売上が先行し、Hot Albumsではベスト10入りしてきても、オリコン週間アルバムランキングでは10位以下という状況が続いていましたが、ようやくCDでの売上も追いついてきた模様です。

2位も女性シンガーソングライター。さユり「め」がランクイン。アルバムはこれで2作目ですが、こちらは弾き語りのアルバムとなるそうです。CD販売数2位、ダウンロード数3位、PCによるCD読取数18位。オリコンでは初動売上9千枚で3位にランクイン。前作「ミカヅキの航海」の2万3千枚(3位)よりダウン。彼女も本名は不明というスタンスを取っているよう。

ちなみに今週、10位にランクインし、アルバム「オリオンブルー」が4週ぶりにベスト10に返り咲いたUruも詳しいプロフィールが一切不詳という「謎だらけのシンガー」というスタンスを取っているそう。最近、女性シンガーソングライターはこういう「謎めいた」スタンスを取るのが一種の流行になっているようです。ただ、そろそろこの方向性も飽きられてきそうな感じも・・・。

3位にはHot100にも登場した、韓国の女性アイドルグループTWICEのミニアルバム「MORE&MORE」がランクイン。韓国盤のため、Billboardではダウンロード数2位、PCによるCD読取数70位でのランクインとCDは対象外。オリコンでは初動売上1万2千枚で2位初登場。直近作は国内盤の「&TWICE」で同作の12万4千枚(1位)よりダウンしています。

今週の初登場盤はこの3枚のみ。一方、前述の「オリオンブルー」もベスト10返り咲き組でしたが、JUJUのベスト盤「YOUR STORY」も先週の11位からランクアップし、2週ぶりにベスト10返り咲き。ベスト10入りを通算8週目に伸ばしています。

またロングヒット組ではOfficial髭男dism「Traveler」が7位から4位にアップ。King Gnu「CEREMONY」も9位から6位にアップと再び盛り返し傾向になってきています。

今週のHot100&Hot Albumsは以上。チャート評はまた来週の水曜日に!

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2020年6月 9日 (火)

人気絶頂のバンドから、あえて「ソロ」

Title:Triptych
Musician:Shohei Takagi Parallela Botanica

最近、すっかり音楽シーンの中で大きなムーブメントとなっている「シティポップ」とカテゴライズされるジャンル。そんな中でも高い人気と実力を誇っているのがceroでしょう。音楽ファンから高い評価を受けるのみにとどまらず、直近のオリジナルアルバム「POLY LIFE MULTI SOUL」はヒットチャートで上位に食い込んでくるなど、高い人気も見せつけています。今後の日本のミュージックシーンを間違いなく牽引していくであろうバンドになっています。

そして、そんなceroのボーカリストであり、作詞作曲も手掛けるのが高城晶平。本作は、彼の初となるソロアルバムとなります。ceroとして、人気絶頂であり、かつ脂ものった時期でのソロ活動になるのですが、インタビューなどによるともともと2015年の時点でソロ活動を考えていたそうで、今回の活動についても「個人は個人として確立したうえで集団であるべきだし、今後そこをうまく使いわけながら活動していければと考えたんですね。」音楽ナタリーより)と語っているなど、ceroの活動に不満云々ではなく、あくまでもceroとして活動する前提としてのソロ活動を意図しているようです。

そうしてリリースされた今回のソロアルバムなのですが、アルバム全体、ローファイなサウンドで徹底されています。非常に気だるい雰囲気の中、どこかトロピカルなムードを感じる「トワイライト・ゾーン」からスタート。続く「リデンプション・ソング」もサックスが入ってジャジーな雰囲気を醸し出しつつも、徹底した気だるいローファイ感を貫いています。

インターリュードを挟み、続く「キリエ」はパーカッションがトライバルな要素を醸しつつ、ストリングスがエキゾチックな雰囲気を出している楽曲。「オー・ウェル」も終始気だるさが漂うローファイチューン。さらにクールな曲調のインターリュードを挟んだ「ミッドナイト・ランデヴー」は、まさにタイトルそのままの、非常にウェットでムーディーな雰囲気の「夜」を感じさせるナンバーを展開しつつ、ラストの「モーニング・プレイヤー」は「朝」らしい爽やかさが・・・と思いつつ、朝おきたばかりのような、気だるさと爽やかさを同居させたような曲に仕上がっています。そして、この「モーニング・プレイヤー」に、朝の海辺のような爽やかさを感じる最後のアウトロが続き、非常に爽やかな余韻を残しつつ、アルバムは幕を下ろします。

そんな感じで、終始、気だるいローファイな雰囲気を醸し出しつつ、ウェットでムーディーな曲調に貫かれている本作。徹底したローファイぶりのため、アルバム全体として決して「売れる」タイプの曲調ではありませんし、非常に地味という印象を受ける作品になっています。ただ、一方では、高城晶平の演りたい曲を、売れるかどうか関係なく、演りたいような演っているという実にソロアルバムらしいソロアルバムになっていたと思います。もちろん、「地味な作風」ではあるものの聴き終わった後に、間違いなく心の中に確実な印象を残す傑作アルバムであることには間違いありません。このソロアルバムが、次にceroのアルバムにどのような形で反映していくのか、非常に楽しみでもある作品。ceroの次回作が非常に楽しみです。

評価:★★★★★

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2020年6月 8日 (月)

デビュー40周年の意欲作

Title:ALL TIME ROCK'N'ROLL
Musician:鈴木雅之

シャネルズとして「ランナウェイ」でデビューしてから今年、40周年を迎える鈴木雅之。今回紹介するアルバムは、そんな彼のデビュー40周年を記念してリリースされた企画盤。通常盤3枚組、企画盤4枚組という非常にボリューミーな内容となったアルバムですが、内容もデビューから40年という、既に大ベテランの彼にも関わらず、非常に意欲的な内容となっている作品に仕上がっていました。

