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2020年5月14日 (木)

伝説のドラマーとトランぺッターの共演

Title:Rejoice
Musician:Tony Allen & Hugh Masekela

新型コロナの件…とは関係ないのですが…先日、ショッキングなニュースが飛び込んできました。かのアフロビートの創始者、フェラ・クティの右腕として活躍した伝説のドラマー、Tony Allenが4月30日に79歳で亡くなりました。数多くのミュージシャンたちに絶大な影響を与えたアフロビートの根幹のリズムを担ってきたという、まさに伝説的なドラマーだっただけに、その逝去のニュースは非常にショッキングでした。

本作は、そんな彼が、事実上、生前最後にリリースしたアルバムとなってしまった作品。ただ、純然たる「遺作」的な新作ではなく、2018年に亡くなった南アフリカの伝説的なトランぺッター、Hugh Masekelaとの共演作。もともとは共演を意図していた2人でしたが、2010年の英国ツアーが偶然重なったことからプロジェクトが始動。残念ながらその音源は未完のまま残されていたのですが、2018年からレコーディングが再開。ゲストミュージシャンによる演奏を加えて、昨年の夏、ようやく完成に至ったそうです。

そんな伝説的なミュージシャン同士の、まさに奇跡の、とでもいうべき共演作。ただ、こういう大物同士のコラボ作というのはいかんせん、個性の強いミュージシャンが自らの個性を主張し合った結果、チグハグな作品になってしまう、というケースが少なくありません。しかし、このアルバムに関しては、しっかりとTony AllenとHugh Masekelaの演奏がそれぞれの良さを十分に発揮し、ガッチリと組み合った、そんな傑作に仕上がっていました。

アルバムの冒頭を飾る「Robbers,Thugs and Muggers(O'Galajani)」などはまさにその典型例で、Hugh Masekelaの哀愁感のあるトランペットの音色がしっかりと流れる中、Tony Allenの力強くアグレッシブなドラムのリズムが楽曲を支えているという構成により、どちらのサウンドもなくてはならない楽曲に仕上がっています。続く「Agbada Bougou」も同様。ちょっと悲しげに、歌うように聴かせるトランペットのリズムと力強いドラムのリズムがしっかりと組み合わせって、独特のグルーヴ感を醸し出しています。

まさにドラムとトランペットがそれぞれの良さを最大限に発揮し合いつつ、楽曲を作り上げているという作品に。哀愁感や郷愁感を含んだメロディアスなトランペットの音色と、トライバルな要素を多分に含んだ力強いドラムのリズムのバランスが実に見事。どちらの演奏もしっかりと耳に残る、そんなアルバムに仕上がっていました。

特にアルバムのラストを飾る「We've Landed」はドラムの奏でるグルーヴィーなリズムとメロディアスに鳴り響くトランペットの音色がしっかりと相対し、ゾクゾクするようなスリリングな演奏を聴かせてくれる、実に魅力的な作品に。各々がそれぞれの個性を発揮しつつ対峙することにより緊迫感ある演奏を聴かせつつも、同時に2人で共に楽曲を作っていこうとする意志も強く感じられる楽曲に最後まで聴き入ってしまいます。

残念ながらこれが最初で最後となってしまったコラボレーションですが、それだけに貴重な録音となっている本作。伝説のミュージシャン同士ながらも相性の良さも感じさせる傑作アルバムでした。あらためてご両人のご冥福をお祈りしたいと思います。

評価:★★★★★

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