結成21年目のまさかの初アルバム
Title:echo
Musician:Chara+YUKI
まさかのデビューアルバムです。それぞれが非常に個性的なボーカリストとして活躍しているCharaとYUKI。その2人がかつてユニットを組んでいた…といっても、リアルタイムに聴いていた世代やファンにとっても「ああ、そういえば」的な認識ではないでしょうか。1999年に、まだJUDY AND MARYのボーカリストとして活動していたYUKIがCharaとユニットを結成し、シングル「愛の火 3つ オレンジ」をリリースしました。CharaとYUKIのコンビは、その後もバンドMean Machineの活動につながるのですが、Chara+YUKI名義での活動はシングル1枚でストップ。Mean Machineとしての活動もアルバム1枚のリリースで終わってしまいました。
1999年はJUDY AND MARYは活動を休止していた頃。YUKIはソロボーカリストとして活動を模索している最中でした。ただ、このCharaとのユニットなどが典型的なのですが、売れ線J-POPバンドのボーカリストというイメージが強かったYUKIが、既にサブカルシーンで絶大な支持を得ていたCharaにすり寄って、「サブカル界隈」での人気を確保しようとしている…そういう印象を強く受けていました。特にその当時は今より「ヒットチャート王道系としてのJ-POP」と「サブカル系」との距離が大きかっただけに、急速にサブカル系ミュージシャンに近寄るYUKIは、正直言って少々露骨といった印象すら受けていました。
さらにその当時、「ロリータボイス」として既に特徴的な声色を持っていたYUKIですが、やはりまだボーカリストとして成長途上という面は否めず。逆にCharaはボーカリストとして既に実力を確保していたミュージシャン。その差は歴然で、当時、Chara+YUKIのユニットはかなり違和感を覚えていました。結果、Mean Machineとしての活動はあったものの、Chara+YUKIとしてはシングル1枚で終わってしまったことから、おそらく本人たちもしっくりこなかったのでしょう。いつの間にかChara+YUKIは「忘れ去られた」ユニットとなっていました。
それから21年。特にYUKIはジュディマリも解散しソロボーカリストとして独り立ち。既にYUKIを語る場合に「元ジュディマリの」という枕詞が不要になるほどボーカリストとして一定以上の地位を築きました。そんな中、なんと21年ぶりの結成となりリリースされたアルバムが本作。まさかの再結成に驚かされたのですが、ただ21年という月日を経て、YUKIがボーカリストとしてその地位を確立したからこそ、再結成という話になったのではないでしょうか。
実際にボーカリストとしての差を感じた21年前と比べて、あきらかに2人の立場は対等なものとなり、CharaとYUKIの2人の実力あるボーカリストがそれぞれの本領を発揮した作品となっています。特に2020年バージョンとして再録された「愛の火 3つ オレンジ」は、21年前のバージョンでは明らかにCharaのボーカルだけが際立ち、YUKIのボーカルの単調さが目立つ内容になっていたのですが、今回のバージョンではしっかりとYUKIも感情たっぷりに力強く色っぽさを感じるボーカルを聴かせてくれており、ちゃんとCharaとYUKIのデゥオとして成り立っています。
声色としては同じロリータ系でありつつ、鼻にかかった歌い方が特徴的なCharaとかわいらしさを感じるYUKIのボーカルは微妙にベクトルが異なっており、そのベクトルの違い故に2人のボーカルの相性の良さも感じます。特に先行シングルとなったシティポップ風のエレクトロチューン「楽しい蹴伸び」ではその2人のボーカルの相性の良さを特に感じることの出来る楽曲になっていました。
全体的にはエレクトロサウンドをベースとしたドリーミーなポップチューンがメイン。これはCharaとYUKIの声質にもマッチしているように感じます。一方、ドリーミーなサウンドとねちっこいボーカルを前に出した前半と比べて、後半「鳥のブローチ」は爽快でスケール感もある、ポップチューンになっていますし、ミディアムチューンの「Night Track」は横ノリのナンバーながらも分厚いサウンドで祝祭色を感じさせるナンバー、さらに最後の「echo」はギターポップとバリエーションを感じつつ、Chara+YUKIとしてのスタイルの模索も感じさせる展開で締めくくられています。ここらへんの曲も含めて、CharaとYUKIのボーカリストとしての相性の良さを強く感じます。
ある意味、今となってこそリリースすることが出来るアルバムのようにも感じます。なによりもYUKIのボーカリストとしての著しい成長を強く感じさせるアルバム。昔は違和感の強かった組み合わせでしたが、今となっては全く違和感を覚えません。21年前はシングル1枚で終わってしまいましたが、今後はコンスタントに活動してほしいなぁ。ツアーも予定されていましたが、こちらは新型コロナの影響で中止になってしまった模様…それだけに、これが最後ではなく、次も是非、期待したいところです。
評価:★★★★★
CHARA 過去の作品
honey
kiss
CAROL
Very Special
Dark Candy
うたかた
Cocoon
JEWEL
Secret Garden
Naked&Sweet
Sympathy
Baby Bump
YUKI 過去の作品
five-star
うれしくって抱きあうよ
megaphonic
POWERS OF TEN
BETWEEN THE TEN
FLY
まばたき
YUKI RENTAL SELECTION
すてきな15才
forme
ほかに聴いたアルバム
BE MY ONE/及川光博
ほぼ毎年、コンスタントにアルバムリリースを続けている彼にしては珍しく、2年ぶりとなるニューアルバム。ただ久しぶりということもあってか、「ミッチーらしい」と感じる、王道を行くような楽曲が並んでおり、特にエレクトロサウンドやホーンセッションを入れて軽快感もましたファンクチューンが目立つアルバムになっていました。新型コロナの影響で来年以降に延期になってしまったようですが、ライブで盛り上がりそうなナンバーが目立ちます。ただ、久々の新譜の割りには、9曲のみでうち1曲がセルフカバーという点はちょっと気になるところ。プライベートでは離婚という出来事があったり、逆にドラマで忙しかったりと、いろいろな意味で忙しいのでしょうか。
評価:★★★★
及川光博 過去の作品
RAINBOW-MAN
美しき僕らの世界
喝采
銀河伝説
ファンタスティック城の怪人
さらば!!青春のファンタスティックス
男心DANCIN'
20 -TWENTY-
パンチドランク・ラヴ
FUNK A LA MODE
BEAT&ROSES
| 固定リンク
「アルバムレビュー(邦楽)2020年」カテゴリの記事
- 円熟味の増した傑作アルバム(2020.12.28)
- 自由度の高い音楽性(2020.12.27)
- いつもの彼女とは異なるサウンド(2020.12.26)
- Gotchの才が発揮されたソロ3枚目(2020.12.25)
- 今の時代を描いたミニアルバム(2020.12.22)
コメント