まずDisc1は「Mr.Black 2nd」と題された作品で、シャネルズ/ラッツ&スターと洋楽を、様々なミュージシャンたちとコラボしてカバーした内容になっています。タイトルはおそらくシャネルズのデビューアルバム「Mr.ブラック」に由来するもの。このアルバムも、A面にシャネルズのオリジナル、B面に洋楽のカバーが収録されていました。デビュー40年を迎えて、まさに原点回帰の意味を込めつつ、様々なミュージシャンとのコラボすることにより、あらたな一歩を踏み出そうとする挑戦心を感じさせる内容に。コラボ相手も、ラッツ&スターのメンバーだった佐藤善男が多くの曲で参加しているほか、スタレビやゴスペラーズといった、ラッツ&スターと同じルーツを持つグループ、さらには岡﨑体育やアニソンでおなじみのオーイシマサヨシこと大石昌良といった若手ミュージシャンたちとのコラボを行っているあたりに、彼の意欲的な挑戦を感じられます。

さらにDisc2には「the year of RATS best」と題して、シャネルズ、ラッツ&スター、さらにはゴスペラーズのメンバーと組んだゴスペラッツの楽曲が収録。「ランナウェイ」「街角トワイライト」「め組のひと」などといった代表曲がズラリと並んでいます。そしてDisc3は「Perfect Vision」として、新曲を収録。こちらも氣志團の綾小路翔、いきものがかりの水野良樹、大石昌良、アンジェラ・アキといった若手(・・・というか中堅どころもいますが、鈴木雅之から見れば「若手」ということで・・・)ミュージシャンたちがズラリと楽曲を提供し、こちらも彼の新たな挑戦と意欲を感じさせます。

ちなみに今回のアルバム、「ALL TIME ROCK'N'ROLL」と題されているように、ロックンロールをテーマとしたコンセプト作。そのため、特にDisc1ではQueenの「Crazy Little Thing Called Love」のようなロックンロールな曲のカバーが多く収録されているほか、洋楽カバーが多く収録されているため、比較的洋楽テイストの強い楽曲が多い印象に。シャネルズ/ラッツ&スターの曲ばかり収録され、鈴木雅之のソロ作が収録されていないのは、鈴木雅之のソロ作は比較的歌謡曲テイストが強いためでしょうか。

ただ、そんな意欲作である本作ですが、正直言うと、ちょっと残念な部分も目立ったアルバムだったようにも感じます。まず第1に、今回、シャネルズ/ラッツ&スターのベストが収録されていますが、たった5年前に、オールタイムベストとして鈴木雅之の全キャリアを網羅したアルバム「ALL TIME BEST 〜Martini Dictionary〜」がリリースされたばかり、ということ。正直、シャネルズ/ラッツ&スターズ時代に頼りすぎではないか?と感じてしまいます。

第2に、新曲を収録したDisc3ですが、全10曲入りなのですが、うち5曲はカラオケとなっており、実質5曲のみという点。新曲を収録した割りにはちょっとカラオケで水増しされた感も否めず、ちょっとボリューム不足さは否めません。さらにその新曲5曲についても、出来は悪くないものの、若手ミュージシャンを起用した意欲作としては、いつもの鈴木雅之の延長線上といったイメージで、新たな挑戦といった感じではなかった点もちょっと残念。綾小路翔による「息もできないくらい」はこのアルバムのコンセプトに沿ったロックンロールなナンバーで悪くなかったし、続く「Motivation」も80年代風のファンクチューンでカッコいいナンバーにはなっていたのですが、後半2曲「たとえ世界がそっぽを向いても」「ポラリス」は、いかにもベテランミュージシャン然としたムーディーな歌謡曲になっており、このアルバムを締めくくるナンバーとしてはちょっと保守的すぎるのではないか、と感じてしまいました。

そんな訳でアルバム全体としては、いまなお現役ミュージシャンとして前に進もうという彼の意欲を感じると共に、ちょっと残念な部分も感じてしまった企画盤になっていました。ともあれ、デビュー40年を迎えて、まだまだ力強く歌い続ける彼。そろそろ久しぶりのヒットも欲しい感じもするのですが・・・これからの彼の活躍にも注目したいところでしょう。

評価:★★★★

鈴木雅之 過去の作品
ALL TIME BEST 〜Martini Dictionary〜


ほかに聴いたアルバム

Holy Nights/MIYAVI

ギタリストMIYAVIの最新作・・・なのですが、ここ最近の傾向と同様、全編、打ち込みを用いたエレクトロ色の強いナンバー。正直、ギターが前に出たようなナンバーはほとんどなく、かつエレクトロサウンドに関しても目新しいかと言われたら微妙な感じ・・・。楽曲的にはそれなりにインパクトはあるものの、MIYAVIとしての顔が正直ほとんど見えてこないという印象を受けてしまいます。もっとロックな路線か、エレクトロサウンドを入れるにしても彼なりの色を出してほしい感が強いのですが。

評価:★★★

MIYAVI 過去の作品
WHAT'S MY NAME?(雅-MIYAVI-)
SAMURAI SESSIONS vol.1(雅-MIYAVI-)
MIYAVI
THE OTHERS
FIRE BIRD
ALL TIME BEST "DAY2"
SAMURAI SESSION vol.2
SAMURAI SESSIONS vol.3- Worlds Collide -
NO SLEEP TILL TOKYO

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2020年6月 7日 (日)

