« 2020年3月 | トップページ | 2020年5月 »

2020年4月

2020年4月30日 (木)

ジャニーズ事務所退社後もがんばっているようです。

今週のHot Albums

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

キャリア初のベストアルバムが1位獲得です。

今週1位を獲得したのは赤西仁のベストアルバム「OUR BEST」。キャリア初となるベストアルバムで、CD販売数及びダウンロード数で1位、PCによるCD読取数13位で総合順位も1位を獲得しました。ジャニーズ事務所退社後、いろいろと世間を騒がせてきた彼ですが、音楽の面ではしっかりとキャリアをつみ、一定以上の人気を確保しているようです。本作では、KAT-TUNの曲を含むジャニーズ時代の曲も再録音という形で収録。そこはOKなんだ…。オリコン週間アルバムランキングでは初動売上2万5千枚で1位獲得。前作「THANK YOU」の2万枚(2位)よりアップしています。

2位はJUJUのベストアルバム「YOUR STORY」が先週と変わらず2位をキープ。CD販売数は3位でしたが、ダウンロード数5位、PCによるCD読取数で4位を記録し、総合順位も2位となりました。そして3位にはM.S.S.Project「M.S.S.Priod」がランクイン。ニコニコ動画やYou Tubeにゲーム実況動画などをアップしていた4人組によるアルバム。CD販売数は2位でしたが、PCによるCD読取数6位。配信は行っていないようで、ダウンロード数は対象外となり、総合順位は3位に。オリコンでは初動1万4千枚で2位初登場。前作「M.S.S.Phoenix」(5位)から横ばい。

続いて4位以下の初登場盤です。まず5位にKOTOKO「KOTOKO's GAME SONG COMPLETE BOX『The Bible』」がランクイン。以前はI'veのボーカリストとして活躍し、主にゲームの主題歌を中心として活動していた女性シンガー。本作はその彼女のゲームソングをまとめた10枚組のボックス盤。通常盤でも16,500円という値段ながらもCD販売数4位、PCによるCD読取数15位で総合順位も4位に。オリコンでも初動売上1万枚で4位初登場。直近のオリジナルアルバム「tears cyclone -醒-」の2千枚(26位)から大きくアップしています。

6位にはHi-STANDARD「Live at YOKOHAMA ARENA 20181222」がランクイン。先日、4月22日にハイスタも所属するレーベルPIZZA OF DEATH RECORDSのアルバムがサブスク解禁となり、ハイスタのアルバムもサブスクで聴けるようになりました。さらにそんな中でサブスクでリリースされたのは彼ら初となるライブアルバムである本作。配信のみのリリースながらダウンロード数で2位を獲得し、見事ベスト10入りを果たしています。

9位初登場は「『MANKAI STAGE『A3!』~AUTUMN 2020~』MUSIC Collection」。イケメン役者育成ゲーム「A3!」の舞台化作品「MANKAI STAGE『A3!』~AUTUMN 2020~」のボーカル曲とBGMを収録したアルバム。CD販売数7位、ダウンロード数9位、PCによるCD読取数40位で総合順位は9位に。オリコンでは初動売上4千枚で8位初登場。同シリーズの前作「『MANKAI STAGE『A3!』~SUMMER 2019~』MUSIC Collection」(11位)から横バイ。

初登場最後は10位緑黄色社会「SINGALONG」。名古屋出身の男女混合4人組バンドで、本作が初のフルアルバム。CDリリースに先駆けての先行配信で、ダウンロード数3位のみで見事ベスト10入りです。ちなみにCDリリースも予定されているようですが、現時点で発売日は未定の模様。こういう形のリリースも珍しいですが、CDリリースが延期されているのはひょっとしたらコロナの影響でしょうか?

今週の初登場盤は以上。一方ロングヒット組ではまずOfficial髭男dism「Traveler」は先週の5位から4位に再びアップ。PCによるCD読取数は今週も1位を維持しています。King Gnu「CEREMONY」は6位から7位にダウン。ただ、PCによるCD読取数はヒゲダンに続く2位をキープしており、この2枚のヒットはまだまだ続きそうです。

今週のHot Albumsは以上。チャート評はまた来週の水曜日に!

| | コメント (2)

2020年4月29日 (水)

ロングヒットが目立つ中、1位は・・・

今週のHot100

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

相変わらずロングヒットの人気が続く中、1位はAKB系が獲得しました。

今週1位を獲得したのは博多を拠点に活動するAKB48の姉妹グループ、HKT48「3-2」。CD販売数1位。ほか、PCによるCD読取数12位、Twitterつぶやき数13位以外はダウンロード数もストリーミング数もチャート対象ながらもランク圏外になっていましたが、総合順位では1位獲得しています。オリコン週間シングルランキングでは初動売上16万1千枚で1位獲得。前作「意志」の19万7千枚(1位)からダウンしています。

そして2位にはOfficial髭男dism「I LOVE...」が、3位には「Pretender」が、先週までの1、2フィニッシュからそれぞれワンランクダウンとなっていますが、それでもベスト3に今週も2曲並びました。ストリーミング数、You Tube再生回数は今週も1位2位と並んでランクインしており、この新型コロナの影響で外出もままならない中、多くの人たちがこの2曲を家で聴いているということでしょう。

さらに今週は「宿命」が9位から7位にアップ。「パラボラ」は6位から9位にダウンしたものの、「イエスタデイ」が先週の11位から10位にアップし、3週ぶりのベスト10返り咲き。その結果、なんと今週はOfficial髭男dismがベスト10のうち5曲同時にランクインしてくるという驚異的な結果となっています。

続いて4位以下の初登場曲です。6位にはボカロPとして活躍していたn-bunaが、女性ボーカリストsuisと結成した2人組バンドヨルシカ「花に亡霊」がランクイン。6月公開予定のアニメ映画「泣きたい私は猫をかぶる」主題歌。配信のみのリリースですが、ダウンロード数3位、ラジオオンエア数1位を獲得。ほか、ストリーミング数26位、Twitterつぶやき数23位、You Tube再生回数19位で、総合順位でベスト10入りしてきています。

8位にはYOASOBI「夜に駆ける」がランクイン。こちらもボカロPとして活躍していたAyaseと女性ボーカリストikuraによるユニット。ソニー・ミュージックエンタテイメントが運営する小説・イラスト投稿サイト「monogatary.com」から誕生した小説を音楽・映像で具現化するユニットだそうです。本作は3月23日付チャートでストリーミング数が91位にランクインして以来、徐々にランクをあがり続け、今週、ストリーミング数及びYou Tube再生回数共に8位にランクインし、ベスト10入りを記録しました。ロングヒットの末のベスト10入り、かつストリーミング数とYou Tube再生回数が上位に来るスタイル(=多くの人が繰り返し聴いているヒット)のため、今後のロングヒットが予想できます。さて、これからどのような動きを見せるのでしょうか。

一方、ロングヒット曲は、まず4位にLiSA「紅蓮華」が先週と同じ順位をキープ。今週、ついにダウンロード数で1位を獲得。ほか、ストリーミング数4位、You Tube再生回数9位と先週と同順位をキープしており、まだまだロングヒットが続きそうです。

King Gnu「白日」も今週5位と先週から変わらず。こちらもダウンロード数は4位から5位にダウンしてしまったもののストリーミング数3位、You Tube再生回数4位は先週から変わらず。まだまだ根強い人気を感じさせます。

今週のHot100は以上。明日はHot Albums!

| | コメント (0)

2020年4月28日 (火)

懐かしいポップチューンの中に実験性も

Title:Heavy Light
Musician:U.S.Girls

今回紹介するのはU.S.Girlsのニューアルバム。U.S.Girlsというとアメリカを拠点とするガールズグループ…というイメージを受けるかもしれませんが、アメリカはシカゴ出身で、現在はトロントを中心に活動を行う女性ミュージシャンMeg Remyによるソロプロジェクト。このU.S.Girls、その名前の親しみやすさとは裏腹に、英語版Wikipediaの記事によると"experimental pop"=実験ポップと書かれています。そうやって聴くと、人によっては身構えてしまうかもしれません。

しかし、そんな中、まずは聴こえてくる「4 American Dollars」はちょっと懐かしさを感じられる至ってキュートなポップス。実験ポップというイメージとは大きく異なるポップな曲調にまずはちょっとビックリするかもしれません。さらに続く「Overtime」は昔ながらのサスペンスドラマでも流れてきそうな、スリリングでレトロなポップチューン。こちらもある種、耳なじみのあるような曲調に強く惹かれる楽曲に仕上がっています。さらに続く「IOU」はゆっくりと歌い上げるソウルなバラードナンバー。こちらも今どきのR&Bというよりも、70年代あたりのなつかしさを感じさせる、ポップ色の強いソウルナンバーに仕上げられています。

この冒頭3曲はある意味、このアルバムの方向性を形づけるものとなっており、基本的にそれ以降も「Born to Love」「And Yet It Moves/Y Se Mueve」「Denise,Don't Wait」などレトロ色の強いポップソング、「Woodstock '99」など感情たっぷりに歌い上げるソウルからの影響も感じるバラードナンバーなど、ソウルミュージックからの影響も強く感じつつ、懐かしさと人なつっこさを感じさせるポップチューンが続きます。特に「Denise,Don't Wait」のサウンドなどは、ともすれば60年代あたりを彷彿とさせるような懐かしさを感じさせるポップチューンに仕上がっており、思わずしんみり聴き入ってしまいます。

ただ、そんな人なつっこいポップソングばかりかと思いきや、要所要所で"experimental pop"らしい幅広い音楽性を感じることもできます。例えば「And Yet It Moves/Y Se Mueve」などはラテンのリズムが入り、ユニークなサウンドに。まあ、このラテンのサウンドも含めて懐かしいレトロさを感じることは出来るのですが…。また「State House(It's A Man's World)」などもレトロなポップチューンかと思いきや、後半、ノイズが入ってきて予想外なサイケの展開に。ラストを締めくくる「Red Ford Radio」もヘヴィーでメタリックなリズムが鳴り響くナンバーとなっており、決して「人なつっこいポップソング」など一言で締めくくれないような構成を感じさせます。

この幅広く、実験的な実験的な要素も強く含むような音楽性はいかにも宅録ならでは、といった印象も受けます。最後に実験的な曲を配しているだけに、聴き終わった後はその「実験的」な要素が耳に残るアルバムかもしれません。ただ、アルバム全体としてはやはり懐かしくもポップな楽曲が並んでおり、いい意味で非常に聴きやすいポップアルバムになっていたと思います。ポップソング好きにはおそらく楽しめるであろう傑作アルバム。懐かしく、暖かい気分にもなる1枚です。

評価:★★★★★


ほかに聴いたアルバム

根本要(スターダスト☆レビュー)&佐橋佳幸プレゼンツ「本日のおすすめ」

スターダスト☆レビューの根本要と、数多くのミュージシャンへのサポートなどで活躍するギタリスト、佐橋佳幸によるユニット「本日のおすすめ」。2人の好きな洋楽をカバーするためのユニットだそうで、昨年はそんな2人のライブツアーも行われたようですが、本作はそのユニットがカバーした曲を集めたコンピレーションアルバム。2人のカバーを収録したアルバムではなく原曲の方が収録されています。念のため。

楽曲は70年代から80年代のAORやいわゆる「産業ロック」と言われるような楽曲がメイン。全体的な楽曲の嗜好性はわかりやすい感じで、取り上げられている楽曲はメロディアスなポップがメインで、洋楽への入りとしては日本人にとっても比較的入りやすい、耳なじみやすい楽曲がメインとなっています。有名曲も多く、洋楽コンピレーションとしても楽しめる1枚に。ただ、次は「本日のおすすめ」のカバー自体を聴いてみたいなぁ。

評価:★★★★

YHLQMDLG/Bad Bunny

ジャスティン・ビーバーやビヨンセなどとのコラボも果たし、今、もっとも注目を集めているレゲトンミュージシャン、Bad Bunnyの新作。特に前半は、かなり軽快で楽しい雰囲気のリズミカルなラップが続き、ポップで聴きやすい曲が並びます。一方後半は、哀しげな雰囲気のトラップミュージックが続く構成に。彼自身、ラテン・トラップの牽引者と呼ばれているようですが、ところどころにレゲエなどの要素を加えているのが特徴的。ただレゲエとトラップの相性はよく、テンポのよい明るい雰囲気の楽曲を挟みつつ、独自の音楽性を築いていました。

評価:★★★★

| | コメント (0)

2020年4月27日 (月)

バンドブームの頃の「ロック」を忠実に再現

Title:ROCK
Musician:ベッド・イン

「日本に再びバブルの嵐を起こすべく、80年代末〜90年代初頭へのリスペクト精神により完全セルフプロデュースで活動中。」をテーマに、バブル期の日本の風潮・文化をそのまま取り込んだ楽曲を演奏する自称「地下セクシーアイドルユニット」のベッド・イン。今回はタイトルそのまま「ロック」をテーマとした5曲入りのミニアルバム。いままでも80年代のハードロックやバンドブーム前後のビートロックをそのまま取り入れたような曲をよく演っていた彼女たちですが、本作ではそんなロックに焦点を当てたミニアルバムとなっています。

ただわずか5曲といっても、これが5曲とも異なるタイプの曲調に仕上げており、かつ、非常に80年代から90年代にかけてのロックを忠実に再現した良くできた楽曲が並びます。1曲目「We Are "BED・IN"」はヘヴィーなメタリック調の作品で、女性ロックバンドの走り的存在ともいえるSHOW-YAを彷彿とさせる楽曲になっています。2曲目「Everybody 無敵!」は彼女たちの王道路線ともいえるユーロビートとロックを融合させたようなダンスナンバーで、「ポケベル」やら「バイナラ」のよう80年代から90年代を彷彿とさせる「死語」を取り入れたベッド・インらしい曲になっています。

3曲目「悔しいくらい愛してたあなたにSAYONARA」は笑っちゃうくらいのビーイングのパロディー。というか、完全に大黒摩季ですね。イントロなんてまるっきり懐かしいビーイング風ですし、歌いだしなんてまるっきり大黒摩季。サビの前で4連符のドラムが入るあたりも、ビーイング系におきまりのパターン。いや、よく研究したなぁ、と感じるような曲調になっています。ビーイングブームはバブル崩壊後なので、ベッド・インのコンセプトとちょっと異なるのですが、なつかしさを感じる点は共通でしょうか。

さらに4曲目「SHOW ME POWER」も完全にバンドブームあたりのビートロック路線。中村あゆみあたりの路線でしょうか?これも80年代らしい、いい意味での陽気さが気持ちよいナンバーに仕上がっています。そしてラストを締めくくるのはハードロック風なギターに打ち込みのリズムを加えたダンスチューン「LIFE DANCE~人生を踊れ!~」。こちらも要所要所のシンセの音に80年代や90年代を感じるベッド・インらしいダンスナンバーに仕上がっています。

5曲とも80年代から90年代のロックを非常に忠実に再現している楽曲になっており、よくよくあの時代を研究した後がうかがわせる内容になっています。そのため、リアルタイムにこの時期を経験したアラフォー、アラフィフ世代にとっては感涙モノの内容になっています。また、もともとベッド・インの2人は、それぞれロックバンドで活躍していたミュージシャン。そのため、ミュージシャンとしての力量は高く、特にロックにおいては、彼女たちの力量が強く楽曲に反映されています。今回のアルバムに関しては、80年代90年代のオマージュという点でベッド・インらしさが良く出ており、かつロックという側面において、メンバー2人の力量が良く反映されていた、そんなアルバムに仕上がっていました。

正直言って、今の新型コロナの影響で経済が急速に冷え込む中、彼女たちのような「バブル礼さん」的なグループは今後、かなり厳しい状況になるような印象も受けます。そういう意味では今後の彼女たちの活動が少々心配になる点は否定できないのですが…このようなアルバムをリリースできるようなグループなだけに、これからもコロナショックに負けないで頑張ってほしいなぁ。

