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2020年4月20日 (月)

軽快なポップチューンにユーモアセンスも

Title:Devil
Musician:ビッケブランカ

稀代のポップスメイカーとして支持を伸ばしている男性シンガーソングライター、ビッケブランカのニューアルバムのタイトルはなんと「Devil」!かなり怪しげな雰囲気のジャケット写真がまずは目に飛び込んでくる本作は、いままでのビッケブランカのような明るいポップというイメージとは大きく異なります。そして、そんなアルバムの1曲目、タイトルチューン「Devil」は不気味なサウンドの中で悪魔の高笑いが響く、ダークなスタート・・・・・・と思いきや、隣人から抗議のドアノックが入るというオチが(笑)。うん、ちゃんと彼らしい「ポップ」なアルバムスタートとなっています。

そしてそんな今回のアルバムの聴きどころは2曲目「Shekebon!」と3曲目「Ca Va?」でしょう。どちらもタイトルの「シェケボン」「サバー」というユニークな言葉の響きをリズムにのせたリズミカルなチューン。あえて「美メロ系シンガー」という枠組みに捕らわれず、楽曲にバラエティーを持たせた挑戦ということらしいのですが、まさにこのユーモラスでインパクトある楽曲がゆえにアルバムの中の核になっている楽曲。特に「Ca Va?」(フランス語で「元気?」という意味らしいです)は、最初はピアノ弾き語りでフランス語の歌詞の曲をしんみり歌うスタートから、いきなりダンスチューンに変化する展開が非常にユニーク。言葉の響きをユーモラスにリズミカルに聴かせるというスタイルに、ちょっとSOUL'd OUTを彷彿としたり。

もちろん、そんなビッケブランカの新たな挑戦というスタイルだけではなく、彼らしい美メロを聴かせるナンバーもちゃんと聴かせてくれます。特に秀逸だったのがこのユーモラスな2曲に続く「TARA」。インディーズ時代の曲らしいのですが、ファルセットを上手く使用して切ないメロディーを聴かせる美メロチューン。続く「白熊」も、同じくファルセットボイスを上手くつかいつつ、軽快でちょっと切ないメロディーをしっかりと聴かせるポップチューンに仕上げています。

その後もダイナミックなピアノとバンドサウンドで力強くロッキンに聴かせる「Black Catcher」、分厚いシンセをバックに哀愁感あるメロディーを聴かせるエレクトロチューン「Save This Love」、英語詞でしんみりメロウに聴かせる洋楽テイストも強い「Heal Me」など、「Devil」というタイトルの影響があるのかないのか、後半は比較的「暗い」雰囲気の楽曲が続きますが、もちろんビッケブランカのたぐいまれなるメロディーセンスが光る曲ばかりとなっています。

そして最後を締めくくるのがピアノやストリングスを取り入れたスケール感あるサウンドに伸びやかで切ないメロを歌い上げる、まるで大団円のような「Avalanche」で締めくくり。まさに最後を締めくくるにふさわしいナンバーをこれでもかというほど聴かせ、リスナーとしては満足感たっぷりにアルバムを聴き終えることの出来る作品となっていました。

毎作、個人的に壺にはまりまくりなメロディアスなポップチューンで楽しませてくれるビッケブランカ。今回もまた、そんな期待にしっかりと応えてくれる心地よいポップチューンが続く傑作アルバムとなっていたと思います。「Ca Va?」などインパクト満点なだけに、そろそろ楽曲単位でブレイクしちゃいそうな予感もしないではないのですが…間違いなく、これからの日本のポップシーンを牽引するだけの実力を持ったシンガーなだけに、もっともっといろいろな人に聴いて欲しい!文句なしにお勧めの1枚です。

評価:★★★★★

ビッケブランカ 過去の作品
FEARLESS
wizard


ほかに聴いたアルバム

WE DO/いきものがかり

2017年の活動休止後、約1年10か月の活動休止期間を経て2018年11月に活動を再開したいきものがかり。その後、配信でのシングルなどの活動が続いていましたが、ようやく約5年ぶりとなるニューアルバムがリリースされました。そんな彼らの新作は、いきものがかりらしさを感じるポップチューンが並ぶ中、スケール感も感じられ、大物バンド然とした雰囲気やある種の余裕すら感じます。ただ一方で今回のアルバムは似たようなタイプの曲も多く、勢いも失速気味。正直言って、彼らのアルバムとしては少々物足りなさを感じる出来になっていたように感じました。

むしろ今回のアルバムで予想以上によかったのは初回盤についてくるライブ盤。2019年5月にZepp Divercityで行われたファンクラブツアーの音源なのですが、おなじみのヒット曲中心のセレクトで、とにかく盛り上がるステージになっており、あれ、いきものがかりのライブって、こんなに楽しいんだ?と感じさせるステージに。正直、ほとんど興味はなかったのですが、一度見てみたいな、そう感じさせるには十分のステージだったように感じます。こちらだけでも聴いて損のないアルバムに。本編は正直、評価3つレベルだったのですが、ライブ盤がよかったので以下の評価に。

評価:★★★★

いきものがかり 過去の作品
ライフアルバム
My Song Your Song
ハジマリノウタ
いきものばかり
NEWTRAL
バラー丼
I
FUN! FUN! FANFARE!
超いきものばかり~てんねん記念メンバーズBESTセレクション~

CONTRALTO/中島みゆき

中島みゆき約2年ぶりとなるニューアルバム。キャッチコピーが「中島みゆきが中島みゆきを歌う」というものだったり「自画像」という曲が収録されたいたりと、あらためて彼女自身を見つめ直したアルバムということになるのでしょうか。ただ、全体的にはこれといったインパクトある曲も乏しく、中島みゆきらしさはきちんと健在ながらも、全体的には地味さを感じてしまうアルバム。もっとも、そんな中でも「終り初物」「おはよう」のような、しっかりと耳に残るような歌詞を書いてくるあたり、彼女の底力を感じさせるのですが。

評価:★★★★

中島みゆき 過去の作品
DRAMA!
真夜中の動物園
荒野より
常夜灯
十二単~Singles4~
問題集
組曲(Suite)

中島みゆき・21世紀ベストセレクション『前途』
中島みゆきConcert「一会」(いちえ)2015~2016-LIVE SELECTION-

相聞
中島みゆき ライブ リクエスト -歌旅・縁会・一会-

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