早くライブに行きたいなぁ・・・

Title:Live at YOKOHAMA ARENA 20181222
Musician:Hi-STANDARD

新型コロナウイルスのライブイベントが軒並み中止になった現在。非常事態宣言が解除され、徐々に日常生活が戻りつつあるものの、大勢の人が一堂に会するライブについては、いまだに再開の目途も見えていません。そんな中、ハイスタからちょっとうれしいニュースが飛び込んできました。まずはPIZZA OF DEATH音源のサブスク解禁。いままで、サブスク配信には比較的否定的だったPIZZA OF DEATHレコーズでしたが、今の流れの中、ようやくサブスク解禁となりました。個人的には、PIZZA OF DEATHのようなパンクレーベルが、いつまでも旧来依然としたCDに拘るスタイルの方がかなり違和感があったのですが・・・もちろん賛否はあるかもしれませんが、ようやくサブスクの各サイトでPIZZA OF DEATHの各ミュージシャンの楽曲が聴けるようになりました。

そしてさらにその解禁日に飛び込んできたのがHi-STANDARD初となるライブアルバムを配信オンリーでリリースというニュース。それが今日紹介する本作。2018年に行われた「THE GIFT EXTRA TOUR」の横浜アリーナのライブをまるごとパッケージした本作なのですが、ちょっと意外なことに彼らのライブアルバムは本作がはじめて。活動休止期間が長く、その間にメンバー間の確執などもあり、音源がリリースできない状態だった、ということもあるのでしょうが、なによりもやはりライブに来てほしい、という気持ちが強かったのかもしれません。ただ、新型コロナの影響で次のライブがいつになるかわからないような状況の中、STAY HOMEの状態でライブの雰囲気を少しでも味わってほしい、今回のライブアルバムリリースには、そんなバンドの思いを感じます。

実際に、ライブの模様をそのままパッケージした本作には、当日のライブの雰囲気がそのままパッケージされた、そんな空気感も伝わってきます。観客の歓声もまるごとパッケージしてあり、楽曲の間の歓声や、彼らの代表曲が演奏された時の会場の高揚ぶりもそのままパッケージ。特にライブ後半に演奏された彼らの代表曲「STAY GOLD」では簡単なMCから曲がはじまると大歓声が起き、会場の熱気ぶりが伝わってきます。

この日のMCも収録。ただ、「Time To Crow」ではコミカルなMCなどもあったりするのですが、基本的には簡単な曲紹介などのみ。ハイスタのライブはまだ一度も見たことないので、MCはこの程度の短さなのか、それともMCに関してはフルではなくカットされているのか不明なのですが・・・。それでも時折入るMCでもライブの雰囲気をしっかり感じることが出来ます。ステージの息もピッタリなのですが、ライブMCを聴く限りだと、メンバーそれぞれの関係は、非常に良好のようで、一時期の険悪ぶりを知る身からすると、やはり感慨深いものがあります。

基本的には楽曲はメロディアスなハイテンポのパンクロックで最初から最後まで一気に畳みかけるようなスタイル。途中、「CAN'T HELP FALLING IN LOVE」のような、おなじみのカバー曲のパンクバージョンなども織り込みつつ、全27曲1時間20分という長さ、楽曲のバリエーションもなく、ほぼすべて似たようなタイプの曲が並んでいます。それにも関わらず、このアルバム、途中、飽きることなく一気に最後まで楽しむことが出来るのは、やはりバンドとして非常に勢いがあるのと、フックのきいた優れたメロディーラインを書いてきているからでしょう。今回のライブアルバムであらためてHi-STANDARDというバンドの魅力を感じることが出来たように感じます。

しかし聴けば聴くほど、早くライブに行きたい、そんな気持ちが募るようなアルバムになっていたと思います。この日の横浜アリーナのような大会場でのライブが、次、いつ開催できるのか、全くわからないのですが・・・1日も早くそのような日が来ることを祈って・・・とりあえずはこのライブアルバムで、ライブの疑似体験を楽しみたいところでしょう。ハイスタのライブの雰囲気が詰め込まれた、素晴らしいライブアルバムでした。

評価:★★★★★

Hi-STANDARD 過去の作品
The Gift


ほかに聴いたアルバム

アネモネEP/the peggies

3人組ガールズバンドによる、表題曲を含む5曲入りのEP盤。表題曲「アネモネ」はストリングスなども入れて音を分厚くした、J-POP寄りのナンバーになっており、聴きやすい反面、スリーピースバンドという特性はあまり生かされていない印象も。この曲を含め、全体的にはロックというよりもポップのテイストが強い曲が並んでいます。ただ、片思いの切なさを歌った「ロンリー」は疾走感あるギターロックチューンとなっており、バンドの良さがよく出ている感も。ラスト「いきてる-弾き語り-」も、タイトル通り、ギター1本の弾き語りに挑戦したナンバーで、ミュージシャンとして、しっかりとした土台を持っていることも感じます。個人的にはもうちょっとスリーピースバンドとしての特性を生かしたようなロックチューンを期待したいところなのですが、アルバム毎に徐々によくなっている印象もあるため、次のフルアルバムに期待です。

評価:★★★★

the peggies 過去の作品
super boy! super girl!!
なつめきサマーEP
Hell like Heaven

REQUIEM AND SILENCE/鬼束ちひろ

デビュー20周年を記念してリリースされたオールタイムベストアルバム・・・はいいんだけど、2013年にオールタイムベスト「GOOD BYE TRAIN 〜ALL TIME BEST 2000-2013」をリリースし、その後、オリジナルアルバムは1枚しかリリースしていないんだよなぁ・・・。通常盤は基本的にデビューシングルから配信シングルを含めた最新シングルまで、ただ順に並べただけ、という構成。基本的に静かに歌い上げるバラードナンバーばかり。それでも彼女に勢いのあったデビューアルバム「シャイン」から「私とワルツを」までは聴き入ってしまう名曲ぞろいなのですが、Disc2以降の曲に関しては、1曲1曲は悪くないのですが、通して聴くと、似たような曲ばかりで正直飽きる・・・。ここまで来ると、違う路線は難しいかもしれませんが(一度、「育つ雑草」みたいな違うベクトルの曲をリリースして失敗しているし・・・)もうちょっとなんとかしなければならない段階のような・・・。

