ストレートに心地よいギターロック
Title:Teenage Wildlife - 25 Years Of Ash
Musician:Ash
イギリスのギターロックバンド、Ashが、タイトル通り、デビュー25周年を記念してリリースしたニューアルバム。Ashといえば1994年にシングル「Jack Names the Planets」でデビュー。その時、メンバーはまだ16歳。当時、既に大人気だったパンクバンド、GREEN DAYからの前座以来を「試験があるから」という理由で断ったことも話題になりました。デビュー直後から高い人気を確保した彼らは「恐るべき子供たち」ということで話題となったのですが、デビューから25年も経ち、もうアラフォー。どちらかというと、25年も経ったのに、まだ40代前半、といった方がいいのかもしれませんが…。もっとも、25年を経てもコンスタントに活動を続けており、若くしてデビューして脚光を浴びつつ、早い段階で崩壊していくようなグループも少なくない中、途中、シャーロット・ハザレイの脱退劇がありつつもオリジナルメンバーで活動を続けているのに驚きも感じてしまいます。
Ashといえば、ひねくれた所のない、ほどよくノイジーでダイナミックなギターサウンドとポップなメロディーラインが魅力的なギターロックバンド。特にポップでわかりやすいメロディーラインが魅力的で、そのインパクトあるメロディーは「キャッチー」とすら表現できそうなくらい。今回のベスト盤ではそんな魅力的なポップチューンが満載。3枚組のアルバムで全54曲、3時間半にも及ぶ長さのアルバムながらも、最初から最後まで聴いていてワクワクしながら、一気に聴き切れてしまう、非常に心地よいアルバムになっていました。
個人的に魅力的だったのが、例えば「Arcadia」。イントロのギターから気分が高揚してくるのですが、楽曲としてどんどん盛り上がりつつ、サビに入った時に一旦、メロディーのピッチがちょっと下がるあたり、ゾクゾクするカッコよさがあります。「Girl from Mars」もポップなメロが魅力的ながらも、メロディーに重なる分厚くノイジーなギターも魅力的な楽曲。シューゲイザーからの影響も感じさせます。「Uncle Pat」もミディアムチューンでどこか切なさを感じさせるメロが魅力的なナンバー。勢いで押すようなアップテンポなナンバーだけではなく、ミディアムチューンの曲もしっかり聴かせるあたり、彼らのメロディーメイカーとしての才を感じさせます。
2001年にヒットした彼らの代表曲のひとつである「Burn Baby Burn」も疾走感あるバンドサウンドとポップでインパクトあるメロディーが魅力的。「Walking Barefoot」もポップなメロと勢いあるサウンドが魅力的。この2曲はいずれも大ヒットした2001年のアルバム「Free All Angels」からのナンバー。彼らの代表作のひとつで、私も大好きなアルバム。この頃の彼らの勢いを感じさせる名曲になっています。
その後もハイテンポでパンキッシュな「Skullfull of Sulphur」、ストリングスも入ってスケール感も覚える「Saskia」など、最後の最後まで魅力的な楽曲の連続。3時間半以上というボリュームを感じさせないのは、なによりも心地よいポップなメロディーラインが連続しているからでしょう。正直言って、彼らの楽曲はほとんどがシンプルなギターロックばかりであまりバリエーションがありません。にも関わらず最後まで飽きることなく一気に聴けるというのは、それだけ魅力的なメロディーラインを持った曲ばかりだからでしょう。
また今回のベスト盤、曲順が発売順とかではなく、おそらくアルバム全体の流れを考慮したような構成になっているのですが、最初期のナンバーと最近のナンバーを並べても、違和感がほとんどない点も驚かされます。それだけ彼らのスタイルにいい意味で変化がないということもありますし、また、この25年間、彼らの勢いがほとんど衰えていないというのも特筆すべき点でしょう。確かに「Free All Angels」期あたりの曲が一番魅力的とは思うのですが、最近の楽曲を「Buzzkill」のような現時点での最新アルバム「Island」からの曲も非常に魅力的なポップチューンに仕上がっています。また、最近の曲ですらある種の若々しさを感じさせ、例えば「Spellbound」などは2010年の作品と彼らにしてみれば、中堅になってからの比較的最近(といっても10年も前の作品ですが…)なのですが、まるで20代前半のバンドが奏でるような、若々しさを感じさせる楽曲になっています。
あらためてAshというバンドの魅力を再確認できたベスト盤。3時間半という長さにも関わらず、最初から最後まで飽きることなく、聴いていてワクワクする珠玉の時間を過ごせるようなアルバムに仕上がっていました。人気の面では確かに一時期ほどの勢いはなくなってしまったのですが、音楽の面ではまだまだその勢いは衰えていません。また、そろそろあらたな傑作をリリースしそうな予感すらします。これからの彼らの活躍も非常に楽しみです。
評価:★★★★★
ASH 過去の作品
A-Z Vol.1
A-Z Vol.2
THE BEST OF ASH
KABLAMMO!
ほかに聴いたアルバム
Sister/Puss N Boots
ノラ・ジョーンズ率いる3人組のガールズユニットによる約6年ぶりとなるニューアルバム。カントリーやブルース、フォークなどの影響を強く感じさせる、ルーツ志向の落ち着いた大人のポップミュージックが大きな魅力。基本的にはノラ・ジョーンズの音楽の延長線上にあるようなタイプの曲調ですが、3人のコーラスを上手く聴かせているあたりが、3人組のユニットならではに感じます。とりあえずノラ・ジョーンズが好きなら要チェックの1枚です。
評価:★★★★
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