評価:★★★★★

ベッド・イン 過去の作品
TOKYO
Endless Bubble~Cover Songs vol.1~

| | コメント (0)

2020年4月26日 (日)

伝説のロックバンドの全シングルが収録

Title:COMPLETE EPLP~ALL TIME SINGLE COLLECTION~
Musician:RCサクセション

本作は、忌野清志郎デビュー50周年記念プロジェクトの第1弾となるアルバム。タイトル通り、RCサクセションのすべてのシングルをB面曲を含めて収録したシングルコレクション。1970年のデビューシングル「宝くじは買わない」から、ラストシングルとなった1990年の「I LIKE YOU」までのすべてのシングルが収録されています。特にB面曲は多く、今回はじめてCD化されたようですし、またシングルバージョンでの初CD化も多いようです。一方で「COMPLETE EPLP」となっていますが、1986年リリースのミニアルバム「NAUGHTY BOY」は残念ながら未収録となったそうで、同作はCD化も未了ということなので、一日も早いCD化が望まれているようです。

さて今回のシングルコレクションは、デビューシングルからラストシングルまでリリース順に収録されています。そのためRCの音楽的遍歴を知ることが出来るのですが、デビュー直後の作品は、かなりフォーク寄りの作品になっています。デビュー曲「宝くじは買わない」なんて完全にフォークソングですし。もっとも、この最初期のナンバーでも「ぼくの好きな先生」のようなおなじみのナンバーがあるだけに、フォーキーなRCでも決して「意外」という印象は受けないのかもしれませんが。

その後、78年のCHABO加入以降、ロックに移行していったのはよく知られている通り。実際、このフォーク期からロックへの移行が今回のシングル集ではとてもよくわかります。もっともこの初期の時期でもおなじみの「スローバラード」のような清志郎の好みが強く反映されたようなソウルバラードの楽曲もあったりして、後のRCの音楽性は最初期から感じることが出来ます。

このように音楽的には70年代から80年代にかけて大きく変化していったRCでしたが、今回のシングルコレクションを聴いて強く感じたのは、歌詞のスタイルに関しては最初期から彼ららしさをしっかりと出していた、という点でした。実際、デビューシングル「宝くじは買わない」から、後の彼らのラブソングに通じるような非常に切ない歌詞が特徴的ですし、そのB面「どろだらけの海」から、いきなり環境汚染を歌った社会派な歌詞になっています。

そんなデビュー当初から確立しつつあったスタイルを、どんどんと成熟させていったというのが、このシングルコレクションを通じて強く感じた点。社会派ながらも大上段に社会を批判するのではなく、どちらかというと素直におかしいと思ったことをおちょくるように歌にするスタイルもどんどん確立し、有名なアルバム「COVERS」収録曲の反原発ソング「ラブミーテンダー」「サマータイムブルース」につながってきます。ちなみにこの2曲は本作にちゃんと収録されています。

全3枚組。非常にボリュームのある内容でしたが、聴かせる曲ばかりであっという間に聴けてしまう内容になっていました。これが忌野清志郎デビュー50周年記念プロジェクトの第1弾ということですが、とすると第2弾、第3弾もあるのでしょうか。次はどんな企画が登場してくるのでしょうか。とても楽しみです。

評価:★★★★★

RCサクセション 過去の作品
悲しいことばっかり
シングル・マン+4
SUMMER TOUR '83 渋谷公会堂~KING OF LIVE COMPLETE~

| | コメント (0)

2020年4月25日 (土)

アラフィフおじさんが楽しそう

Title:カーリングシトーンズ デビューライブ! ~カーリング・シトーンズと近所の石~
Musician:カーリングシトーンズ

以前にもアルバムを紹介しましたが、寺岡呼人のソロ25周年を記念して結成されたバンド、カーリングシトーンズ。メンバーは寺岡呼人を中心に、奥田民生、斉藤和義、トータス松本、YO-KING、浜崎貴司という超豪華メンバーがそろっています。全員、年齢が52歳~54歳という同世代。みんな長く音楽シーンの中心で活躍してきたメンバーばかりで、全員の息もピッタリ。これがはじめてだとは思えないような、一体感のある「新人バンド」となっています。

先日、初となるオリジナルアルバムをリリースしたばかりの彼らですが、本作は昨年の9月にZepp Tokyoで行われた彼らのデビューライブの模様を収録したライブ盤。オリジナルアルバムに続いて、早くもライブ盤のリリースとなりました。もちろん、基本的に演奏するのは先日リリースされたオリジナルアルバムに収録されているカーリングシトーンズのオリジナル曲ばかり。比較的ルーツ志向の強いロックを中心とした構成。ただその中でもトータスシトーンことトータス松本が中心となった曲はブルース色が非常に強く、彼の好みがダイレクトに反映された曲になっています。

そして今回のライブ盤での一番の聴きどころは、間違いなくライブのMCがほぼすべて収録されているという点でしょう。メンバー紹介はもちろん、ライブ結成の話やライブ名の由来なども語られており、聴きどころも多いトークが満載。そしてなんといっても、カーリングシトーンズの豪華なメンバーがそれぞれ仲良くトークしているシーンが、聴いていてうれしくなってしまいます。

さらに聴きどころとなるのは中盤。ゲストとして世良公則が登場。直前のトークで曰く、このバンドは60年代から70年代にかけて活躍したTHE BANDのように、自身たちが単独でも活躍する一方、誰かのバックバンドとしても活躍することを意図したそうで、今回のライブでは世良公則のバックバンドとして、その望みが早くもかなった形となりました。ちなみに世良公則は代表曲の「銃爪」「宿無し」の2曲を披露。若干、世良公則のファン層とこの5人のファン層が重ならないような気もしないではなかったのですが、会場を沸かせていました。

また当日はMCでメンバーそれぞれのオリジナル曲は演らない、と言っていたにも関わらず、後半、コントのような展開からウルフルズの代表曲「ガッツだぜ!!」へ!これには会場も大盛り上がり。もちろん、当初の予定通りだったようですが、おそらく会場に詰め掛けたファンにとってはうれしいサプライズだったのでしょう。

そんな感じで全2枚組17曲。2枚組としては曲数が少な目でしたが、ほぼ1曲毎にトークが展開されるという構成になっており、そしてそのトークがみんな妙に楽しそう(笑)。オリジナルアルバムでも感じたのですが、アラフィフのおじさんたちが、本当に音楽を楽しんでいるな、ということが心からわかる素敵なステージでした。途中のトークでも言っていたのですが、豪華なメンバーなので、今後、なかなか集結するのはスケジュール的に厳しいのかもしれませんが…是非、今後も断続的に活動を続けてほしいな。ライブも一度、行ってみたいです。

評価:★★★★★

カーリングシトーンズ 過去の作品
氷上のならず者


ほかに聴いたアルバム

ハレルヤ-The Final Season-/AK-69

AK-69の新作は「罪と罰、そして愛」をテーマとした5曲入りのミニアルバム。トラップを取り入れた「See You Again-Season 1-」をはじめとして悲しげな雰囲気な楽曲が並ぶ作品に。ただ、仰々しいテーマなのですが、「I Don't Wanna Know - Season 2-」は少々時代錯誤的というか、いかにも上昇志向のヤンキー的なバブリーな歌詞が鼻につきますし、全体的にテーマからすると歌詞の内容は非常に浅い印象が。一般受けのためには「この程度の内容」がちょうどよい、ということなのでしょうか。

評価:★★★

AK-69 過去の作品
THE CARTEL FROM STREETS
THE RED MAGIC
The Independent King
Road to The Independent King
THE THRONE
DAWN
無双Collaborations -The undefeated-
THE ANTHEM

north view/MONKEY MAJIK

2005年にリリースした「eastview」、2011年リリースの「westview」、2016年リリースの「southview」に続く東西南北シリーズの完結編。今回は自分たちのルーツであるカナダでアルバムを制作。カナダから日本を見るというテーマの下で作成されたアルバムだそうです。

さて、前々作「southview」前作「enigma」と脂ののりまくった傑作が続いた彼ら。続く本作も前作を超えるだけの傑作…を期待していたのですが、残念ながら前2作を超えるほどの傑作とまでは至りませんでした。ただ、前半はシティポップ風の洋楽テイストの強い楽曲を、後半は和風な作品を並べ、洋邦混合バンドとしての彼ららしさを示したアルバムに仕上がっていました。前々作、前作のような傑作ではありませんでしたが、バンドの状態は決して悪くないことを示した良作だったと思います。いい意味でアルバムのクオリティーが安定してきたようにも感じます。今後も楽しみです。

評価:★★★★

MONKEY MAJIK 過去の作品
TIME
MONKEY MAJIK BEST~10years&Forever~
westview
SOMEWHERE OUT THERE
DNA
Colour By Number
southview
enigma
COLLABORATED

| | コメント (0)

2020年4月24日 (金)

映画発の「企画バンド」でしたが…

Title:THE KEBABS
Musician:THE KEBABS

今回紹介するTHE KEBABSは、もともと当サイトでも紹介したthe pillows30周年記念の映画「王様になれ」のため、山中さわおがa flood of circleの佐々木亮介とUNISON SQUARE GARDENの田渕智也に出演を依頼した時に、映画のために架空のバンドを結成して欲しい、と依頼したのがはじまり。そのように映画の中のバンドとして結成されたTHE KEBABSですが、よっぽど馬が合ったのか、元serial TV dramaの新井弘毅と元ART-SCHOOLの鈴木浩之を誘い、そのまま正式にバンドを結成。そしてリリースされたデビューアルバムが本作となります。

その映画「王様になれ」の劇中歌「枕を変えたら眠れない」は聴いたことあったのですが、アルバム単位で聴くのはもちろん本作がはじめて。正直言って、映画でも劇中歌でもTHE KEBABSについてさほど強いインパクトは受けなかったのですが、今回、アルバムでこれが予想以上に良い出来栄えになっており、驚いてしまいました。

楽曲のタイプとしてはバンドサウンドを前面に押し出したパンクロック。ボーカルをつとめる佐々木亮介はしゃがれ声でがなり上げるタイプのボーカリストなのでガレージロックの様相が強く、「ホラー映画を観よう」「猿でもできる」はガレージロックなナンバーになっているのですが、a flood of circleに比べると、かなりパンクロックに寄った楽曲になっています。1曲目の「オーロラソース」「メリージェーンを知らない」などライブでも観客みんなで歌い上げそうな、メロディアスパンクの楽曲。佐々木亮介とパンクロックの意外な相性の良さを感じてしまいます。

そしておそらくTHE KEBABS最大の魅力は、へヴィーなバンドサウンドをカッコよく聴かせつつも、メロディーに関してはインパクトあるポップなメロディーラインになっているという点でしょう。まずバンドの大きな特徴としてメンバー4人のうち3人までがソングライターとしてそれぞれ活躍しているミュージシャンであるということ。特に田渕智也は、今をときめく人気バンド、UNISON SQUARE GARDENのメインライターであり、このアルバムでもTHE KEBABS名義の楽曲以外に4曲も単独名義で作曲を手掛けています。

おそらく田渕智也はTHE KEBABS名義の楽曲についても多大な貢献をしているものと思われますが、このアルバムに収録されている楽曲については、楽曲としてJ-POP的なキャッチーな、フックの効いたメロディーを書きつつも、佐々木亮介のボーカルやへヴィーなバンドサウンドにもマッチするようなロッキンなメロディーをしっかりと書いてくる勘の良さは、さすが人気バンドのメインライター、と感じてしまいます。特にa flood of circleでもJ-POP的なポップなメロディーの曲も少なくないのですが、同じ佐々木亮介がボーカルをとってもa flood of circleの曲で感じるような、良くありがちでベタさを感じるつまらないメロディーライン、という曲が皆無だった点、田渕智也の力量を感じます。

また、ほかにもモータウンビートを入れた「THE KEBABSがやってくる」やハイテンポでどこかユーモラスな要素が強い「恐竜あらわる」、語りを入れてダークな雰囲気を醸し出す「ホラー映画を観よう」やダンサナブルな「猿でもできる」など、単純なパンクロック、ガレージロックにとどまらないスタイルを聴かせてくれている点は、やはりソングライターが3人もいる強みなのではないでしょうか。

さらに今回のアルバムの特徴として下北沢GARDENで行われたライブの模様を収録したライブアルバムになっているという点でしょう。そのため、非常に疾走感を覚える録音となっており、バンドとしてのうまみをしっかりと凝縮した内容に仕上がっていました。ロックバンドTHE KEBABSの良さをもっともよくあらわすことの出来るスタイルだったのではないでしょうか。ライブの空気感もしっかりと伝わってくる録音になっていたと思います。

そんな訳で、予想外に素晴らしかったTHE KEBABSのデビューアルバム。メンバー、特に佐々木亮介と田渕智也は自分のバンドの活動もあるため、コンスタントに、という訳にはいかないかもしれませんが、是非、今後も活動を続けてほしいなぁ。この2人にバンドを組ませるという山中さわおの慧眼もさすがです。

評価:★★★★★


ほかに聴いたアルバム

ZIG ZAG/木村カエラ

木村カエラのニューアルバムは5曲入り、ただし1曲はリミックスなので実質的には4曲入りとなるミニアルバム。ラッパーのBIMとコラボしてHIP HOPを大幅に取り入れたタイトルチューン「ZIG ZAG」にへヴィーなミディアムロック「時計の針~愛してもあなたが遠くなるの~」に軽快なギターロック「Wish upon a star」に、彼女らしさがもっとも出ていた軽快なポップチューン「おはようSUN」まで、4曲ともスタイルはバラバラなのですが、いずれも聴いていて楽しくなるポップチューンが並んでおり、いずれも木村カエラらしさが良く出ているミニアルバムだと思います。次の作品も楽しみです。

評価:★★★★

木村カエラ 過去の作品
+1
HOCUS POCUS
5years
8EIGHT8
Sync
ROCK
10years
MIETA
PUNKY
¿WHO?
いちご

Harmonize e.p/sumika

4曲入りとなるsumikaのミニアルバム。1曲目「センス・オブ・ワンダー」は軽快なニューオリンズ風、2曲目「ライラ」はアップテンポなポップス、3曲目「No.5」はメロウで歌謡曲風の楽曲、そしてラストの「エンドロール」はピアノとストリングスでしんみり伸びやかに聴かせるナンバーと4曲4様のスタイルを楽しませてくれる、sumikaのポップバンドとしての幅の広さを感じるアルバムとなっていました。

評価:★★★★

sumika 過去の作品
Familia
Chime

| | コメント (0)

2020年4月23日 (木)

話題のコラボ第2弾が1位

今週のHot Albums

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

今週の1位は話題のコラボ第2弾

微妙なダサジャケが印象的な今週の1位は、B'zの稲葉浩志とアメリカのギタリスト、スティーヴィー・サラスとのコラボ、INABA/SALAS「Maximum Huavo」が獲得しました。CD販売数1位、PCによるCD読取数3位。オリコン週間アルバムランキングは初動売上5万9千枚で1位初登場。前作「CHUBBY GROOVE」の6万枚(2位)から微減となっています。

2位には先週1位のJUJU「YOUR STORY」がワンランクダウンでベスト3をキープしています。そして3位にはバーチャルYouTuberによるユニットHIMEHINA「藍の華」 が先行配信でランクインしていた先週の7位からCDにリリースに合わせてランクアップし、ベスト3入り。CD販売数3位、ダウンロード数2位、PCによるCD読取数16位。オリコンでは初動売上1万2千枚で3位初登場。