評価:★★★★

鬼束ちひろ 過去の作品
LAS VEGAS
DOROTHY
ONE OF PILLARS~BEST OF CHIHIRO ONITSUKA 2000-2010
剣と楓
FAMOUS MICROPHONE
GOOD BYE TRAIN~ALL TIME BEST 2000-2013
シンドローム
Tiny Screams

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2020年6月 6日 (土)

50代半ばで全盛期再来

Title:
Musician:岡村靖幸

岡村靖幸約4年2ヶ月ぶりとなるニューアルバム。前作に引き続き会田誠によるジャケットも強く印象に残る作品なのですが、まずは無事、2010年後2枚目となるオリジナルアルバムがリリースされたことにほっとしています。思えば、覚せい剤所持による逮捕からもう12年が経ったんですね。今度こそ・・・とは思っているのですが、槇原敬之の一件があっただけに、正直不安は消えません・・・。

ただ一方、消えきれないそんな「不安」とは裏腹に、ミュージシャンとしてはもう50代半ば、すっかりベテランの領域に入った今にも関わらず、むしろ全盛期再びと思えるような勢いを感じさせる出来になっています。今回のアルバム、80年代あたりの彼の全盛期を彷彿させるような作風を感じさせつつ、一方では「今の時代」にもしっかりとアップデート。昔ながらの変わらない岡村靖幸と、令和の時代に入り変わっていく岡村靖幸をしっかりと両立させた傑作アルバムになっています。

まず基本的にアルバム全体を貫くのが、岡村靖幸らしいファンクチューン。これは時代を通じて全く変わりません。まずアルバムの冒頭を飾るのが小山田圭吾がギターで参加している「成功と挫折」はまさに岡村節とも言えるミディアムファンク。力強いファンキーなリズムは全く変わりません。続く「インテリア」は軽快なエレクトロサウンドにちょっとメランコリックなメロディーラインがどこか80年代を感じさせるポップチューンになって懐かしさを感じさせます。

「少年サタデー」なども、岡村靖幸らしさを感じるジュブナイル的な歌詞と爽やかなメロディーラインが印象的な、まさに初期岡村靖幸そのまんまな楽曲。サウンド的に、まさに90年代あたりのエピックソニーらしさを感じさせるのが「レーザービームガール」でしょう。軽快な打ち込みのリズムが、まさに90年代っぽさを感じるサウンドになっており、おそらくアラフォー、アラフィフ世代には懐かしさを感じさせる感涙モノの楽曲ではないでしょうか。

逆に現在の岡村靖幸を感じさせるのは、まずはなんといっても、新進気鋭の女性ラッパーDAOKOとコラボした「ステップアップLOVE」でしょう。学生時代の恋愛模様を読みこんだ歌詞は岡村ちゃんらしさを感じます(50代なのに・・・)が、一方、疾走感あるエレクトロサウンドやラップを取り入れたスタイルは今の時代にアップデートされた音作りといった感じ。DAOKOとコラボすることにより、今の若い世代にも訴求できるような若々しさを感じます。

そういう意味ではRhymesterとコラボを行った「マクガフィン」もHIP HOPの要素を取り込んだ新しい岡村靖幸と言えるかもしれません。ただ、もともとファンクの要素の強いRhymesterのサウンドと岡村靖幸の相性は抜群。逆に、これがはじめてのコラボというのはかなり意外にも感じてしまいます。「ステップアップLOVE」「マクガフィン」の2曲はHIP HOPと岡村靖幸の曲の相性の良さを感じますし、また、様々なミュージシャンとのコラボは、彼のこれからの音楽活動に対する強い意欲を感じさせます。

そんな懐かしさと新しさを同居させた傑作アルバムだった本作。前作「幸福」同様、本作も間違いなく今年を代表する最高傑作と言える出来だったと思います。覚せい剤と決別し、心身ともに健康になって、本当の意味でミュージシャンとして脂がのってきた・・・そう思わせるここ最近の岡村ちゃんの充実ぶりがうかがわせる作品。これからの活躍ぶりも本当に楽しみです。

評価:★★★★★

岡村靖幸 過去の作品
Me-imi~Premium Edition~
エチケット(パープルジャケット)
エチケット(ピンクジャケット)

幸福

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2020年6月 5日 (金)

京都でのライブっぽく

弾き語りツアー風 “柴田聡子のインターネットひとりぼっち’20”

会場 京都風(オンライン) 日時 2020年5月29日(金)18:30~

今回の「ライブレポート」もまた、新型コロナの影響でオンラインとなったライブのレポート。もともとシンガーソングライターの柴田聡子が予定していた全国弾き語りツアー「柴田聡子のひとりぼっち'20」が新型コロナの影響で開催が延期となり、その代わり、ちょうど開催が予定されていた同日同時刻にインターネットでの無料配信という形でオンラインライブを実施するというもの。もともと彼女一人だけでの弾き語りツアーということもあって、まさにオンライン配信との親和性もあるような形に。また、それぞれ、ライブが予定されていた会場にあわせて「〇〇風」と表現し、まさにその場所でライブを行っているようなスタイルになっているようです。

そんな訳で、個人的に見ることが出来たのが、まず5月29日の「京都風」ライブ。ちょうど18時半にライブがスタートしたのですが、彼女一人がアコギを抱えての登場。仮想背景をバックとしたライブだったのですが、その仮想背景は、この日、ライブが予定していた京都の紫明会館だったようで、まさに会場からライブを行っているような雰囲気でのライブとなっていました。

