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2020年5月10日 (日)

新生サニーデイの新作&曽我部恵一のライブ作

Title:いいね!
Musician:サニーデイ・サービス

2016年にリリースしたアルバム「DANCE TO YOU」が様々な場所で大絶賛を受けたサニーデイ・サービス。その後も「Popcorn Ballads」「the CITY」と傑作アルバムを次々とリリースし、デビューから20年以上が経過しながらも、まさに全盛期にょうな活躍を見せた彼ら。ただ一方、2016年から体調不良のため活動を離れていたメンバーの丸山晴茂が2018年にわずか47歳という若さで急逝するなど、非常にショッキングなニュースもありました。

そんな影響もあってか、あるいはこの3枚のアルバムでサニーデイとしてやりたいことをまずやり遂げた感もあったのか、2019年にはサニーデイとしての活動がほとんどなかったのですが、2020年には新メンバーとして大工原幹雄の加入が決定。そして3月にリリースされた待望の新譜が本作となります。本作は、新生サニーデイ・サービスのスタートとなる作品となっています。

ただ、楽曲的には新生サニーデイというイメージとは裏腹に、むしろ原点回帰をするような作風のアルバムに仕上がっています。2016年の「DANCE TO YOU」から続く3作では、フォークロックの色合いが強かった以前のサニーデイの雰囲気を踏襲しつつ、シティポップの方向性が強かった彼ら。その上で「the CITY」は挑戦的な作風の曲も多く、その結果、賛否両論が巻き起こる作品となりました。

しかし今回の作品に関しては、ちょっと切ない雰囲気のメロディーラインが特徴的な冒頭の「心に雲を持つ少年」から、かつてのサニーデイを彷彿とさせるようなフォークロックの作品からスタート。「エントロピー・ラブ」のような、シティポップの様相の強いメロウな楽曲もあったりするのですが、特に後半、「センチメンタル」「時間が止まって音楽が始まる」のようなフォークロックの色合いの強い曲が目立ちました。

歌詞の世界も「今夜でっかい車にぶつかって死んじゃおうかな」というショッキングな歌詞がインパクトの「春の風」のような曲もあるのですが、「コンビニのコーヒー」みたいなタイトル通り、日常を描写したようなシンプルな歌詞が目立ちます。フォーキーな楽曲も含めて、全体としてはほっこりとした暖かい雰囲気の世界観が特徴的になっているアルバム。比較的シンプルで、「歌」としての良さが前に出ているような作品となっており、感想を聴かれた時、タイトル通りシンプルに「いいね!」と言いたくなるようなアルバムになっていました。

新生サニーデイとなった彼ら。ただとりあえずはそのスタイルはまずはかつてのサニーデイを踏襲した活動になりそう。ただ、新たなメンバーになったからゆえの様々な展開も期待できます。これからの彼らにも期待です。

評価:★★★★★

サニーデイ・サービス 過去の作品
本日は晴天なり
サニーディ・サービス BEST 1995-2000
Sunny
DANCE TO YOU
桜 super love

Popcorn Ballads
Popcorn Ballads(完全版)
the CITY
DANCE TO THE POPCORN CITY
the SEA
サニーデイ・サービスBEST 1995-2018

サニーデイとしての活動を本格的に再開させた曽我部恵一ですが、自身のソロとしてのライブアルバムもリリースされています。

Title:純情LIVE
Musician:曽我部恵一と真黒毛ぼっくす

昨年10月に行われた真黒毛ぼっくすの34周年記念ライブ「酔いどれ東京ダンスミュージック」に曽我部恵一がゲストとして参加。その模様を収録したライブアルバムです。真黒毛ぼっくすは、現在は大槻泰永のソロユニットなのですが、1985年にバンドとして結成。かの「イカ天」に出場した経験もあるというベテランミュージシャンで、最近では「酔いどれ東京」と題したライブイベントで、数多くの豪華なゲストを呼んでライブを行っているようです。

楽曲は曽我部恵一やサニーデイの代表曲や真黒毛ぼっくすの曲を披露。特にホーンセッションを取り入れて賑やかなアレンジで聴かせるような曲調が特徴的で、特に比較的シンプルなアレンジの曽我部やサニーデイの作品が大きく生まれ変わっているのが印象的。もともとメロディーの良さで聴かせているような曲なだけにホーンセッションが入ってもしっかりと曲の魅力は残っており、新たな魅力も感じられるようなアレンジに仕上がっています。

ただ、真黒毛ぼっくすの大槻のボーカルは、いわゆる「ヘタウマ」という類に入る、音程もはずれていてかなりぶっくらぼうな荒々しさを感じる歌い方が特徴的。真黒毛ぼっくすの楽曲に関しては、この「ヘタウマ」な歌が、楽曲にリアリティーさを加えて、なにげに強い魅力を感じさせるのがおもしろいのですが、一方で繊細な曽我部/サニーデイの楽曲には正直言ってあまり合っておらず、下手したらファンにとっては不快さすら感じる人もいるかもしれません。これは正直、相性の問題というしかないので、ちょっと残念にも感じます。

そんな訳で、曽我部/サニーデイに入ってくる大槻の歌はマイナスポイントなのですが…それ以外の点は、真黒毛ぼっくすの曲も含めて魅力的だったライブ盤。そういう意味では曽我部恵一やサニーデイのファンはチェックしてみて損はないと思うのですが…曽我部/サニーデイ曲の大槻ボーカルにはちょっとビックリする方もいるかもしれないので、その点だけは要注意かも。

評価:★★★★

曽我部恵一 過去の作品
キラキラ!(曽我部恵一BAND)
ハピネス!(曽我部恵一BAND)
ソカバンのみんなのロック!(曽我部恵一BAND)
Sings
けいちゃん
LIVE LOVE
トーキョー・コーリング(曽我部恵一BAND)
曽我部恵一 BEST 2001-2013
My Friend Keiichi
ヘブン
There is no place like Tokyo today!
The Best Of Keiichi Sokabe -The Rose Years 2004-2019-

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