続いて4位以下の初登場ですが、次の初登場は7位に飛びます。7位には女性アイドルグループでんぱ組.inc「愛が地球救うんさ! だってでんぱ組.incはファミリーでしょ」がランクイン。CD販売数は4位でしたが、ダウンロード数17位、PCによるCD読取数40位。このアルバムタイトル、おそらく決まったのは新型コロナの騒動が起きる前なのでしょうが、新型コロナ騒ぎの渦中にある今リリースされると、かなり場違いな感じがしてしまいます。オリコンでは初動売上5千枚で5位初登場。前作「ワレワレハデンパグミインクダ」の1万枚(10位)からダウンしています。

8位には凛として時雨のボーカリスト、TKのソロアルバム、TK from 凛として時雨「彩脳」がランクイン。CD販売数8位、ダウンロード数6位、PCによるCD読取数42位。オリコンでは初動売上4千枚で8位初登場。オリコンベスト10入りは2014年のEP「contrast」以来となりましたが、前作「white noise」の7千枚(14位)からダウンしています。

9位には鈴木雅之「ALL TIME ROCK'N'ROLL」がランクイン。今年、デビュー40周年を迎える彼が、ロックンロールをコンセプトとしてリリースした3枚組のアルバム。ベスト盤だけではなくシャネルズやラッツ・アンド・スターの再録や洋楽カバー、さらには新曲も収録されているという非常に豪華なアルバムになっています。CD販売数6位、ダウンロード数15位、PCによるCD読取数72位。オリコンでは初動売上6千枚で4位初登場。直近作はカバーアルバム「DISCOVER JAPAN III ~the voice with manners!」で、同作の3千枚(11位)からはアップしています。

初登場組最後は10位に柿原徹也×岡本信彦「trust and play」がランクイン。CD販売数7位、ダウンロード数23位。人気男性声優2人によるコラボ作。オリコンでは初動売上7千枚で5位初登場。柿原徹也は前作「United Star」(8位)から横バイ。岡本信彦は前作「Braverthday」の6千枚(10位)から微増となっています。

さてロングヒット盤ですが、Official髭男dism「Traveler」は4位からワンランクダウンの5位。ただPCによるCD読取数は1位を維持しています。King Gnu「CEREMONY」は先週の9位から6位に再びランクアップ。こちらもまだまだその人気は手堅そう…。

今週のHot Albumsは以上。チャート評はまた来週の水曜日に!

| | コメント (0)

2020年4月22日 (水)

ヒゲダンの躍進は続く

今週のHot100

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

先週に続き今週も1,2フィニッシュです。

今週も先週に引き続きOfficial髭男dism「I LOVE...」が1位獲得。2位も「Pretender」という結果になっており、これで2週連続ヒゲダンが1位2位に並ぶ結果となりました。特にストリーミング数、You Tube再生回数共に、この2曲が1位2位で並んでおり、まさしく多くの人が繰り返しこの曲を聴いているという、本当の意味でこれらの曲がヒットしているということを裏付ける結果となりました。

ヒゲダンはこのほかに先週10位にランクインしてきた「パラボラ」が6位にアップ。ダウンロード数が2位から1位にアップしたほか、ストリーミング数は26位から5位に一気にアップ。ラジオオンエア数も1位を獲得しており、今後のロングヒットも期待されます。一方、「宿命」は7位から9位にダウン。あとひと踏ん張りできるか、気になるところ。ただ今週も結果としてヒゲダンは4曲同時ランクインとなっています。

続く3位にランクインしてきたのはテレビ朝日系のオーディション番組から登場した女性アイドルグループラストアイドル「愛を知る」が初登場。CD販売数は1位でしたが、PCによるCD読取数74位、Twitterつぶやき数20位にとどまり、そのほかはランク圏外。結果、3位に留まりました。オリコン週間シングルランキングでは初動売上5万1千枚で1位初登場。前作「青春トレイン」の7万3千枚(3位)からダウンしています。

続いて4位以下の初登場曲はまず7位に韓国の男性アイドルグループMONSTA X「Wish on the same sky」が初登場でランクイン。CD販売数は2位でしたが、PCによるCD読取数は46位、Twitterつぶやき数は96位に留まり、そのほかはランク圏外と奮わず、総合順位はこの位置に。オリコンでは初動売上2万6千枚で2位初登場。前作「Alligator」の11万7千枚(2位)から大きくダウンしています。

初登場はもう1曲。8位にEXILEの弟分ユニット、GENERATIONS from EXILE TRIBE「ヒラヒラ」が先週の80位からCDリリースに合わせてランクアップし、ベスト10入りを記録しています。CD販売数5位、PCによるCD読取数6位でしたが、ダウンロード数36位、ストリーミング数16位、ラジオオンエア数11位、Twitterつぶやき数13位で、総合順位は8位に。オリコンでは初動売上1万2千枚で5位初登場。前作「EXPerience Greatness」の1万7千枚(7位)よりダウン。

そして今週も強いのがロングヒット曲。まずはLiSA「紅蓮華」。今週は3位から4位にダウン。ただストリーミング数4位、You Tube再生回数9位は先週から同順位をキープ。ダウンロード数は4位から3位にアップしています。さらに5位にはKing Gnu「白日」がこちらは先週と同順位をキープ。ストリーミング数は3位を維持。また、ダウンロード数は7位から4位に、YouTube再生回数は5位から4位にアップしており、まだまだ根強い人気を感じさせる結果となっています。

今週のHot100は以上。明日はHot Albums!

| | コメント (0)

2020年4月21日 (火)

バラエティー富んだ音楽性が魅力

Title:That's What I Heard
Musician:Robert Cray

60代後半になっても積極的にその活動を続けるアメリカのブルースギタリスト、Robert Cray。ただ、純粋にRobert Crayのニューアルバムとしては本作は約6年ぶりの新作となります。とはいえ、その間にはライブ盤のリリースがあったりしましたし、2017年にはROBERT CRAY&HI RHYTH名義のアルバムもリリースしていますので、そんなに「久しぶり」という印象は受けません。

もともと、ブルースを主軸としつつ、幅広い音楽性を聴かせてくれていた彼。今回のアルバムでは、その音楽性の幅広さがより一層際立ったアルバムになっていました。冒頭を飾る「Anything You Want」は軽快なギターを聴かせるブルースナンバーになっているのですが、続く「Burying Ground」はオールディーズな要素の強いソウルナンバー、「You're the One」はしんみりと哀愁感たっぷりに聴かせるソウルバラード、「This Man」と続きます。

その後も60年代あたりの古き良きソウルミュージックを彷彿とさせる「You'll Want Me Back」に、軽快なギターリフを聴かせるロッキンな「Hot」とバラエティー富んだ展開が続いていきます。その後もソウルバラードをしんみり聴かせる「Promises You Can't Keep」「A Little Less Lonely」などと続いていくなど、全体的にはソウルミュージックからの影響の強いアルバムに。そんな中で彼のギターが優しく鳴り響くような楽曲に仕上がっていました。

そんなソウルな曲調でしんみりと聴かせるナンバーが目立つ中で最後を締めくくるのはジェイムス・ブラウンばりのファンクチューン「Do It」で締めくくり。力強いサウンドとボーカルが強く印象に残る楽曲に仕上がっており、パワフルな印象を残しつつ、アルバムは幕を下ろします。

全体的には正直言って目新しさみたいなものはないのですが、全12曲入り47分という長さもちょうどよく、ポップで聴きやすい作品が並んでいるため、バラエティー富んだ作風で飽きさせないような展開も含めて、ここ数作の彼の作品の中でも特に聴きやすいアルバムに仕上がっていたように感じました。特に60代後半に差し掛かりつつも、歌声もギターも全く衰えをかんじさせない点も魅力的。まだまだこれからも積極的な活動が楽しめそうです。

評価:★★★★★

Robert Cray 過去の作品
NOTHIN BUT LOVE
In My Soul

4 Nights of 40 Years Live(The Robert Cray Band)
ROBERT CRAY&HI RHYTH(ROBERT CRAY&HI RHYTH)


ほかに聴いたアルバム

Royal Soldier/Jah Cure

まだ続く2019年の各種メディアベストアルバムのうち、聴き漏らしたアルバムを後追いで聴いた1枚。今回もMusic Magazine誌レゲエ部門の2019年ベストアルバム。ジャマイカのミュージシャンによる3年ぶりとなる新作。全編、ゆったりとした裏打ちのリズムの曲を中心に哀愁感あふれるメロディーとサウンドを聴かせてくれる作品。決して派手さはないのですが、ゆったりとした気分になるレゲエが楽しめる作品です。

評価:★★★★

| | コメント (0)

2020年4月20日 (月)

軽快なポップチューンにユーモアセンスも

Title:Devil
Musician:ビッケブランカ

稀代のポップスメイカーとして支持を伸ばしている男性シンガーソングライター、ビッケブランカのニューアルバムのタイトルはなんと「Devil」!かなり怪しげな雰囲気のジャケット写真がまずは目に飛び込んでくる本作は、いままでのビッケブランカのような明るいポップというイメージとは大きく異なります。そして、そんなアルバムの1曲目、タイトルチューン「Devil」は不気味なサウンドの中で悪魔の高笑いが響く、ダークなスタート・・・・・・と思いきや、隣人から抗議のドアノックが入るというオチが(笑)。うん、ちゃんと彼らしい「ポップ」なアルバムスタートとなっています。

そしてそんな今回のアルバムの聴きどころは2曲目「Shekebon!」と3曲目「Ca Va?」でしょう。どちらもタイトルの「シェケボン」「サバー」というユニークな言葉の響きをリズムにのせたリズミカルなチューン。あえて「美メロ系シンガー」という枠組みに捕らわれず、楽曲にバラエティーを持たせた挑戦ということらしいのですが、まさにこのユーモラスでインパクトある楽曲がゆえにアルバムの中の核になっている楽曲。特に「Ca Va?」(フランス語で「元気?」という意味らしいです)は、最初はピアノ弾き語りでフランス語の歌詞の曲をしんみり歌うスタートから、いきなりダンスチューンに変化する展開が非常にユニーク。言葉の響きをユーモラスにリズミカルに聴かせるというスタイルに、ちょっとSOUL'd OUTを彷彿としたり。

もちろん、そんなビッケブランカの新たな挑戦というスタイルだけではなく、彼らしい美メロを聴かせるナンバーもちゃんと聴かせてくれます。特に秀逸だったのがこのユーモラスな2曲に続く「TARA」。インディーズ時代の曲らしいのですが、ファルセットを上手く使用して切ないメロディーを聴かせる美メロチューン。続く「白熊」も、同じくファルセットボイスを上手くつかいつつ、軽快でちょっと切ないメロディーをしっかりと聴かせるポップチューンに仕上げています。

その後もダイナミックなピアノとバンドサウンドで力強くロッキンに聴かせる「Black Catcher」、分厚いシンセをバックに哀愁感あるメロディーを聴かせるエレクトロチューン「Save This Love」、英語詞でしんみりメロウに聴かせる洋楽テイストも強い「Heal Me」など、「Devil」というタイトルの影響があるのかないのか、後半は比較的「暗い」雰囲気の楽曲が続きますが、もちろんビッケブランカのたぐいまれなるメロディーセンスが光る曲ばかりとなっています。

そして最後を締めくくるのがピアノやストリングスを取り入れたスケール感あるサウンドに伸びやかで切ないメロを歌い上げる、まるで大団円のような「Avalanche」で締めくくり。まさに最後を締めくくるにふさわしいナンバーをこれでもかというほど聴かせ、リスナーとしては満足感たっぷりにアルバムを聴き終えることの出来る作品となっていました。

毎作、個人的に壺にはまりまくりなメロディアスなポップチューンで楽しませてくれるビッケブランカ。今回もまた、そんな期待にしっかりと応えてくれる心地よいポップチューンが続く傑作アルバムとなっていたと思います。「Ca Va?」などインパクト満点なだけに、そろそろ楽曲単位でブレイクしちゃいそうな予感もしないではないのですが…間違いなく、これからの日本のポップシーンを牽引するだけの実力を持ったシンガーなだけに、もっともっといろいろな人に聴いて欲しい!文句なしにお勧めの1枚です。

評価:★★★★★

ビッケブランカ 過去の作品
FEARLESS
wizard


ほかに聴いたアルバム

WE DO/いきものがかり

2017年の活動休止後、約1年10か月の活動休止期間を経て2018年11月に活動を再開したいきものがかり。その後、配信でのシングルなどの活動が続いていましたが、ようやく約5年ぶりとなるニューアルバムがリリースされました。そんな彼らの新作は、いきものがかりらしさを感じるポップチューンが並ぶ中、スケール感も感じられ、大物バンド然とした雰囲気やある種の余裕すら感じます。ただ一方で今回のアルバムは似たようなタイプの曲も多く、勢いも失速気味。正直言って、彼らのアルバムとしては少々物足りなさを感じる出来になっていたように感じました。

むしろ今回のアルバムで予想以上によかったのは初回盤についてくるライブ盤。2019年5月にZepp Divercityで行われたファンクラブツアーの音源なのですが、おなじみのヒット曲中心のセレクトで、とにかく盛り上がるステージになっており、あれ、いきものがかりのライブって、こんなに楽しいんだ?と感じさせるステージに。正直、ほとんど興味はなかったのですが、一度見てみたいな、そう感じさせるには十分のステージだったように感じます。こちらだけでも聴いて損のないアルバムに。本編は正直、評価3つレベルだったのですが、ライブ盤がよかったので以下の評価に。

評価:★★★★

いきものがかり 過去の作品
ライフアルバム
My Song Your Song
ハジマリノウタ
いきものばかり
NEWTRAL
バラー丼
I
FUN! FUN! FANFARE!
超いきものばかり~てんねん記念メンバーズBESTセレクション~

CONTRALTO/中島みゆき

中島みゆき約2年ぶりとなるニューアルバム。キャッチコピーが「中島みゆきが中島みゆきを歌う」というものだったり「自画像」という曲が収録されたいたりと、あらためて彼女自身を見つめ直したアルバムということになるのでしょうか。ただ、全体的にはこれといったインパクトある曲も乏しく、中島みゆきらしさはきちんと健在ながらも、全体的には地味さを感じてしまうアルバム。もっとも、そんな中でも「終り初物」「おはよう」のような、しっかりと耳に残るような歌詞を書いてくるあたり、彼女の底力を感じさせるのですが。

評価:★★★★

中島みゆき 過去の作品
DRAMA!
真夜中の動物園
荒野より
常夜灯
十二単~Singles4~
問題集
組曲(Suite)

中島みゆき・21世紀ベストセレクション『前途』
中島みゆきConcert「一会」(いちえ)2015~2016-LIVE SELECTION-

相聞
中島みゆき ライブ リクエスト -歌旅・縁会・一会-

| | コメント (0)

2020年4月19日 (日)

まさかのソロアルバム

Title:宮本、独歩
Musician:宮本浩次

「今宵の月のように」や「ガストロンジャー」などのヒットでおなじみのロックバンド、エレファントカシマシのボーカリストであり、ほぼすべての曲の作詞作曲を手掛ける宮本浩次による初となるソロアルバム。正直言うと、宮本浩次のソロアルバム、というとかなり意外な気がしました。というのも、エレファントカシマシ自体が自他ともに認める宮本浩次のワンマンバンドだから。実際、2000年にリリースされたアルバム「good morning」の販促ポスターに書かれた、通称「宮本檄文」と呼ばれる文章には次のような一節がありました。

「孤高にして普遍的。
過激にして包容力有り。
最新にして懐かしい。

そして、最強のロックスピリッツ!