柴田聡子のライブはいままで行ったことなく、「生で動く」彼女を見るのは今回がはじめて。まず金髪の短髪という姿にちょっとビックリ。黒髪で長髪というイメージがあったので・・・。さらに、意外といっては失礼ですが、かわいい(笑)。写真で見る印象とはかなり違っていて、これはちょっと意外な感すらありました。

そんなライブはまず「さばーく」からスタート。ギター1本のみの弾き語りのスタイルでしっかりと歌声を聴かせます。声もかわいらしい感じながらも比較的淡々と歌いつつ、その中でしっかりと感情を載せているスタイル。さらに「はだかで踊るのは恥ずかしい」はユニークな歌詞ながらも、ちょっとドキッともさせられます。さらに続く曲では、なんと画面全体がピンクに(笑)。今回のオンラインライブツアーではおなじみの演出らしく、配信にあわせて行われていたチャットでは妙な盛り上がりを見せ、これは配信ならではの妙な演出となっていました。

さらに、続くMCではバックが清水寺に。「いつか清水の舞台で演奏したいですね」なんていうMCと共に、CGで清水寺の三重塔が登場し、それがグルグル回るという非常に奇妙でユーモラスな演奏も。まさに「京都風」らしいバックになっていました。ここでは7月にリリースが予定されているEPやTシャツの紹介も行われて、ちょっとツアーのMCらしい雰囲気にもなっていました。

その後はこのEPより新曲「いやな日」「友達」「どうして」と新曲が3曲続きます。さらにここで仮想背景はなぜか竹林に(笑)。まさに京都風の演出になり、その竹林も曲毎に違う竹林が登場するという演出に。その後も「サン・キュー」をけだるい感じで聴かせつつ、「悪魔のパーティー」「リスが来た」「いのちがtoo short」と続き、ラストは「変な島」へ。軽快でかわいらしいナンバーとなっており、楽しい余韻を残しつつ、ライブは終了しました。

ライブは約1時間。ギター一本での弾き語りのステージだったのですが、思った以上に彼女がかわいらしくて、ちょっと魅入ってしまいました(笑)。いや、もちろん歌も非常に聴かせる、とても惹かれるステージで予想以上に楽しいライブになっており、あっという間の1時間。非常に楽しめました。これは新型コロナがおさまったら、彼女のライブも一度足を運んでみたいなぁ。あらためて、柴田聡子の魅力がわかったオンラインライブでした。

ちなみにライブは今後も6月27日まで続く予定ですので、興味のある方は是非。詳細は公式サイトまで。ちなみに残りの日程は以下の通りのようです。

弾き語りツアー風 “柴田聡子のインターネットひとりぼっち’20”
6月06日(土) 18:00 札幌風 day1
6月07日(日) 18:00 札幌風 day2
6月11日(木) 19:30 大阪風
6月12日(金) 19:00 岡山風
6月13日(土) 18:00 福岡風
6月21日(日) 17:30 仙台風
6月27日(土) 18:00 東京風

<YouTube 柴田聡子チャンネル>
http://ur2.link/TztX

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2020年6月 4日 (木)

ゲームミュージックが1位2位

今週のHot Albums

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

今週はゲームミュージックのアルバムが1位2位に並びました。

まず今週1位を獲得したのは「バンドリ! ガールズバンドパーティ! カバーコレクションVol.4」。スマートフォン向けゲーム「バンドリ! ガールズバンドパーティ! 」でゲーム内の「バンド」がカバーした曲を集めたカバーアルバムの第4弾。CD販売数1位、PCによるCD読取数3位。オリコン週間アルバムランキングでも初動売上2万3千枚で1位獲得。同シリーズの前作「バンドリ! ガールズバンドパーティ! カバーコレクションVol.3」の2万1千枚(4位)から若干のアップとなります。

2位には「FINAL FANTASY VII REMAKE Original Soundtrack」がランクイン。タイトル通り、4月に発売された「ファイナルファンタジー7 リメイク」のサントラ盤。CD販売数2位、ダウンロード数3位、PCによるCD読取数6位。オリコンでは初動売上1万9千枚で2位初登場。「ファイナルファンタジー7」はオリジナルをリアルタイムでやって、結構はまったゲームだったので、このリメイクもやってみたいなぁ・・・でも、そもそもPS4持ってないし・・・。

3位はアメリカの女性ミュージシャンLady Gaga「Chromatica」がランクイン。2018年に映画「アリー/スター誕生」に主演し、アカデミー賞やゴールデングローブ賞にノミネートされるなど活躍を見せるなど、精力的な活動が続く彼女ですが、オリジナルアルバムは約3年7ヶ月ぶりと少々久しぶり。それでもCD販売数3位、ダウンロード数では見事1位を獲得。PCによるCD読取数は78位でしたが、総合順位ではベスト10入りを果たしました。オリコンでは初動売上7千枚で3位初登場。前作「Joanne」の8千枚(10位)からはダウン。ただ、久々のアルバムで、かつコロナの影響でCD販売が落ち込み、さらにはストリーミングも台頭する中でのこの結果は立派。何気に根強い人気を感じさせます。

続いて4位以下の初登場盤です。まず4位にVaundy「strobo」がランクイン。本作がデビュー作となる、現在、注目が集まっている男性シンガーソングライター。CD販売数4位、ダウンロード数4位、PCによるCD読取数36位で、デビュー作ながらもいきなりのベスト10入りです。オリコンでは初動売上5千枚で5位初登場。

