自由度高いポップソングが魅力
Title:R.Y.C.
Musician:Mura Masa
今日紹介するミュージシャンはイギリスとフランスの中間地点に浮かぶ島、ガーンジー島出身という音楽プロデューサーでDJでもある、Mura MasaことAlex Crossanの2枚目となるアルバム。2年前にリリースしたデビューアルバム「Mura Masa」はグラミー賞の最優秀ダンス/エレクトロニックアルバムにノミネートされるなど高い評価を受け、一躍注目を集めるミュージシャンとなりました。日本人にとってはなじみのある「Mura Masa」という名前はもちろん、刀工の村正から命名された名前。単純に響きがよかったというだけの話らしいのですが、ポケモンや宮崎アニメを見て育ったという、日本に親しみの感情を持っているそうで、やはりそういう話を聴くと、純粋にうれしくなってきます。
さて、そんな彼の2作目になるアルバムですが、まずアルバム全体について言えば非常にシンプルでポップ。純粋に聴いていて楽しくなってくるような作品になっていました。基本的にはエレクトロサウンドをふんだんに取り入れたポップソングがメインになっているのですが、大きな特徴として非常にバリエーションがあり自由度の高いポップチューンという点。冒頭2曲「Raw Youth Collage」「No Hope Generation」は打ち込みのサウンドを入れつつも、ギターロックの色合いも強いポップチューンになっていますし、「vicarious living anthem」も打ち込みのサウンドを入れつつ、ギターを前面にフューチャーした、インディー系のギターロックバンドが奏でそうなポップチューンとなっており、まずはギターポップの色合いの強い曲が目立ちます。
かと思えば「I Don't Think I Can Do This Again」は女性ボーカルで爽やかなフォーキーなナンバーかと思えば、途中でビッグビートばりのエレクトロサウンドが飛び出してくるというユニークな展開。slowthaiをフューチャーした「Deal Wiv It」は軽快なエレクトロビートの飛び出すHIP HOPナンバー。「Today」はアコースティック風のギターをバックにしんみり聴かせるフォーキーなナンバー。かと思えば事実上のラストチューンである「Teenage Headache Dreams」はニューウェーヴ風のエレクトロナンバーに仕上げてきています。
全体的に自由度の高いポップチューンが並んでおり、ある意味、バラバラな作風がゆえに若干つかみどころのない部分も事実。統一感に欠けるという点はマイナスポイントと言えるかもしれません。ただ、どの曲も軽快でウキウキするようなポップチューンが並んでおり、作っているMura Masa自身も純粋に音楽を楽しんでいるんだろうなぁ、ということを強く感じるアルバムになっていました。
ちなみにデビューアルバムである前作「Mura Masa」もデーモン・アルバーンなど豪華なゲストが話題となりましたが、本作も豪華なゲスト陣がズラリ。前述のslowthaiをはじめ、「Today」ではTirzah、さらには「Teenage Headache Dreams」ではWolf AliceのEllie Rowsellが参加。このゲスト勢ゆえにさらにアルバムはバラバラ感を覚えるのですが、ただ、アルバムには大きなインパクトも与えています。
彼は今年のフジロックにも参加が決定しており、日本でも今後、さらなる注目を集めそう。日本人にとっても聴きやすいポップソングを奏でてくれていますし、これからさらに注目が集まりそうです。
評価:★★★★★
ほかに聴いたアルバム
2019 Grammy Nominees
毎年恒例のグラミー賞ノミネート作品を集めたコンピレーションアルバム。毎年、世界の(厳密には「アメリカの」ですが)音楽動向を知るのはうってつけのコンピレーション。本年は特にポップに軽快にまとめたJanelle Monae「Make Me Feel」やトライバルなリズムのラップを聴かせるCardi B「I Like It」の冒頭2曲が特に秀逸。トラップの作品が目立つのも2019年ならではといった感じでしょうか。全体的にHIP HOP勢やアメリカならではのカントリー勢が目立つ一方、ロック勢はこれといった作品がないのも、今の時代の趨勢を感じてしまいます…。全体的には豊作といった感じではないのですが、2年連続不作が続いた2017年、2018年に比べると、若干盛り返してきた感も。
評価:★★★★
Grammy Nominees 過去の作品
2011 GRAMMY NOMINEES
2012 GRAMMY NOMINEES
2013 GRAMMY NOMINEES
2014 GRAMMY NOMINEES
2015 GRAMMY NOMINEES
2016 GRAMMY NOMINEES
2017 GRAMMY NOMINEES
2018 GRAMMY NOMINEES
Man Alive!/King Krule
前作「The Ooz」も大きな注目を集めたイギリスの男性シンガーソングライターによる約2年ぶりの新譜。ローファイ気味なギターサウンドで静かに聴かせつつ、歌詞をかみしめるような力強さのあるボーカルスタイルで淡々と聴かせるスタイル。全体的に派手な作品はなく、メロディーラインにもわかりやすさは皆無ながらも、妙に耳に残るような楽曲に。ちょっと癖は感じられるミュージシャンなのですが、この癖が後をひく、そんなアルバムでした。
評価:★★★★
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