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2020年4月 4日 (土)

不穏な雰囲気を感じつつも、ドリーミーなポップもしっかり聴かせる

Title:Miss Anthropocene
Musician:Grimes

カナダはバンクーバー出身の女性シンガーソングライター、Grimes。2012年にリリースした「Visions」が高い評価を受け、一躍注目のシンガーとなり、続く2015年の「Art Angels」も同じく各種メディアで絶賛を受けた彼女。2作連続で傑作を生み続けた彼女ですが、本作はそれに続く約5年ぶりとなるニューアルバム。ここ2作連続して高い評価を受けているだけにおそらく強いプレッシャーを受けたであろう彼女ですが、それを易々と乗り越える傑作アルバムをまたもやリリースしてきました。

今回のアルバムは「気候変動」をテーマとした作品。重いテーマ設定となった新作ですが、そのテーマ性を表すかのように1曲目「So Heavy I Fell Through the Earth」から不穏な雰囲気でアルバムはスタート。続く「Darkseid」もインダストリアルの色合いの強い、ヘヴィーでダークな作品になっていました。いままでの彼女の作品は、軽快なガールズポップという印象も受けるようなポップで明るい作風の曲が多かっただけに、ヘヴィーでダークな雰囲気の曲調には少々驚かされます。

その後も、ヘヴィーなギターサウンドが入った「My Name is Dark」やインダストリアル色の強いヘヴィーでメタリックな「We Appreciate Power」のようなヘヴィーでダークな作品が目立ちます。今回のアルバムのテーマ性を反映した不穏な雰囲気といった感じでしょうか。もっとも、これらの曲に関しても基本的にポップなメロディーラインは流れています。特に「We Appreciate Power」ではちょっと怪しげな雰囲気のメロディーラインが耳に残るインパクトたっぷりのナンバーになっており、以前のアルバムまで強く感じたGrimesの魅力はもちろんしっかり健在です。

もちろんポップで軽快な作品も本作でも多く聴かれます。冒頭のダークな2曲に続いてあらわれる「Delete Forever」はカントリー風の軽快でさわやかなナンバーですし、「Violence」もハイトーンボイスで美しく聴かせる、タイトルとは裏腹な、ニューウェーヴ風のドリーミーなポップ。鳥の声をサンプリングし、爽やかにスタートする「IDORU」も、まさに前作までの彼女の王道とも言える、キュートでメロディアスなガールズポップに仕上がっています。

全体的には、ドリーミーな雰囲気でニューウェーブの色合いも強いポップナンバーも目立った本作。ラストを締めくくる「So Heavy I Fell Through the Earth」は、ドリーミーなエレクトロポップながらも、どこか不穏さを感じる、という、ある意味今回の作品を総括するような楽曲で締めくくり。トリにふさわしい楽曲に仕上がっていました。

そんな訳で今回もしっかりと期待に応える傑作アルバムになっていました。3作連続傑作アルバムを安定的にリリースしており、徐々に人気の面でも高まってきているようで、本作ではイギリスのナショナルチャートで見事ベスト10入りを果たしています。また、今年を代表する傑作アルバムになった感もある1枚。彼女の快進撃はまだまだ続きそうです。

評価:★★★★★

Grimes 過去の作品
Visions
Art Angels

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