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2020年3月 3日 (火)

キンシャサから世界へ!

Title:BANTOU MENTALE(邦題 キンシャサから世界へ!)
Musician:BANTOU MENTALE

今回紹介するのも、各種メディアで年間ベストに選ばれた作品を後追いで聴いた1枚。スタッフ・ベンダ・ビリリやカサイ・オールスターズなどにも参加したコンゴはキンサシャ出身のドラマー、Cubain Kabeyaを中心としてベルギーで結成したバンド。数多くの注目のミュージシャンを世界に送り出しているコンゴですが、またもや注目のバンドが登場してきました。「キンシャサから世界へ!」というかなり仰々しいアルバムタイトルがつけられた本作ですが、今回のアルバムまさにそのタイトルに見合った、非常にカッコいいアルバムとなっていました。

アルバムは、まず抑制的な静かなサウンドの中で、トライバルな雰囲気のボーカルとコーラスで重々しくスタートします。そんな1曲目「Zanzibar」は中盤から徐々にテンポがまし、うねるようなサウンドが展開。そのままなだれ込む「Hallelujah」がしびれるほどカッコいい楽曲に!へヴィーでノイジーな打ち込みのサウンドが展開されるビッグビート風のリズムにコール&レスポンス的なボーカルがのる、Prodigyを彷彿とさせる重厚なサウンドが強いインパクトを与えています。

その後も「Suabala」のようなビッグビートからの影響も感じるような打ち込みを用いた強いビートの楽曲や、「Papa Jo」「Syria」のようなサイケでグルーヴィーなサウンドを聴かせるような楽曲など、分厚いサウンドでロックテイストの強いサウンドの中に、トライバルなリズムやボーカルを加えたような楽曲が目立ちます。また「Yoka chagrin」はダブのテイストの強い作品に。こちらもコールアンドレスポンスなボーカルとコーラスラインにトライバルな雰囲気を感じつつ、哀愁感のあるメロディーが印象に残る楽曲になっています。

全体的には武骨といったイメージの強い楽曲に。荒々しさを感じさせるサウンドは、まさにスタッフ・ベンダ・ビリリやカサイ・オールスターズなどといったコンゴのミュージシャンからの流れを強く意識させるような楽曲になっていると同時に、「Chateau Rouge」のようにエレクトロサウンドを取り込んだ楽曲なども目立ち、どこかあか抜けたバタ臭さも感じる、そんなアルバムになっています。メンバーはアフリカ勢がメインながらも、ベルギーで結成した彼らは、まさにコンゴのサウンドと西洋のサウンドを上手く融合した独特の音楽を作り上げている、といってもいいでしょう。

終盤も、カウベルで軽快なリズムを奏でつつ、サイケなサウンドでグルーヴィーに聴かせる「Bakoko」、そして最後は力強いサウンドに壮大な雰囲気を感じさせる伸びやかなボーカルが印象に残る「Sango」で締めくくり。これでもかというほどに音を重ねたサウンドには、どこか「ベタ」さも感じさせるのですが、最後の最後までダイナミックなサウンドを繰り広げる本作は、素直にそのカッコよさに身をゆだねることのできる傑作アルバムに仕上がっていたように感じました。

まさに邦題の通り、キンシャサから世界を目指すことのできるそんなアルバム。年間ベスト選出の納得のアルバムでした。これがデビューアルバムなのですが、今後もコンスタントに活動を続けるのでしょうか?これからの活躍も非常に楽しみになってくる1枚でした。

評価:★★★★★


ほかに聴いたアルバム

50 - Just Warming Up!/Lucky Peterson

アメリカのブルースミュージシャン、Lucky Petersonのニューアルバム。コンテンポラリー色の強いブルースをメインに、ソウルやゴスペル、R&Bなどの要素を取り入れたブラックミュージック全般を幅広く演奏しているような印象。楽曲によってはなんとラップを取り入れた曲まであり、齢55歳となる彼ですが50代でも「単なるウォーミングアップだ!」といっている彼の音楽に対する柔軟で若々しい姿勢を感じます。ここ数年、コンスタントに作品をリリースし続けているようですが、その積極的な活動はまだまだ続きそうです。

評価:★★★★

Lucky Peterson 過去の作品
EVERY SECOND A FOOL IS BORN

Falaw/Luka Productions

こちらも各種メディアの2019年ベストアルバムを後追いで聴いた1枚。本作は、先日紹介したAster Awekeに続くMUSIC MAGAZINE誌ワールドミュージック部門の2位に選ばれた作品。マリの首都バマコでトラックメイカーやラッパーとしても活躍しているルカ・グィンドによるプロジェクト。ンゴニやジェンベといったマリの伝統的な楽器を用い、同じくマリの吟遊詩人、グリオをゲストに迎えた作品で、トランシーで軽快なリズムにラップを取り入れたスタイルは現代風ながらも、その音色を含め、要所要所にマリの伝統音楽を取り入れたアルバム。全体的には軽快でリズミカルなトライバルのリズムが心地よく、全46分という短さもあり最後の最後まで一気に聴けてしまう作品になっています。サウンド的には若干軽すぎるかな、と感じる部分があったりするのですが、その軽快なリズムに心躍らされるアルバムでした。

評価:★★★★★

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