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2020年4月12日 (日)

強烈なトライバルのリズムがインパクトに

Title:Ancestral Recall
Musician:Christian Scott aTunde Adjuah

もう4月、1年も3分の1を過ぎながら恐縮ですが、本作も2019年に各種メディアで高い評価を受けたアルバムのうち、聴き漏らしていたアルバムを後追いで聴いた1枚。本作は2019年Music Magazine誌「ジャズ」部門で1位となったアルバムです。今回紹介するアルバムは、今、最も注目すべきジャズ・トランぺッターの一人、Chistian Scottによるアルバム。本作は、グラミー賞のベスト・コンテンポラリー・インストゥルメンタル・アルバム部門にノミネートされるなど、高い評価を受けています。ちなみにちょっと読みにくいミュージシャン名は「クリスチャン・スコット・アトゥンデ・アジュアー」と読むようです。

さて、そんな絶賛を受けている本作ですが、まず聴いてみるとジャズのアルバム、というよりもアフリカ音楽、といったイメージすら受ける作風かもしれません。アルバム冒頭の「Her Arrival」は軽快な手拍子とパーカッションによるポリリズムなサウンドに、トライバルな雰囲気を強く感じさせます。続く「I Own The Night」も強烈な打ち込みによるトライバルなリズムがまずは強いインパクトに。さらに「The Shared Stories of Rivals(KEITA)」に至っては、猛獣の咆哮がサンプリングされるなど、強烈なサウンドが強い印象を受ける作風に仕上がっています。

かと思えば後半、「Ritual(Rise of Chief Adjuah)」に登場するのは、日本の盆踊りや民謡を彷彿とさせるような鉦のリズム。「Before」で流れてくる太鼓と鉦のリズムにも、どこか和風なものを感じさせます。ここらへんが本当に日本の音楽から影響を受けたのかは不明ですが、「トライバル」という要素においてアルバムの中で共通項として扱われている内容となっています。

そんな迫力あるリズムの連続の中で聴こえてくるのが、クリスチャン・スコットのトランペットの音色。どの曲も非常にどこか悲しげで哀愁感の漂うトランペットが大きなインパクトを感じさせます。トライバルな雰囲気の漂うリズムとは対照的に非常に洗練されたサウンドになっているのが印象的で、土着的なリズムが強烈に流れてくる中だからこそ、彼のトランペットの音色がその中でくっきりと浮かび上がってくるような印象を受けました。

また、トライバルなサウンドだけではなく、「Prophesy」ではメタリックなエレクトロサウンドの中で、トランペットの音色が流れ出したり、「Diviner(Devan)」でも優しく奏でられるフルートの音色が強い印象を与えたりと、トライバル一辺倒ではない楽曲のバリエーションも大きな魅力に。様々な要素の詰め込まれたアルバムになっており、彼のジャズに捕らわれないサウンドに対する強い意欲を感じさせます。Music Magazine誌の年間1位やグラミー賞ノミネートも納得の傑作アルバム。ジャズという範囲に限らず、広いリスナー層を魅了しそうな1枚です。

評価:★★★★★


ほかに聴いたアルバム

Circles/Mac Miller

2018年8月にわずか26歳という若さでこの世を去ったラッパーのラスト作。ただ、HIP HOPという感よりも、エレクトロサウンドをバックに優しい雰囲気のポップスを静かに聴かせるローファイ気味のアルバムといった印象が強く、ラップを聴かせるのは数曲のみ。そういう意味ではポップスアルバムといった印象を強く受ける作品に。ボーカルの渋さといい、いい意味で老成しているような感もあるアルバム。これが最後というのは非常に残念です。

評価:★★★★★

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