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2020年5月31日 (日)

御年91歳(!)のブルースギタリスト

Title:Every Day Of Your Life
Musician:Jimmy Johnson

ここ最近、ポピュラーミュージックシーンが成熟した影響か、それとも医療技術の発展で健康寿命が延びたせいか、高齢のポピュラーミュージシャンが多数、誕生しています。例えばローリング・ストーンズのチャーリー・ワッツはもう78歳ですし、日本で言えば小田和正は72歳ですが、まだまだ元気に活動を続けています。しかし、そんな中でも今回紹介するミュージシャンはさらに異例でしょう。著名なソウルミュージシャン、シル・ジョンスンの兄としても知られている、シカゴを拠点として活動するブルースギタリスト、ジミー・ジョンソン。なんと今年、御年91歳(!)。昨年はシカゴのブルース・フェスティバルに出演し、元気な姿を見せていましたが、さらにこのたび、齢90歳を超えて、ニューアルバムのリリースとなりました。

90歳を超えていまだに現役で、第一線で活躍し続けるという点も驚かされるのですが、さらに驚かされるのはアルバムを聴いても、その年齢をほとんど感じさせないこと。ジャケット写真を見ても、高齢のおじいちゃんという印象は受けるものの、まさか90歳を超えているとは信じられないくらい元気な姿ですし、例えばギタープレイも全く衰えはありません。タイトルチューンである1曲目「Every Day of Your Life」でも力強いギタープレイを聴かせてくれますし、例えば「Better When It's Wet」などはギターインストなのですが、年齢を言い訳にするようなところは一切なく、しっかりギタリストとしての腕前を披露してくれています。

さらにそれ以上に驚かされるのはおそらくその歌声でしょう。前述の1曲目「Every Day of Your Life」ではいきなり力強い歌声を聴かせてくれていますし、メロウなミディアムチューンである「My Ring」では、色っぽさすら感じることが出来ます。この「声」というのは、特に年齢による影響が出やすい部分。ましてや彼の場合、本職はギタリストでありボーカリストではないはず。それにも関わらず、90歳を超えても、聴いていて全く違和感を覚えない艶のあるボーカルを維持できるのは、驚きを覚えてしまいます。

楽曲的にはコンテンポラリーなブルースナンバーがメインであって、特に新鮮味はありません。それでもブルージーなギターをしっかり聴かせる表題曲からスタートし、ピアノと絡めて軽快なブルースナンバーを聴かせる「I Need You so Bad」、メロウなミディアムチューン「My Ring」、メランコリックなバラードナンバー「Somebody Loan Me a Dime」、ピアノとギターで感情たっぷりに聴かせる「Strange Things Happening」など、バラエティー富んで聴かせどころたっぷり。特に感情たっぷりに歌うように奏でるギターのサウンドがアルバムを通じて非常に印象に残る内容になっており、ギタリストとしての実力をたっぷりと味わうことが出来ました。

さすがに大ベテランだけあって「勢い」みたいなものはないのですが、ただ一方でしっかりと現役感を覚える内容になっており、これが90歳を過ぎてからの作品というのは本当に信じられません!これだけ元気なら、まだまだその活動は続けられそう。これは目指せ、史上初の100歳超え現役ミュージシャンか??元気なおじいちゃんのアルバム…なのですが、年齢という話題性を差し引いても、十分に楽しめる現役ブルースギタリストの新作でした。

評価:★★★★


ほかに聴いたアルバム

Heaven To A Tortured Mind/Yves Tumor

Warpレーベル所属、アメリカ出身イタリア在住というミュージシャンの新作。「エクスペリメンタル・ソウル」「ゴシック・ポップ」などと表現され、ジャズやソウルを主軸に、サイケやノイズなどの要素を加味した独特の音世界が特徴的。前作「Safe In The Hands of Love」は歌モノが目立ちつつ、基本的に実験的な要素を主軸としたインストがメインとなっており、挑戦的な作風だった反面、若干取っつきにくさが目立ちました。今回はグッと歌モノメインにシフト。今回もサイケやノイズなど取っつきにくさはあるものの、基本、メロウな歌が耳に残るポップソングがメインとなっており、いい意味で聴きやすさがグッと増した印象が。前作に比べて、面白さも増した感のある作品でした。

評価:★★★★★

Yves Tumor 過去の作品
Safe In The Hands of Love

The New Abnormal/The Strokes

実に7年ぶりとなるThe Strokesのニューアルバム。The Strokesといえば、ロックンロールリバイバルの立役者として、特に2001年のデビューアルバム「Is This It」ではエッジの効いたロックンロールサウンドでシーンに大きな衝撃を与えましたが、今回のアルバムはそんなデビュー作からは隔世の感のある、メランコリックなメロディーを主軸に据えた聴かせる楽曲が並ぶナンバー。これはこれで、といった感もなくはないのですが、かつての勢いは全くなく、悪く言えば丸く収まってしまった感は否めません。正直、かなり物足りなさを感じてしまった1枚でした。

評価:★★★

THE STROKES 過去の作品
ANGELS

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