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2020年5月19日 (火)

アンビエント作の続編

新型コロナがこれだけ大問題になるちょっと前の3月26日。NINE INCH NAILSが突如、新作をサプライズリリースし話題となりました。それがこの2作

Title:Ghosts V:Together
Musician:NINE INCH NAILS

Title:Ghosts VI:Locusts
Musician:NINE INCH NAILS

タイトルからもわかる通り、本作は2008年にリリースされたアルバム「Ghosts I-IV」の続編的な内容のアルバム。「Ghosts I-IV」がリリースされた時は、一部を抜粋した無料ダウンロードのほか、5ドルでの全編ダウンロードや10ドルでのCD販売など様々な形態でのリリースが話題となりました。当時はまだ、無料ダウンロードというリリース形態が珍しかったこともあり、話題となったのを記憶しています。一方本作は現時点では無料ダウンロード(またはストリーミング)のみでのリリース。もっとも今となっては定額制によるストリーミングで聴く方法がメインとなってしまったため、逆に無料ダウンロードでもほとんどインパクトがなくなってしまいました。そういう意味では、10年という月日なのですが、隔世の感が否めません。

さて今回のアルバムは2枚同時リリースとなりましたが、「Ghosts V」は全8曲入り1時間10分という長さ。一方「Ghosts VI」は15曲入り1時間23分という長尺。全編聴くと2時間半以上というボリューム感ある作品となっています。ただ、この長尺のアルバムながらも全編アンビエントな作品になっており、淡々と続いていく展開が特徴的。特に「Ghosts V」ではアンビエントの色合いが強く、静かであまり抑揚のないサウンドが淡々と続くような、そんな構成になっています。もっともその中でも、ピアノも入って優しくメロディアスに聴かせてくれる曲もあり、例えば「Together」や「Your Touch」など、ピアノを用いたメロディアスなメロディーを聴くことが出来ます。

とはいえアルバム全体として「Ghosts V」は淡々と続いていくような内容となっており、しっかりと音源の前で正座して聴く、というよりは、部屋のBGM的に流しながら、時折あらわれる美しいサウンドやメロディーにはっと耳を傾けるような感じ。そのため、NINE INCH NAILSの最初の作品としては少々適さない感じもあるのですが…これはこれで彼らの魅力を感じることが出来るアルバムだったように感じます。

ただ淡々と静かなサウンドが続く「Ghosts V」に比べると、「Ghosts VI」はサウンド的にも様々なタイプの曲があり、アンビエントという方向性は一緒とはいえ、より聴きどころの多い作品になっていました。序盤「The Cursed Clock」「Around Every Corner」そして「The Worriment Waltz」では不協和音的なピアノが奏でる不気味な雰囲気が妙に耳に残る楽曲に。さらに「Run Like hell」ではトライバルな要素も取り入れたパーカッションのリズムも印象に。途中、ダイナミックなドラムの音も大きなインパクトになっています。

この不協和音的なピアノの音色を取り入れ不気味に展開していく構成はアルバム全体で共通しており、特に13分弱の「Turn This Off Please」では、その不気味な雰囲気が楽曲全体を覆いつくすヘヴィーな曲調になっていました。後半にはインダストリアルな展開が待っており、ここらへんはある意味、NINE INCH NAILSらしさを感じる楽曲に。最後を締めくくる「Almost Dawn」も哀しげなメロディーが胸に残る曲調となっており、アルバム全体としてはヘヴィーで不気味さを感じつつ、どこか残る哀しげな要素が魅力的なアルバムに仕上がっていたと思います。

ただ、どちらもアンビエントな作品であることは間違いないだけに、NINE INCH NAILSの最初の1枚としてはおすすめできる作品かと言われると少々微妙。もっとも良作ではあると思うので、NINE INCH NAILSを気に入っている方であればチェックしてみて損はないアルバムかもしれません。このシリーズ、「VII」「VIII」と続いていくのでしょうか。次は純然たるオリジナルアルバムを聴きたい、かな。

評価:どちらも★★★★

NINE INCH NAILS 過去の作品
GhostI-IV
THE SLIP
Hesitation Marks
Not The Actual Events
Add Violence
Bad Witch


ほかに聴いたアルバム

Gigaton/Pearl Jam

約6年半ぶりとなるPearl Jamの新作。いい意味で変なひねりのないシンプルなギターロックの作品で、冒頭「Who Ever Said」で、静かなストリングスの音色を切り裂くように入ってくるギターサウンドはロック好きなら胸が高まるのでは。先行シングルとなった「Dance Of The Clairvoyants」ではシンセも取り入れたダンスチューンになっているものの、ヘヴィーなバンドサウンドがやはり主軸となっていますし、最後を締めくくるスケール感あるサウンドが特徴的な「River Corss」まで、シンプルでPearl Jamらしさをしっかり追及しつつ、懐古的になるわけではなく、現役感を出したサウンドが楽しめるアルバムになっています。2020年にはバンド結成30周年を迎え、すっかりベテランの仲間入りを果たしている彼らですが、まだまだ第一線での活躍は続きそうです。

評価:★★★★

Pearl Jam 過去の作品
Backspacer
Lightning Bolt

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