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2020年5月28日 (木)

今年最大の音楽ニュース?

Title:ニュース
Musician:東京事変

新型コロナの影響ですっかり沈滞してしまっている音楽シーンですが、ただ2020年の元旦に飛び込んできた最も大きなニュースは東京事変復活のニュースでしょう。2012年2月29日の日本武道館ライブを最後に解散した彼女たちですが、それからちょうど8年後になる今年、突然の復活を遂げました。その後、解散ライブからちょうど8年後、同じ閏日となる2月29日にライブを決行。ちょうど新型コロナウイルス感染が話題となっており、数多くのライブが中止となる中での実施だったために批判を浴びるなど若干ケチがついた感も出てしまったのは残念ですが、ただ、その後、EP盤である本作がリリース。オリジナルアルバムとしては2012年の「color bars」以来、実に約8年3ヶ月ぶりの新譜となります。

まず今回、目を引くのがそのジャケット。タイトルからイメージされるニュース番組をモチーフとしたコンセプシャルなジャケットとなっています。前作「color bars」もテレビ映像のテストパターンから取られたものですし、その後リリースされたカップリングアルバム「深夜枠」もテレビをモチーフとしたタイトルですから、その路線が続いている形となります。特に今回のジャケット、スーツをピシっと決めた椎名林檎のカッコ良さが目立ちます。一方、他のバンドメンバーはいまひとつスーツが似合っていなくて、浮いてしまっているのですが・・・。

そんな新作は前5曲入りのミニアルバムなのですが、5曲が5曲とも、メンバーそれぞれが1曲ずつ作曲としている点が大きな特徴となっています。特に1曲目の「選ばれざる国民」の冒頭に流れてくるのは、いきなり浮雲の歌声。この点からもあくまでも東京事変が椎名林檎+バックバンドという形ではなく、メンバー5人が対等であり、「椎名林檎のバンド」ではない、という強い主張が伝わってきます。

また、椎名林檎のボーカルよりもバンドサウンドを前に押し出したような曲が多いという点も大きな特徴ではないでしょうか。1曲目の「選ばれざる国民」も、今どきなエレクトリックジャズの楽曲になっているのですが、歌よりもエレクトリックピアノをはじめとするバンドサウンドが前に押し出されている構成になっています。

続く「うるうるうるう」もピアノや力強いドラムが目立つ作品になっていますし、ユニークなタイトルの「猫の手は借りて」も、椎名林檎のボーカルを生かした作品ではあるのですが、ノイジーなギターサウンドも同じように主張している楽曲に仕上がっています。椎名林檎のボーカルも非常に特徴的でインパクトがあるのですが、東京事変のメンバーはそれぞれ個性派揃い。ギターもベースもドラムもピアノも、それぞれ非常に個性的なサウンドで主張している点が大きな特徴でもあり魅力。それがバンドとしてバラバラになっておらず、絶妙なバランスでまとまっているのも大きな魅力に感じます。

椎名林檎ではなく、東京事変としてバンドとしての再出発を高らかに歌いあげる、バンドとしての特色、メンバーそれぞれの個性をしっかりと出すことが出来た傑作アルバムだったと思います。ただ、一方正直なところ、楽曲自体、一番よく出来ていたのはやはりラストに収録されている椎名林檎作曲による「永遠の存在証明」だった点、少々バンドの苦しい面が垣間見れる感じ。特に椎名林檎は、東京事変が解散してからのオリジナルアルバム「日出処」「三毒史」がいずれも傑作だっただけに、そういう意味では東京事変より椎名林檎としての活動を…と若干思ってしまう部分も否定できません。

もっとも亀田誠治作曲の「現役プレイヤー」のような、明るくシンプルでポップなギターロックは椎名林檎作曲の曲ではまず出会えないようなタイプの曲で、そういう意味では椎名林檎の音楽的な幅を広げているという点で東京事変の活動も魅力的なのは間違いありません。本格的活動再開直後に新型コロナの影響でライブツアーが中止になったり、おそらく東京五輪に合わせての再結成だったものの、その東京五輪が延期になったりと、ちょっとタイミングが悪かった感も否めませんが、それでもやはり東京事変としてのこれからの活躍にも期待したいところ。ただ、個人的には椎名林檎のソロも同時並行で続けてほしいのですが。

評価:★★★★★

東京事変 過去の作品
娯楽
スポーツ
大発見
color bars
東京コレクション
深夜枠


ほかに聴いたアルバム

映画ドラえもん うたの大全集

映画ドラえもん40作目及びドラえもん連載開始50周年を記念してリリースされた、過去の映画主題歌や挿入歌を網羅したオムニバスアルバム。2010年、2015年に同企画のアルバムがリリースされており、そういう意味で目新しさはあまりないのですが、2015年以降の映画主題歌が収録。特に個人的には星野源の「ドラえもん」目当てで聴いたのですが、この曲は、特にJ-POP系ミュージシャンが提供してからの曲の中ではドラえもんとの世界観とのマッチや曲の良さ、またドラえもんに対する敬愛度いずれをとってもずば抜けていますね。特に昨年10月からはテレビアニメのオープニングにも起用されており、それはそれで賛否を呼んだようですが、個人的にはかなり納得感があります。個人的にはDisc1は非常に懐かしさを感じつつ聴くことが出来、Disc2以降は少々蛇足だったのですが、そんな中でも星野源が断トツによかった、そう感じたアルバムでした。

評価:★★★★

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