陽気なギターロックを聴かせる
Title:KANA-BOON THE BEST
Musician:KANA-BOON
昨年は、ベースの飯田祐馬が行方不明となった上、精神的な理由から突然の脱退。音楽的な部分とは違った側面で話題となってしまったロックバンド、KANA-BOON。その結果、昨年は6月にリリースしたシングル「まっさら」以降、事実上の活動休止状態となってしまった彼ら。そして2020年に、3人組となった彼らの本格活動開始となったのがこのベスト盤。メンバー脱退を経て、バンドとしてのひとつの区切りをつけるためのベスト盤といった感じでしょうか。全2枚組となったアルバムで、彼らの歩みを知ることの出来る内容となっています。
さて、そんなKANA-BOONですが、個人的には以前から、バンドとして非常に薄味だな、という印象を受けていました。楽曲的にはシンプルで正直言って、これといった特色もないギターロックという感じで、メロディーもそれなりにポップでインパクトがあるものの、それだけで勝負するにはちょっと弱い…そんな印象を抱いていました。
で、今回の2枚組のベストアルバムであらためて彼らの曲をまとめて聴いたのですが、その印象はあまり変わりませんでした。裏打ちを取り入れたダンスチューン「なんでもねだり」や昔のヒーロー物の主題歌を思い出させるような「Fighter」、ストリングスを入れてダイナミックに聴かせる「ハグルマ」など、それなりにバリエーションのある曲調も聴かせてくれるのですが、全体的にはシンプルなギターロック路線がメイン。いい意味で変に過剰にならないシンプルなサウンドが魅力的ではあるのですが、これといったインパクトの薄さは否めません。
ただそのシンプルなギターサウンドに軽快なメロディーラインがのるサウンドは比較的、陽気な雰囲気のポップチューンがメイン。底抜けといった感じとはちょっと違うのですが、この明るい雰囲気のポップチューンが彼らの大きな魅力にも感じます。全体的にはカラッとした雰囲気のポップソングが多く、肩肘はらずに楽しめる楽曲になっているのも魅力。シンプルなギターサウンドが、彼らの楽曲をいい意味で気軽に聴けるポップチューンにするために寄与しているように感じます。
一方で歌詞の世界もそんな明るい陽気なJ-POP的なもの、かと思いきや、決して単純でわかりやすいJ-POP的な前向き応援歌的な歌詞ではなく、聴かせどころも多く、しっかりと歌詞を聴かせるような内容になっています。また「盛者必衰の理、お断り」のようにユニークな語感を上手くサウンドにのせているような曲もあり、ボーカル谷口鮪の書く歌詞が、彼らの大きな魅力になっているようにも感じました。陽気なギターポップチューンながらも、歌詞はしっかりと読ませるあたりに、単純なポップバンドとの違いは感じることが出来ます。
とはいえ全体的にはやはりちょっと個性は弱いように感じてしまったこのベスト盤。それなりにバンドとして売れながらも、いまひとつ大ブレイクしきれない理由はそんなインパクトの弱さにあるようにも感じました。3人組となった彼らが今後、どのように活動を進めて行くのか注目されますが…もう一皮むけてほしいかな、そうも感じてしまうベスト盤でした。
評価:★★★★
KANA-BOON 過去の作品
DOPPEL
TIME
Origin
NAMiDA
KBB vol.1
アスター
KBB vol.2
ネリネ
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