アラフィフのおじさんが集結
Title:氷上のならず者
Musician:カーリングシトーンズ
かなりユニークな「新人バンド」が登場しました。名前はカーリングシトーンズ。全員、カーリング経験者という特徴を持つグループで、ミュージシャン名はローリングストーンズをもじったもの。アルバムタイトルも「メインストリートのならず者」ならぬ「氷上のならず者」というタイトル。メンバーは寺岡シトーン、奥田シトーン、斉藤シトーン、浜崎シトーン、キングシトーン、トータスシトーンの5人。今、もっとも注目を集める「新人バンド」のひとつです。
・・・・・・といってもジャケット写真ですぐにわかるかと思います。元JUN SKY WALKER(S)のメンバーで、ゆずをはじめとして数多くのミュージシャンへのプロデュース業で知られる寺岡呼人、ご存じ奥田民生、斉藤和義、FLYING KIDSの浜崎貴司、真心ブラザーズのYO-KING、そしてトータス松本という、そうそうたるメンバーが顔をそろえるこのバンド。もともとは寺岡呼人のソロ25周年の記念ライブを機に結成されたバンドだそうですが、その後、ライブも実施。さらに結成から1年以上を経過して、ついにデビューアルバムがリリースされました。ちなみに「カーリング経験者」というのはもちろん洒落・・・なのですが、その後、全員、カーリングを経験したとか。その後、カーリングの大会のテーマソングに彼らの曲が起用されたり、「涙はふかない」が日本カーリング協会の公式リコメンドソングに起用されたりと、しっかりカーリングと縁のあるグループとなってきました。
メンバー全員がちょうど52歳から54歳という同世代。それぞれが自らのバンドで一定以上のキャリアを確立したメンバーたちが一堂に会したバンド。メンバーそれぞれ別に本拠地のあるミュージシャンばかりなゆえに、カーリングシトーンズとしては、かなり自由度の高い、そして肩の力の抜けた楽曲が並んでいます。メンバーそれぞれが作曲に参加しているのですが、それぞれが好き勝手に自分たちの演したい曲を演奏し、かつ他のメンバーもそれをサポートする、アラフィフの彼らだからこその、ある種の余裕を感じられる作品になっています。
特にアルバムの前半は、メンバー各々が作詞作曲を担当した、それぞれの個性が強く発揮された楽曲が続きます。まず全農日本カーリング選手権のテーマソングに抜擢された「スベり知らずシラズ」は、いかにもな奥田民生の個性が強く出ているギターロックナンバー。「何しとん?」は斉藤シートンこと斉藤和義作詞作曲による楽曲なのですが、タイトルからしてせっちゃん節の、脱力感あるサーフソングに。さらに「俺たちのトラベリン」は浜崎貴司こと浜崎シートンによる郷愁感あふれるカントリーロックに。「わかってさえいれば」はまさに王道のブルースナンバー。作詞作曲を手掛けるトータスストーンことトータス松本の趣味性が思いっきり表に出たナンバーに。そしてキングストーンことYO-KINGが手掛ける「マホーのペン」は彼らしい泥臭いブルースロックのナンバーになっています。各々が思いっきり好きなことを演っている楽曲が続いており、下手すれば各々が所属しているバンド以上に、好きなことを演っているという印象すら受けました。
その後もアラフィフの彼ららしい余裕を感じられるユニークな楽曲が続きます。タイトル通りのエロ歌詞の「B地区」はなんちゃってHIP HOPになっていますし、「出会いたい」はヘヴィーな昔ながらもハードロックナンバー。おなじくおやじらしさが満載のエロ歌詞「Oh!Shirry」はオールディーズと、メンバーそれぞれの深い音楽的素養を感じつつ、そんな音楽性を下敷きに、自由に楽しく遊びまくっている楽しい曲が並びます。また「B地区」「Oh!Shirry」などのエロ歌詞は、まさにおやじらしさ満載。ただ、こういう曲をさらっとやれてしまうあたり、彼らのある種のカッコよさを感じます。