それが、エレファントカシマシ。すなわち俺だ。

要するに彼自身、エレファントカシマシこそ宮本浩次を表現する存在そのものであると認識していた訳です。だから、彼自身が表現したいことがあってもエレカシで表現できるはず…なのになぜ、ソロアルバム?ということを感じてしまいました。

しかし、実際に聴いてみると、確かに、これは間違いなく、エレカシのアルバムではなく宮本浩次のソロなんだ、ということを感じざるを得ませんでした。それはその音楽の方向性が、エレカシの曲とは明確に異なっているからです。例えば「冬の花」はストリングスやピアノで哀愁感たっぷりのムード歌謡曲、「夜明けのうた」もミディアムテンポで歌い上げるメロディアスで切ないポップチューン。椎名林檎とのコラボで話題となった「獣ゆく細道」は、まさに椎名林檎の世界に宮本浩次のボーカルがのっかかった形の軽快でムード感満載のキャバレーロック。さらにスカパラとコラボした「明日以外すべて燃やせ」も、完全にスカパラの世界観に沿った形のスカに、力強い彼のボーカルが載るという印象的なスタイル。これらの曲は、確かにエレカシの方向性とはちと異なります。

またそんな中で目立つのは「Do you remember?」「going my way」にような軽快でメロディアスなパンクロック。ライブ映えしそうな、どちらかというとフェス向けの若手バンドが奏でそうなパンクチューンになっており、宮本浩次がこういうスタイルのロックを演りたかった、というのはちょっと意外に感じてしまいます。エレカシが突き進んだロックの方向性とは全く異なるだけに、宮本浩次の意外な音楽的嗜好を感じてしまいました。

ただ、もっともこれらの曲が本当にエレファントカシマシとして演奏できなかったのか、と言われると若干微妙には感じてしまいます。エレカシも、それころ「今宵の月のように」のようなポップ色が強い路線から「ガストロンジャー」みたいなヘヴィーな路線まで、バラエティー富んだ曲風のロックを演奏しています。確かに、このアルバムに登場してくる曲をエレカシで演れば異色といえば異色なのですが、エレカシが宮本浩次のソロバンドということを考えれば、彼の意向として演れなくもありません。

エレカシもデビューから30年を経過。バンドとして確固たる地位を築く中、宮本浩次のワンマンバンドとはいえ、さすがにそう簡単にはエレカシのイメージとは大きく異なるような曲を演れなくなってしまってきた…そういう側面もあるのかもしれません。そしてそんな中、宮本浩次が自分のやりたいことを自由に演ったアルバムが本作なのかもしれません。実際に、自由に音楽を奏でまくる今回のアルバムには、自由を謳歌するような、ある種の明るさも感じられました。もっとも、2019年に所属事務所を移籍しており、その影響でエレカシのアルバムを一時期作れなくなった、という大人の事情がからんだりするのかもしれませんが…。

エレカシのイメージとは大きく異なるアルバムなだけに、これを機にエレカシが解散して…ということはなさそう。むしろ、これを機に、宮本浩次がいい意味でストレスを発散し、エレカシとしての新たな創作意欲がわいてくるのではないでしょうか。次のエレカシのアルバムは、それだけにまた傑作アルバムをリリースしてくれそう。次はエレカシの新作に、期待したいところです。

評価:★★★★★


ほかに聴いたアルバム

SCLL/Spangle call Lilli line

バンド初となるオールタイムベスト。ポストロックやドリーミーなエレクトロサウンドも加わったダウナーなギターロックが特徴的。1曲1曲をピックアップすれば非常に魅力的な作品も少なくないのですが、通して聴くと、正直、メロディーラインにインパクトも薄く、サウンドも独自性が弱いため印象が薄くなってしまうのがとても残念なポイント。どこかの方向へもうちょっと振り切れたらおもしろいと思うのですが。

評価:★★★★

Spangle Call Lilli Line 過去の作品
VIEW
forest at the head of a river

New Season
Piano Lesson
SINCE2
ghost is dead
Dreams Never End

Born as a NINJA/TRIGA FINGA

こちらもまた、2019年各種メディアのベストアルバムのうち聴き漏らしたアルバムを後追いで聴いた1枚。本作はMusic Magazine誌2019年レゲエ[日本]部門で1位を獲得したアルバム。レゲエの本場、ジャマイカで活動しているミュージシャンということなのですが、メロディーラインは至ってポップ。ボーカルも端正ですし、ある意味、「J-POP的」とも言える聴きやすさすらあります。ちょっと個人的にはサラリとしすぎている感も…。ただ、ラストの2曲、知人の死について歌った「R.I.P.」から、最後はそれでも前向きに生きろと歌う「NEVER GIVE UP」はある意味、感動的ですらある展開でした。

評価:★★★★

| | コメント (0)

2020年4月18日 (土)

コロナに負けるな!

世界的に猛威を振るっている新型コロナウイルス。長引く外出規制に鬱々とした気分で過ごしている方も少なくないのではないでしょうか。特に音楽業界においてはライブイベントが軒並み中止になり、特にライブハウスはクラスターの発生源としてバッシングの対象にすらなる事態となりました。CDショップも営業停止となっている店も多く、おそらく事態が長引けば、音源制作にも影響が出てくるかもしれません。

そんな音楽業界の危機と言えるような状況の中でユニークな音源が発表されました。

Title:Sleep Resistance
Musician:Fatal Defect Orchestra

Sleepresistance

world's end girlfriendがFatal Defect Orchestra名義でリリースされた本作は、静かなアンビエントのインスト。わずか20分程度の内容ながらも全36曲入りという内容になっているのですが、これがなかなかユニーク。コンセプトとしては「寝ながらにしてアーティストサポートができるアルバム」ということで、睡眠時にこれを流して聴くだけで、1晩に約300円~500円程度の売上が見込め、この売上は新型コロナウイルスの影響で経済的に苦境に追い込まれているミュージシャンへのサポートに充てられるそうです。

world's end girlfriend、寝てるだけでアーティストを金銭サポートできるアルバム発売(「音楽ナタリー」より)

寝たまま、ただ音楽を流すだけでミュージシャンへのサポートになるというのは非常にユニークな試み。そんな今回のアルバムの内容は、基本的には睡眠の妨げにならないような、あるいは、普段、部屋のBGMとして流していても邪魔にならないような静かなアンビエント。ただただ、静かなエレクトロサウンドが流れてくる中、時折、ピアノやストリングスも入って美しく聴かせる展開は、world's end girlfriendのほかの楽曲にも通じるドリーミーな雰囲気も感じられます。

同じピッチで長く続きながらも、少しずつ変化していくような構成になっており、確かにBGM的にさらりと流して聴けてしまいそうな反面、ちゃんと聴き始めると、なにげに意外とWEGらしいドリーミーな世界にはまっていきそうな癖も感じられたりして。音楽的にも十分に魅力を感じられるような作品になっており、作品としても十分聴く価値のある内容に仕上がっていました。

ちなみに各サブスクリプションサイトへのリンクは以下の通り。

Spotify Apple Music Amazon Music Unlimited 

わずか20分の長さなのでサラッと聴けてしまうのも魅力的。興味があれば、是非。

評価:★★★★★

world's end girlfriend(world's end boyfriend)過去の作品
空気人形オリジナルサウンドトラック
Xmas Song(2009年)

SEVEN IDIOTS
Xmas Song(2010年)
Xmas Song(2011年)
LIVE​/​10​/​10​/​2015
LAST WALTZ
LAST WALTZ IN TOKYO

ほかにも、この新型コロナ関係で、苦境に陥っているライブハウスやミュージシャンを救うべく、プロジェクトが立ち上がっています。

まず、音楽配信サイトOTOTOYでは「Save Our Place」と名付けて、音楽配信でライブハウスを救う企画が立ち上がっています。

Save Our Place

また、ロックバンドのlynch.がライブハウスを支援するための新曲を制作し、話題となりました。

lynch.がライブハウスを支援するため新曲制作、売上利益を全額寄付(「音楽ナタリー」より)

ただ正直、東日本大震災のチャリティー企画に比べると、かなりこのような企画は少ないように感じます。やはり手を差し伸べる対象がライブハウスやミュージシャンに限られると賛同する人が少なくなってしまうのでしょうか・・・ただ、間違いなく音楽ファンを楽しませてくれた存在なだけに私も少しでもこのチャリティー企画に協力しようと思います。音楽ファンなら、是非。

| | コメント (0)

2020年4月17日 (金)

「超歌手」によるオールタイムベスト

Title:大森靖子
Musician:大森靖子

自らを「超歌手」を名乗り、女性の本音をそのまま激しく綴った独特の歌詞で多くのファンを獲得しているシンガーソングライター、大森靖子。当初はメジャーと契約をせず、独自路線で活動を進めていたのですが、2014年にavexと契約。本作はそのメジャーデビュー後5周年を記念したベストアルバムで、全3枚組からなる大ボリュームのアルバムとなっています。

さて今回のベストアルバムは全45曲というフルボリュームで大森靖子の世界を楽しめる構成になっています。女の子の露骨な叫びを書いた歌詞が強いインパクトを与える彼女ですが、そんな彼女の歌詞の大きな特徴のひとつが、女の子の「かわいい」を非常に肯定的に扱っているという点でしょう。ともすれば女性のルックスという点を強調すると、男性に媚びている、あるいは男性が感じる「女の子らしさ」を演じているという印象を受ける可能性があります。まさに女性アイドルなどは、そんな「男性が描く女性像」を女性自らが演じている訳ですが、大森靖子は男性に媚びることなく、女の子のありのままのかわいさを歌詞の中で歌っています。

楽曲の中でも「GIRL'S GIRL」などはまさに女の子がありのままにかわいく生きろと主張している曲ですし、「絶対彼女」の中で「絶対女の子絶対女の子がいいな」と歌うなど、まさにかわいいありのままの女の子を肯定し、応援しているのが彼女の大きな特徴です。

男性に媚びることなく、女の子のかわいさを肯定・応援しているという点は、女性らしさを武器にしながらも一切男性に媚びないスタイルを貫く椎名林檎に通じる部分を感じます。ただ、彼女自体、「〇〇に似ている」という評価のされ方をとても嫌うそうで、そういう意味では椎名林檎との比較はご法度なのかもしれませんが…。

一方で今回のベスト盤でもうひとつの大きな特徴として感じたのは、そんなかわいいを肯定しつつも、どこか自分に対して自信を持てない心境を切なく、時には孤独を感じさせつつ綴った歌詞が目立つということでした。ある意味、典型的なのが「きもいかわ」で、

「ぼくのこと 気持ち悪い 気持ち悪いって思ってるから
もう誰も これ以上 呪いをかけないで」
(「きもいかわ」より 作詞 大森靖子)

という歌詞は聴いているこちらまで切なくなってきます。この自分のことを肯定できない感情や、それゆえに生まれる世間に同調できな孤独感を歌詞にした、といえば、まさに神聖かまってちゃんに通じる部分があり、実際、「非国民的ヒーロー」ではかまってちゃんのの子とタッグを組んでいます。

もっともそんな孤独を歌いつつ、一方では生きることへの渇望も歌にしており、その典型的なのが「ZOC実験室」。最後に「殺せ」と連呼しつつ、最後の最後は「生きろ」で締めくくっている点、聴いていてこちらもゾクゾクっとくるような歌詞の構成になっています。

そしてそんな歌詞がのるのが非常にバラエティー富んだ音楽性。パンクやガレージ、ハードロックなどのロック系の曲から、アイドルポップ風、モータウン風、エレクトロ、トランス、サイケなどまさにバラエティー豊富。彼女の幅広い音楽性を感じます。ただ、音が分厚くにぎやかな曲が目立つのも特徴的。結果として、本来は全面に押し出されるべき歌詞が、にぎやかなサウンドの後ろに下がっている曲も少なくありません。正直言って、若干歌詞とサウンドのバランスが悪いという点、彼女のマイナス要素のように感じました。

今回のベスト盤リリースは彼女にとってもひとつの区切りだったのでしょうか。ただ、このベスト盤リリース後も、おそらく大きくそのスタイルを変えることなく、いままでと同様に激しい女の子の叫びを聴かせてくれるでしょう。この唯一無二なシンガーソングライターからは今後も目が離せなさそうです。

評価:★★★★★

大森靖子 過去の作品
洗脳
トカレフ(大森靖子&THEピンクトカレフ)
TOKYO BLACK HOLE
kitixxxgaia
MUTEKI
クソカワPARTY


ほかに聴いたアルバム

note-book -Me.-/ちゃんみな

note-book -u.-/ちゃんみな

2作同時リリースとなった女性ラッパー、ちゃんみなのEP盤。「note-book」というタイトルは、普段自分の想いや歌詞を書き溜めているノートをそのまま作品にして世に届けたい、という想いから名付けられたのだとか。そんな2枚のEPのうち「Me.」はちゃんみな自身を主観的に見て、「u.」は客観的に見て制作されたとか。どちらも歌モノの作品が多いのですが、確かに「Me.」は恋に敗れた時のちゃんみなの心境を内面から綴ったような歌詞が目立ちます。特に今時のトラップのビートを入れているのですが、これが哀愁感あるメロと歌詞にピッタリとマッチ。なにげに日本的なウェットな作風とトラップのリズムは相性よいのでは?

「u.」は歌詞もさることながらも「In The Flames」のピアノバラードの美しさに耳を惹きますし、ちょっと80年代を感じるエレクトロポップ「Baby」も音楽的に魅力的。ただ、自らの活動を思いっきり自負している「KING」の歌詞は、「これが客観的に見た歌詞?」とちょっと思ってしまいましたが…。女性としての心境を素直に吐露する歌詞も印象的ながらも、サウンド的にも惹かれるものがあるEPでした。次のオリジナルフルアルバムも楽しみです。

評価:どちらも★★★★

ちゃんみな 過去の作品
CHOCOLATE
Never Grow Up

| | コメント (0)

2020年4月16日 (木)

女性ボーカル作が1位2位に

今週のHot Albums

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

今週は、女性ボーカリストによる作品が上位に並びました。

まず1位を獲得したのが女性ボーカリストJUJUによるベストアルバム「YOUR STORY」。CD販売数1位、ダウンロード数2位、PCによるCD読取数3位で総合順位は見事1位となりました。オリコン週間アルバムランキングでは初動売上5万4千枚で1位初登場。直近作はジャズアルバム「DELICIOUS~JUJU's JAZZ 3rd Dish~」で同作の1万1千枚(11位)よりアップ。2012年にリリースした直近のベストアルバム「BEST STORY~Life stories~」「BEST STORY~Love stories~」の10万4千枚(1位)、9万7千枚(2位)よりは大きくダウンしています。

そして2位は椎名林檎率いる東京事変のEP「ニュース」がランクイン。本年度、活動を再開し大きな話題となっている東京事変。新型コロナが発生している中でライブを強行に、悪い意味での話題にもなってしまったのは残念ですが…。CD販売数1位、ダウンロード数4位、PCによるCD読取数5位。オリコンでは初動売上3万枚で2位初登場。直近作はカップリングベストの「深夜枠」で同作の初動3万6千枚(3位)からはダウン。2012年にリリースした東京事変最後の先の活動休止前最後のオリジナル作であるミニアルバム「color bars」の7万8千枚(2位)よりは大きくダウンしています。まあ、2012年とは音楽を聴く環境がかなり変化していますからね…。

3位はMAX「Chocolate:1st Mini Album」がランクイン。え?あの女性4人組ダンスグループがまさかの復活??と一瞬思ったのですが、こちらはMAXは東方神起のチャンミンの愛称のようで、オリコンではCHANGMIN名義で書かれています。韓国盤のため、Billboardではダウンロードのみでのランクイン。ダウンロード数で1位を獲得し、見事ベスト3入りです。一方オリコンでは輸入盤がカウントされているため、初動売上1万1千枚で3位に初登場しています。

続いて4位以下の初登場盤ですが、まず6位に澤野弘之「BEST OF VOCAL WORKS[nZk]2」がランクイン。CD販売数3位、ダウンロード数13位、PCによるCD読取数4位。ガンダムシリーズや様々なアニメへの劇伴音楽の提供で人気の高い音楽家が手掛けてボーカル曲をまとめたベストアルバム。オリコンでは初動売上7千枚で7位初登場。直近作はSawanoHiroyuki[nZk]名義でのオリジナルアルバム「Rヨ/MEMBER」で、同作の1万枚(6位)よりダウン。2015年にリリースした同ベストアルバムの前作「澤野弘之 BEST OF VOCAL WORKS[nZk]」の1万1千枚(6位)よりもダウンしています。

7位にはHIMEHINA「藍の華」がランクイン。田中ヒメ、鈴木ヒナという2人組のバーチャルYou Tuberによるユニット。4月15日にリリース予定のアルバムですが、先行配信のためダウンロード数で3位を記録し、ベスト10入りとなりました。

8位初登場は女性声優麻倉ももの2ndアルバム「Agapanthus」。CD販売数は4位でしたが、ダウンロード数16位、PCによるCD読取数15位にとどまり、総合順位は8位に。オリコンでは初動売上8千枚で5位初登場。前作「Peachy!」の1万3千枚(6位)よりダウン。

一方、ロングヒット組ですが、まだまだ強いのがOfficial髭男dism「Traveler」。3位からダウンしてしまいましたが今週も4位をキープ。ダウンロード数は2位から5位に、CD販売数も6位から9位にダウンしてしまいましたが、PCによるCD読取数は1位をキープしています。その反面、若干失速気味なのがKing Gnu「CEREMONY」で今週は5位から9位にダウン。PCによるCD読取数は2位をキープしていますが、ダウンロード数は5位から6位にダウン。Hot100でも「白日」が若干失速気味になっており、今後がちょっと気にかかるところです。

今週のHot Albumsは以上。チャート評はまた来週の水曜日に!

| | コメント (0)

2020年4月15日 (水)

またもヒゲダンが1,2フィニッシュ

今週のHot100

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

ヒゲダン人気が止まりません!

