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2020年3月 9日 (月)

アラフィフの飄々とした雰囲気で

Title:202020
Musician:斉藤和義

2020年にリリースされた自身20年目のアルバム…とまさにひねりなし、直球のアルバムタイトルが印象的な斉藤和義のニューアルバム。前作「Toys Blood Music」ではキャリア初となるアルバムチャート1位を獲得するなど、ここ最近、その人気が定着しつつあります。ただ一方で、どこか飄々としたスタイルが、彼が年を取るにつれ鮮明になってきたように感じます。昨年は寺岡呼人の呼びかけにより結成されたカーリングシートンズとしてアルバムをリリースし、ライブツアーも実施。その活動はより自由度を増しているような感じがします。

今回のアルバムにしても、アラフィフのおやじの飄々とした雰囲気が内容に反映されている印象を強く受けました。その中でももっとも印象的だったのが1曲目と最後に収録されているカバー。まず1曲目は1974年から75年に放送されて大きな話題となったドラマ「傷だらけの天使」の主題歌をカバー。さらにラストには1971年に放送されたテレビアニメ「アンデルセン物語」のエンディングテーマ「キャンティのうた」をそれぞれカバーしています。どちらも彼が子供時代に放送されたテレビ番組で流れた曲。アラフィフという彼の年齢をあえて前に押し出したような選曲となっており、そういう選曲からして、どこか飄々とした雰囲気を感じさせます。

そのほかの曲にしろ、彼らしい率直な思いを表現した自由度の高い歌詞が「飄々とした」というイメージを強めています。例えばファンキーなリズムがカッコいい2曲目の「万事休す」は、タイトル通り、日常の「万事休す」な出来事をファンクなリズムにのせて歌うユニークなナンバー。さらに「シャーク」は日々のぼやきをそのまま歌にのせた楽曲となっており、これまた彼らしい飄々とした雰囲気のナンバーになっています。

アルバム全体としては打ち込みを多く取り入れた前作「Toys Blood Music」から一転、ギターサウンドを主軸に据えたギターロックの作品がメインとなった本作。楽曲としても「小さな夜」は恋人の日常を描写した彼らしい優しさを感じるラブソングですし、アニメ「ちびまる子ちゃん」のエンディングテーマともなっている「いつもの風景」もタイトル通りの日常を描写した軽快なポップチューン。斉藤和義の世界観と「ちびまる子ちゃん」の世界観のちょうど交点にあたるような部分を歌で切り取った、彼らしいナンバーになっています。

そういう意味でも今回のアルバムは、実に斉藤和義らしいアルバムになったように感じます。また一方で、マンネリになることをおそれず、あえて自分らしさをそのまま表現しているスタイルにも、どこかアラフィフの彼らしい肩の力の抜けた自由さ、飄々とした雰囲気も感じてしまいました。一方で「アレ」のようなエレクトロチューンをさりげなく入れてくるあたりにも、決して過去をなぞるだけのスタイルではないことも強くアピールしているようにも感じました。

そしてその結果、その斉藤和義らしさが非常に良いようにアルバムに作用しているアルバムになっていたようにも感じます。やはり彼が慣れたスタイルでの楽曲であるだけに、歌詞にしろサウンドにしろとてもしっくりしたものを感じますし、また何より彼が自由に、楽しんで曲づくりをしていることを感じる作品になっていました。個人的にここ数作、悪くはないけどいまひとつピンと来ないアルバムが続いていた斉藤和義ですが、本作は「ARE YOU READY?」以来の傑作アルバムに仕上がっていたように感じます。アラフィフの彼の飄々としたスタイルがいい意味で味になっていた、そんな傑作でした。

評価:★★★★★

斉藤和義 過去の作品
I (LOVE) ME
歌うたい15 SINGLES BEST 1993~2007
Collection "B" 1993~2007
月が昇れば
斉藤“弾き語り”和義 ライブツアー2009≫2010 十二月 in 大阪城ホール ~月が昇れば 弾き語る~
ARE YOU READY?
45 STONES
ONE NIGHT ACOUSTIC RECORDING SESSION at NHK CR-509 Studio
斉藤
和義

Kazuyoshi Saito 20th Anniversary Live 1993-2013 “20<21" ~これからもヨロチクビ~ at 神戸ワールド記念ホール2013.8.25
KAZUYOSHI SAITO LIVE TOUR 2014"RUMBLE HORSES"Live at ZEPP TOKYO 2014.12.12
風の果てまで
KAZUYOSHI SAITO LIVE TOUR 2015-2016“風の果てまで” Live at 日本武道館 2016.5.22
斉藤和義 弾き語りツアー2017 雨に歌えば Live at 中野サンプラザ 2017.06.21
Toys Blood Music
歌うたい25 SINGLES BEST 2008~2017
Kazuyoshi Saito LIVE TOUR 2018 Toys Blood Music Live at 山梨コラニー文化ホール2018.06.02
KAZUYOSHI SAITO 25th Anniversary Live 1993-2018 25<26 〜これからもヨロチクビーチク〜 Live at 日本武道館 2018.09.07
小さな夜~映画「アイネクライネナハトムジーク」オリジナルサウンドトラック~
弾き語りツアー2019 "Time in the Garage" Live at 中野サンプラザ 2019.06.13


ほかに聴いたアルバム

Suchmos THE LIVE YOKOHAMA STADIUM 2019.09.08/Suchmos

タイトル通り、昨年の9月に横浜スタジアムで行われたSuchmosのライブを収録した、彼ら初となるライブアルバム。基本的には原曲から大きく変わった感じはなく、彼らの独特のグルーヴ感はもちろんライブでも健在なのですが、原曲よりもバンド色は強くなった印象も。スタジアムよりも、もうちょっと狭い箱の方が似合う印象もあるのですが、今の彼らの人気だと、なかなかそういうライブハウスでは演れないだろうなぁ。

評価:★★★★

Suchmos 過去の作品
THE KIDS
THE ASHTRAY
THE ANYMAL

BORDERLESS/雨のパレード

昨年1月にベースの是永亮祐脱退後、初となるフルアルバム。以前から様々な音楽性を取り入れた「意識高い系」という印象のあった彼らですが、今回のアルバムもAORやラップ、エレクトロ、ソウルなどの要素をふんだんに取り入れて、今まで以上に幅広いジャンルを取り入れています。まさにタイトル通りの「BORDERLESS」な1枚。ただ以前から気になっている楽曲自体のインパクトの薄さは相変わらずで、1曲1曲は悪くないのですが、アルバム全体としては印象が薄くなってしまっているアルバムになってしまっています。

評価:★★★★

雨のパレード 過去の作品
Change your pops
Reason of Black Color

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