トリビュートアルバム第3弾
Title:PARADE III-RESPECTIVE TRACKS OF BUCK-TICK
1987年のメジャーデビュー以降、30年以上。一度もメンバーチェンジを行うこともなく、かつ途中にほぼ活動休止という状況もなく活動を続け、今なお現役のバンドとして第一線で活躍を続けるバンドBUCK-TICK。最近ではデビューから30年以上を経過するバンドも珍しくはなくなってきていますが、ただ、そんな中で、オリジナルメンバーで、途中、活動休止などなく継続的に活動を続けるバンドというのは驚異的ではないでしょうか。
本作は、そんな驚異のバンドに対するトリビュートアルバム。タイトルからもわかる通り、これが第3弾となるアルバムで、2005年に第1弾、2012年に第2弾がリリースされており、本作はそれに続く第3弾のアルバムとなります。トリビュートアルバムが3枚もリリースされるというミュージシャンも珍しく、彼らがそれだけ多くのミュージシャンに影響を与え、かつリスペクトを集めていることがわかります。
そしてこれは第1弾から本作に至るまでのBUCK-TICKのトリビュートアルバムの大きな特徴なのですが、参加ミュージシャンが実に多岐にわたっています。本作でも、ヴィジュアル系としての流れをくむようなDIR EN GREYやシドといったバンドが参加しているかと思えば、坂本美雨や藤巻亮太といったアコースティックな印象の強いポップス系のミュージシャンも参加。さらになんといっても椎名林檎も「唄」をカバーして参加して大きな話題となっています。
そんな本作ですが、アルバムを聴き始めていきなり飛び込んでくるのが警告音のようなギターと共にスタートするBRAHMANの「ICONOCLASM」。ハードコアな内容が実にカッコいい楽曲になっており、否応なくアルバムに期待がかかるようなスタートとなっています。
ただ正直なところ前半に関しては悪くはないけど…といった消極的な印象を受けてしまう展開に。GRANRODEOの「天使は誰だ」にしても、シドの「JUPITER」にしても、平凡なJ-POP的な内容。ピアノとアコーディオンで怪しげでムーディーな雰囲気を奏でる黒色すみれの「Lullaby-III」や、エレクトロアレンジに仕上げたCUBE JUICEの「LOVE ME」などバラエティー富んだ展開は楽しめるのですが。
一方で、圧倒的に良かったのは後半。特に椎名林檎の「唄」はBRAHMANと並んで個人的に今回のトリビュートアルバムの2トップ。BUCK-TICKの持つ妖艶さをしっかりと自分のものとして取り入れて、椎名林檎の曲として仕上げてしまっている「唄」は、ミュージシャンとしてある種の格の違いも感じさせます。続くDIR EN GREYの「NATIONAL MEDIA BOYS」もヘヴィーなサウンドが心地よく、こちらもバンドとしての底力を感じさせるカバーになっています。
さらにボーカリストとして魅力的な歌声を聴かせ、ピアノとストリングスで幻想的に聴かせる坂本美雨の「ミウ」も秀逸。BUCK-TICKのメロディーメイカーとしての優れた側面も感じさせるカバーになっています。おなじく藤巻亮太も、彼らの代表曲ともいえる「JUST ONE MORE KISS」をギターポップとして聴かせており、どのようなアレンジでも通用するという、この曲の強度を感じさせるカバーに仕上がっており、BUCK-TICKの魅力に気が付かされるカバーとなっていました。
カバーとしては玉石混合なところがあり、名カバーばかりが揃った、といった感じではなかったのですが、それでもチェックしておきたい良作も多く、なによりBUCK-TICKの楽曲の様々な魅力を感じることが出来るトリビュートアルバムに仕上がっていました。あらためて彼らのすごさを感じることの出来るトリビュートアルバム。ただ、いまなお現役の彼らはおそらくこれからも多くのミュージシャンたちに影響を与えていきそう。それだけに、このシリーズ、第4弾、第5弾も続きそうです。
評価:★★★★
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