奇妙な名前の今話題のシンガーソングライター
Title:From DROPOUT
Musician:秋山黄色
かなり奇妙なネーミングの名前が強いインパクトを残しますが、秋山黄色、最近注目を集めている男性シンガーソングライターです。もともとYou Tubeで楽曲を発表しているところからその活動がスタートしているあたりは、いかにも今時といった感じ。もっとも、いわゆるボカロP出身ではないみたいですが…。その後、初の配信シングル「やさぐれカイドー」がSpotifyのバイラルチャート(日本)で2位を獲得したり、「出れんの!?サマソニ!? 2018」の最終14組に残り、「SUMMER SONIC 2018」に出演したりと徐々に注目を集めた彼。本作はそんな彼のメジャーデビューアルバムであり、初のフルアルバムとなります。
そんな本作は、まずは話題となった初の配信シングル「やさぐれカイドー」からスタート。テンポよいリズムのオルタナ系ギターロックのサウンドで、比較的ハイトーン気味のボーカルも今時といった感じでしょうか。また、どこか社会の中で疎外感を覚えるような人間の心境を描いた歌詞も印象を残します。
サウンド的には比較的分厚いバンドサウンドを聴かせる疾走感あるオルタナ系のギターロック路線がメイン。ピアノが入って軽快なポップにまとまった「夕暮れに映して」やパンク色の強い「ガッデム」などそれなりにバリエーションはありつつ、ただアルバム全体としては特にこれといった強い特色もないギターロックが主軸の構成となっており、あまりサウンド面からの「売り」は感じられません。
一方でやはり秋山黄色としての特徴を出しているのは歌詞の世界でしょう。「薄暗い 部屋 今日も一人」と歌う「クラッカー・シャドー」や「もう何回一人で死んでしまったか」と歌う「Caffeine」、さらには「猿上がりシティーポップ」のように、「やさぐれカイドー」と同じく、社会から疎外感を持っている人の孤独を歌い上げる歌詞が目立ちます。そしてさらにその中で、その向こうの希望を歌ったり、愛する人との出会いを歌ったりしています。
ただ正直言ってこのテーマ性については比較的ありふれている…という印象を抱いてしまいます。その中で秋山黄色らしい視点がしっかり描かれているのか、と言われると、残念ながらそこまでの個性はいまのところ感じません。歌詞のテーマ性や描写については比較的わかりやすさもあるのですが、個人的にはもう一歩、秋山黄色らしさを出せたらもっとよかったように感じました。
しかしその反面、「モノローグ」の「悲しみは2つに 喜びは1つに」や、ラストを締める「エニーワン・ノスタルジー」の「大人と子供の間にいるからだ」のような、比較的インパクトある言葉を、曲の中のインパクトあるフレーズに上手くあてはめており、リスナーをしっかりと惹きつけるような楽曲に仕上げているように感じました。このインパクトある歌詞をインパクトあるメロにしっかり載せるというスタイルは、なにげになかなか難しい反面、ヒット曲を次々と飛ばすミュージシャンは難なくこなしているようなヒットには必須とも言える要素。それを彼は難なくこなしているだけに今後の大ブレイクも見込まれるのではないでしょうか。この点は彼の大きな強みのように感じました。
そんなこともあり、近いうちに大ブレイクの可能性も感じさせる彼。今後、その不思議な名前を聴く機会はさらに増えるかもしれません。今後の彼の活躍に要注目です。
評価:★★★★
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