今週はOfficial髭男dism「I LOVE...」が1位にランクアップ。さらに「Pretender」も3位から2位にアップしており、4週ぶりにヒゲダンが1,2フィニッシュという結果になりました。ストリーミング数は今週も「I LOVE...」1位「Pretender」2位という結果に。You Tube再生回数は「I LOVE...」が先週から変わらず1位を獲得しましたが、「Pretender」は今週、3位にダウンしてしまいました。

また「宿命」は今週9位から7位にランクアップ。特にYou Tube再生回数が5位から4位にアップしています。一方、「イエスタデイ」は今週、12位にダウン。3月9日付チャートでベスト10に返り咲いてからベスト10連続記録は6週で途絶えています。ベスト10入りは通算24週でとりあえずストップ。ただいままで2度の返り咲きを果たしていますので、まだ今後も十分返り咲きの可能性があります。

一方で今週はOfficial髭男dismの新曲「パラボラ」が10位にランクイン。カルピスウォーターCMソング。ダウンロード数2位、ラジオオンエア数3位。一方、ストリーミング数は26位、Twitterつぶやき数は35位に留まっているほか、You Tubeはまだ無料では閲覧できないようでランク圏外。まだ他の曲のようなストリーミングとYou Tubeを中心とした広がりはみせていないようですが、今後は徐々にストリーミング数も順位をあげてロングヒットとなるのでしょうか。注目されます。

そしてそのヒゲダンに続いたのはLiSA「紅蓮華」。先週と変わらず3位をキープ。ダウンロード数及びストリーミング数で4位を獲得したほか、You Tube再生回数も先週の8位からダウンしたとはいえ、9位をキープ。さらなるロングヒットが期待できそうです。

続いて4位以下の初登場曲ですが、まず4位に三代目 J Soul Brothers from EXILE TRIBE「Movin'on」がランクイン。CD販売数は1位、PCによるCD読取数で3位にランクインしましたが、ダウンロード数11位、ストリーミング数31位、ラジオオンエア数61位、Twitterつぶやき数22位、You Tube再生回数89位といずれもランクインしたものの伸び悩み、総合順位はこの位置に。オリコン週間シングルランキングでは初動売上3万4千枚で1位初登場。前作「冬空」の5万3千枚(2位)からダウン。

今週の初登場はあと1曲。9位にRADWIMPSの配信限定シングル「猫じゃらし」がランクイン。「キリン午後の紅茶」CMソング。ダウンロード数では見事1位獲得。ラジオオンエア数9位、Twitterつぶやき数40位ながら、配信のみでのベスト10入りを果たしています。

今週の初登場曲は以上。一方、ロングヒット曲では前述のヒゲダン、LiSAのほか、おなじみKing Gnu「白日」。先週の7位から5位に再びアップ。ストリーイング数は3位をキープ。You Tube再生回数は5位にダウンしていますが、まだまだロングヒットは続きそうです。

今週のHot100は以上。明日はHot Albums!

| | コメント (0)

2020年4月14日 (火)

エミランド、オープン!

Title:OPEN
Musician:EMILAND

2019年2月、16年間に及ぶ活動に幕を下ろした女性3人組ソウルバンド、ズクナシ。非常に力強いソウルやファンクミュージックを奏でつつ、ユーモラスな歌詞の楽曲も織り込み、とても素晴らしいステージを見せてくれるバンドでした。私はラストライブである渋谷CLUB QUATTROのステージを見に行ったのですが、その最後が非常に惜しまれるステージでした。ただ、その日のライブで、ボーカルの衣美は、同じくズクナシのドラマーである茜と新バンドを結成する旨を話していましたが、それが今回紹介するEMILAND。ボーカルが衣美で「EMILAND」とはかなりストレートなバンド名です。ズクナシ解散後、すぐにライブ活動をスタートしていたようですが、それから約1年。ついにデビューアルバムが完成となりました。その名も「OPEN」。まさにタイトル通り、EMILANDのオープンをつげるアルバムとなっています。

そのEMILAND、基本的にはズクナシと同じく、ブラックミュージックから強い影響を受けているバンド…なのですが、ズクナシに比べると、あきらかにファンクの要素が強く反映されています。いや、「要素が強く反映」なんて感じではありません。完全にどす黒いグルーヴを奏でる迫力満載のバンドに生まれ変わっています。

まさにそんなEMILANDオープンを高らかにつげる「ペタペタペタ」はグルーヴィーなベースラインとドラムスに耳を惹く、どファンクなナンバー。「ペタペタペタ」というユニークながらもシンプルな言葉使いはズクナシと同様ですが、バンドサウンドはあきらかにファンク寄りに進歩しています。続く「FEEL THE SOUL」も、へヴィーで疾走感あるギターが印象的なソウルでどす黒いグルーヴ感が迫力満載に耳に飛びこむソウルナンバー。一方で、夫婦間の音楽の好みという身近な題材をテーマとした歌詞もユニーク。この身近な題材を歌うといスタイルもズクナシから引き継いでいます。

続く「Not In Love」は一転、しんみりとしたバラードナンバーになっていますが、こちらもグルーヴィーなサウンドが流れるソウルなバラードナンバー。さらにミディアムファンクの「リスタート」は、新たにバンドをスタートさせた彼女の状況に重ね合わせるような歌詞になっています。

その後も「J.J.Funk」「脳内エレキテル」のような分厚いサウンドのファンクチューンを聴かせるかと思えば、最後を締めくくる「ダイジョウブ」はしんみり衣美の歌声を聴かせるソウルバラードで締めくくり。彼女の力強くも優しい歌声が印象的な楽曲でのフィナーレとなりました。

スリーピースバンドだったズクナシと比べると、4人組になったことで明らかに音の分厚さも増し、まさサウンドの黒さ、ファンキーさもよりました感じがします。もっとソウル寄りだったズクナシに比べると、グッとファンク寄りとなったEMILANDに、衣美の本来の音楽的な嗜好も感じられます。もっとも、日常を題材にし、ユーモラスさも感じられる歌詞の世界や、衣美の力強い歌声といったズクナシの魅力はそのまま健在。そういう意味ではある意味、ズクナシの延長線上にいるようなバンドとも言えるかもしれません。ズクナシが好きならば絶対に気に入りそうなバンド。また、ソウル、ファンク好きなら必聴とも言えるでしょう。これからの活躍が楽しみです。

評価:★★★★★


ほかに聴いたアルバム

Official髭男dism one-man tour 2019@日本武道館/Official髭男dism

「Pretender」をはじめとして「I LOVE...」「宿命」「イエスタデイ」と軒並みロングヒットを記録し、まさに文字通り一世を風靡しているOfficial髭男dism。本作は昨年7月に実施した、自身初の日本武道館ワンマンライブの模様を収録したアルバム。昨年の7月といえば、「Pretender」がロングヒットを記録しているものの、これだけすごいことになる前のこと。ただ、流行の先端を行っている彼らのステージなだけに会場は熱気むんむん。さらにヒゲダンもそんな空気に全く負けることなく、武道館という大箱であるにも関わらず、それに動じることなく、しっかりと会場の空気を支配するステージを見せてくれています。いい意味で大物然とした感じすら彼ら。その人気ぶりも納得のライブ盤です。おそらく、今後、武道館クラスでもなかなかワンマンのチケットが取れなくなるんだろうなぁ。

評価:★★★★

Official髭男dism 過去の作品
エスカパレード
Traveler
TSUTAYA RENTAL SELECTION 2015-2018

This is music too/大橋トリオ

大橋トリオの新作は、自身の曲のみならずサポートメンバーからの提供曲を収録。その提供曲はエレクトロサウンドを取り入れた「Let us go」やアコギ1本でファンキーに聴かせる「quiet storm」など、いままでの大橋トリオの楽曲とは少々異なるタイプの曲が並び、新しい挑戦を感じさせます。が、このような新たなスタイルを模索しているあたり、若干大橋トリオとしての活動にマンネリ気味なものを感じているからではないでしょうか。実際、非常に良質的なポップソングを奏でつつ、いまひとつインパクトに欠けているような印象のあるアルバムが続いています。本作も、これ単独なら間違いなく傑作と言えるクオリティーながらも、いままでのアルバムと並べると、やはり全体的な印象は薄くなってしまう感も…。今回は新機軸を入れたのですが、このように彼なりにいろいろと模索していることは強く感じます。もう一歩、突き抜ててほしいところです。

評価:★★★★

大橋トリオ 過去の作品
A BIRD
I Got Rhythm?
NEWOLD
FACEBOOKII
L
R

FAKE BOOK III
White
plugged
MAGIC
大橋トリオ
PARODY
10(TEN)
Blue
STEREO
植物男子ベランダー ENDING SONGS
植物男子ベランダーSEASON2 ENDING SONGS
THUNDERBIRD

| | コメント (0)

2020年4月13日 (月)

懐かしく暖かい

Title:<Astras/Alem>
Musician:O Terno

今回紹介するのもまた、2019年に各種メディアでベストアルバムに選定されたアルバムのうち、聴き逃していた作品を後追いで聴いた1枚。本作は、もともとはシンガーソングライターとして高い評価を得ていたチン・ベルナルデスが率いるブラジルのロックバンド、O Ternoの作品。2019年のMusic Magazine誌ブラジルミュージック部門で1位を獲得しています。

さて、ブラジルの音楽というと、おしゃれな雰囲気のボサノヴァか、軽快で賑やかなサンバ、というイメージが強いかもしれません。もちろん、そう単純に2分割されるようなものではない、ということはわかってはいるのですが、どうしてもそういうイメージが付きまとってしまいます。このO Terno作品については今回はじめて聴いたのですが、確かに出だし、ポルトガル語の響きもあわさり、ボサノヴァ風の洒落たポップソングというイメージからスタートします。しかし、聴き進むにつれて、そのような印象は徐々に変わっていきました。

このO Ternoの音楽の特徴について述べるとすると、まずは美メロという表現もピッタリくるメロディアスで美しいメロディーラインが流れているという点。そして、どこかレトロな雰囲気を感じさせる懐かしさを感じるという点の2点でしょう。2曲目の「Pegando Leve」などはまさに60年代のフォークミュージックを彷彿とさせるような暖かくも懐かしいポップソング。アコースティックな曲調とあわせて、その美しくも懐かしいメロディーラインに胸が熱くなってくるような楽曲になっています。

タイトルチューンである「Atras/Alem」も同じく暖かさを感じさせるポップス。「Nada/Tudo」もホーンやピアノの音色が入り、ジャジーに聴かせつつも暖かいメロディーラインとサウンドが魅力的な作品に。「Bielzinho/Bielzinho」も軽快なリズムながらもストリングスの音色にどこかオールディーズの色合いを感じさせるポップスに仕上がっています。

後半もアコギをつま弾きながらも物悲しく聴かせる「O Bilhete」、アコギでしんみり聴かせつつ、最後に流れ出すストリングスの音色にレトロな雰囲気を感じる「Passado/Futuro」、さらにはピアノとストリングスをバックに哀愁感たっぷりに歌い上げる「E no Final」など、最後の最後まで美しくも懐かしいメロディーラインとサウンドを聴かせるポップソングが並びます。

フォーキーな雰囲気やオールディーズな要素も入った懐かしくもポップな楽曲の数々は、いい意味で非常に聴きやすく、ブラジル音楽という枠組みを超えて、幅広い層にアピールできそうな魅力を持っています。そこに歌われるポルトガル語の歌声は、我々にとってはエキゾチックな要素を感じさせ、このアルバムの中で、ちょうどよく、味付けを加えるような調味料のような役目を果たしています。そんなポップスリスナーなら間違いなく気に入りそうな傑作アルバムに仕上がっていました。

そんな中で我々日本人にとって要注目なのが「Volta e Meia」でしょう。本作もストリングスの音色をバックにした懐かしさを感じさせるポップソングに仕上がっているのですが、なんとかの坂本慎太郎がゲストに参加。ドイツのフェスで共演したことにより実現したコラボなのですが、楽曲の中でポエトリーリーディングとして参加。その詠まれる詩は日本語で、日本人にとってはここだけ歌詞の内容がわかるのですが、楽曲の雰囲気とはちょっと異なるサイケさを感じる不思議な世界観が読まれており、違和感を覚えてしまうのですが…ひょっとしてポルトガル語の歌詞の内容は、ここで読まれている日本語の内容と通じるようなサイケな世界観によるものなのでしょうか?

