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2020年3月 2日 (月)

今回も攻撃性の強い作品に

Title:Music To Be Murdered By
Musician:EMINEM

今年1月17日に、突如サプライズリリースとなったEMINEMのニューアルバム。最近では大物ミュージシャンのアルバムが突然リリースされるケースは珍しい話ではありませんが、それでもSpotifyのニューリリースの項目に、見たことのないEMINEMのアルバムタイトルとジャケットがいきなり登場すると、やはり驚かされます。さらにこのアルバム、Billboardのアルバムチャートで初登場1位を記録。10作連続初登場1位というのはアメリカでは前人未到の記録だそうで、あらためてEMINEMの人気の健在ぶりをうかがわせます。

EMINEMといえば、前々作「Revival」が、内容的に彼らしい攻撃性がなりを潜め、かなり不評な出来に終わりました。しかし、前作「Kamikaze」ではそんなネガティブな世間の批評を思いっきりディスる彼らしい攻撃性が復活。彼のラップ上の人格であるスリム・シェイディも再登場し話題も集め、アルバムの評価も上々でした。そして今回のアルバムもEMINEMらしい攻撃性をさらに強めた楽曲に。前作「Kamikaze」リリース直後から激しいビーフ(ディスりあい)のあったマシン・ガン・ケリーとは「Unaccommodating」でまた容赦ない攻撃を行っているほか、ここ最近の仇敵となっていまっているTyler,the Creatorに対しても、彼の盟友、Earl Sweatshirtと共に「No Regrets」で強烈なディスをあびせかけています。

一方では「Those Kinda Nights」では、かのEd Sheeran、「Lock It Up」ではAnderson .Paakとコラボを行うなど、様々なラッパー、シンガーとのコラボを積極的に実施。特に「Godzilla」では昨年、わずか21歳という若さでこの世を去ったラッパー、Juice Wrldとのコラボが大きな話題に。テクニカルなマシンガンラップを繰り広げるナンバーとなっており、ラッパーEMINEMの実力をこれでもかというほど発揮した作品になっています。

ちなみに今回のアルバムタイトル「Music To Be Murdered By」は、かの映画監督、アルフレッド・ヒッチコックが1958年にリリースした音楽のアルバムタイトルから拝借したものだそうで、実際に、1曲目「Premonition」からいきなりヒッチコック監督の映画を彷彿とさせるような不気味な雰囲気からスタート。女性の悲鳴も聞こえてくる楽曲になっており、その不気味な雰囲気はアルバム全体を通じて流れています。今回の攻撃性の高いアルバムらしい、非常にダークさのあふれる展開となっています。

サウンド的には特に目新しい部分はなく、良くも悪くもいつものEMINEMといった感じ。それがまたいい意味で耳なじみやすい要因にもなっているのですが、一方では「Unaccommodating」ではなんとトラップを取り入れたりもしており、そういう意味では最近のサウンドへのアップデートも感じられる内容になっています。また、全20曲1時間4分というボリュームある内容なのですが、途中、2度、イントロ的な曲が挿入されており、全2部構成に。比較的長めのアルバムながらも2部構成にすることにより、メリハリがつき、聴きやすい内容になっていたように感じました。

そんな中でも特に今回のアルバムで注目度が高いのは「Darkness」でしょう。2017年にラスベガスで起きた銃乱射事件を素材とした物語性の強い歌詞になっており、銃乱射事件の犯人の視線から描きつつ、そこに自らの姿を重ね合わせた私小説的要素を重ね合わせた内容に。物語の不気味さや展開の妙などから、かの名曲「Stan」とも比較される作品になっています。特に本作ではMVを通じて、銃規制の強化を訴える楽曲にもなっており、楽曲としての完成度にうならされつつ、社会性の強いメッセージが強い印象に残る傑作となっていました。

そんな訳で、前作「Kamikaze」同様に、EMINEMらしさが非常に強くあらわれた傑作アルバムに。特に「Darkness」などは彼の作詞面での実力が存分に発揮された名曲に仕上がっていました。移り変わりの激しいHIP HOPシーンにおいて、いまだにトップを走り続ける彼は、ある意味驚異的とも言えるのですが、その加速度がさらに増したといえる本作。まだまだEMINEMはシーンのトップを走り続けそうです。

評価:★★★★★

EMINEM 過去の作品
RELAPSE
RECOVERY

THE MARSHALL MATHERS LP 2
REVIVAL
Kamikaze


ほかに聴いたアルバム

LOVE MORE/Maxim

THE PRODIGYのMCにより約14年ぶり3枚目となるソロアルバム。THE PRODIGYの流れをくんだようなビックビートのリズムを基本に、レゲエや、さらには今、流行のトラップの要素も取り入れるなど意欲的な作品が目立ちます。全体的にはミディアムテンポの曲が多く、ダイナミックかつリズミカルで高揚感のあるTHE PRODIGYと比べると、地味といった印象も受けてしまいますが、THE PRODIGYのイメージを崩さずに、THE PRODIGYとは異なるベクトルを示したという、ある意味、ソロらしい作品になっていました。

評価:★★★★

00959525/FOO FIGHTERS

00959525

FOO FIGHTERSがFoo Fliesと名付けてリリースしているアーカイブス企画の最新作。本作は1995年、彼らのデビューアルバムリリース時のB面曲やレア音源などを集めた作品。サウンド的に非常に若々しさを感じ、勢いを感じさせる作品が並んでいます。一方ではもともと様々なバンドで経験を積んできたメンバーが結成したバンドなだけに、ダイナミックなサウンドにはいい意味で老成を感じさせる部分も。非常に魅力的なEP盤でした。

評価:★★★★★

FOO FIGHTERS 過去の作品
ECHOES,SILENCE,PATIENCE&GRACE
GREATEST HITS
WASTING LIGHT
Saint Cecilia EP
SONIC HIGHWAYS

Concrete and Glod
02050525

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