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2020年5月 1日 (金)

地に足がついてきました。

Title:ボイコット
Musician:amazarashi

その歌詞の独自の世界観から高い人気を誇るロックバンドamazarashi。デビュー時も高い注目を集めた彼らですが、その後も人気は上り調子。本作ではBillboard Hot Albums及びオリコン共に最高位2位を記録するなど、その人気の高さを見せつける結果となりました。さてそんなamazarashi、デビュー当初は世の中をあえて斜に捉えたような歌詞が印象的で、どこかファンタジックな世界観も含めて「中2病バンド」的な印象を強く受けていました。特に初期の彼らは社会の中での疎外感という、いかにも「中2病」的なテーマに沿った曲を多く歌っていました。しかしその後、徐々に成長を続けた彼ら。本作ではデビュー当初と同じく、社会の中での疎外感を歌にしつつ、かつてのようないかにも「中2病」的な雰囲気は消えたように感じます。

特に前作「地方都市のメメント・モリ」ではタイトル通り、地方都市をテーマとした歌詞が特徴的。バンドのメインのライターである青森出身の秋田ひろむの出自が強く反映された内容になっていました。その結果、かつての彼らのような、地に足をつかないような歌詞はほとんど消えたのですが、今回のアルバムに関しても、そんな前作に引き続き、地方出身という秋田ひろむの出自、そしておそらく経験が強く歌詞に反映されたようなアルバムになっています。

そんなアルバムで印象的なのが「夕立旅立ち」。田舎に嫌気がさし都会に出てきた主人公がふるさとを懐かしむ歌詞。テーマ的にはポップソングで昔から、ある種普遍的なテーマなのですが、おそらく秋田ひろむも経験した心境なのでしょう、胸がキュンとしてしまうような歌詞が大きな魅力となっています。さらにそれに続く「帰ってこいよ」も強く印象に残ります。いわば都会に出てきた人物が故郷を振り返るのが「夕立旅立ち」なら、本作はそんな都会に出て行った仲間を暖かく迎え入れる田舎に残った人からのメッセージ。郷愁感ある描写も強く印象に残ります。

「夢を叶えたって胸を張ろうが やっぱ駄目だったって恥じらおうが
笑って会えるならそれでいい 偉くならなくたってそれでいい」
(「帰ってこいよ」より 作詞 秋田ひろむ)

という歌詞には涙腺がゆるみます。

また他にも「マスクチルドレン」などはまさに都会の中での孤独を歌った歌詞ですし、「抒情死」などもそんな淋しい雰囲気を感じさせるナンバー。全体的には前作同様、地方から東京に出てきた秋田ひろむだからこそ歌えるような歌詞が続きます。前作同様に、「中2病」的な空想の世界の産物ではない、しっかりと地に足をつけた歌詞の曲が並んでいました。

サウンド的にはいままでの彼らと同様、打ち込みなども取り入れたヘヴィーなギターサウンドにピアノの音色も加え、叙情感たっぷりにダイナミックに音を鳴らすスタイル。ただ一方で、「拒否オロジー」のような、THA BLUE HERBからの影響も感じさせるようなポエトリーリーディングのようなスタイルだったり、歌詞の雰囲気にあった曲調が印象的なカントリー風の「夕立旅立ち」のような曲もあったりと、歌詞の世界に合ったバリエーションも魅力的だったりします。

前作「地方都市のメメント・モリ」はバンドとして垢抜けたという印象を強く受けるアルバムでしたが、本作はさらにそこからバンドとしての大きな成長、いい意味で大人になって地に足をつけた歌詞を書くようになってきた、そんなことを強く感じる傑作でした。amazarashiとしてさらなる進化を感じさせる作品で、今年を代表する1枚といっても過言ではないかもしれません。いまだに人気上昇中である理由がよくわかる作品でした。

評価:★★★★★

amazarashi 過去の作品
千年幸福論
ラブソング
ねえママ あなたの言うとおり
あんたへ
夕日信仰ヒガシズム
あまざらし 千分の一夜物語 スターライト
世界収束二一一六
虚無病
メッセージボトル
地方都市のメメント・モリ


ほかに聴いたアルバム

かすかなきぼう/KODAMA AND THE DUB STATION BAND

元ミュート・ビートのこだま和文率いるKODAMA AND THE DUB STATION BAND。結成から断続的な活動だったとはいえ既に14年が経過しており、EPなどはリリースしていたのですが、かなり意外なことにオリジナルアルバムはこれがデビュー作となります。スカやダブを取り入れた横ノリのゆったりしたサウンドの中に響く、こだま和文のトランペットの音色が胸にくるような楽曲が目立つ今回の作品。その音色をかみしめるように味わいたくなるような、郷愁感あふれるサウンドが特徴的な楽曲が並びます。日本ではおそらく「遠き山に日は落ちて」を思い出させる「NEW WORLD」のダビーな音色は感涙モノ。非常に胸にしみいる1枚でした。

評価:★★★★★

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