最後を「涙はふかない」はまるで昭和40年代あたりのテレビ番組のエンディングを彷彿させるような楽曲。おそらく、彼らの子供時代である昭和40年代をあえて意識したのではないでしょうか。昭和50年代生まれの私にとっては若干世代が違うのですが、ただ、どこか子供の頃に、お茶の間で見ていたテレビ番組を思い出させるような、懐かしさを感じる楽曲に。最後の最後まで遊び心を感じさせるアルバムになっていました。
しかしよく考えれば寺岡呼人、奥田民生、斉藤和義、浜崎貴司、YO-KING、トータス松本が集まったバンドってかな~~~り豪華だよなぁ。それだけ豪華なメンバーが、それぞれの持ち味を生かしつつ音楽を楽しみながら作ったアルバム、が傑作でない訳ありません。さすがにこれだけ豪華なメンバーで今後もコンスタントに活動を続けるのは難しいのでしょうが・・・次のアルバムは5年後、10年後とかでもいいので、断続的にでも活動は続けてほしいなぁ。なにげにアラカンになった彼らの音楽もすごく味があって素晴らしそうですし。
評価:★★★★★
ほかに聴いたアルバム
C3/Base Ball Bear
Base Ball Bearの1年9か月ぶりとなるニューアルバム。「聴いたことある曲が多いな…」と思ったのですが、全12曲中8曲は、先行のEP「ポラリス」「Grape」収録作のため。いずれもアルバムバージョンでの収録とはなっているのですが、そういう意味ではちょっと目新しさに欠けるアルバムだったような印象も。軽快なギターロックはいかにもBase Ball Bearらしい感じ。楽曲的にはいつものBase Ball Bearで目新しさはないのですが、バンドサウンドを聴いて、すぐに「Base Ball Bearだ!」とわかるのは、彼らの大きな強みでしょう。
評価:★★★★
Base Ball Bear 過去の作品
十七歳
完全版「バンドBについて」
(WHAT IS THE)LOVE&POP?
1235
CYPRESS GIRLS
DETECTIVE BOYS
新呼吸
初恋
バンドBのベスト
THE CUT
二十九歳
C2
増補改訂完全版「バンドBのベスト」
光源
ポラリス
Grape
MISIA SOUL JAZZ BEST 2020/MISIA
今回のアルバムは約7年ぶりとなるMISIAのベストアルバム…なのですが、本作は「SOUL JAZZ」をコンセプトに、トランぺッターの黒田卓也とコラボレート。ビックバンドによるアレンジも取り入れた、ジャズに寄ったアルバムになっている……はずなのですが、率直に言えば、原曲と比べて大きくジャズに寄った、という印象はあまり強くありません。確かにホーンセッションなどを取り入れているのですが、原曲からあまりイメージの変化がありません。それというのも、やはり原曲の中でMISIAのボーカルの要素が大きすぎて、少々アレンジを変えたところで原曲のイメージがあまり変わらないから、といったところが大きな理由でしょう。また今回のアルバムも正直、MISIAのボーカルを中心に据えすぎた結果、「SOUL JAZZ」というコンセプトからするとかなり中途半端に終わってしまっていた印象があります。結果、単なるMISIAのベストアルバムで、ちょっとだけバージョンが違うね、というくらいの出来に終わってしまっていました。単純にMISIAのアルバムとして考えると★5つなのですが、「SOUL JAZZ」という点で考えると、正直、★3つ程度の出来。間を取って・・・
評価:★★★★
MISIA 過去の作品
EIGHTH WORLD
JUST BALLADE
SOUL QUEST
MISIAの森-Forest Covers-
Super Best Records-15th Celebration-
NEW MORNING
MISIA 星空のライヴ SONG BOOK HISTORY OF HOSHIZORA LIVE
MISIA SOUL JAZZ SESSION
Life is going on and on
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