そんな日本人にとっても聴きどころある魅力的な本作。前述の通り、ブラジル音楽というカテゴリー抜きにして非常に楽しめるポップなアルバムに仕上がっていました。年間1位も納得の傑作。ポップミュージック好きならチェックして損のない1枚です。

評価:★★★★★


ほかに聴いたアルバム

Indestructible/Flor de Toloache

こちらも2019年ベストアルバムで聴き逃した曲を後追いで聴いた1枚。こちらもMusic Magazin誌ラテン部門で1位を獲得したアルバム。ニューヨークで結成された女性4人組バンド。哀愁たっぷりのラテンが最初から最後まで続くアルバムに。ただラスト2曲は明るく爽快に歌ってアルバムを締めくくっており、聴いた後はさわやかな風が通り抜けて行くよういに感じる作品に。哀愁たっぷりのラテンの楽曲の中に、どこか感じる都会的な爽やかさが大きな魅力となっているアルバムでした。

評価:★★★★★

| | コメント (0)

2020年4月12日 (日)

強烈なトライバルのリズムがインパクトに

Title:Ancestral Recall
Musician:Christian Scott aTunde Adjuah

もう4月、1年も3分の1を過ぎながら恐縮ですが、本作も2019年に各種メディアで高い評価を受けたアルバムのうち、聴き漏らしていたアルバムを後追いで聴いた1枚。本作は2019年Music Magazine誌「ジャズ」部門で1位となったアルバムです。今回紹介するアルバムは、今、最も注目すべきジャズ・トランぺッターの一人、Chistian Scottによるアルバム。本作は、グラミー賞のベスト・コンテンポラリー・インストゥルメンタル・アルバム部門にノミネートされるなど、高い評価を受けています。ちなみにちょっと読みにくいミュージシャン名は「クリスチャン・スコット・アトゥンデ・アジュアー」と読むようです。

さて、そんな絶賛を受けている本作ですが、まず聴いてみるとジャズのアルバム、というよりもアフリカ音楽、といったイメージすら受ける作風かもしれません。アルバム冒頭の「Her Arrival」は軽快な手拍子とパーカッションによるポリリズムなサウンドに、トライバルな雰囲気を強く感じさせます。続く「I Own The Night」も強烈な打ち込みによるトライバルなリズムがまずは強いインパクトに。さらに「The Shared Stories of Rivals(KEITA)」に至っては、猛獣の咆哮がサンプリングされるなど、強烈なサウンドが強い印象を受ける作風に仕上がっています。

かと思えば後半、「Ritual(Rise of Chief Adjuah)」に登場するのは、日本の盆踊りや民謡を彷彿とさせるような鉦のリズム。「Before」で流れてくる太鼓と鉦のリズムにも、どこか和風なものを感じさせます。ここらへんが本当に日本の音楽から影響を受けたのかは不明ですが、「トライバル」という要素においてアルバムの中で共通項として扱われている内容となっています。

そんな迫力あるリズムの連続の中で聴こえてくるのが、クリスチャン・スコットのトランペットの音色。どの曲も非常にどこか悲しげで哀愁感の漂うトランペットが大きなインパクトを感じさせます。トライバルな雰囲気の漂うリズムとは対照的に非常に洗練されたサウンドになっているのが印象的で、土着的なリズムが強烈に流れてくる中だからこそ、彼のトランペットの音色がその中でくっきりと浮かび上がってくるような印象を受けました。

また、トライバルなサウンドだけではなく、「Prophesy」ではメタリックなエレクトロサウンドの中で、トランペットの音色が流れ出したり、「Diviner(Devan)」でも優しく奏でられるフルートの音色が強い印象を与えたりと、トライバル一辺倒ではない楽曲のバリエーションも大きな魅力に。様々な要素の詰め込まれたアルバムになっており、彼のジャズに捕らわれないサウンドに対する強い意欲を感じさせます。Music Magazine誌の年間1位やグラミー賞ノミネートも納得の傑作アルバム。ジャズという範囲に限らず、広いリスナー層を魅了しそうな1枚です。

評価:★★★★★


ほかに聴いたアルバム

Circles/Mac Miller

2018年8月にわずか26歳という若さでこの世を去ったラッパーのラスト作。ただ、HIP HOPという感よりも、エレクトロサウンドをバックに優しい雰囲気のポップスを静かに聴かせるローファイ気味のアルバムといった印象が強く、ラップを聴かせるのは数曲のみ。そういう意味ではポップスアルバムといった印象を強く受ける作品に。ボーカルの渋さといい、いい意味で老成しているような感もあるアルバム。これが最後というのは非常に残念です。

評価:★★★★★

| | コメント (0)

2020年4月11日 (土)

ティーンのあるあるを、ガレージサウンドにのせて

Title:ぼんぼん花ーーー火
Musician:ぼんぼん花ーーー火

え?これ、ミュージシャンの名前なの??と一度聴いたら忘れられないインパクトを持っている「ぼんぼん花ーーー火」。ここでも何度か取り上げているシンガーソングライター、町あかりが、ティーンを勝手に応援するために始めた新プロジェクト。2014年に4人組のガールズバンドとしてスタートしたのですが、その後、様々な変遷を経て、現在はギターボーカルのファイアーロケット・アカリなるミュージシャンと、現役高校1年生のドラマー、こころの2人組からなるバンド。町あかりは作詞作曲及びプロデュース、さらには衣装やジャケットデザインを担当し、バンドには、彼女に背格好、見た目、声がそっくりなファイアーロケット・アカリが参加し、町あかり本人はバンドには参加していない体となっています(笑)。

基本的には作詞作曲を手掛けていることもあり、楽曲自体は町あかりの音楽そのまんまな感じ。歌謡曲からの影響も強く感じる作風になっており、特に「宿題やったけどウチに忘れました」「関係者以外立ち入り禁止」など、こぶしを利かせたボーカルスタイルなども、歌謡曲っぽさを強く感じられる曲になっています。また、「寝ても眠い」など、一度聴いたら耳に残って忘れられなくなるような、妙なインパクトを持ったフレーズを繰り返すスタイルも町あかりと同様。とにかく妙なインパクトを持った曲が並んでいます。

ただ、町あかりのソロとは少々異なるのが歌詞の題材。「ティーンを勝手に応援する」ということもあって、ネタは「学生あるある」的なものがほとんどとなっています。もっとも、この日常生活のふとした「あるある」ネタをユニークに切り取るスタイルは町あかりの楽曲と同様。また、インパクトあるひとつのネタを曲全体に引っ張って行っているというスタイルも町あかりと同じ。そのため、視点はユニークでインパクトはあるものの、歌で歌っている内容は楽曲のタイトルの以上でも以下でもなく、ちょっと厳しいことを言ってしまうと、歌詞の「浅さ」が気になってしまいました。これは町あかりの曲のマイナスポイントとして以前から感じていたのですが、ぼんぼん花ーーー火でも、その傾向は同様でした。

またティーンの日常を描いている…ということですが、若干、これ、本当にティーンのあるあるなの??と思ってしまうような歌詞も少なくありませんでした。失礼ながら既にティーンではない町あかりが想像で描いているような印象も……。せっかく現役高校生がバンドとして参加しているのですから、歌詞のネタはこころに出してもらい、それを町あかりがインパクトある歌詞の形にしていく、といった感じの方がよかったようにも思われました。

一方で町あかりのソロと大きく異なっていたのがそのバンドサウンドでした。ギターボーカル+ドラムスという2ピースのスタイルなのですが、ノイジーなギターとドラムスのみというスカスカなガレージサウンド。いわばThe White Stripsを彷彿とさせるようなスタイルで、シンプルながらも非常にカッコいいガレージロックを聴かせてくれています。これが歌謡曲的なメロディーラインとはミスマッチなのですが、このミスマッチぶりがまたユニークで、ぼんぼん花ーーー火の大きな魅力に感じます。

そんな訳で、町あかりの魅力と弱点がそのまま反映された今回のバンド。また一方では2ピースのガレージロックという、町あかりのソロでは聴くことのできなかったスタイルを聴かせてくれて、それがこのバンドの大きな魅力であり個性にも感じました。とにかくインパクト満点ですし、歌謡曲バリのメロディーも一度聴いたら忘れらないような曲も多いため、町あかりが好きな人はもちろん、ポップス好きなら聴いて損のないアルバムだと思います。今後は町あかりのソロと並行して、継続的に活動を続けるのでしょうか。町あかりのソロともども、期待したいところです。

評価:★★★★


ほかに聴いたアルバム

ミラクルミーE.P./あっこゴリラ

かなり強烈な女性の本音を綴ったメッセージ性強いラップを歌うあっこゴリラの5曲入りのEP盤。本作も強烈なメッセージ性の強い楽曲が並んでいます。彼女のラップにはかなりの迫力があるのですが、一方、若干肝心のメッセージが耳に入ってこない部分も。メッセージの部分のリリックにもうちょっと工夫をしてラップを通じて上手く耳に入ってくるようなスタイルにした方がよりおもしろいように感じるのですが・・・。

評価:★★★★

あっこゴリラ 過去の作品
GRRRLISM

Smile/Eve

ニコニコ動画の「歌い手」やボカロPとして人気を博した男性シンガーソングライターによる新作。前作「おとぎ」の時は、いかにも米津玄師の2匹目のドジョウを狙うようなプロモーション活動が目立ちましたが、今回はさすがにちょっと落ち着いた感じに。全体的にアップテンポな曲調、ハイトーン気味なボイスといかにも「ボカロP出身のシンガー」のようなスタイルながらも、早口でまくしあげるタイプの曲は減り、一般性は前作よりも増した感じが。マイナーコード主体でダウナーな雰囲気の楽曲がメイン。現実の中でどこか違和感を覚えるような主人公が登場する世界観も確立しています。前作から一歩成長も感じられた作品でした。

評価:★★★★

Eve 過去の作品
おとぎ

| | コメント (0)

2020年4月10日 (金)

昭和を代表する音楽家の一代記

今日もまた、最近読んだ音楽関連の書籍の感想です。

今回読んだのは、戦前から戦後にかけて数多くのヒット曲を手掛け、高校野球大会歌「栄光は君に輝く」や、阪神タイガースの応援歌「六甲おろし」の作曲家としても知られる作曲家、古関裕而の評伝。近現代史の研究家として数多くの本を出版している辻田真佐憲氏による1冊です。3月から、古関裕而の生涯をモデルとしたNHK朝の連続テレビ小説「エール」がスタートし、彼に関連する数多くの本が出版されており、ちょっと言い方は悪いのですが、それに便乗した1冊。ただ、著者の辻田氏は、以前、彼の書いた「日本の軍歌」を読み、その平易な表現でありながらも、しっかりと実証データの裏付けにより書かれた誠実な仕事ぶりが気に入り、彼の著書を何冊か読み、本書もその流れで手にとり読んでみました。

さて、今回の本は、古関裕而の生涯について書かれた1冊。基本的には、その生い立ちに沿った伝記的な内容となっています。ただ、これまでの辻田氏の著書と同様、時には小説のように「セリフ文」まで登場するようなわかりやすい書き方ながらも、一方では過去の古関裕而の本を単純に要約するのではなく、しっかりと一次資料にもあたり、裏付けを取った上で丁寧に書いている内容となり、その誠実な仕事ぶりに安心感を持って読み進むことが出来る内容になっています。

構成的にはシンプルに古関裕而の生涯について書かれた内容なだけに、著者としての目新しい主張などがあるわけではありません。ただ、戦前から戦後の高度経済成長期を人気作曲家として生き抜いてきただけに、激動の昭和史と重ね合わさっている人生は、読んでいてひとつの物語りのように惹きつけられるものがあります。

ただ戦後の経済成長期も数多くのヒット曲を世に生み出してきた古関裕而でしたが、本書の比重としては比較的戦前期に比重を置かれていたように感じました。特に戦中では前線への慰問に関して多くのページが裂かれるなど、かなり詳細に記載。一方では戦後に関しては比較的あっさりとした表現になっていたようにも感じました。もともと著者の辻田氏は、軍歌研究家として世に出てきたように専門分野は戦中。そういう著者の得意分野ゆえ、戦中期の記載が分厚くなってしまったのでしょうか。

もっとも、戦前に人気作曲家となった彼は、戦後になってもその人気を持続。特にスランプになることもなく、最後まで落ちぶれることなく、第一線で活躍したまま生涯を閉じています。戦後の活躍についても個人的にはもっと知りたかったような気がする反面、彼の人生の「物語性」という意味においては、確かにどうしても戦前・戦中の方に比重が行ってしまうのかもしれません。

今回、同書を読み、あらためて古関裕而の曲を聴いてみたくなり、You Tubeなどを用いて何曲か聴いてみました。彼の曲は昔の曲らしく、一つの音に一つの言葉が割り当てられている、字余りの曲が普通になった今としてはかなりゆっくりでかつしっかりと歌い上げているようなスタイルになっています。かなり雄々しい力強い曲調も多く、それが古くは多くの軍歌、時代を下って多くの応援歌や社歌などに彼の曲が求められた要因でしょう。ただ、一方で、楽曲はどこかモダンな雰囲気があり、昭和歌謡曲のようなウェットさは薄いように感じます。古関裕而という名前は知らなくても「栄光は君に輝く」や「六甲おろし」のように、今なお多くの人に親しまれている曲が多いのは、そこらへんも今の耳でも違和感なく聴けるモダンさがあるがゆえ、のようにも思いました。

コロムビアの専属作曲家して迎え入られれ、本格的にプロとしての道を歩みだしたのが昭和5年。そして亡くなったのは平成元年だったそうですので、同書でも書かれている通り、まさに「激動の昭和を体現した作曲家」と言えるでしょう。私は彼の名前だけは知っていましたが、これだけ長い時代にわたり人気を持続させてきたという事実ははじめて知りました。次は彼の手掛けた作品をCDなどでまとめて聴いてみたいなぁ。

| | コメント (0)

2020年4月 9日 (木)

狼のアルバムが1位獲得!

今週のHot Albums

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

今週は、あの狼たちのアルバムが見事1位獲得です。

今週1位を獲得したのはMAN WITH A MISSION 「MAN WITH A "B-SIDES & COVERS" MISSION」。頭はオオカミ、身体は人間という究極の生命体の5人組…という設定でおなじみのバンドによる、結成10周年記念アルバムの第1弾。本作はタイトル通り、シングルのカップリング曲のうちアルバム未収録曲とカバー曲が収録されたアルバムとなっています。この10周年記念アルバム、4月29日にはリミックス盤、そして近日中にはベスト盤もリリース予定。とりあえずは幸先の良い1位獲得といった感じでしょう。CD販売数1位、ダウンロード数3位、PCによるCD読取数13位。オリコン週間アルバムランキングでも初動売上1万9千枚で1位獲得。ただし、オリジナルアルバムの直近作「Chasing the Horizon」の7万枚(2位)からは大幅ダウンとなっています。

2位にはHot100でTBS系ドラマ「テセウスの船」の主題歌「あなたがいることで」にロングヒットの兆しがある女性シンガーソングライターUruのニューアルバム「オリオンブルー」が先週の7位からランクアップ。3週目にして初のベスト3ヒットとなりました。CD販売数及びPCによるCD読取数で3位、ダウンロード数では見事1位を獲得しています。

そして3位にもロングヒット中Official髭男dism「Traveler」が先週と変わらず3位をキープ。ダウンロード数も先週と変わらず2位。PCによるCD読取数は3位から1位に、CD販売数も9位から6位にアップしており、まだまだ快進撃は続きそうです。

続いて4位以下の初登場盤ですが、まず4位には現在、人気上昇中の4人組ポップバンド、マカロニえんぴつのニューアルバム「hope」がランクイン。CD販売数では2位、ダウンロード数9位、PCによるCD読取数は28位にランクイン。オリコンでは初動売上1万1千枚で4位初登場。前作「season」の1万枚(5位)から若干のアップとなっています。

8位にはAqoursのメンバーでもある女性声優逢田梨香子「Curtain raise」がランクイン。CD販売数は5位だったものの、ダウンロード数21位、PCによるCD読取数54位で総合順位はこの位置に。オリコンでは初動売上8千枚で6位初登場。直近のEP盤「Principal」の1万4千枚(4位)からダウン。

そして最後、10位には岡村靖幸「操」がランクイン。80年代にデビューし、独特な日本人離れしたファンクミュージックと、キレッキレのダンスで数多くの熱心なファンを獲得している男性シンガーソングライター。約4年3ヶ月ぶりの新作となります。CD販売数7位、PCによるCD読取数17位。オリコンでは初動売上1万2千枚で3位初登場。前作「幸福」の1万8千枚(3位)からダウン。

今週の初登場盤は以上ですが、ロングヒットとしてはKing Gnu「CEREMONY」。今週は先週と変わらず5位をキープ。ただ、PCによるCD読取数は2位を維持しているものの、ダウンロード数が3位から5位にダウンしてしまっています。

今週のHot Albumsは以上。チャート評はまた来週の水曜日に!

| | コメント (0)

2020年4月 8日 (水)

今週はK-POPが1位

今週のHot100

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

新型コロナウィルスの影響で非常事態宣言が出されるなど、緊迫する日常の中、ライブもほとんどが中止という状況となり音楽界にも大きな影響を与えています。ただ、チャート的には今のところ大きな影響も与えているような感はありません。やはり「CDを買う」というスタイルから「ストリーミングで聴く」というスタイルに大きく変化したためでしょうか。まあCDも普通の通販で買えますし…。