6位にはBAEKHYUN「Delight」がランクイン。韓国の男性アイドルグループEXOのメンバー、ベクヒョンによるソロアルバム。韓国盤のため、ビルボードではダウンロード数2位のみのランクインとなっています。オリコンでは初動売上4千枚で9位初登場。前作「City Lights」の3千枚(14位)から若干のアップとなっています。

8位初登場はNovelbright「WONDERLAND」。CD販売数6位、ダウンロード数12位、PCによるCD読取数54位。最近、急速に注目を集めている5人組ロックバンドで、本作がメジャー初のフルアルバムで、いきなりのベスト10入りとなりました。オリコンでも初動売上4千枚で8位にランクイン。

最後、10位にはロックバンドくるり「thaw」が入ってきました。本作はくるりの未発表曲集。もともと4月15日に配信オンリーでリリースされていましたが、このたび、配信版に4曲を追加したCDをリリース。CD販売数5位、PCによるCD読取数37位にランクインし、総合順位でベスト10入りです。このアルバムは、4月から予定されていた彼らのライブツアー「特Q」が新型コロナの影響で中止になったことから(実は私も行く予定でした・・・(T T))、急遽、企画されリリースされたアルバム。この新型コロナの中でのちょっと粋なプレゼントとなりました。オリコンでは初動売上5千枚で6位初登場。前作「ソングライン」の1万3千枚(5位)からダウン。

さて一方ロングヒット盤ですが、まずOfficial髭男dism「Traveler」。今週は9位から7位に再度ランクアップ。ただCD販売数は9位から11位、ダウンロード数も7位から10位にダウンしており、厳しい状況は変わりありません。ただ、もう8カ月もランクインを続けていますから、さすがにそろそろ失速気味でしょう。

さらに今週はKing Gnu「CEREMONY」が11位から9位にランクアップ。2週ぶりのベスト10返り咲きとなっています。こちらはダウンロード数が9位から7位に、CD販売数も15位から13位にアップし、盛り返してきています。まだまだロングヒットが続くのでしょうか。

今週のHot Albumsは以上。チャート評はまた来週の水曜日に!

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2020年6月 3日 (水)

「次」のロングヒット候補作が1位2位

今週のHot100

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

ヒゲダン、King Gnu、LiSAに続くロングヒット候補が1位2位に並びました。

まず今週の1位はYOASOBI「夜に駆ける」が先週に続き1位にランクイン。ストリーミング数とYou Tube再生回数は先週から引き続き1位をキープ。ダウンロード数も3位から2位にアップ。このまま長期間のヒットとなりそう。ただ、残念ながら「ハルジオン」の方は今週は11位にダウン。2曲同時ランクインは、とりあえずは2週で一旦ストップです。

そして、その「夜に駆ける」と今後長くデッドヒートを繰り広げそうなのが瑛人「香水」。今週はワンランクアップの2位で、この2曲が1位2位に並びました。ストリーミング数2位、You Tube再生回数3位は先週から変わらず。ただ、ここにきてラジオオンエア数が57位から30位と大幅にアップ。注目度を徐々に増してきている感があります。

3位はLiSA「紅蓮華」が先週2位からワンランクダウン。ただ、ここにきて、ダウンロード数がなんと1位を獲得。まだまだ強さを見せつけています。

続いて4位以下の初登場曲です。7位にyama「春を告げる」が先週の11位からランクアップし、ベスト10初登場。You Tubeにカバー動画をあげるボーカリストらしく、SNSを中心に話題となっているようです。ストリーミング数7位、You Tube再生回数9位とロングヒットの傾向が見て取れるチャートに。ほか、ダウンロード数20位、Twitterつぶやき数96位にランクインしています。

8位にはアメリカの女性ボーカリストLady Gaga「RAIN ON ME」が先週の68位からランクアップしベスト10入り。かのアリアナ・グランデとのコラボで話題となった作品で、軽快で疾走感あるダンサナブルなリズムが心地よい作品に。先日、待望のニューアルバム「Chromatica」をリリースした彼女ですが、本作は同作に収録されていた曲が先行配信となったもの。ラジオオンエア数で1位を獲得し、見事ベスト10入り。その他、ダウンロード数17位、ストリーミング数16位、You Tube再生回数58位を獲得しています。

10位にはワルキューレ「未来はオンナのために」が初登場でランクイン。アニメ「マクロスΔ」に登場するアニメキャラクターによる音楽グループ…なのですが、PVを見ると、歌っている声優がそのまま登場しており、むしろ声優によるアイドルグループみたいな扱いになってしまっています。CD販売数及びPCによるCD読取数1位、ダウンロード数8位、Twitterつぶやき数50位。最近、新型コロナの影響でCD販売数が落ち込む中、CD販売数1位にも関わらず、ベスト10入りできない曲が続いていましたが、この曲は5月4日付チャートでHKT48「3-2」が1位を獲得して以来、5週ぶりにCD販売数1位の作品がベスト10入りしてきた曲となりました。オリコン週間シングルランキングでも初動売上2万3千枚で1位獲得。前作「ワルキューレは裏切らない」の1万8千枚(7位)よりアップしています。

続いてロングヒット曲ですが、まずはOfficial髭男dism。以前ほどの勢いはなくなってしまったものの、今週も「I LOVE...」4位、「Pretender」5位と先週と同順位をキープ。ストリーミング数は「I LOVE...」3位、「Pretender」4位、You Tube再生回数は「I LOVE...」5位、「Pretender」4位とまだまだ上位をキープしています。ただ残念ながら「宿命」は12位にダウン。ベスト10返り咲きは1週で終わりました。

King Gnu「白日」は先週の7位から6位にアップ。ストリーミング数は先週と変わらず6位。You Tube再生回数は7位から6位にアップと、こちらもしぶとい人気を続けています。

さらにここにきて、さらなるロングヒットを続けているあいみょん「マリーゴールド」は先週と変わらず9位をキープ。今週も、各種ランキングではストリーミング数及びYou Tube再生回数の11位が最高位なのですが、CD販売数の92位をはじめ、全ランキングにランクインしており、根強い人気を見せています。

今週のHot100は以上。明日はHot Albums!

