The Weekndの魅力たっぷりに
Title:After Hours
Musician:The Weeknd
約3年半ぶりとなるThe Weekndのニューアルバム。もともと、今時のサウンドとポップなメロディーラインを上手く融合させ、世界的な人気を確保してきた彼。ただ、そんな中でも前作「Starboy」はポップという路線に振り切って、いわば賛否両論を巻き起こしたアルバムになっていました。ただ、今回のアルバムでは再び、今時のサウンドを取り入れた非常に挑戦的な作品とポップなメロディーラインを上手くバランス良くアルバムの中に取り入れた、The Weekndらしいアルバムに仕上がっていました。
また今回の作品で言えば、「挑戦的な作風」と「ポップな路線」がアルバムの中で非常に明確に分けられていた作品にもなっていました。特に前半は様々なエレクトロサウンドで音色を構築した挑戦的な作品が続きます。スペーシーなサウンドに軽くエフェクトをかけたファルセットボイスを美しく聴かせる「Alone Again」からスタートし、ダブステップ的な要素を取り入れたリズミカルなエレクトロナンバー「Hardest To Love」に、アンビエント的に美しく聴かせる「Snowchild」など、彼のファルセット気味のハイトーンボイスにエレクトロサウンドを美しく絡めたような作品が続いていきます。
一方、その雰囲気がグッと変わり、ポップ寄りにシフトするのが後半戦。テンポのよいエレクトロポップで、どこか80年代的な懐かしさを感じさせる「Blinding Lights」に同じく軽快な80年代風のディスコを彷彿とさせるエレクトロチューン「In Your Eyes」、人懐っこいポップなメロディーラインが耳を惹く「Save Your Tears」など、現代風と感じさせる前半から一転、80年代的な要素も強い耳なじみやすいエレクトロサウンドに、メロディーメイカーとしての彼の才が光るポップチューンが続く構成となっていました。
ただ、前半と後半でグッと印象が異なるはずの本作なのですが、なぜかアルバムとしての一体感も覚えてしまうのが不思議なところ。それは前半も後半も、ファルセット気味のボーカルで聴かせるエレクトロサウンドという点で共通項があることも大きな要因でしょう。また終盤、タイトルチューンの「After Hours」や「Until I Bleed Out」では前半のようなアンビエント路線に再び戻り、アルバムが幕を閉じる構成になっている点も、アルバム全体に統一感を覚える大きな要因なのかもしれません。
さらにポップなメロディーラインは前半にもしっかりと流れており、例えば「Scared To Live」は分厚いエレクトロサウンドがバックに流れつつ、どこか懐かしさを感じさせるメロディーラインが大きな魅力に。サウンドの面では挑戦的な部分が目立つ「Hardest To Love」もメロディーラインに至ってはインパクトがあり、サウンド云々関係なく、広い層が楽しめそうなポップな仕上がりとなっています。アルバムでは終始、ポップなメロディーラインが流れているという点も、アルバム全体の一体感を覚える大きな要因のように感じます。
アルバム全体として、様々な側面からThe Weekndの魅力をたっぷりと伝えている作品となっており、個人的には彼の最高傑作と言える作品では?とも思ってしまいました。また、ミュージシャンとしても非常に脂ののっているようにも感じます。これからの彼にも断然期待の高まる、そんな傑作アルバムでした。
評価:★★★★★
The Weeknd 過去の作品
Kiss Land
Beauty Behind The Madness
STARBOY
My Dear Melancholy,
The Weeknd In Japan
A Written Testimony/Jay Electronics
以前からミックステープなどで話題となっていたもののなかなかアルバムがリリースされず、このほど、ようやくデビュー作がリリースされたJay Electronicaの待望のアルバム。「The Overwhelming Event」「Ghost Of Soulja Slim」ではネーション・オブ・イスラムの元最高幹部であるルイス・ファラカン師の演説をサンプリングしたり、広島に原爆が落とされたニュースをサンプリングした「Universal Soldier」などからわかるように社会的な要素も強い作品なのですが、一方、Travis Scottが参加しトラップの要素を取り込んだ「The Blinding」や、一方でThe Dreamが参加し、レトロなソウルの要素の強いトラックを聴かせる「Shiny Suit Theory」など楽曲的にはバラエティーが富んでおり、ポップにまとまっているのが印象的。大きな話題となっており、各所で絶賛を受けている作品ですが、その理由も納得です。
評価:★★★★★
| 固定リンク
「アルバムレビュー(洋楽)2020年」カテゴリの記事
- 注目の7人組大所帯バンド(2021.03.28)
- 伝説のロックバンドの初のベスト盤(2020.12.29)
- 新生スマパンの第2弾だが。(2020.12.18)
- 「2020年」を反映した2021年ブルースカレンダー(2020.12.08)
- キュートなボーカルが魅力的(2020.12.07)
コメント