そんな中で1位を獲得したのは韓国の男性アイドルグループSEVENTEEN「舞い落ちる花びら (Fallin' Flower)」が獲得しています。タイトル通り、和風な様相の漂うナンバー。ただ今風な要素を感じるエレクトロのアレンジにK-POPらしさを覚えます。CD販売数1位、またK-POPでは珍しく、ラジオオンエア数でも1位を獲得。ほか、PCによるCD読取数3位、Twitterつぶやき数7位と上位にランクイン。一方、ダウンロード数は25位、ストリーミング数は63位に留まっています。一方、オリコン週間シングルランキングでは初動売上33万4千枚で1位初登場。前作「Happy Ending」の25万4千枚(2位)よりアップしています。

2位3位はofficial髭男dism「I LOVE...」「Pretender」が今週も2曲並んでランクインしています。「I LOVE...」は今週もYou Tube再生回数及びストリーミング数で1位獲得。一方「Pretender」はYou Tube再生回数及びストリーミング数で2位と、You Tube再生回数とストリーミング数は2週続けてヒゲダンが1,2フィニッシュを達成しています。

ちなみに「宿命」「イエスタデイ」は今週も2週続けて9位、10位をキープ。これで今週もヒゲダンは4曲同時ランクインという快挙を続けています。

続いて4位以下の初登場曲ですが、今週の初登場は1曲のみ。8位にハロプロ系女性アイドルグループ、Juice=Juice「ポップミュージック」がランクインしています。タイトル通り軽快な80年代風のダンスチューン。曲の随所にどこかで聴いたことあるような80年代のヒット曲のフレーズが登場してきます。ちなみに作詞作曲はKANちゃん!歌詞もメロも非常に彼らしいナンバーになっています。CD販売数は2位ながらもダウンロード数19位、ラジオオンエア数79位、PCによるCD読取数13位、Twitter読取数40位とのびなやみ、総合順位はこの位置に。オリコンでは初動売上3万9千枚で3位初登場。前作「『ひとりで生きられそう』って それってねぇ、褒めているの?」の6万4千枚(3位)よりダウンしています。

そして今週も目立つのがロングヒット系。まずはLiSA「紅蓮華」。先週の6位から5位に再度アップ。ダウンロード数が5位から3位にアップ。ストリーミング数は先週から変わらず4位を、カラオケ歌唱回数も2位をキープ。そしてロングヒット曲の割には長らく低迷していたYou Tube再生回数が今週23位から8位に一気にアップ。ここに来て、さらなるロングヒットが見込めるのでしょうか。

King Gnu「白日」は5位から7位にダウン。若干失速気味ながらも、ストリーミング数及びYou Tube再生回数は先週と変わらず3位をキープ。カラオケ歌唱回数が3位から4位にダウンしていますが、まだまだ強さを感じる結果となっています。

今週のHot100は以上。明日はHot Albums!

| | コメント (0)

2020年4月 7日 (火)

自由度高いポップソングが魅力

Title:R.Y.C.
Musician:Mura Masa

今日紹介するミュージシャンはイギリスとフランスの中間地点に浮かぶ島、ガーンジー島出身という音楽プロデューサーでDJでもある、Mura MasaことAlex Crossanの2枚目となるアルバム。2年前にリリースしたデビューアルバム「Mura Masa」はグラミー賞の最優秀ダンス/エレクトロニックアルバムにノミネートされるなど高い評価を受け、一躍注目を集めるミュージシャンとなりました。日本人にとってはなじみのある「Mura Masa」という名前はもちろん、刀工の村正から命名された名前。単純に響きがよかったというだけの話らしいのですが、ポケモンや宮崎アニメを見て育ったという、日本に親しみの感情を持っているそうで、やはりそういう話を聴くと、純粋にうれしくなってきます。

さて、そんな彼の2作目になるアルバムですが、まずアルバム全体について言えば非常にシンプルでポップ。純粋に聴いていて楽しくなってくるような作品になっていました。基本的にはエレクトロサウンドをふんだんに取り入れたポップソングがメインになっているのですが、大きな特徴として非常にバリエーションがあり自由度の高いポップチューンという点。冒頭2曲「Raw Youth Collage」「No Hope Generation」は打ち込みのサウンドを入れつつも、ギターロックの色合いも強いポップチューンになっていますし、「vicarious living anthem」も打ち込みのサウンドを入れつつ、ギターを前面にフューチャーした、インディー系のギターロックバンドが奏でそうなポップチューンとなっており、まずはギターポップの色合いの強い曲が目立ちます。

かと思えば「I Don't Think I Can Do This Again」は女性ボーカルで爽やかなフォーキーなナンバーかと思えば、途中でビッグビートばりのエレクトロサウンドが飛び出してくるというユニークな展開。slowthaiをフューチャーした「Deal Wiv It」は軽快なエレクトロビートの飛び出すHIP HOPナンバー。「Today」はアコースティック風のギターをバックにしんみり聴かせるフォーキーなナンバー。かと思えば事実上のラストチューンである「Teenage Headache Dreams」はニューウェーヴ風のエレクトロナンバーに仕上げてきています。

全体的に自由度の高いポップチューンが並んでおり、ある意味、バラバラな作風がゆえに若干つかみどころのない部分も事実。統一感に欠けるという点はマイナスポイントと言えるかもしれません。ただ、どの曲も軽快でウキウキするようなポップチューンが並んでおり、作っているMura Masa自身も純粋に音楽を楽しんでいるんだろうなぁ、ということを強く感じるアルバムになっていました。

ちなみにデビューアルバムである前作「Mura Masa」もデーモン・アルバーンなど豪華なゲストが話題となりましたが、本作も豪華なゲスト陣がズラリ。前述のslowthaiをはじめ、「Today」ではTirzah、さらには「Teenage Headache Dreams」ではWolf AliceのEllie Rowsellが参加。このゲスト勢ゆえにさらにアルバムはバラバラ感を覚えるのですが、ただ、アルバムには大きなインパクトも与えています。

彼は今年のフジロックにも参加が決定しており、日本でも今後、さらなる注目を集めそう。日本人にとっても聴きやすいポップソングを奏でてくれていますし、これからさらに注目が集まりそうです。

評価:★★★★★


ほかに聴いたアルバム

2019 Grammy Nominees

毎年恒例のグラミー賞ノミネート作品を集めたコンピレーションアルバム。毎年、世界の(厳密には「アメリカの」ですが)音楽動向を知るのはうってつけのコンピレーション。本年は特にポップに軽快にまとめたJanelle Monae「Make Me Feel」やトライバルなリズムのラップを聴かせるCardi B「I Like It」の冒頭2曲が特に秀逸。トラップの作品が目立つのも2019年ならではといった感じでしょうか。全体的にHIP HOP勢やアメリカならではのカントリー勢が目立つ一方、ロック勢はこれといった作品がないのも、今の時代の趨勢を感じてしまいます…。全体的には豊作といった感じではないのですが、2年連続不作が続いた2017年、2018年に比べると、若干盛り返してきた感も。

評価:★★★★

Grammy Nominees 過去の作品
2011 GRAMMY NOMINEES
2012 GRAMMY NOMINEES
2013 GRAMMY NOMINEES
2014 GRAMMY NOMINEES
2015 GRAMMY NOMINEES
2016 GRAMMY NOMINEES
2017 GRAMMY NOMINEES
2018 GRAMMY NOMINEES

Man Alive!/King Krule

前作「The Ooz」も大きな注目を集めたイギリスの男性シンガーソングライターによる約2年ぶりの新譜。ローファイ気味なギターサウンドで静かに聴かせつつ、歌詞をかみしめるような力強さのあるボーカルスタイルで淡々と聴かせるスタイル。全体的に派手な作品はなく、メロディーラインにもわかりやすさは皆無ながらも、妙に耳に残るような楽曲に。ちょっと癖は感じられるミュージシャンなのですが、この癖が後をひく、そんなアルバムでした。

評価:★★★★

| | コメント (0)

2020年4月 6日 (月)

企画自体は非常におもしろいが

Title:都はるみを好きになった人 ~tribute to HARUMI MIYAKO~

1964年のデビュー以来「アンコ椿は恋の花」「好きになった人」「北の宿から」など数多くのヒット曲を放ち、まさに国民的な人気を誇る演歌歌手、都はるみ。2016年以降は事実上、活動休止の状態となっているのですが、そんな彼女に対するトリビュートアルバムがリリースされました。

このアルバムで非常にユニークなのは、演歌とは直接、縁のないような、ポピュラーミュージックのミュージシャンたちがトリビュートアルバムに参加しているという点。UAをはじめとして一青窈、怒髪天、民謡クルセイダーズ、畠山美由紀などなど、ちょっと異例なところではミッツ・マングローブ、大竹しのぶといったメンバーもトリビュートアルバムに参加しています。

演歌歌手の曲をあえて畑違いのポップミュージシャンがカバーするという企画自体にはとてもユニークなものを感じました。実際にポピュラーミュージックらしい、独特な色を出したカバーも少なくありません。例えばUAなどはジャジーな色合いのあるバンドサウンドをバックに煤けた雰囲気の彼女らしいボーカルで「北の宿から」をカバー。UAらしい曲に仕上げています。個人的に今回の面子で一番期待していた民謡クルセイダーズも、その期待通りに、民謡とラテンの要素を融合させた独特の解釈で「アラ見てたのね」をカバー。同じくラテン風にカバーした畠山美由紀の「大阪しぐれ」も、その感情こもったボーカルともども、非常に魅力的なカバーに仕上がっていました。

ほかにも怒髪天「涙の連絡船」では、歌い方は完全にど演歌ながらもバックはハードロックに仕上げており、自らの音楽を「リズム&演歌」と自称している彼ららしさを強く感じさせるカバーに仕上げています。ここらへん、ちょっと力技っぽい感じもするのですが、怒髪天らしさがよく出ているカバーと言えるでしょう。

このような魅力的なカバーも少なくありませんし、他のミュージシャンのカバーにしても基本的にボーカリストとして力量のあるミュージシャンばかりだっただけに、聴いていて辛くなるようなカバーはなく、そういう意味では安心して聴けるトリビュートアルバムになっていたと思います。ただ反面、都はるみの演歌をなぞっただけのようなカバーも少なくなく、歌い方にしてもこぶしを利かせる演歌のスタイルそのままといった歌い方がほとんど。そういう意味ではポピュラーミュージックのミュージシャンによるカバーにも関わらず、演歌の領域に入ってしまってカバーしているような曲が目立ったように思います。

個人的にはせっかく演歌をポップスのミュージシャンがカバーしているのだからこそ、こぶしを利かせたボーカルを聴かせるといった演歌の手法をあまり用いることなく、ポピュラーミュージックとして都はるみの曲を解釈し、演歌では表現できなかったような都はるみの曲の違った魅力をみせてほしかったようにも思うのですが、残念ながらそういったカバーはあまりありませんでした。企画としては非常におもしろかったですし、参加ミュージシャンもそれなりに上手くカバーできていたとは思うのですが、その点は少々残念に感じました。

ただラストを飾る大竹しのぶの「千年の古都」は素直な歌い方によるカバーになっており、彼女のボーカルも技巧的には決して上手いわけではないのに、表現力があって魅力的な聴かせるカバーに。今回のアルバムの中でもかなり健闘していたように感じます。そのため最後の後味としてはとてもよい感じで終わることが出来ました。

個々の曲自体は決して悪くありませんし、前述の通り、ハズレもありません。そういった意味では参加しているミュージシャンのファンや企画に興味を持った方、あるいは都はるみのファンの方もチェックして損のないアルバムだと思います。ただ、個人的にはもうちょっと都はるみのファンを怒らせるような、ポップミュージシャンらしい、演歌歌手が絶対思いつかないようなカバーが数曲あってもおもしろかったんじゃないかな、とは思います。いいトリビュートアルバムだとは思うのですが、ちょっと期待外れな部分も否めない1枚でした。

評価:★★★★


ほかに聴いたアルバム

新世紀/ポルカドットスティングレイ

かなりハイペースにアルバムもしくはミニアルバムをリリースしているロックバンド、ポルカドットスティングレイ。昨年10月にリリースされた「ハイパークラクション」からわずか3ヶ月弱のスパンでリリースされた4曲入り(CDでは+2曲のスタジオライブ音源)のミニアルバム。アップテンポで軽快、かつちょっとギターにファンキーさも加わっている点がユニーク。たった4曲なのでアップテンポな曲で一気に聴き切れるアルバムなのですが、やはり若干、インパクトの弱さが気になるところ。ただ、次のフルアルバムでは傑作を聴かせてくれるのでは・・・そんな期待も出来る作品でした。

評価:★★★★

ポルカドットスティングレイ 過去の作品
大正義
全知全能
一大事
有頂天
ハイパークラクション

By Your Side/Nothing's Carved In Stone

ELLEGARDENの生形真一がストレイテナーなどで活躍する日向秀和らと結成した4人組バンドのちょうど1年3ヶ月ぶりとなるニューアルバム。ほどよくノイジーで疾走感あるギターロック。洋楽テイストも強い一方、マイナーコード主体のメロディーラインは日本人的なウェット感も。以前はもうちょっとバラエティー富んだ楽曲を聴かせてくれていたように記憶するのですが、本作は似たようなタイプの曲が多く、インパクトの面でもちょっと物足りなかったような。聴いていて素直に楽しむことが出来るロックアルバムではあるとは思うのですが。

評価:★★★★

Nothing's Carved In Stone 過去の作品
Strangers In Heaven

| | コメント (0)

2020年4月 5日 (日)

懐かしいミュージシャンたち

本日は最近読んだ音楽関連の本の紹介です。アラフォーからアラフィフ世代には感涙モノの懐かしいアルバムを紹介する1冊が発売されました。

レコードコレクターの増刊としてリリースされているアルバム・セレクション・シリーズの最新作。今回は「ジャパニーズ・ロック80's」と名付け、80年代から90年代初頭のバンドブームの中で出てきたミュージシャンたちのアルバムを取り上げているアルバムカタログ本になっています。

今回のこの本で興味深いのはそのセレクトしているミュージシャンたち。80年代後半から90年代初頭というと、日本ではバンドブームと言われ、数々のバンドが誕生しブレイクしました。ただ一方でそういうバンドブームの中で出てきたミュージシャンたちに対する音楽ファンからの評価は決して高くなく、「音楽」的な側面から積極的にそういったミュージシャンたちを取り上げることはありませんでしたし、正直今でも、音楽的に高い評価を受けているのはブルーハーツ、ユニコーン、せいぜいBOOWY程度といった感じでしょう。

しかしこの本は一般的な評価の高くない80年代のバンドブームの中で出てきたミュージシャンたちをあえて取り上げて再評価しています。特に第1章にあたる「ARTIST PICKUP」で紹介されているミュージシャンでは、いままでこのタイプの本にあまり取り上げられないようなミュージシャンを大きく取り扱っています。TMネットワークやPRINCESS PRINCESSあたりは、この手の本で紹介されているのをはじめてみたような気すらします。さらにもうひとつユニークなのは、そういったバンドを、「売上」や「社会現象」という側面から取り上げるのではなく、徹底的に音楽の側面から評価している点。個人的にも中学生の頃に何度も聴いた懐かしいアルバムを、音楽的に分析している記事は非常に興味深く読むことが出来ました。

そういう意味で冒頭に書いた通り、80年代バンドブームをリアルタイムに体験してきたアラフォー、アラフィフ世代にとっては非常に懐かしく、自分の学生時代にトリップしたような感覚で読める1冊だったと思います。私のような40代半ばの世代にとっては、ここらへんのバンドブームは最後の最後を知っている世代。懐かしく読むことが出来、かつあらためてあの時代のアルバムを聴き直してみたいな、と強く感じたカタログガイドでした。

ただ一方で、結構癖の強い側面もあるガイド本だったようにも思います。「Introduction」に書かれている通り、あえて定番や有名作をはずしている部分もあるため、違和感のあるセレクトも少なくありません。例えば渡辺美里の欄では代表作の「ribbon」ではなく、正直、ファンの間ではあまり評価の高くない「Breath」と「Flower Bed」が取り上げられています。確かにこの時期の美里のアルバムにははずれはないのですが…彼女の本質が出ているのはやはり「ribbon」じゃないかなぁ…。

