ティーンのあるあるを、ガレージサウンドにのせて
Title:ぼんぼん花ーーー火
Musician:ぼんぼん花ーーー火
え?これ、ミュージシャンの名前なの??と一度聴いたら忘れられないインパクトを持っている「ぼんぼん花ーーー火」。ここでも何度か取り上げているシンガーソングライター、町あかりが、ティーンを勝手に応援するために始めた新プロジェクト。2014年に4人組のガールズバンドとしてスタートしたのですが、その後、様々な変遷を経て、現在はギターボーカルのファイアーロケット・アカリなるミュージシャンと、現役高校1年生のドラマー、こころの2人組からなるバンド。町あかりは作詞作曲及びプロデュース、さらには衣装やジャケットデザインを担当し、バンドには、彼女に背格好、見た目、声がそっくりなファイアーロケット・アカリが参加し、町あかり本人はバンドには参加していない体となっています(笑)。
基本的には作詞作曲を手掛けていることもあり、楽曲自体は町あかりの音楽そのまんまな感じ。歌謡曲からの影響も強く感じる作風になっており、特に「宿題やったけどウチに忘れました」や「関係者以外立ち入り禁止」など、こぶしを利かせたボーカルスタイルなども、歌謡曲っぽさを強く感じられる曲になっています。また、「寝ても眠い」など、一度聴いたら耳に残って忘れられなくなるような、妙なインパクトを持ったフレーズを繰り返すスタイルも町あかりと同様。とにかく妙なインパクトを持った曲が並んでいます。
ただ、町あかりのソロとは少々異なるのが歌詞の題材。「ティーンを勝手に応援する」ということもあって、ネタは「学生あるある」的なものがほとんどとなっています。もっとも、この日常生活のふとした「あるある」ネタをユニークに切り取るスタイルは町あかりの楽曲と同様。また、インパクトあるひとつのネタを曲全体に引っ張って行っているというスタイルも町あかりと同じ。そのため、視点はユニークでインパクトはあるものの、歌で歌っている内容は楽曲のタイトルの以上でも以下でもなく、ちょっと厳しいことを言ってしまうと、歌詞の「浅さ」が気になってしまいました。これは町あかりの曲のマイナスポイントとして以前から感じていたのですが、ぼんぼん花ーーー火でも、その傾向は同様でした。
またティーンの日常を描いている…ということですが、若干、これ、本当にティーンのあるあるなの??と思ってしまうような歌詞も少なくありませんでした。失礼ながら既にティーンではない町あかりが想像で描いているような印象も……。せっかく現役高校生がバンドとして参加しているのですから、歌詞のネタはこころに出してもらい、それを町あかりがインパクトある歌詞の形にしていく、といった感じの方がよかったようにも思われました。
一方で町あかりのソロと大きく異なっていたのがそのバンドサウンドでした。ギターボーカル+ドラムスという2ピースのスタイルなのですが、ノイジーなギターとドラムスのみというスカスカなガレージサウンド。いわばThe White Stripsを彷彿とさせるようなスタイルで、シンプルながらも非常にカッコいいガレージロックを聴かせてくれています。これが歌謡曲的なメロディーラインとはミスマッチなのですが、このミスマッチぶりがまたユニークで、ぼんぼん花ーーー火の大きな魅力に感じます。
そんな訳で、町あかりの魅力と弱点がそのまま反映された今回のバンド。また一方では2ピースのガレージロックという、町あかりのソロでは聴くことのできなかったスタイルを聴かせてくれて、それがこのバンドの大きな魅力であり個性にも感じました。とにかくインパクト満点ですし、歌謡曲バリのメロディーも一度聴いたら忘れらないような曲も多いため、町あかりが好きな人はもちろん、ポップス好きなら聴いて損のないアルバムだと思います。今後は町あかりのソロと並行して、継続的に活動を続けるのでしょうか。町あかりのソロともども、期待したいところです。
評価:★★★★
ほかに聴いたアルバム
ミラクルミーE.P./あっこゴリラ
かなり強烈な女性の本音を綴ったメッセージ性強いラップを歌うあっこゴリラの5曲入りのEP盤。本作も強烈なメッセージ性の強い楽曲が並んでいます。彼女のラップにはかなりの迫力があるのですが、一方、若干肝心のメッセージが耳に入ってこない部分も。メッセージの部分のリリックにもうちょっと工夫をしてラップを通じて上手く耳に入ってくるようなスタイルにした方がよりおもしろいように感じるのですが・・・。
評価:★★★★
あっこゴリラ 過去の作品
GRRRLISM
Smile/Eve
ニコニコ動画の「歌い手」やボカロPとして人気を博した男性シンガーソングライターによる新作。前作「おとぎ」の時は、いかにも米津玄師の2匹目のドジョウを狙うようなプロモーション活動が目立ちましたが、今回はさすがにちょっと落ち着いた感じに。全体的にアップテンポな曲調、ハイトーン気味なボイスといかにも「ボカロP出身のシンガー」のようなスタイルながらも、早口でまくしあげるタイプの曲は減り、一般性は前作よりも増した感じが。マイナーコード主体でダウナーな雰囲気の楽曲がメイン。現実の中でどこか違和感を覚えるような主人公が登場する世界観も確立しています。前作から一歩成長も感じられた作品でした。
評価:★★★★
Eve 過去の作品
おとぎ
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