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2020年6月 2日 (火)

器用貧乏?

Title:10'S BEST
Musician:OKAMOTO'S

今年、デビュー10周年を迎えるロックバンドOKAMOTO'S。本作はそんな区切りの年にリリースされた2枚組のベスト盤となります。Disc1は「Fan's Selection」として、ファン投票の結果に基づいて選曲。Disc2は「Member's Selection& Rare Tracks」として、タイトル通り、メンバーが選曲した曲やシングルのカップリング曲などのレアトラックを収録した構成となっています。

さて、早くもデビュー10年目を迎えるOKAMOTO'S。もともと、音楽ファンを中心に大きな注目を集めつつ、アルバム1枚で解散してしまったズットズレテルズのメンバーが中心となって結成したバンドなだけに、デビュー当初から大きな注目を集めていました。ただ、正直なところ、現時点で「万年ブレイク候補」という位置づけに収まってしまっているような感も否めません。アルバムはヒットチャート上で20位前後にランクインしてくるのですが、いまだに大きなヒットはなし。ベースのハマ・オカモトの活躍は目立ちますが、むしろOKAMOTO'Sよりも彼個人の活躍の方が話題にのぼることが多いようにすら感じてしまいます。

ただ、なんとなくブレイク候補にあげられながらもいまひとつブレイクしきれない理由についてはわかるような感じがします。大きな理由のひとつが良くも悪くも様々な音楽性を取り入れただけに、いまひとつOKAMOTO'Sがどんなバンドなのかつかみきれない点のような感じがします。例えばほぼ同時ににデビューし、同じくブレイク候補として取り上げられたバンドにTHE BAWDIESがあります。彼らはあっという間にブレイクし、人気バンドとなりました(今は人気はちょっと落ち着きましたが)。彼らはルーツ志向のロックンロールという音楽性が明確で、バンド名を聴くとその音楽の方向性が明確に浮かんできます。同じ「実力派」として取り上げられた彼らですが、OKAMOTO'Sのつかみどころのなさが両者に差をつけてしまった結果のようにも感じてしまいます。

今回のベスト盤収録曲にしても「90'S TOKYO BOYS」「Phantom(By Lipstick)」「Border Line」のようなファンクチューンが目立ちますが、一方で「NO MORE MUSIC」はフィリーな要素が入りメロウに聴かせる楽曲ですし、「ROCKY」は軽快なロックンロールナンバー、「JOY JOY JOY」もディスコ風の楽曲と様々な作風の曲が並びます。

Disc2に至ってはその傾向が顕著で「Dance To Moonlight」はシティポップ風、「新世界」は比較的ベタなJ-POP系、「ART(OBKR/YaffleRemix)」ではトラップ的な要素も入れていますし、最後のユーモラスでコミカルな「ヤバコウキ」は逆にオールドスクールなラップを聴かせています。実にバラエティー豊かな音楽性を取り入れているのが特徴的で、ただ結果としてそれがOKAMOTO'Sの「顔」をわかりにくくしているというマイナスの方向性も感じてしまいます。

ただ、ブレイクするため、という観点で言えば様々な音楽性はマイナス要因になっているような感もあるのですが、純粋に音楽性の観点からは、この幅広い音楽性に彼らの幅広い音楽的素養も感じられます。確かにJ-POPミュージシャンは無駄に様々なジャンルの音楽を取り入れる傾向があります。ただ、そのようなミュージシャンの音楽性の取り込みは概して薄く浅く終わってしまっています。もちろん、そういうルーツレスな雑多な音楽性もヒット曲の魅力といえば魅力なのですが、ただミュージシャンとしては薄っぺらく感じてしまうケースが少なくありません。

しかし彼らの場合はそうではありません。HIP HOPもシティポップもロックンロールも、しっかりその向こうのルーツを感じることが出来ます。そういった様々な音楽を貪欲に取り込む姿勢には非常に意欲を感じさせますし、さらに様々な音楽を簡単に取り込めるあたり、彼らのバンドとしての実力も感じます。その結果として若干器用貧乏みたいな感じに陥っている点は否定できないのですが、バラエティー富んだ作風はベスト盤を聴いていても最後まで飽きることなく、純粋に楽しむことの出来る魅力にもなっていました。

あと、これは以前のアルバムからも思っていたのですが、オカモトショウのボーカルとしての線の細さもちょっと気に係る部分ではあるのですが・・・。

いろいろな課題はあるバンドだとは思いますし、一方で間違いなく実力を持ったバンドだと思います。ベスト盤リリースでひとつの区切りをつけた彼ら。今後の行方も気になるところですが、どの方向に進んでも、それなりの楽曲を聴けるのは間違いなさそう。そろそろブレイクを期待したいところなのですが、さてさて。

評価:★★★★★

OKAMOTO'S 過去の作品
10'S
オカモトズに夢中
欲望
OKAMOTO'S
Let It V
VXV
OPERA
BL-EP
NO MORE MUSIC
BOY


ほかに聴いたアルバム

DOUBLE STANDARD/中田裕二

ソロデビュー10年、ミュージシャンデビュー20年、そして自身も40歳を迎えるという、アニバーサリーイヤーにリリースされる中田裕二のニューアルバム。基本的にはいつもと同様、哀愁たっぷりの歌謡曲路線で歌をしっかりと聴かせるスタイル。若干、大いなるマンネリ気味ではあるのですが、本作ではその中ではジャジーな曲があったり、ピアノでしんみり聴かせる曲があったり、軽快なナンバーがあったりと、バリエーションを感じます。またそんな中で「UPDATER」はおそらくパソコンのアップデートにからむ悲哀を歌うというユニークなナンバーも。目新しさはないものの、安心して聴けるアルバムではありました。

