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2020年4月 3日 (金)

非常に自由度の高い音楽性が魅力

Title:In The Footsteps
Musician:Janusz Prusinowski Kompania

実はまだ細々と続いています。2019年に各種メディアで取り上げられたベストアルバムのうち聴きのがした作品を後追いで聴いたアルバム。今回はMusic Magazine誌ワールドミュージック部門で5位を獲得したアルバム。今回紹介するミュージシャンは、ポーランドの農村で奏でられる伝統音楽「マズルカ」を現代によみがえらせようとするグループ、Janusz Prusinowski Kompania(ヤヌシュ・プルシノフスキ・コンパニャ と読むそうです)。彼らが奏でるマズルカという音楽は、かのショパンにも影響を与えることでも知られており、今、このポーランドのワルシャワでは、このマズルカを現代によみがえらせようとするマズルカ・リバイバルが起きているとか。彼らはその代表的なミュージシャンだそうです。

CDを見る限りだと、彼らは4人組のグループ。用いている楽器もフィドル、アコーディオン、バイオリン、コントラバス、フルート、サックス、タンバリン、トランペットなど多種多少な楽器を用いているようです。そんな楽器を用いたポーランドの農村の音楽・・・というと、牧歌的で楽しく、かつ明るい音楽を想像できるかもしれません。実際にバイオリンが鳴り響く中、フルートが優しい音色を奏でる「Stepy」やトロンボーンやフィドルが明るいサウンドを奏でる「Powolniak」、ちょっと妖艶さを感じさせつつ、アコーディオンで明るい音色を奏でる、バルカン音楽の色が強い「Dobrzelin」など、いかにもヨーロッパの農村で奏でられそうな、牧歌的で明るいナンバーも少なくありませんし、そんな陽気なナンバーに聴いていてワクワクもさせられます。

しかし、アルバム全体としては決してそんな牧歌的で陽気なサウンド、という単純なアルバムにはなっていません。そもそもアルバムの1曲目「Ober Piotra Gacy」からして、フリーキーなバイオリンにポリリズム的なドラムが重なるという、かなり挑戦的な楽曲からスタート。さらに「Rydz」に至っては、ホーンセッションやフィドルの音が自由に絡み合う、ともすれば「サイケ」という言葉がピッタリと来るような楽曲に。「Rytka」もバイオリンにドラムの音が重なり複雑に聴かせるサウンドがループするという楽曲に。どこかサイケでトランシーな雰囲気を感じさせるような曲に仕上がっています。

全体的にはそれぞれの楽器が気ままに自身の音を奏でつつ、お互いの音を絡ませ合っていく、非常に自由度の高い音楽性を感じさせます。サイケやトランシーな要素を感じるアグレッシブで挑戦的な作品も少なくありませんし、「U jelenia rogi」ではコール&レスポンスとポリリズム的なパーカッションと、アフリカ音楽的な要素を感じさせたり、前述の通り、バルカン音楽の影響を感じたり、かと思えば「Tu bede lulat」ではアカペラによる独唱が流れてきたりと、ジャンル的にも高い自由度を感じさせます。サウンドを主体で聴かせるかと思えば、「Deszczowy」のような哀愁感たっぷりのメロディーを聴かせる歌モノもあったり、「Rubin」のような妖艶さたっぷりの楽曲もあったりと、まさに自由自在。様々なタイプの曲が次々と流れてきて、最後まで飽きさせない内容となっていました。

年間ベストクラスも納得の非常に優れた傑作アルバム。ちなみに昨年には来日公演も行われていたとか。これ、ライブで聴いたら楽しいだろうなぁ。見逃してしまったのは非常に悔やまれます。ワールドミュージック好きはもちろん、サイケな要素にロックファン、哀愁感あるメロや楽しい楽曲にはポップスファンも楽しめそうな、そんな1枚でした。

評価:★★★★★

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