基本的には前作を踏襲
Title:It Is What It Is
Musician:Thundercat
もともとFlying LotusやKendrick Lamarといったミュージシャンのアルバムへの参加で大きな注目を集めたベーシスト、Thundercat。そんな彼が2017年にリリースしたアルバム「Drunk」は80年代のAORやフィリーソウルの影響を色濃く受けた、メロディアスでかつ懐かしさを感じさせるアルバムとなっており、各所で高い評価を受けました。かくいう私もこのアルバムにすっかり魅了され、2017年の私的ベストアルバムで1位に選んだほど。それだけ素晴らしい傑作アルバムとなっていました。
それから3年。それだけに否応なしに今回のニューアルバムも高い期待の元にアルバムを聴き始めました。そんなアルバムは1曲目「Lost In Space/Great Scott/22-26」はイントロ的なナンバー。ハイトーンボイスのメロウな歌声を聴かせてくれ、まずはアルバムへの期待が高まります。その1曲目からそのまま続く2曲目「Innerstellar Love」は複雑なリズムを奏でるジャジーなドラムとベースが奏でるグルーヴが非常にカッコいいナンバー。ただハイトーンボイスで聴かせるメロウなAORとなっており、基本的に前作「Drunk」を踏襲するような楽曲となっており、「Drunk」ではじめてThundercatというミュージシャンの魅力に触れたリスナーも安心させる楽曲となっています。
その後も基本的にアルバムは前作「Drunk」の路線を踏襲する形で続いていきます。特に80年代の要素を強く感じさせる、どこか懐かしい楽曲が魅力的。例えば「Black Qualls」などは、まさに80年代を彷彿とさせるファンクチューン。「King Of The Hill」なんかも80年代、というよりもむしろもっと前の時代を感じさせるような、どこかレトロな雰囲気が大きな魅力になっています。
また、いい意味でポップで聴きやすいのも本作の大きな魅力。例えば「Funny Thing」は軽快でリズミカルなポップチューンになっていますし、「Overseas」なんかも80年代AORの要素の強い、懐かしさを感じつつも、ポップなメロディーラインはインパクトも強く、とても聴きやすい楽曲に仕上がっています。
ただ一方で懐かしさを感じさせつつも、流れてくるエレクトロサウンドやファンキーなリズムやベースラインは間違いなく2020年代の現代のもの。楽曲としては80年代的な懐かしさを感じさせつつも、決して懐古趣味的な「古さ」を感じさせず、サウンド的にはしっかりと今時の音にアップデートされている点も本作の大きな魅力だったように感じます。間違いなく2020年の今だからこそ生まれたアルバムと言えるでしょう。
そんな訳で、基本的には「Drunk」の路線を踏襲しているため、前作にはまった人は間違いなく気に入るであろう本作。その反面、基本的には「Drunk」から大きく新しいことを実施した訳ではないため、そういう意味での目新しさはあまりなかったようにも思います。そういう意味では前作に引き続き傑作アルバムであることには間違いないのですが「Drunk」と比べると、「Drunk」は超えられなかったかな、といった感じ。いいアルバムなのは間違いないのですが、その点はちょっと残念でした。
評価:★★★★★
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