評価:★★★★

中田裕二 過去の作品
ecole de romantisme
SONG COMPOSITE
BACK TO MELLOW
LIBERTY
thickness
NOBODY KNOWS
Sanctuary

ベスト・コンディション+レアトラックス/キンモクセイ

2002年にシングル「二人のアカボシ」がヒット。その年の紅白にも出演したロックバンド、キンモクセイ。2008年に活動を休止してしまいましたが、昨年再結成。オリジナルアルバム「ジャパニーズポップス」をリリースし、さらに2007年にリリースしたベスト盤を再編成し、タイトル通り、レアトラック集を加えて再発売されたのが本作です。2007年にリリースされた時も聴いているのですが、今回、あらためて彼らの曲を聴いてみました。

本作にももちろん収録されている「二人のアカボシ」に代表されるような、懐かしくレトロな昭和歌謡曲的なにおいを感じる楽曲が大きな特徴の彼ら。「夢で逢えたら」のカバーを収録するなど、今で言えばおそらくシティポップ系にカテゴライズされるような音楽からの影響も強いのですが、良くも悪くも洋楽のテイスト以上に歌謡曲の要素が強く、楽曲の垢抜けなさがまずは印象に残ります。それが彼らの魅力といえば魅力ですし、いまひとつ楽曲に対して平凡な印象を抱かせてしまう要素だったりもします。今回、再結成にあたっては今後、どのような方向性を進んでいくのか・・・注目されます。

評価:★★★★

キンモクセイ 過去の作品
ベストコンディション~kinmokusei single collection~
ジャパニーズポップス

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2020年6月 1日 (月)

新生赤い公園の初フルアルバム

Title:THE PARK
Musician:赤い公園

レーベル移籍を経て、フルアルバムとしては約2年8ヶ月ぶりとなる赤い公園のニューアルバム。よくご存じのこととは思いますが、赤い公園はボーカルの佐藤千明が2017年8月をもって脱退。一方、2018年にはアイドルルネッサンスの元メンバー、石野理子が新ボーカリストとして参加。その後、昨年10月にEP「消えない-EP」がリリースされていたものの、本作は新体制では初となるフルアルバムとなり、まさに新生赤い公園の全貌がわかる作品となっています。

まずEPとしてリリースした「消えない-EP」でも既にわかっていたのですが、新メンバーになっても基本的に赤い公園としてのスタイルはほとんど変化ありません。ボーカルが変わると、ともすればバンドのイメージもガラッと変わってしまうのですが、もともとバンドの頭脳であり、リーダーでもある津野米咲は健在。また、オリジナルメンバーの佐藤千明のボーカルも、比較的淡泊で癖は薄めだった一方、新メンバー石野理子のボーカルも、おなじく比較的淡泊なボーカルであり、そういう意味では同系統。そのため、新メンバーによっても、赤い公園のイメージはほとんど変化ありませんでした。

さて、本作はそんな石野理子の本格的な顔見世となるアルバム。もともと赤い公園の作風というと、比較的ストレートなギターロック系統と、非常に凝った複雑なアレンジで聴かせてくれる、少々「変態性」を帯びたような系統と、2つの系統を自在に使い分けるイメージがあります。今回のアルバムでも、先行シングルとなった「絶対零度」などはまさにそんな複雑な構成で転調するメロも印象的な、後者の傾向が強い楽曲。トラップ的な要素を加え、ラップも取り入れた「chiffon girl」も、赤い公園としては少々異なる方向性に挑戦した、彼女たちの音楽的素養の深さを感じるナンバーとなっています。

ただ、今回のアルバムに関しては、比較的、前者の系統の、ストレートなギターロックの要素が強い楽曲が多かったように思います。もちろん、そんな中でも一癖二癖あるサウンドは楽しめるものの、例えば「紺に花」などは、途中入るストリングスアレンジがいかにもJ-POP的な、疾走感あるギターロックになっていますし、「KILT OF MANTRA」も、軽快なピアノの音色が楽しいナンバーなのですが、楽曲的には至ってポップな楽曲に仕上がっており、アルバム全体としては、まずは「聴きやすい」という印象を強く受けるアルバムになっていました。

一方、赤い公園が比較的ストレートなギターロックを奏でた場合、問題となってしまうのはメロディーラインのインパクトの弱さ。ボーカリストとしてのインパクトの弱さもひとつの要因だと思うのですが、それなりにポップなメロを奏でつつ、いまひとつメロディーラインが印象に残りません。今回のアルバムもある意味J-POP的なポップなメロディーラインを奏でながらも、いまひとつ印象に残るようなフレーズに出会えず、アルバム全体としてあっさりというイメージが残るアルバムになっていました。

そこらへんは以前からの赤い公園の課題がそのまま残ってしまった感はあるのですが…ただ、ボーカリスト脱退という、普通のバンドなら最大の危機となるような事態を、新ボーカリスト加入によりあっさりと乗り越えたのは間違いないでしょう。そういう意味では、まだまだこれからの期待できるバンドなのは間違いなさそう。個人的には、年間ベストクラスの傑作をリリースできるポテンシャルを持つバンドだと思うので、これからの活躍にも大いに期待したいところ。これからの彼女たちの活躍も楽しみです。

評価:★★★★★

赤い公園 過去の作品
透明なのか黒なのか
ランドリーで漂白を
公園デビュー
猛烈リトミック
純情ランドセル
熱唱サマー
赤飯
消えない―EP

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