懐かしいミュージシャンたち
本日は最近読んだ音楽関連の本の紹介です。アラフォーからアラフィフ世代には感涙モノの懐かしいアルバムを紹介する1冊が発売されました。
レコードコレクターの増刊としてリリースされているアルバム・セレクション・シリーズの最新作。今回は「ジャパニーズ・ロック80's」と名付け、80年代から90年代初頭のバンドブームの中で出てきたミュージシャンたちのアルバムを取り上げているアルバムカタログ本になっています。
今回のこの本で興味深いのはそのセレクトしているミュージシャンたち。80年代後半から90年代初頭というと、日本ではバンドブームと言われ、数々のバンドが誕生しブレイクしました。ただ一方でそういうバンドブームの中で出てきたミュージシャンたちに対する音楽ファンからの評価は決して高くなく、「音楽」的な側面から積極的にそういったミュージシャンたちを取り上げることはありませんでしたし、正直今でも、音楽的に高い評価を受けているのはブルーハーツ、ユニコーン、せいぜいBOOWY程度といった感じでしょう。
しかしこの本は一般的な評価の高くない80年代のバンドブームの中で出てきたミュージシャンたちをあえて取り上げて再評価しています。特に第1章にあたる「ARTIST PICKUP」で紹介されているミュージシャンでは、いままでこのタイプの本にあまり取り上げられないようなミュージシャンを大きく取り扱っています。TMネットワークやPRINCESS PRINCESSあたりは、この手の本で紹介されているのをはじめてみたような気すらします。さらにもうひとつユニークなのは、そういったバンドを、「売上」や「社会現象」という側面から取り上げるのではなく、徹底的に音楽の側面から評価している点。個人的にも中学生の頃に何度も聴いた懐かしいアルバムを、音楽的に分析している記事は非常に興味深く読むことが出来ました。
そういう意味で冒頭に書いた通り、80年代バンドブームをリアルタイムに体験してきたアラフォー、アラフィフ世代にとっては非常に懐かしく、自分の学生時代にトリップしたような感覚で読める1冊だったと思います。私のような40代半ばの世代にとっては、ここらへんのバンドブームは最後の最後を知っている世代。懐かしく読むことが出来、かつあらためてあの時代のアルバムを聴き直してみたいな、と強く感じたカタログガイドでした。
ただ一方で、結構癖の強い側面もあるガイド本だったようにも思います。「Introduction」に書かれている通り、あえて定番や有名作をはずしている部分もあるため、違和感のあるセレクトも少なくありません。例えば渡辺美里の欄では代表作の「ribbon」ではなく、正直、ファンの間ではあまり評価の高くない「Breath」と「Flower Bed」が取り上げられています。確かにこの時期の美里のアルバムにははずれはないのですが…彼女の本質が出ているのはやはり「ribbon」じゃないかなぁ…。
取り上げているミュージシャンも「80年代型ロックに特化」「ベテランやインディーズの作品は極力抑え」と書かれているのですが、その割には80年代を代表するような尾崎豊は「ARTIST PICKUP」では取り上げられていませんし、後半になればなるほど、比較的サブカル系、インディー系のミュージシャンが目立ったような気もします。一方ではいかにも80年代的なたまは取り上げられていません。監修をつとまえた池上尚志の好みがかなり反映されているようにも感じました。
そのため、全くの初心者がこの本を参考に80年代ロックを聴き始める…にはちょっと注意が必要な感じもします。ただ本人曰く「これが80年代のジャパニーズ・ロックのニュー・スタンダードだ!というくらいの気持ちで選んでいる」という点はやはり買うべき点が多いように思われます。アラフォー・アラフィフ世代、BOOWYやTM、渡辺美里などにはまったことあるおじさん、おばさんたちは要チェックの1冊。この時代のミュージシャンは今のミュージシャンにも大きな影響を与えているので、20代、30代の方も、是非。これを機に、80年代ロックの再評価が進むのでしょうか。
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