取り上げているミュージシャンも「80年代型ロックに特化」「ベテランやインディーズの作品は極力抑え」と書かれているのですが、その割には80年代を代表するような尾崎豊は「ARTIST  PICKUP」では取り上げられていませんし、後半になればなるほど、比較的サブカル系、インディー系のミュージシャンが目立ったような気もします。一方ではいかにも80年代的なたまは取り上げられていません。監修をつとまえた池上尚志の好みがかなり反映されているようにも感じました。

そのため、全くの初心者がこの本を参考に80年代ロックを聴き始める…にはちょっと注意が必要な感じもします。ただ本人曰く「これが80年代のジャパニーズ・ロックのニュー・スタンダードだ!というくらいの気持ちで選んでいる」という点はやはり買うべき点が多いように思われます。アラフォー・アラフィフ世代、BOOWYやTM、渡辺美里などにはまったことあるおじさん、おばさんたちは要チェックの1冊。この時代のミュージシャンは今のミュージシャンにも大きな影響を与えているので、20代、30代の方も、是非。これを機に、80年代ロックの再評価が進むのでしょうか。

| | コメント (0)

2020年4月 4日 (土)

不穏な雰囲気を感じつつも、ドリーミーなポップもしっかり聴かせる

Title:Miss Anthropocene
Musician:Grimes

カナダはバンクーバー出身の女性シンガーソングライター、Grimes。2012年にリリースした「Visions」が高い評価を受け、一躍注目のシンガーとなり、続く2015年の「Art Angels」も同じく各種メディアで絶賛を受けた彼女。2作連続で傑作を生み続けた彼女ですが、本作はそれに続く約5年ぶりとなるニューアルバム。ここ2作連続して高い評価を受けているだけにおそらく強いプレッシャーを受けたであろう彼女ですが、それを易々と乗り越える傑作アルバムをまたもやリリースしてきました。

今回のアルバムは「気候変動」をテーマとした作品。重いテーマ設定となった新作ですが、そのテーマ性を表すかのように1曲目「So Heavy I Fell Through the Earth」から不穏な雰囲気でアルバムはスタート。続く「Darkseid」もインダストリアルの色合いの強い、ヘヴィーでダークな作品になっていました。いままでの彼女の作品は、軽快なガールズポップという印象も受けるようなポップで明るい作風の曲が多かっただけに、ヘヴィーでダークな雰囲気の曲調には少々驚かされます。

その後も、ヘヴィーなギターサウンドが入った「My Name is Dark」やインダストリアル色の強いヘヴィーでメタリックな「We Appreciate Power」のようなヘヴィーでダークな作品が目立ちます。今回のアルバムのテーマ性を反映した不穏な雰囲気といった感じでしょうか。もっとも、これらの曲に関しても基本的にポップなメロディーラインは流れています。特に「We Appreciate Power」ではちょっと怪しげな雰囲気のメロディーラインが耳に残るインパクトたっぷりのナンバーになっており、以前のアルバムまで強く感じたGrimesの魅力はもちろんしっかり健在です。

もちろんポップで軽快な作品も本作でも多く聴かれます。冒頭のダークな2曲に続いてあらわれる「Delete Forever」はカントリー風の軽快でさわやかなナンバーですし、「Violence」もハイトーンボイスで美しく聴かせる、タイトルとは裏腹な、ニューウェーヴ風のドリーミーなポップ。鳥の声をサンプリングし、爽やかにスタートする「IDORU」も、まさに前作までの彼女の王道とも言える、キュートでメロディアスなガールズポップに仕上がっています。

全体的には、ドリーミーな雰囲気でニューウェーブの色合いも強いポップナンバーも目立った本作。ラストを締めくくる「So Heavy I Fell Through the Earth」は、ドリーミーなエレクトロポップながらも、どこか不穏さを感じる、という、ある意味今回の作品を総括するような楽曲で締めくくり。トリにふさわしい楽曲に仕上がっていました。

そんな訳で今回もしっかりと期待に応える傑作アルバムになっていました。3作連続傑作アルバムを安定的にリリースしており、徐々に人気の面でも高まってきているようで、本作ではイギリスのナショナルチャートで見事ベスト10入りを果たしています。また、今年を代表する傑作アルバムになった感もある1枚。彼女の快進撃はまだまだ続きそうです。

評価:★★★★★

Grimes 過去の作品
Visions
Art Angels

| | コメント (0)

2020年4月 3日 (金)

非常に自由度の高い音楽性が魅力

Title:In The Footsteps
Musician:Janusz Prusinowski Kompania

実はまだ細々と続いています。2019年に各種メディアで取り上げられたベストアルバムのうち聴きのがした作品を後追いで聴いたアルバム。今回はMusic Magazine誌ワールドミュージック部門で5位を獲得したアルバム。今回紹介するミュージシャンは、ポーランドの農村で奏でられる伝統音楽「マズルカ」を現代によみがえらせようとするグループ、Janusz Prusinowski Kompania(ヤヌシュ・プルシノフスキ・コンパニャ と読むそうです)。彼らが奏でるマズルカという音楽は、かのショパンにも影響を与えることでも知られており、今、このポーランドのワルシャワでは、このマズルカを現代によみがえらせようとするマズルカ・リバイバルが起きているとか。彼らはその代表的なミュージシャンだそうです。

CDを見る限りだと、彼らは4人組のグループ。用いている楽器もフィドル、アコーディオン、バイオリン、コントラバス、フルート、サックス、タンバリン、トランペットなど多種多少な楽器を用いているようです。そんな楽器を用いたポーランドの農村の音楽・・・というと、牧歌的で楽しく、かつ明るい音楽を想像できるかもしれません。実際にバイオリンが鳴り響く中、フルートが優しい音色を奏でる「Stepy」やトロンボーンやフィドルが明るいサウンドを奏でる「Powolniak」、ちょっと妖艶さを感じさせつつ、アコーディオンで明るい音色を奏でる、バルカン音楽の色が強い「Dobrzelin」など、いかにもヨーロッパの農村で奏でられそうな、牧歌的で明るいナンバーも少なくありませんし、そんな陽気なナンバーに聴いていてワクワクもさせられます。

しかし、アルバム全体としては決してそんな牧歌的で陽気なサウンド、という単純なアルバムにはなっていません。そもそもアルバムの1曲目「Ober Piotra Gacy」からして、フリーキーなバイオリンにポリリズム的なドラムが重なるという、かなり挑戦的な楽曲からスタート。さらに「Rydz」に至っては、ホーンセッションやフィドルの音が自由に絡み合う、ともすれば「サイケ」という言葉がピッタリと来るような楽曲に。「Rytka」もバイオリンにドラムの音が重なり複雑に聴かせるサウンドがループするという楽曲に。どこかサイケでトランシーな雰囲気を感じさせるような曲に仕上がっています。

全体的にはそれぞれの楽器が気ままに自身の音を奏でつつ、お互いの音を絡ませ合っていく、非常に自由度の高い音楽性を感じさせます。サイケやトランシーな要素を感じるアグレッシブで挑戦的な作品も少なくありませんし、「U jelenia rogi」ではコール&レスポンスとポリリズム的なパーカッションと、アフリカ音楽的な要素を感じさせたり、前述の通り、バルカン音楽の影響を感じたり、かと思えば「Tu bede lulat」ではアカペラによる独唱が流れてきたりと、ジャンル的にも高い自由度を感じさせます。サウンドを主体で聴かせるかと思えば、「Deszczowy」のような哀愁感たっぷりのメロディーを聴かせる歌モノもあったり、「Rubin」のような妖艶さたっぷりの楽曲もあったりと、まさに自由自在。様々なタイプの曲が次々と流れてきて、最後まで飽きさせない内容となっていました。

年間ベストクラスも納得の非常に優れた傑作アルバム。ちなみに昨年には来日公演も行われていたとか。これ、ライブで聴いたら楽しいだろうなぁ。見逃してしまったのは非常に悔やまれます。ワールドミュージック好きはもちろん、サイケな要素にロックファン、哀愁感あるメロや楽しい楽曲にはポップスファンも楽しめそうな、そんな1枚でした。

評価:★★★★★

| | コメント (0)

2020年4月 2日 (木)

今週もジャニーズ系が1位

今週のHot Albums

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

先週に続き、今週もジャニーズ系が1位を獲得しました。

今週、1位に初登場したのはKis-My-Ft2「To-y2」。これで「トイズ」と読むそうです。CD販売数及びPCによるCD読取数1位。オリコン週間アルバムランキングでは初動売上19万枚で1位獲得。前作「FREE HUGS!」の20万4千枚(1位)からダウンしています。

2位初登場は男性声優によるラッププロジェクト「ヒプノシスマイク -Division Rap Battle-」より、新宿を拠点としているという設定の麻天狼「天狼 -Before The 2nd D.R.B-」がランクイン。CD販売数2位、ダウンロード数1位、PCによるCD読取数1位。オリコンでは初動売上5万3千枚で2位初登場。前作「The Champion」の6万3千枚(3位)からダウンしています。

3位にはなんとOfficial髭男dism「Traveler」が先週の6位からランクアップ。1月20日付チャート以来、11週ぶりのベスト3返り咲きを果たしています。これで25週連続のベスト10入り。驚異的なロングヒットが続いています。各種チャートでもダウンロード数2位、PCによるCD読取数3位に加え、CD販売数もいまだ9位に入っており、その人気ぶりが伺えます。

続いて4位以下の初登場盤です。まず4位には刀剣男士 髭切膝丸 「ミュージカル『刀剣乱舞』 髭切膝丸 双騎出陣2019 ~SOGA~」がランクイン。ゲーム「刀剣乱舞」から派生したミュージカル「『刀剣乱舞』髭切膝丸 双騎出陣2019 〜SOGA〜」で歌われた曲を集めたアルバム。CD販売数3位ながら、ダウンロード数33位、PCによるCD読取数38位に留まり、総合順位もこの位置に。オリコンでは初動売上1万4千枚で3位初登場。刀剣男士シリーズでは前作、刀剣男士 formation of 三百年「ミュージカル『刀剣乱舞』 ~三百年の子守唄~」の1万3千枚(4位)から微増。

4位には和楽器バンドのベストアルバム「軌跡 BEST COLLECTION Ⅱ」がランクイン。和楽器を用いてポップスを演奏することで話題となったバンドの2枚目となるベストアルバム。2枚目、といっても前作「軌跡 BEST COLLECTION+」は2017年にリリースしたばかりですから、いくらなんでも乱発しすぎでは?オリコンでは初動売上1万枚で4位初登場。直近のオリジナルアルバム「REACT」の1万6千枚(5位)からダウン。ベスト盤としての前作「軌跡 BEST COLLECTION+」の4万2千枚(3位)からも大きくダウンしています。

9位には「名探偵コナン テーマ曲集6~THE BEST OF DETECTIVE CONAN6~」がランクイン。タイトル通り、日テレ系アニメ「名探偵コナン」の主題歌などを集めたベストアルバム。この枠は基本的にずっとビーイング系が抑えているため、B'zや倉木麻衣などビーイング系のミュージシャンがズラリと名前を連ねています。CD販売数7位、PCによるCD読取数51位。オリコンでは初動売上9千枚で6位初登場。同シリーズの前作で映画主題歌を集めた「劇場版 名探偵コナン主題歌集~"20"All Songs~」の初動売上1万3千枚(6位)からダウン。テレビ主題歌集としては前作となる「名探偵コナン テーマ曲集5~THE BEST OF DETECTIVE CONAN5~」の1万1千枚(2位)からもダウンしています。

最後10位には林原めぐみ「スレイヤーズ MEGUMIXXX」がランクイン。2008年にリリースされた、人気声優林原めぐみの楽曲のうち、アニメ「スレイヤーズ」に関連する楽曲を集めた「スレイヤーズMEGUMIX」を再編成し、当時未収録だった曲や、本作のための新曲を追加したアルバム。CD販売数7位、ダウンロード数14位、PCによるCD読取数59位。林原めぐみにしてもスレイヤーズにしても、既に「懐かしい」という感のする名前なのですが、それでもこれだけヒットするあたり、根強い人気を感じさせます。オリコンでは初動売上8千枚で9位初登場。林原めぐみの前作「Fifty〜Fifty」の5千枚(18位)からアップ。「スレイヤーズMEGUMIX」の1万5千枚(14位)からはダウンしています。まあ、こちらは2008年の作品であり、CDをめぐる環境が全く異なるので比較はできませんが…。

一方、ロングヒット盤ではKing Gnu「CEREMONY」が7位から5位に再びランクアップ。ダウンロード数も4位から3位に再びアップ。PCによるCD読取数も先週から変わらず2位をキープしています。

今週のHot Albumsは以上。チャート評はまた来週の水曜日に!

| | コメント (0)

2020年4月 1日 (水)

ロングヒットが目立つ中、1位は先週に引き続きAKB系

今週のHot100

http://www.billboard-japan.com/chart_insight/

今週のチャートは、タイトル通りで・・・

まず1位初登場が乃木坂46「しあわせの保護色」がランクイン。先週の19位からCDリリースにあわせてのランクアップ。CD販売数及びPCによるCD読取数1位、ダウンロード数12位、ストリーミング数61位、ラジオオンエア数6位、Twitterつぶやき数2位。オリコン週間シングルランキングでは初動売上99万5千枚で1位初登場。前作「夜明けまで強がらなくてもいい」の96万4千枚(1位)よりアップ。

そして2位3位は相変わらず強いOfficial髭男dism「I LOVE...」が2位、「Pretender」が3位と先週と変わらず。「I LOVE...」はダウンロード数及びPCによるCD読取数は2位にダウンしたもののストリーミング数及びYou Tube再生回数は1位をキープ。「Pretender」はストリーミング数及びYou Tube再生回数はそれに続く2位と、圧倒的な強さを見せつけています。

一方で「宿命」は7位から9位、「イエスタデイ」は8位から10位と今週はいずれも2ランクダウン。ただし今週もベスト10はキープしており、4曲同時ランクインは続いています。

続いて4位以下の初登場曲です。まず4位にAimer「春はゆく」がランクイン。劇場版「Fate/stay night [Heaven's Feel]」最終章主題歌。ストリングスを用いて和風に仕上げた哀愁感たっぷりのナンバー。ダウンロード数では見事1位を獲得。CD販売数3位、PCによるCD読取数4位、Twitterつぶやき数25位。ただし、ほかのチャートはいずれもランク圏外となり、総合順位は4位という結果になりました。オリコンでは初動売上3万枚で3位初登場。前作「Torches」の1万2千枚(6位)からアップしています。

初登場曲はもう1曲。7位にμ's「A song for You! You? You!!」がランクイン。アニメキャラによるアイドルプロジェクト「ラブライブ!」から登場したアイドルグループ。2016年より活動休止状態でしたが、「ラブライブ!」9周年記念シングルとなる本作で、約4年ぶりの新作発表となりました。オリコンでは初動売上4万1千枚で2位初登場。前作「MOMENT RING」の9万6千枚(2位)より大幅減となってしまいました。

初登場曲は以上3曲。一方、今週もロングヒット曲が目立っています。まずKing Gnu「白日」は先週と変わらず5位をキープ。ストリーミング数、You Tube再生回数及びカラオケ歌唱回数は先週から変わらず3位をキープ。まだまだロングヒットは続きます。一方、LiSA「紅蓮華」は先週の4位から6位にダウン。ダウンロード数は4位から5位にダウン。ただストリーミング数は先週から変わらず4位をキープ。カラオケ歌唱回数も先週から変わらず2位となっています。

今週のHot100は以上。明日はHot Albums!

| | コメント (0)

« 2020年3月 | トップページ | 2020年5月 »