エミランド、オープン!
Title:OPEN
Musician:EMILAND
2019年2月、16年間に及ぶ活動に幕を下ろした女性3人組ソウルバンド、ズクナシ。非常に力強いソウルやファンクミュージックを奏でつつ、ユーモラスな歌詞の楽曲も織り込み、とても素晴らしいステージを見せてくれるバンドでした。私はラストライブである渋谷CLUB QUATTROのステージを見に行ったのですが、その最後が非常に惜しまれるステージでした。ただ、その日のライブで、ボーカルの衣美は、同じくズクナシのドラマーである茜と新バンドを結成する旨を話していましたが、それが今回紹介するEMILAND。ボーカルが衣美で「EMILAND」とはかなりストレートなバンド名です。ズクナシ解散後、すぐにライブ活動をスタートしていたようですが、それから約1年。ついにデビューアルバムが完成となりました。その名も「OPEN」。まさにタイトル通り、EMILANDのオープンをつげるアルバムとなっています。
そのEMILAND、基本的にはズクナシと同じく、ブラックミュージックから強い影響を受けているバンド…なのですが、ズクナシに比べると、あきらかにファンクの要素が強く反映されています。いや、「要素が強く反映」なんて感じではありません。完全にどす黒いグルーヴを奏でる迫力満載のバンドに生まれ変わっています。
まさにそんなEMILANDオープンを高らかにつげる「ペタペタペタ」はグルーヴィーなベースラインとドラムスに耳を惹く、どファンクなナンバー。「ペタペタペタ」というユニークながらもシンプルな言葉使いはズクナシと同様ですが、バンドサウンドはあきらかにファンク寄りに進歩しています。続く「FEEL THE SOUL」も、へヴィーで疾走感あるギターが印象的なソウルでどす黒いグルーヴ感が迫力満載に耳に飛びこむソウルナンバー。一方で、夫婦間の音楽の好みという身近な題材をテーマとした歌詞もユニーク。この身近な題材を歌うといスタイルもズクナシから引き継いでいます。
続く「Not In Love」は一転、しんみりとしたバラードナンバーになっていますが、こちらもグルーヴィーなサウンドが流れるソウルなバラードナンバー。さらにミディアムファンクの「リスタート」は、新たにバンドをスタートさせた彼女の状況に重ね合わせるような歌詞になっています。
その後も「J.J.Funk」や「脳内エレキテル」のような分厚いサウンドのファンクチューンを聴かせるかと思えば、最後を締めくくる「ダイジョウブ」はしんみり衣美の歌声を聴かせるソウルバラードで締めくくり。彼女の力強くも優しい歌声が印象的な楽曲でのフィナーレとなりました。
スリーピースバンドだったズクナシと比べると、4人組になったことで明らかに音の分厚さも増し、まさサウンドの黒さ、ファンキーさもよりました感じがします。もっとソウル寄りだったズクナシに比べると、グッとファンク寄りとなったEMILANDに、衣美の本来の音楽的な嗜好も感じられます。もっとも、日常を題材にし、ユーモラスさも感じられる歌詞の世界や、衣美の力強い歌声といったズクナシの魅力はそのまま健在。そういう意味ではある意味、ズクナシの延長線上にいるようなバンドとも言えるかもしれません。ズクナシが好きならば絶対に気に入りそうなバンド。また、ソウル、ファンク好きなら必聴とも言えるでしょう。これからの活躍が楽しみです。
評価:★★★★★
ほかに聴いたアルバム
Official髭男dism one-man tour 2019@日本武道館/Official髭男dism
「Pretender」をはじめとして「I LOVE...」「宿命」「イエスタデイ」と軒並みロングヒットを記録し、まさに文字通り一世を風靡しているOfficial髭男dism。本作は昨年7月に実施した、自身初の日本武道館ワンマンライブの模様を収録したアルバム。昨年の7月といえば、「Pretender」がロングヒットを記録しているものの、これだけすごいことになる前のこと。ただ、流行の先端を行っている彼らのステージなだけに会場は熱気むんむん。さらにヒゲダンもそんな空気に全く負けることなく、武道館という大箱であるにも関わらず、それに動じることなく、しっかりと会場の空気を支配するステージを見せてくれています。いい意味で大物然とした感じすら彼ら。その人気ぶりも納得のライブ盤です。おそらく、今後、武道館クラスでもなかなかワンマンのチケットが取れなくなるんだろうなぁ。
評価:★★★★
Official髭男dism 過去の作品
エスカパレード
Traveler
TSUTAYA RENTAL SELECTION 2015-2018
This is music too/大橋トリオ
大橋トリオの新作は、自身の曲のみならずサポートメンバーからの提供曲を収録。その提供曲はエレクトロサウンドを取り入れた「Let us go」やアコギ1本でファンキーに聴かせる「quiet storm」など、いままでの大橋トリオの楽曲とは少々異なるタイプの曲が並び、新しい挑戦を感じさせます。が、このような新たなスタイルを模索しているあたり、若干大橋トリオとしての活動にマンネリ気味なものを感じているからではないでしょうか。実際、非常に良質的なポップソングを奏でつつ、いまひとつインパクトに欠けているような印象のあるアルバムが続いています。本作も、これ単独なら間違いなく傑作と言えるクオリティーながらも、いままでのアルバムと並べると、やはり全体的な印象は薄くなってしまう感も…。今回は新機軸を入れたのですが、このように彼なりにいろいろと模索していることは強く感じます。もう一歩、突き抜ててほしいところです。
評価:★★★★
大橋トリオ 過去の作品
A BIRD
I Got Rhythm?
NEWOLD
FACEBOOKII
L
R
FAKE BOOK III
White
plugged
MAGIC
大橋トリオ
PARODY
10(TEN)
Blue
STEREO
植物男子ベランダー ENDING SONGS
植物男子ベランダーSEASON2 ENDING SONGS
THUNDERBIRD
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