ズラリと並んだ歌モノ曲が魅力的
Title:TOKYO SKA TREASURES ~ベスト・オブ・東京スカパラダイスオーケストラ~
Musician:東京スカパラダイスオーケストラ
デビュー30周年を記念してリリースされたスカパラの3枚組となるベストアルバム。スカパラはいままで何枚もベスト盤をリリースしており、これでベスト盤としては5枚目。特に前回リリースした「The Last」からはまだ5年しか経過しておらず、「さすがにリリースしすぎでは?」という感もあります。さらに今回のベスト盤は1998年にavexに移籍した後の音源のみを収録したベスト盤。特に近年の作品に関しては、良くも悪くもポップ路線にシフトした、ということで賛否両論な面もあり、初期スカパラのような、くすんだ色合いの曲調でやばさを感じさせる作品が好きな方にはスルーするようなベスト盤かもしれません。
ただ今回のベスト盤で大きな特徴となっているのは間違いなくDisc1、2。2001年よりスタートさせた、ゲストミュージシャンをボーカルとして起用してスカパラの曲を演奏する歌モノ路線。2001年の田島貴男をゲストに迎えた「めくれたオレンジ」、第2弾のチバユウスケがゲストの「カナリヤ鳴く空」、そして第3弾となる奥田民生を迎えた「美しく燃える森」を含め、歌モノの曲がズラリと並んでいます。ある意味、この歌モノシリーズはスカパラのポップ路線を決定づけることになった特徴的な企画なのですが、ただ豪華なゲスト陣はまさに圧巻。ミスチル桜井和寿や甲本ヒロト、斉藤和義、ASIAN KUNG-FU GENERATIONなどなど、様々なタイプのミュージシャンがズラリと並んでいます。
そんな豪華ゲストを迎えた歌モノシリーズですが、今回、並べて聴いてみてひとつ非常に興味深い点に気が付きました。それは声を聴けば一発で誰が歌っているかわかるような個性的なボーカリストでも、人によって、あくまでも「スカパラの曲」という印象に留まるか、スカパラの曲ではなく、まるでゲストミュージシャン自身の曲かのような印象を受けるか、大きく異なるという点でした。
後者の代表は間違いなく今回、ベスト盤リリースにあたったの新曲「Good Morning~ブルー・デイジー」に参加したaikoでしょう。楽曲としては間違いなくスカパラの曲のはずなのですが、ボーカルの独特の節回しもあり、スカパラの曲というよりは完全にaikoの曲になっています。また、同じく甲本ヒロトの「星降る夜に」も、軽快なスカの曲調で、完全にスカパラらしい曲のはずなのですが、甲本ヒロトが歌うとなぜか甲本ヒロトの曲になってしまうから不思議です。
逆に前者の代表としてはミスチル桜井和寿が参加した「リボン」。言うまでもなく桜井和寿も声を聴けば一発で彼だとわかる個性的な声の持ち主のボーカリスト。この曲も聴けば一発で桜井がボーカルだとわかるのですが、楽曲としてはあくまでもスカパラの曲に桜井のボーカルが載っている、という印象以上でも以下でもありません。宮本浩次が参加した「明日以外すべて燃やせ」も同様。彼も非常に個性的なボーカリストで間違いないはずなのですが、この曲に関しても聴いていて、エレカシの曲っぽい、みたいに感じることは一切なく、あくまでもスカパラの曲という印象以外は受けません。
もちろん、作り手側の意図として、スカパラ色をより出したプロデュースにするのか、ボーカルの個性をより生かしたプロデュースにするのか、という違いもあるのでしょう。また、もちろんこの両者のどちらがボーカリストとして優れている、という話でもありません。ただひとつ感じるのは、aikoや甲本ヒロトのような完全に自分の曲としてしまっているボーカリストは、おそらくその歌い方自体にその人独特の節回しがあるんだろう、ということを感じます。一方、桜井和寿や宮本浩次のようなタイプは声色には非常に特徴はある反面、歌い方としては比較的シンプルでストレートな歌い方をしている、ということかもしれません。確かに桜井和寿なんかは、比較的ボーカルのスタイルとしてストレートだからこそ、多くのリスナーをひきつけるメガヒットを連発してきた、とも言えるかもしれませんが。
とにかく、このDisc1,2の歌モノ路線がズラリと並んでおり聴き比べが出来るという点が今回のベスト盤の最大の魅力。基本的にはスカパラらしい曲が並んでいるとはいえ、ボーカリストによって様々な色が出ておりバラエティーに富んだ展開となっています。Disc3についてはインスト曲が収録。比較的最近の(といっても1998年以降なので20年以上の歳月が経過していますが)曲なのでポップ路線の曲が多いのですが、「Perfect Future」などのように怪しげで「ヤバイ」雰囲気を漂わせた曲もしっかりと収録されており、危険なにおいというスカパラの魅力のひとつもしっかりと感じます。
デビューから30年を経過しても、まだまだ現役感バリバリに第一線で活動を続ける彼ら。歌モノシリーズもまだまだ豪華なゲストが参加して続きそうですし、これからもその活躍が期待できそう。まだまだこれからの彼らも楽しみになってくるような、そして次の歌モノシリーズのゲストも楽しみになってくるベスト盤でした。
評価:★★★★★
東京スカパラダイスオーケストラ 過去の作品
Perfect Future
PARADISE BLUE
WILD SKA SYMPHONY
Goldfingers
HEROES
Sunny Side of the Street
on the remix
Walkin'
欲望
Diamond In Your Heart
SKA ME FOREVER
The Last
TOKYO SKA Plays Disney
The Last~Live~
TOKYO SKA PARADISE ORCHESTRA~Selecao Brasileira~
Paradise Has NO BORDER
GLORIOUS
2018 Tour「SKANKING JAPAN」"スカフェス in 城ホール" 2018.12.24
ほかに聴いたアルバム
ストレンジピッチャー/ガガガSP
気が付けばメジャーデビューから20年が経過。すっかりベテランバンドの領域に突入したガガガSP。相変わらずなハイテンポのパンク路線を聴かせてくれつつ、さすがに歌詞の世界ではそれなりに「大人」になってきた印象も強く受けます。特にギルバート・オサリバンの名曲「Alone Again(Naturally)」を自己流にカバーした「ハロー40代」ではタイトルそのもの、40代に突入したコザック前田の心境を歌ったナンバーに。ベテランバンドとなった彼ららしい落ち着いた大人の部分を強く感じたアルバムになっていました。
評価:★★★★
ガガガSP 過去の作品
くだまき男の飽き足らん生活
自信満々良曲集
ガガガを聴いたらサヨウナラ
ミッドナイト in ジャパン
ガガガSPオールタイムベスト~勘違いで20年!~
ターゲット/FLOWER FLOWER
yui率いるロックバンドFLOWER FLOWERの約2年ぶりとなる新譜。ファンクチューンの「蜜」からスタートし、ディスコチューンやピアノバラード、ギターロックにアコースティックなナンバーなど、実にバラエティー豊かな音楽性が特徴的。結果、アルバムとしての統一感に欠けてしまっている部分は玉に瑕なのですが、バンドとしての幅を広げていこうという意欲は強く感じさせるアルバムになっていました。これを糧に、次にどうつなげていくか、次回作にも注目したいところです。
評価:★★★★
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