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2020年3月24日 (火)

リズムを楽しむ

Title:Workaround
Musician:Beatrice Dillion

イギリスはロンドンを拠点に活動を続ける女性DJ/プロデューサーで自らもミュージシャンとして活躍を続けるBeatrice Dillion。そんな彼女のデビューアルバムがリリースされました。もともと2017年から2019年にかけてロンドン、ベルリン、ニューヨークで録音を続けてきた作品を収録さいているそうで、まさに満を持してリリースしたアルバムと言えるのかもしれません。

・・・といっても今回のアルバムで私自身、はじめて彼女の名前も知りましたし、音を聴くのも本作がもちろんはじめて。どんなアルバムなのか期待しつつ聴いてみたのですが・・・簡単に言ってしまうと、リズムがとても気持ちよく響くアルバムになっていました。

アルバムは全14曲なのですが、うち3曲を除く、ほかすべての曲のタイトルが「Workaround+数字」(1曲のみ「Workaround Bass」となっていますが)という構成。41分という比較的短めの構成なのですが、楽曲は4分から5分程度の曲がメインながらも、1分程度であっという間に終わる曲やわずか12秒で終わる曲も収録されています。

ただ、楽曲のタイトルが一緒なのは、似たような組曲的な作品が並んでいるから、ではなく、おそらく楽曲の匿名性を重視したのでしょう。楽曲的にはどの曲も彼女の異なるアイディアがつめこまれていたバラエティー富んだ楽曲が並んでいました。そんなバラエティー富んだ作風ながらもどの曲もリズムを聴かせるような作品になっているのが共通項。また、比較的音を絞ったシンプルで、かつ空間を聴かせるような作風になっていたのも、どの楽曲に共通する点でした。

また、どこかポップで優しい雰囲気を感じさせるのも大きな魅力で、例えば1曲目「Workaround One」ではタブラの丸みを帯びた音色がアフロな雰囲気と共に優しい雰囲気を醸し出しています。続く「Workaround Two」では哀愁味を帯びたメロディーラインが登場。ポップなメロディーが流れてくる楽曲になっています。

ラテンギターが流れる「Workaround Seven」が顕著なように、アフロカリビアンからの影響を強く受けているのも特徴的。ただ、楽曲的にはその一言に留まらず、「Workaround Five」では静寂の中、よりメタリックなサウンドを静かに聴かせるような作品になっていますし、「Workaround Eight」「Workaround Nine」ではむしろエレクトロニカの様相が強いサウンドを楽しむことが出来ます。

ひとつのアルバムの中で様々なビートを楽しめるバラエティー富んだ作品ながらも、全体的には一体感もあり、独特なリズム感が強い印象に残る作品に仕上がっていました。どこかポップで優しさを感じされるのも、女性ミュージシャンならでは・・・・・というと、ちょっと偏見でしょうか?ただ、いい意味でポピュラリティーのあるアルバムに仕上がっていたと思います。これからの活躍が楽しみになってくる傑作でした。

評価:★★★★★


ほかに聴いたアルバム

We're New Again - A Reimagining by Makaya McCraven/Gil Scott-Heron,Makaya McCraven

今回紹介するGil Scott-Heronは黒人吟遊詩人としてその名を知られ、主に詩や小説の分野で活躍。その後、自らの詩をのせた音楽を発表し、ミュージシャンとしても活躍。特に、そのポエトリーリーディングのスタイルはラップの始祖の一人とみなされるほどでした。本作は、そんな彼の遺作「I'm Here Now」を新進気鋭のジャズ・ドラマー、Makaya McCravenが再構築したアルバム。Gil Scott-Heronの渋さもあり、どこかリズムにのっているかのようなポエトリーリーディングに、ファンキーでグルーヴィーなサウンドをジャジーにアレンジ。全体的に非常に「黒い」雰囲気が漂う非常に渋く、かつカッコいいアルバムに仕上がっています。Gil Scott-Heronの本職は詩人であり、歌詞が売り。その点は残念ながら直接聴き取れないのが残念なのですが・・・その分、純粋にサウンドを楽しめるという点はプラス、かも。

評価:★★★★★

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